やぶにらみの生態学/HFMエコロジーニュース

サル・クマ・森林保護に関する博物学的生態学的エッセイ・権威をきらうへそまがりの独り言

HFMエコロジー・ニュース55(212)

2007-06-28 17:05:57 | ニュース

カメラが捕らえた野鳥シリーズ

野鳥に関しては、やや守備範囲から離れるのだが、ケモノの暮らしを探るための自動撮影装置は、対象を選ばない。
そんな中に、野鳥のおもしろい姿を写し取っているものもある。
今回は、そんな野鳥たちの暮らしの一断面を紹介しよう。

オシドリ-細見谷での繁殖の確認
 前回、「やっぱりオシドリはいた」という報告をしたが、今回はさらに一歩進んで、繁殖の確認という快挙を達成した。5月22日にオス・メスのペアの姿を確認して以後、さっぱり姿を見なくなった。ひょっとしたら抱卵に入ったのかもと思っていたが、その感が的中したようだ。
 前回に引き続き、水際にカメラをセットしておいたのが良かった。大雨が降ればカメラをあきらめるしかない危険な賭であったが、見事に勝ちをもぎ取ることができた。何はともあれ写真をご覧ください。
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カメラの保護ボックスにクモが巣をかけてしまったので、ややぼんやりした写真になってしまったが、左の2枚には2羽の雛が写っているのが確認できる。

最初の雛は6月18日、次に24日にも写っている。何羽の雛が孵ったのか、わからないが、2羽が確実に生き残っている。18日の写真には、テンも写っていたが、無事に生き延びているようだ。
営巣木はもう少し下流かなと思っていたが、どうやらこの近辺にありそうだということが、この雛の写真から推測できる。
 オシドリの繁殖はもちろん、渓畔林域での機構側の調査ではこの数年間、存在すら確認されていない。カメラの位置は林道からそれほど離れてはいない。
また、フォローアップ調査は林道を中心に25mまでをラインセンサスの調査区域としているらしいが、それであればここは調査区域内であるかもしれない。
 そのフォローアップ調査の平成18年度年次報告書では生息の確認が取れていない。いかに実態を捉えていないか、予算の許す範囲での調査でお茶を濁す体質は相変わらずだ。
 広島県の状況を詳しく知っているわけではないが、この10年では唯一の繁殖記録となるのではないだろうか。この程度の調査では、工事の影響が有るか無いか、判断できないことがはっきりした例である。
 おそらく、細見谷はオシドリの繁殖にとっても大変重要な場所となっているようだ。

クマタカ-林道脇で
 クマタカをはじめとする猛禽類には大変気を遣って調査をしていることはよく知っている。それなりのデータもそろっているようだ。しかしだ。その調査そのものが、細見谷でのクマタカの営巣や狩りを阻害している可能性は無いのだろうか。
 6月26日火曜日のこと。調査を終えて戻る途中、小さな谷を挟んだ斜面(スギの人工林)のスギのてっぺん近くに止まっているクマタカがいるという。車を運転していた私は見逃していたのだが、同乗していた杉さんが、見つけたのである。林道からいくらも離れていないではないか。
軽い緊張が続く。
 数十秒いやもう少しか、かなり長い間、止まってこちらを見ていた。と、やがて大きな体をけり出して、ふわっと体を浮かせると、幅広の翼をゆっくり、しかし力強く羽ばたいて、姿を消した。
 かつて、学生の頃、秩父の山の中でニホンザルを観察しているさ中に、舞い降りてきたクマタカを見たことが有ったが、それ以来の接近遭遇である。このクマタカの記録も年次報告には載っていない。
Hfm5411 写真左上に見える。
私はあいにく運転席にいて、荷台のカメラをとることもできずにいた。
杉さんが車内から、撮った写真が唯一の記録である。お借りして紹介しよう。
(撮影:杉島)

 トラツグミ-巣作り中?
 オシドリポイントに隣接して、セットしておいたカメラにトラツグミがよく写っていた。営巣地の近くなのだろう。産座にでも使うのだろうか、コケをくわえている姿や、大量のミミズをくわえて飛び立つ姿など、かなりのカットが残されていた。
 フォローアップ調査の年次報告によれば、このトラツグミも、渓畔林地域では確認されていない。穴だらけの調査である。
もう少しまともな調査をしましょう。
鳥を含む、様々な生き物がどのような暮らしをしているか、きちんと把握できなければ、工事の影響を判断することなどできるわけ無いのですからね。
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6月6日の記録です。
今年も様々な写真を撮ることができそうです。
追々、公開していきますからお楽しみに。

今回は、この辺で。さようなら…