セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

におはな

2013年04月28日 23時59分58秒 | クエスト163以降
本日も更新ギリギリ、その訳は久々?イチャだけじゃないきょーふの真夜中テンションイザ女主話だからです。何か早い時間の更新憚られるよーな(笑)朝っぱらから何をやってるんですかとお叱りが来そうなバカップルでございます。人間にも「匂い」は恋や相性に重要な役割を果たすそうですね。好ましい匂いの人を好きになるのか、好きな人の匂いは好ましいと思うのかはともかく、当サイトの二人は、互いの匂いも大好きなようで・・・。特にフレグランスも付けないのに激しく主張しないけど何だか奥ゆかしくいい匂い、という人が羨ましいので、そんな憧れ含め匂い話と相成りました。タイトル相変わらず造語。

 ミミとイザヤールにとって、もはや下宿そのものなリッカの宿屋。スタッフたちの手を煩わせない為に、当然ベッドメイキングも自分たちでする。
 イザヤールの寝ていたベッドから、洗濯する為にシーツを剥がしてミミは、それを頭からすっぽり被った。濃い紫の瞳だけ覗かせイザヤールを見上げながら、いたずらっぽく、しかし僅かに恥ずかしそうに呟いた。
「一発芸、『ゆうれい』のマネ・・・」
 言う前から不発だとわかっていたのだろう、イザヤールが面白いからと言うより慰めるような慈愛の微笑みを浮かべるのを見て、彼女はますます恥ずかしそうな様子になり、そして情けなさそうな表情になった。
「『きょくげい』スキルの『ボケ』のレパートリーを増やそうと思ったけれど・・・やっぱり、ダメ?」
「可愛いが、笑いは取れないな」
 優しく、だがきっぱりと言われてミミは、しょんぼりしたようにシーツの中ににくるまった。シーツの端に顔を埋めたままうつむき続ける彼女に、そんなに自信作だったのか?と、イザヤールが少々慌てて身を屈めて覗き込むと、再び彼を見上げたミミの瞳は、美しいものや愛しいものに逢った時の常で、美しいグラデーションを描いていた。しょげているのではない。妖しい、どこか艶かしい表情だ。
「・・・イザヤール様の匂いがするの」
 そう呟いて、シーツにそっと触れる唇が、薔薇の花びらのようにやわらかそうだ。
「それはそうだ、私が寝ていたベッドのシーツだからな」
 なんでもなさそうに淡々と答えたイザヤールだったが、鼓動はとくりとくりと速まっていた。
「・・・いい匂いだから好き」
 そう言って見上げた愛しさの全開を込めた笑みは、計算が全く無い無意識のものだけに、余計に罪作りだと、見下ろす男は熱い溜息を小さく吐き出した。その吐息のかすかな音と言うより気配に、ミミは笑っていた目を驚きに変えて、不思議そうに見開く。
「・・・イザヤール様・・・?」
 何かおかしなことを言っただろうかと、ミミが少し心配そうに首を傾げると、イザヤールは目を僅かに細め、悩ましくもどこか意地悪な微笑みを唇の端に浮かべて囁いた。
「ミミ。・・・同じことをされたら、おまえは・・・どう思う?」
「・・・同じ・・・こと?」
 何をされるかと考える間もなく、ミミは引き寄せられ、被ったシーツを引き剥がされた。簡素な白いワンピースから覗く首筋に、筋の通った端整な鼻が近付き、そのまま垂れた艶髪に埋まった。
「・・・いい匂いだ」
 囁く声と共に吐き出されるかすかな吐息が、ひどく熱い。その熱と言葉にミミが思わずぴくりと身を震わせると、弧を描いていた僅かに意地悪な唇は、そのまま優しく滑らかな首筋に触れた。
「私・・・こんなこと、してな・・・」
 彼女が弱々しく抗議の声を上げると、白々しくも憎らしいほど艶かしい笑みと言葉を、彼もまた無意識に浮かべる。
「おや、違ったか?」
 一旦顔を離して見つめたその表情にミミは魅せられ見とれ、こんな顔をするイザヤール様は・・・ずるい、と思った。濃い紫の影と煌めきを浮かべた瞳を潤ませ、花びらのような唇が僅かに開いて無意識にキスをねだるミミの表情を、彼もまた同じように「・・・反則だ」と思っているとも知らずに。
 どちらからともなく顔が近付き、赴くままに唇が重なり、絡み合う。蝶のように、香を持つ獣のように、互いを心地よいものだと香りで知らしめたこの元天使たちは、その嗅覚の与えた情報の正しさに陶酔し、理屈も抜きにした愛しさを募らせる。
 ようやく唇を離した後、ミミは幸せそうに吐息して、彼の腕の中にすっぽりと納まった。白いシャツの胸元に頬をすり寄せて、しなやかな力強い筋肉の感触を楽しみ、ぬくもりと、彼の清潔だがどことなく艶かしい「いい匂い」を存分に味わう。
 愛しい人の心も体も両方好きだということは、なんて幸せなんだろうと彼女は思った。優れた精神だけに惹かれても、それは尊敬留まりになる。彫刻のような非の打ち所のない体だけに惹かれても、本能のみの交流はどこか空虚で寂しい。両方だから、充たされ、満たされるのだと、覚った。
 一方、彼女を抱きかかえているイザヤールも、腕の中のやわらかで「いい匂い」の体に、陶酔していた。華奢なくせに、豊かなところはたっぷりと豊かで、一見強く抱いたら折れそうなくせに、しなやかでどんな愛撫も受け止める美しい体。このやわらかさとしなやかさと香りは。彼女の体は本当に花でできているのではないかと、一瞬愚にもつかないことが脳裏を過り、そんな自分に彼は苦笑した。
 美しい体にだけ惹かれても、それは欲の捌け口にしかならない。優しく高潔な心にだけ惹かれても、それは友情や尊敬留まりとなり、情欲を抱くことに罪悪感すら覚えるだろう。両方に惹かれ、心も体も両方欲しいと、素直に求められることに、彼は激しく歓喜した。自分の胸板に頬を、腹筋に脚に悩ましい曲線を描く体を、ぴったりと密着させている無警戒なミミに、イザヤールはまた囁いた。
「・・・同じことをされたら、どう思う?」
 その言葉の意味に気付いたミミは、目を見開き、悩ましい陰影を宿した瞳で、焔を隠し持つような瞳を見上げた。
「・・・どうぞ・・・」
 ほとんど聞き取れないほどか細い声で呟いて、彼女は胸元に彼の頭をそっと引き寄せた。それは言葉的には全く答えになっていなかったが、意味的には答えになっていた。彼もまた一瞬驚きで目を見開いてから、首筋や髪とはまた違う胸元の香を、存分に楽しんだ。

 洗濯は、もう少し先にお預け。初夏の太陽は、まだまだ空に居てくれる。〈了〉

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