春烙

寒いなあ…

四神伝 一章 三.白虎<16>

2008年03月22日 00時04分32秒 | 四神伝 一章<完>
「これって。矢がありませんね」
 そう言って、水奈は弦を引く。すると、弓に青い光が集まって、矢の形へと変わっていく。
「こういう、仕掛けですか」
 そのまま、水奈はナズナに向けて矢を放つ。飛んでいく一本の矢が、無数の矢へと増えていった。
「…チッ」
 ナズナは地面を蹴り、無数の矢をかわす。
「すごいな」
 水奈の弓を見て、泳地は感心した。
「ええ」
「いきなり、放つな!」
 宙を浮きながら、ナズナは怒鳴った。
「別にいいです」
「別にって……」
 と、その時。
 ナズナの後ろにある、空間への入り口が歪み始めた。
「しくじったか!」
「どうしますか」
 ナズナの言葉を聴いて、水奈は弦を握り、泳地は斧を構えている。
「今回は、これぐらいにしてやろう」
 そう言うと、ナズナの周りに風が吹き出す。
「また、会おう」
 風とともにナズナが消えると、水奈は弦を放し、目を細めて言った。
「いやです」
「会わない事を願おう」
 弟に同意するように、泳地は言う。



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