アルミニウムかもしれない
虎鉄はおもった
そら
とはどこからをさすのか
チューリップくらいの高さじゃそらとは言えないような気がする
では視界にうつりこんだあの街路樹の枝の何本目からがそらだろうか?
いち
に
さん
し
しかし
自分の両足がチューリップの高さまで浮いていたらそらをとんでるとおもうだろう
そのようなことをおもってる虎鉄はダンプカーに跳ねられている最中だった
宇宙は
もうすぐで朝になるらしい
宇宙が出来て何年か忘れたけどはじめて夜があけるという
数時間前にそう語っていた
女のネジはよく回っていた
配線はとっくにショートしていたにもかかわらず
まっくらやみがきえて星たちは輝くこともないただの石になる
とはいえ、日かげになっていたものが日なたになるだけのことだ
女は話しながらけずられていた
まとまらないものがはなれていくようだ
血がでている
鼻水もでている
尿らしきものも
ガードレール越しに女が虎鉄を見ている
いくら頑張っても運命は決まっている
1030年フランスで1人の地底人が地上に出る穴を掘っていた
光を見つけるため
何年もかけて地上に出た彼が見たのはくらやみだった
ただ砂埃が巻き上がり強い風がゴーゴーとなり響くだけだった
がっかりした地底人は土の中にもぐりそれ以上穴を掘る気も失せて土の中で生涯を閉じた
地底人は夜も嵐も知らなかった
地底人の屍は虎鉄の左目辺りに埋まっている
ぐ
ち
ゃ
着
地
「人はねちまった」
虎鉄の意識が戻ったのはそれから4年後のこと
病室は暗かった
また夜
虎鉄は今まで6年間生きてきたが起きてる時間はいつも夜だ
工場で稼働するにはその方が都合いいんだと
「お大事に」
看護婦が退室した
寝てるベッドの横のパイプ椅子に女が座っていた
「ごめんね、母親らしいこと出来ないままで」
でもしょうがない
女の配線はとっくにショートしているのだから
林檎の皮を向く腕や指から
ぎぎぎ ぎぎぎ
と音がなっている
虎鉄は女が出すこの音が愛しくてたまらない
ぎぎぎ ぎぎぎ …ぎっ
ぽろっ
女の首がとれて床に落ちた
女はカーテンを開けて病室のくらやみをけずった
あの石は月かな
虎鉄は床にせいざしながら女の首を抱いた
あれが太陽かな
彼は失明した
アルミニウムじゃなかったので
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