セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

裁き人守り人

2015年11月21日 01時07分20秒 | クエスト184以降
時間かかった割にはイマイチアレ、小難しいことを考えて書くとテーマ未消化になっちゃういつものパターンですの追加クエストもどき。この歳でも未だに何が正義とか悪とか正解がさっぱりわかりませんで、むしろ白黒はっきりみたいな二元的な思考が苦手になっちゃったような。悪い魔王、正義の勇者、以上で何も考えない危うさとかもうちょいうまく書ければなあとかつくづく思います(汗)文中の謎の魔物は、明記してませんがDQ2などに登場の魔物「じごくのつかい」が一応モデルです。

 最近、各地で不穏な事件の噂が囁かれるようになった。仮面をかぶった神官が、凶悪な強盗や人拐いなどを人里離れた場所で無惨な死体に変えてしまうという。元々いわゆるお尋ね者たちが被害者だったので、仲間割れや意趣返しだと思われていたものが、たまたま命からがら逃げてきた追い剥ぎの一人がそう証言してから息絶えたので、噂が一気に広まったのだ。
 だが、やがて、自らは直接手を下さないものの汚い手段を使うことで有名な商人のキャラバンや、過酷な取り立てをして一家心中も起こすことも珍しくない金貸しなども、犠牲者に加わるようになった。天罰だという者どころか、その謎の神官を神の使いだと崇める者さえ現れ始めた。
「いくら犠牲者が酷いことしていたからって、神様がそんなダーティな天罰を下すとは思えないけど」噂を仕入れてきたルイーダが、肩をすくめながら言った。「おかげで、身に覚えがあるのかしらね、旅の商人たちの護衛の依頼がすごく増えちゃったわ。ミミ、帰って来たばかりのところ悪いけど、また行ってきてもらっていい?」
 腕が立つ冒険者は今や引っ張りだこで、ミミとイザヤールもそれぞれ護衛に駆り出されていた。ルーラやキメラのつばさで行けない場所までにも仕入れに行く商魂逞しさに、ミミは素直に感心していたが、おかげでイザヤールと何日間も離ればなれなのがちょっぴり不服だった。今日は逢えると思ったのにな、と思ったが仕方ない。ミミはクエスト「裁き人守り人」を引き受けた!

 今回の護衛対象は、とある町の豪商とその娘と使用人たちだった。父親の方は愛らしい容姿のミミが頼り無さそうに見えたのか少し不満そうだったが、娘の方は素直でおっとりした質らしくミミを一目見て気に入ったので、豪商はぶつぶつ言いながらも正式に雇うことに決めたらしかった。
 セントシュタインから目的地に一番近い町にキメラのつばさを使い、そこから先は徒歩移動となった。豪商と娘は贅沢な毛皮にくるまって馬車に座り、使用人たちは徒歩でその後についていき、ミミは馬の前に立って先頭を歩いた。予定では、日が落ちる前に目的地の鉱山に到着するとのことだった。
 日中でも薄暗い切通にさしかかった時に、ミミはふと嫌な気配を感じて歩みを止めた。馬も不安そうにいなないた。
「どうした?さっさと進まんか」
 豪商が馬車から身をのり出して怒鳴るのを、ミミは落ち着いて振り返り、静かに告げた。
「この先に、嫌なものが待ち構えている気配がします。無理に進まない方がいいと思います」
「バカなことを言うな、道はここと後は鉱山の反対側しか無いのだぞ、回り道なんぞしていられるか!魔物が居るなら蹴散らせ、それがおまえの仕事だろうが」
「とにかく危険です、様子を見てきますからここで待っていてください」
 ミミはそう言って走り出したが、豪商はよほど気が急くのか、彼女の忠告を無視して馬を走らせ、馬車はぴったり後をついてきた。「あーもう、超めんどくさいオヤジなんですケド!」と、ミミについてきていたサンディがぼやいたが、ミミは緊迫した気配にそれどころではなかった。
 間もなく、道の真ん中に、何者かが立っているのが見えてきた。ぼろぼろの長いローブ、構えた二本の棍、そして顔をすっかり覆い隠した仮面。棍と、そしてその仮面に二本の角が付いていなければ、邪神を信仰する人間が魔物化したモンスター「きとうし」だと思ったところだ。
 人間なのか魔物なのか判別しようとミミがとりあえず剣を構えると、それはいきなりラリホーを唱えてきた!ミミには効かなかったが、背後に居た豪商や使用人たちは、瞬く間に眠ってしまった。
「あなたは・・・」ミミは濃い紫の瞳を、相手の仮面に穿たれた昏い穴にひたと据えて呟いた。「何をしようとしているの?」
「知れたこと」それは、おぞましくもどこか虚ろな声で答えた。「神の御意志を、遂行するのだ。この者たちの、穢れた血を引く肉体はこの棍で叩き潰し、哀れな魂は悪魔の餌にくれてやるのだ」
「神様は、そんなことを望んでいない。そんなことを喜ぶのは、きっと邪神よ・・・」
「邪神だと?」嘲笑うような声が、仮面から漏れた。「我が崇める神は、決して邪神ではない。むしろ人間の罪を代わりに負うてくれる慈悲深き神よ。私は、その慈悲深き神の聖なる仕事を手助けしているだけだ。罪人どもを世界から取り除き、この世界を善くする手助けをな」
「・・・それは」
 ミミは目を見開いた。いったいどういうことなのか。だが、それを考える間もなく、相手はイオラの呪文を唱えてきた!ミミはとっさに「におうだち」をし、豪商たちに危害が及ばないよう、ダメージを一身に引き受けた!イオラだとはいえ、爆風を後ろに一切行かないよう食い止めたので、かなりの衝撃でたちまち体力を奪われる。回復呪文を使う間もなく、相手は連続して呪文を唱えてこようとしている。あと何回持ちこたえられるのか。ミミは逸る気持ちを抑えながら素早く対抗策を練り始めた。
 相手が今度はイオラではなくマホトーンを使ってきたので、呪文封じを免れたミミは、すかさずキアリクを唱えて馬や人々の目を覚ました。
「離れて!逃げてください!」
 ミミの切迫した声に、使用人たちは主人のわめき声に構わず馬の手綱を引き、急いで切通を引き返して距離を取った。これで安心して戦える。ミミは改めて剣を構えた。

 ちょうどその頃。イザヤールは、護衛の礼の一部にもらった岩塩の袋を手に、鉱山を後にしていた。元々、彼の依頼人たちは、この地方に来る予定ではなかった。だが、競争相手の大商人がここの鉱山に買い付けに来るという情報を仕入れて、急遽別ルートからそこに向かい、ライバルよりひと足先に買い付けを済ませてホクホク顔でキメラのつばさで町へ帰っていったというわけだった。
 イザヤールもそのとき依頼人たちと一緒に帰ってもよかったのだが、鉱山に至る別ルートが何となく気になって、少し調べてから帰ることにしたので、鉱山で報酬を受け取り解散し、今こうして一人で歩いていた。
 しばらくして、切通らしい両側が切り立った崖に挟まれている細道にさしかかった。すると、その道を塞ぐように、奇妙な者の後ろ姿が見えた。神官のようにも見えなくもないが、ぼろぼろのローブに雄牛のような角を頭から生やして、二本の棍を構えている。だがイザヤールは、その奇妙な者と対峙している少女の方に気付いて驚いた。
「ミミ?!ミミなのか!?」
「イザヤール様?!どうしてここに?!」
「説明は、とりあえずお預けにした方が良さそうだな!」
 イザヤールも剣を抜き、ミミと挟み撃ちする形でじりじりとその奇妙な者に近付くと、角は顔にかぶった仮面から出ているものだとわかった。その角と棍を除けば、きとうしという魔物によく似ている。思いがけず背後からも邪魔者が現れたとばかりに、それは忌々しげに舌打ちした。
「何故邪魔をする!」
 叫んで二本の棍をそれぞれ動かし、ミミとイザヤール両方に打ちかかってきた。二人は剣で受け止めたが、相手はきとうしなどとは比べものにならない恐ろしく強い力で押してきて、武器同士がぶつかってギリギリと音を立てた。その力を受け流して払い、ミミとイザヤールはそれぞれ飛び退いて間合いを取った。
「おまえたちはわからぬのか?」仮面の奥から呻くような声を絞り出し、「それ」は言った。「この世界を破壊と殺戮に追い込む元凶は、魔物でも破壊神でもない、人間ひとりひとりの魂に潜む欲望と愚かさだと!魔物や破壊神がそれを生み出すのではない、元々あるそれに、つけこんでいるだけなのだ!何故それがわからない!私はその芽を摘み、泣いた弱者に代わって正統な復讐をしているだけだ。それを邪魔する者も、容赦せぬ!」
 構えて「それ」が唱えてきた呪文は、イオラよりもっと強力な呪文イオナズンだった。狭い切通はたちまち爆風が両側に抜け、衝撃で崩れた崖が、砕けて岩となって前後のミミとイザヤールに降り注ぐ。ミミは爆風で崖に叩きつけられ、イザヤールはいくつもの岩の下に埋まってしまった。
 ミミは小さいが悲痛な叫びを上げて、よろめきながらイザヤールの埋まった岩の方へ歩き出そうとした。すると、岩はすぐに撥ね上げられて、イザヤールがその下から出てきたので、彼女は安堵の溜息をついて傷付いた体をまっすぐ起こしてしっかりと地面を踏みしめた。イザヤールもいくらか傷を負っていたが、ミミの方に力強い視線を向け、頷いた。
 そう、ある意味この魔物の言う通りなのかもしれない。ミミもイザヤールも気付いていた。魔王や破壊神や暗黒神を倒し、魔物を全て滅ぼせば、世界は平和になりました、めでたしめでたし、では済まないということを。悪事や悲劇の原因を全て魔物たちに押し付けて、それで人間同士の結束を図っているのだとしたら、そういう意味では破壊神とて救世主になりうるのだということも。
 でも。ミミは思った。この魔物か人間かわからないけれど、とにかくこのひとがわかっていないことがある。悪意や邪悪な意思ではなくても、心からの善意による行き違いでも、悲劇は起こり、それが怒りや悲しみを生み、憎しみや報復に繋がっていくということ。だから、人間に潜む悪意のかけらだけを潰していったとしても救済にはいつまで経ってもたどり着かない。それが許せなければやがて、善悪関係無く全てを滅ぼす方向へと向かうのだろう。・・・かつての創造神グランゼニスのように・・・。それは・・・それはあまりに虚しすぎる。
 自分たちは罪を糾弾し裁く方ではなく、守る方として生きていくと決めた。だから。たとえこの魔物の理屈が正しいとしても。自分たちの目の前でむざむざ人を殺させたりしない。
 ミミとイザヤールは改めて剣を構え、二人で一気に仮面に向けて斬りかかった。十字に刃を受けた謎の魔物の顔の仮面がぱかりと割れて落ちて、その下の顔が露になる。仮面の下の顔は、長い年月を経た骸骨だった。顔がさらされた途端に、ローブも、棍も、体も一気に崩れ落ちていく。
「・・・神よ・・・あなたも、天使も居ない今、こうして・・・世界を、守るしか・・・なかった、のに・・・」
 その言葉を残した声も消えて、後には何も残らなかった。それではこの魔物は、天使という存在が人間たちの記憶から消えた星ふぶきの夜を機に現れた、ということなのだろうか。ミミは魔物が崩れ落ちた地面を見つめ、静かに呟いた。
「いいえ、女神様も、星たちも、見守っている。・・・それだけじゃない、人間たちも、自分たちで世界を守っていけると、私は信じているの・・・私、楽天的だから」
「私も、楽天的な考えの方に賭けよう」イザヤールもかすかに笑って呟いた。
 そこへ、馬車が引き返してくる音がした。父親の豪商を押し退けるようにして、娘が手綱を握っている。
「ミミさーん!無事でよかったー!」
 娘が屈託の無い笑顔で手を振る。
「護衛なぞに構うなとわしは言ったんじゃが、娘がどうしても引き返すと言って聞かんでな。仕方なく戻ってきてやったわい」
 ぶすりとした表情で豪商は呟く。言葉とは裏腹に、どういうわけかミミの無事にいくらか安堵しているらしい。
 そんな親子の様子に、ミミは思った。やっぱり人間って、いいところばかりでもないかもしれないけれど、悪くもない、よね?口に出したつもりは無い筈なのに、イザヤールは小さく笑って、ああ、と頷いた。〈了〉
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