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『遺体』

2011-12-29 | Tohoku
今年中にどうしても読みたかった本。
数日前にようやく手にすることができました。



著者の石井光太氏が震災直後から釜石市入りをし、
東日本大震災によってつくられた遺体安置所を舞台に、
丁寧に取材をして、冷静に描写し続けている一冊。

テレビなどでは報道されることのない、
遺体の冷たさをそのまま書き記し、
そうした冷たい死をなんとか血の通ったものにしようと、
懸命に努力する人々の姿が描写されている。

この本に登場する人々の一人、民生委員の千葉さんは、
長年葬儀社に勤めていたという経験を生かすべく、
自ら志願して遺体安置所の管理人となった。
何体も運ばれてくる遺体を前に、市の職員等が立ちすくんでいる時、
彼は遺族にこんな言葉を発した。

『つらいかもしれませんが、亡くなった方はご家族に迎えに来てもらえて
とても喜んでいると思います。急にお顔が優しくなったような気がします。
これからは毎日会いに来てあげてください。きっと故人の顔はもっと和らいでいきますから。』

この部分を読んで、5月に行った北上中の避難所でのおばあさんの話を思い出した。
マッサージをしていたら、「おじいさんが流されたけど先日見つかった」と話してくれた。
私は、どう返事をしていいのか一瞬困ったけれど、
「おじいさん、見つかって良かったですね」とだけ言った。
これは、うわべだけでかけた言葉ではなく、私の本心だった。
おばあさんも「本当ね」と安堵感を込めて言っていたのを今でも覚えている。

メディアはどうしても生者の物語に焦点を当てたがる。
事実、震災が起きた数日、数週間後には奇跡物語や復興へと焦点が置かれ始め、
被災地を目にしていない、被災していない人々は
「徐々に良くなっているのね」と錯覚してもおかしくない情報が飛び交い始めた。

2011年12月22日の時点で、
死者 15843人
行方不明者 3469人

本当に前を向いて歩くためには、
重い死と悲しみを受け止めることから。

風化をしないために、忘れないために、
被災された方々の心と体が少しでも軽くなるように、
被災していない人間が、報道に惑わされずに、
多くの「真実」を知り、 自分なりに咀嚼し、考え、行動しなければならない。

真実から目をそむけずに、多くの人に読んで欲しいと思った一冊です。
チャンスがあったら是非手にとって読んでいただきたい。

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