グビアナ城に用事があって、訪れたミミとイザヤール、そしてサンディ。ユリシス女王はいつものように大歓迎をした。
「ゆっくりしていらして!沐浴場にもぜひ立ち寄って頂きたいわ、今日はサンドフルーツを浮かべていますのよ」
イザヤールが、せっかくだから寄ったらどうだ、私は宿屋で待っているから、と言うと、ユリシス女王はいたずらっぽい表情で彼に囁いた。
「ミミの大切な方だから、貴方も特別に沐浴場への立ち入りを許可しますわ。如何?」
それを聞いてミミは少し動揺し、サンディはニヤニヤし、イザヤールは僅かに苦笑して答えた。
「お心遣い感謝致しますが、今回は遠慮致します、女王陛下」
「ミミと二人きりだったら入りまして?でしたら貸し切りに致しましてよ」
ユリシス女王にまでからかわれるとは。イザヤールは苦笑を増して、「ゆっくりしてきなさい」とミミに告げ、早々に退散した。
女王はまだ謁見があるということで、ミミはサンディと二人で沐浴場を訪れた。今日も、地元の乙女から観光客の乙女、元乙女も含め、たくさんの女性で賑わっている。
サンドフルーツの浮かんだ水はいつもにも増して爽やかで、如何にも肌に良さそうだった。
「ちょ、コレサイコー!アタシも美白にシフトしようかな~」
サンディは上機嫌でミュールを脱いで足を浸した。ミミはそんな彼女や、楽しそうな女性たちを見て微笑み、沐浴場の隅で気分良く汗を流していると、ふと、自分を見つめている視線に気付いた。
その視線の元にミミが目をやると、おとなしそうな少女が立っていて、水着姿のミミを、羨望と、そして何か暗いものを湛えた目で見つめていた。
ミミは少女に近寄り、首を傾げて尋ねた。
「あの・・・私に何か・・・?」
すると少女は、いくらか慌てたように、顔にいくぶん血の気を上らせて答えた。
「あ、ごめんなさい。すごく綺麗な人、そう思ったものですから。ついみとれてました」
「え、そんな・・・」
そう褒められてミミもまた赤くなってうつむいたが、少女の浮かない表情が、どうも気になった。
「あの・・・何かお困りのことでも?私でよければ、お話伺いますけれど?」
ミミが言うと、少女は一瞬、泣きそうな顔になった。だが、その表情はすぐに引っ込んで、無表情に近い顔に戻った。
「ご親切にありがとう。よろしかったら、沐浴の後、散歩にお付き合い頂けますか?ご相談したいことがありますの」
「わかりました」
ミミは答えてから、サンディに小声で、後でイザヤール様に伝言よろしくね、と囁いた。
こうしてミミはクエスト「ちょっとそこまで」を引き受けた!
ミミが少女と共に沐浴場を出ると、彼女は、人気のない方にミミを連れていった。イザヤールに伝言をしに行く筈のサンディ、何故かすぐには行かずにぐずぐずしていた。
「サンディ?」
ミミが首を傾げると、サンディは囁いた。
「なんかさ~、イヤな予感するんですケド・・・。アタシ、もうちょい一緒に居るワ」
「?」
別に少女には、魔物の気配も幽霊の気配もない。ただ、何か思い詰めた様子は気になるけれど。ミミは不思議そうに少女の背中を見つめた。
全く人が居ない路地裏に着くと、少女は突然ミミの腕を掴み、キメラの翼を放り投げた!
着いた場所は、グビアナの高台だった。恐妻家の男の幽霊が居る場所だが、今は昼間なので、もちろん彼は居ない。そしてまた、ここは古代の魔神の一種である「ギリメカラ」の棲息地でもあった。
「ごめんなさい」少女は思い詰めた、そしてこの上なく悲しそうな顔で呟いた。「私、どうしても綺麗になりたいの」
「それって、どういう・・・」
ミミが言いかけたそのとき、何か近付いてくる、重い地響きがした。大きな影が辺りを覆う。ミミが振り返ると、そこには・・・。
ギリメカラが、現れた!
ミミは、唇を結び、身構えた。街中で、沐浴の直後だったとはいえ、武器を持っていなかったことが悔やまれる。素手スキルと呪文で戦うしかない。そして、彼女の身を覆っているものは、サマードレスだった。これでは守備力も心許ない。
「やっぱり!イヤな予感当たっちゃった~!ミミ、アタシ急いでイザヤールさん連れてくるから、それまで何とかねばるのヨ!」
サンディは叫び、全速力でグビアナに向かって飛んでいった。
ミミは頷くと、ギリメカラを鋭い視線で見つめ、少女に向かって叫んだ。
「早く、逃げて!」
しかし、少女は動こうとしなかった。それどころか、ギリメカラを見上げ、呟いた。
「契約通り、美しい娘を連れてきたわ。私の願い、叶えてくれるわね」
ミミが驚いて少女を見つめると、彼女は悲しそうに呟いた。
「私、この魔神と契約したの。綺麗な娘を生け贄に捧げたら、その娘と同じくらい綺麗にしてくれるって。・・・私、あなたのように綺麗になりたいの。ごめんなさい・・・」
ミミは鋭く息を吸い込んだ。ギリメカラは、生け贄を捧げれば、願いを叶えてくれる古代の魔神だ。けれど・・・だからといって、本当に契約する人がいるなんて・・・。
ミミはギリメカラから間合いを取った。何とか、この丸腰でも、この魔物に勝たなくてはならない。さもないと、自分だけではない、この少女も、魔物の餌食になる。魔物に、魂を完全に売り渡してしまうことになる・・・。
ギリメカラは、鋭い牙を剥き出して、残忍な笑みを浮かべた。生け贄を、いたぶることを完全に楽しんでいる。だが、その笑いは、次の瞬間消えた。ミミの「せいけんづき」が決まったのだ。会心の一撃!
生け贄の思いがけない反撃に、ギリメカラは怒り狂った。手にした鉄槌を、力の限り振り下ろしてきた。ミミは紙一重で身をかわす。地面に大きくヒビが入り、辺りは揺れた。
ミミは体勢を立て直し、もう一度「せいけんづき」を放った。だが、今度は当たらなかった。そしてギリメカラは、イオナズンを唱えてきた。爆風を受け、ミミは地面に叩きつけられた。
少女は、そんな様子を辛そうに見ていた。大丈夫よ。ミミは内心呟く。私は、負けない。あなたに、魔神へ魂を売らせたりしない。
ギリメカラは、今度は「ライドインパクト」を放ってきた。衝撃を受けた大地が、ミミを襲う。ダメージは大きかったが、彼女はすかさずベホイミを唱えた。
あともう二回、「せいけんづき」を当てることができれば、ギリメカラは倒せる。だが、その前にもし痛恨の一撃を受けてしまったら・・・
どちらも攻撃を踏み出しかねていると、そのとき、空から光が降ってきた。天の箱舟から、誰かが来た証。
「盾があれば、大丈夫だろう」
聞き慣れた、愛しい声がして、愛用の剣と盾に身を固めたイザヤールが、ミミをかばうように立っていた。
サンディも、息を切らしながら来ていた。
「ナイスカッコつけタイミングよネ~。ミミ、アタシ、チョー早く飛んでめちゃくちゃ疲れたんですケド!」
ミミは、安堵の表情を浮かべて、サンディとイザヤールに微笑みかけた。イザヤールは剣から槍に装備を変え、「けものづき」を放って、ギリメカラに大ダメージを与えた!
イザヤールから剣を受け取り、ミミは「ギガスラッシュ」を放って、ギリメカラにとどめの一撃を放った。ギリメカラを倒した!
少女は、呆然と立ち尽くし、ギリメカラが倒れるのを見守っていた。
「そんな・・・」
少女は呟き、首を垂れた。
「魔神の力を借りて綺麗になっても、きっと幸せになれない、あなたもわかっているでしょう?なのに、どうして?」
ミミが尋ねると、少女は消え入りそうな声で答えた。
「あの人が、言ったの・・・。俺は、美人が好きだ、って。美人でなければ、恋人にはしないって・・・私は・・・どうしても、あの人の恋人になりたかった」
「・・・そう、それで・・・それでなのね」
ミミは、いたわるように少女の腕にそっと触れた。
「そんな最低なコト言うヤツのために魔神と契約?!信じらんない!」
怒るサンディに、ミミはゆっくり首を降った。
「好きな人のために綺麗になりたい、その気持ち、わからなくないの・・・方法は間違っていても」
ミミのその言葉を聞いて、少女は泣き崩れた。
「私、これからどうしたらいいの?あなたを、偶然会った知らない女の子を、ただ沐浴場で見かけた中で一番綺麗だったというだけで、危ない目に遭わせてしまった・・・」
「でも、私はこうして無事でいるわ」ミミは微笑んだ。「悪い夢を見た、そう思って、忘れて。・・・そして、もう二度と魔神の手なんか借りない、約束して」
少女は泣きながら頷いた。
「帰りましょう」
ミミは言って、ルーラを唱えた。
グビアナに戻ると、少女はミミに言った。
「私、魔神の力を借りないで、綺麗になるよう自力でまた、努力してみるわ。・・・あの人のためじゃなく・・・自分のために」
「うん、それがいいわ」
ミミは微笑んで頷いた。少女は、本当にごめんなさい、と「オレンジリボン」をくれて、去っていった。
その後ろ姿を見送りながら、ミミは呟いた。
「私が綺麗かどうかはわからないけれど」彼女はイザヤールを見上げた。「大好きな人に気に入ってもらえるなら、どっちでもいい、そう思えるようになりました・・・」
「ミミ・・・心配しなくても、おまえは私にとって、一番綺麗だ」
そう囁くイザヤールと、その言葉に頬を染めるミミを呆れて見つめながら、サンディはぼやいた。
「とにかく、アンタがチョーお人好しなのだけは間違いないわネ・・・」
その夜。グビアナ城下町の酒場で、ミミたちは二人の青年の会話を小耳に挟んだ。
「・・・おまえ、なんで好きなコに、そんなこと言っちまったんだよ」
青年の片方が呆れて言うと、もう一方がうつむいて答えた。
「本当に好きだからさ」彼は苦悩に満ちた声で呟いた。「俺はろくでなしで、彼女に相応しい男じゃない、だから・・・」
「嫌われようと思って、美人でなければ恋人にしない、なんて言ったのか?!おまえ、バカだよ、ホントに」
そのやり取りを聞いたイザヤールは、ぽつりと呟いた。
「本当に・・・愚かな。そのせいで彼女は、危うく罪を犯すところだった・・・ミミに会っていなければ」そして彼は、更に小声で呟いた。「己の心を偽ることも・・・罪を生むことがあるのだな」
「イザヤール様・・・」
長い間、自分たちも、偽るとは言わない間でも、己の心を押し隠してきた・・・。幸い、それが不幸につながることは免れていたけれども。
「だから・・・残りの生涯、人間としての短い時間の間だけでも、もう気持ちを偽りはしない。・・・ミミ、愛している」
「イザヤール様・・・私も・・・」
「単にのろけてるだけじゃん、このバカップルー!」
こうして、砂漠の夜は、今夜も平和に更けていった。〈了〉
「ゆっくりしていらして!沐浴場にもぜひ立ち寄って頂きたいわ、今日はサンドフルーツを浮かべていますのよ」
イザヤールが、せっかくだから寄ったらどうだ、私は宿屋で待っているから、と言うと、ユリシス女王はいたずらっぽい表情で彼に囁いた。
「ミミの大切な方だから、貴方も特別に沐浴場への立ち入りを許可しますわ。如何?」
それを聞いてミミは少し動揺し、サンディはニヤニヤし、イザヤールは僅かに苦笑して答えた。
「お心遣い感謝致しますが、今回は遠慮致します、女王陛下」
「ミミと二人きりだったら入りまして?でしたら貸し切りに致しましてよ」
ユリシス女王にまでからかわれるとは。イザヤールは苦笑を増して、「ゆっくりしてきなさい」とミミに告げ、早々に退散した。
女王はまだ謁見があるということで、ミミはサンディと二人で沐浴場を訪れた。今日も、地元の乙女から観光客の乙女、元乙女も含め、たくさんの女性で賑わっている。
サンドフルーツの浮かんだ水はいつもにも増して爽やかで、如何にも肌に良さそうだった。
「ちょ、コレサイコー!アタシも美白にシフトしようかな~」
サンディは上機嫌でミュールを脱いで足を浸した。ミミはそんな彼女や、楽しそうな女性たちを見て微笑み、沐浴場の隅で気分良く汗を流していると、ふと、自分を見つめている視線に気付いた。
その視線の元にミミが目をやると、おとなしそうな少女が立っていて、水着姿のミミを、羨望と、そして何か暗いものを湛えた目で見つめていた。
ミミは少女に近寄り、首を傾げて尋ねた。
「あの・・・私に何か・・・?」
すると少女は、いくらか慌てたように、顔にいくぶん血の気を上らせて答えた。
「あ、ごめんなさい。すごく綺麗な人、そう思ったものですから。ついみとれてました」
「え、そんな・・・」
そう褒められてミミもまた赤くなってうつむいたが、少女の浮かない表情が、どうも気になった。
「あの・・・何かお困りのことでも?私でよければ、お話伺いますけれど?」
ミミが言うと、少女は一瞬、泣きそうな顔になった。だが、その表情はすぐに引っ込んで、無表情に近い顔に戻った。
「ご親切にありがとう。よろしかったら、沐浴の後、散歩にお付き合い頂けますか?ご相談したいことがありますの」
「わかりました」
ミミは答えてから、サンディに小声で、後でイザヤール様に伝言よろしくね、と囁いた。
こうしてミミはクエスト「ちょっとそこまで」を引き受けた!
ミミが少女と共に沐浴場を出ると、彼女は、人気のない方にミミを連れていった。イザヤールに伝言をしに行く筈のサンディ、何故かすぐには行かずにぐずぐずしていた。
「サンディ?」
ミミが首を傾げると、サンディは囁いた。
「なんかさ~、イヤな予感するんですケド・・・。アタシ、もうちょい一緒に居るワ」
「?」
別に少女には、魔物の気配も幽霊の気配もない。ただ、何か思い詰めた様子は気になるけれど。ミミは不思議そうに少女の背中を見つめた。
全く人が居ない路地裏に着くと、少女は突然ミミの腕を掴み、キメラの翼を放り投げた!
着いた場所は、グビアナの高台だった。恐妻家の男の幽霊が居る場所だが、今は昼間なので、もちろん彼は居ない。そしてまた、ここは古代の魔神の一種である「ギリメカラ」の棲息地でもあった。
「ごめんなさい」少女は思い詰めた、そしてこの上なく悲しそうな顔で呟いた。「私、どうしても綺麗になりたいの」
「それって、どういう・・・」
ミミが言いかけたそのとき、何か近付いてくる、重い地響きがした。大きな影が辺りを覆う。ミミが振り返ると、そこには・・・。
ギリメカラが、現れた!
ミミは、唇を結び、身構えた。街中で、沐浴の直後だったとはいえ、武器を持っていなかったことが悔やまれる。素手スキルと呪文で戦うしかない。そして、彼女の身を覆っているものは、サマードレスだった。これでは守備力も心許ない。
「やっぱり!イヤな予感当たっちゃった~!ミミ、アタシ急いでイザヤールさん連れてくるから、それまで何とかねばるのヨ!」
サンディは叫び、全速力でグビアナに向かって飛んでいった。
ミミは頷くと、ギリメカラを鋭い視線で見つめ、少女に向かって叫んだ。
「早く、逃げて!」
しかし、少女は動こうとしなかった。それどころか、ギリメカラを見上げ、呟いた。
「契約通り、美しい娘を連れてきたわ。私の願い、叶えてくれるわね」
ミミが驚いて少女を見つめると、彼女は悲しそうに呟いた。
「私、この魔神と契約したの。綺麗な娘を生け贄に捧げたら、その娘と同じくらい綺麗にしてくれるって。・・・私、あなたのように綺麗になりたいの。ごめんなさい・・・」
ミミは鋭く息を吸い込んだ。ギリメカラは、生け贄を捧げれば、願いを叶えてくれる古代の魔神だ。けれど・・・だからといって、本当に契約する人がいるなんて・・・。
ミミはギリメカラから間合いを取った。何とか、この丸腰でも、この魔物に勝たなくてはならない。さもないと、自分だけではない、この少女も、魔物の餌食になる。魔物に、魂を完全に売り渡してしまうことになる・・・。
ギリメカラは、鋭い牙を剥き出して、残忍な笑みを浮かべた。生け贄を、いたぶることを完全に楽しんでいる。だが、その笑いは、次の瞬間消えた。ミミの「せいけんづき」が決まったのだ。会心の一撃!
生け贄の思いがけない反撃に、ギリメカラは怒り狂った。手にした鉄槌を、力の限り振り下ろしてきた。ミミは紙一重で身をかわす。地面に大きくヒビが入り、辺りは揺れた。
ミミは体勢を立て直し、もう一度「せいけんづき」を放った。だが、今度は当たらなかった。そしてギリメカラは、イオナズンを唱えてきた。爆風を受け、ミミは地面に叩きつけられた。
少女は、そんな様子を辛そうに見ていた。大丈夫よ。ミミは内心呟く。私は、負けない。あなたに、魔神へ魂を売らせたりしない。
ギリメカラは、今度は「ライドインパクト」を放ってきた。衝撃を受けた大地が、ミミを襲う。ダメージは大きかったが、彼女はすかさずベホイミを唱えた。
あともう二回、「せいけんづき」を当てることができれば、ギリメカラは倒せる。だが、その前にもし痛恨の一撃を受けてしまったら・・・
どちらも攻撃を踏み出しかねていると、そのとき、空から光が降ってきた。天の箱舟から、誰かが来た証。
「盾があれば、大丈夫だろう」
聞き慣れた、愛しい声がして、愛用の剣と盾に身を固めたイザヤールが、ミミをかばうように立っていた。
サンディも、息を切らしながら来ていた。
「ナイスカッコつけタイミングよネ~。ミミ、アタシ、チョー早く飛んでめちゃくちゃ疲れたんですケド!」
ミミは、安堵の表情を浮かべて、サンディとイザヤールに微笑みかけた。イザヤールは剣から槍に装備を変え、「けものづき」を放って、ギリメカラに大ダメージを与えた!
イザヤールから剣を受け取り、ミミは「ギガスラッシュ」を放って、ギリメカラにとどめの一撃を放った。ギリメカラを倒した!
少女は、呆然と立ち尽くし、ギリメカラが倒れるのを見守っていた。
「そんな・・・」
少女は呟き、首を垂れた。
「魔神の力を借りて綺麗になっても、きっと幸せになれない、あなたもわかっているでしょう?なのに、どうして?」
ミミが尋ねると、少女は消え入りそうな声で答えた。
「あの人が、言ったの・・・。俺は、美人が好きだ、って。美人でなければ、恋人にはしないって・・・私は・・・どうしても、あの人の恋人になりたかった」
「・・・そう、それで・・・それでなのね」
ミミは、いたわるように少女の腕にそっと触れた。
「そんな最低なコト言うヤツのために魔神と契約?!信じらんない!」
怒るサンディに、ミミはゆっくり首を降った。
「好きな人のために綺麗になりたい、その気持ち、わからなくないの・・・方法は間違っていても」
ミミのその言葉を聞いて、少女は泣き崩れた。
「私、これからどうしたらいいの?あなたを、偶然会った知らない女の子を、ただ沐浴場で見かけた中で一番綺麗だったというだけで、危ない目に遭わせてしまった・・・」
「でも、私はこうして無事でいるわ」ミミは微笑んだ。「悪い夢を見た、そう思って、忘れて。・・・そして、もう二度と魔神の手なんか借りない、約束して」
少女は泣きながら頷いた。
「帰りましょう」
ミミは言って、ルーラを唱えた。
グビアナに戻ると、少女はミミに言った。
「私、魔神の力を借りないで、綺麗になるよう自力でまた、努力してみるわ。・・・あの人のためじゃなく・・・自分のために」
「うん、それがいいわ」
ミミは微笑んで頷いた。少女は、本当にごめんなさい、と「オレンジリボン」をくれて、去っていった。
その後ろ姿を見送りながら、ミミは呟いた。
「私が綺麗かどうかはわからないけれど」彼女はイザヤールを見上げた。「大好きな人に気に入ってもらえるなら、どっちでもいい、そう思えるようになりました・・・」
「ミミ・・・心配しなくても、おまえは私にとって、一番綺麗だ」
そう囁くイザヤールと、その言葉に頬を染めるミミを呆れて見つめながら、サンディはぼやいた。
「とにかく、アンタがチョーお人好しなのだけは間違いないわネ・・・」
その夜。グビアナ城下町の酒場で、ミミたちは二人の青年の会話を小耳に挟んだ。
「・・・おまえ、なんで好きなコに、そんなこと言っちまったんだよ」
青年の片方が呆れて言うと、もう一方がうつむいて答えた。
「本当に好きだからさ」彼は苦悩に満ちた声で呟いた。「俺はろくでなしで、彼女に相応しい男じゃない、だから・・・」
「嫌われようと思って、美人でなければ恋人にしない、なんて言ったのか?!おまえ、バカだよ、ホントに」
そのやり取りを聞いたイザヤールは、ぽつりと呟いた。
「本当に・・・愚かな。そのせいで彼女は、危うく罪を犯すところだった・・・ミミに会っていなければ」そして彼は、更に小声で呟いた。「己の心を偽ることも・・・罪を生むことがあるのだな」
「イザヤール様・・・」
長い間、自分たちも、偽るとは言わない間でも、己の心を押し隠してきた・・・。幸い、それが不幸につながることは免れていたけれども。
「だから・・・残りの生涯、人間としての短い時間の間だけでも、もう気持ちを偽りはしない。・・・ミミ、愛している」
「イザヤール様・・・私も・・・」
「単にのろけてるだけじゃん、このバカップルー!」
こうして、砂漠の夜は、今夜も平和に更けていった。〈了〉
長年自らの想いを隠し続け、その後ようやくお互いの想いが通じ合えたからこそ言える台詞ですね
そういえば私、
宝の地図の洞窟以外でギリメカラを今まで見たことがないので、この話を読んでる途中『ギリメカラってグビアナ砂漠なんかにいたっけ?』と思い、さっきステルスをかけ続けながら30分くらい待ってたらようやく1匹登場しました ←出現率低っ!!
あっ
頭の中に出来てる幾つかの話を現在書き溜めてる最中なので、調子がよければ数日内に更新出来ると思います
おはようございます☆台風の影響すごいですね(汗)お出かけの際はお気を付けて!
ギリメカラ、確かにグビアナではかなり出現率低いですね~。
しかし津久井は以前、クリア直後くらいに、グビアナでそんなのが出ることすら知らない時にたまたまギリメカラに遭遇してしまい、ぼこぼこにされたことがあります・・・(涙)
おお~、小説新作ご予定♪順調執筆祈願「おうえん」!