今週はギリギリ滑り込み更新の捏造クエストシリーズこと追加クエストもどき。朝ごはんを作るだけの話と言えばそうなんですが、この朝ごはんの材料、冒険者らしくひと味違います。アンドレアルの卵云々設定は妄想の産物。モンスター図鑑によるとアンドレアルはばかでかい生き物らしいので、その卵で大きなオムレツ作ったら楽しそうだとこんな話になりました。
平和が訪れたこの世界には、今日もちゃんと朝がやってくる。アルマの塔に程近い森の一角の広場にも、等しく爽やかな朝がやってきた。広場には聖なる力で結界が作られていて魔物が入ってくることはない。
結界内には、夕べからずっと燃えていた焚き火が、新たに薪を加えて、一段と火勢が上がった。その焚き火の傍に座っていた濃い紫の瞳が印象的なレンジャーが、淡い薔薇色の唇をちょっとすぼめて、新しい薪に着いたばかりの火の粉を吹いた。それから、程よく逞しい体躯の精悍なレンジャーを振り返って、にっこりと笑った。
「おはようございます、イザヤール様。もう少し休んでいてよかったのに」
「おはよう、ミミ。おかげでよく眠れたから、つい起きてしまった。何か手伝おう」
レンジャー二人はもちろんミミとイザヤールで、二人はサバイバルの特訓の一環で、アルマの塔の近くのこの森に、野営に来ていたのだった。夜は交代で見張りをし、ミミの番の時に朝になったので、朝食の仕度を始めたという訳だ。
「ありがとうございます。では、昨日採ったキノコを、薄くスライスして頂けますか」
「了解」
キノコが鮮やかなナイフさばきでたちまち見事にスライスされる間に、ミミは小型の鍋を火にかけた。フライパンにも煮込みにも、やり方によっては蒸し器にも使える優れものだ。森で拾ったナッツを絞った油を垂らし、くるくると回して馴染ませる。彼女が微笑み顔を上げて頷くと、すかさずイザヤールはスライスしたキノコを鍋に放り込み、それからすぐに卵を取り出し、器に入れてフォークで混ぜ始めた。
「キノコのオムレツ、そうだな」
「大正解です☆さすがイザヤール様♪」
百年以上一緒に過ごしているのは伊達ではない。こんな日常行動の互いの段取りや望みは、言葉がいらないくらい熟知している。だがだからこそ、互いへの思いやりや愛情は、言わずともわかるなどと言わずに、なるべく素直に言葉にしようと、共に考えている。愛情を互いに言葉に出せたのは、百年のうちのほんの最近なのだから。
綺麗に焼けたオムレツが二つ出来上がって、今日のはイザヤール様の作るのに近くうまく焼けたと、ミミが思わず小さくガッツポーズをすると、その可愛い拳にイザヤールが自分の大きな拳の甲を愛情込めてコツンと当てて、二人は顔を見合わせて微笑んだ。こんな生活ができることを幸せだと、心から思う。
朝食を済ませた二人は、野営をしている広場から出て、水汲みや薪拾い、食料探しを始めた。焚き火は、いつもはここに居る老人の兄弟二人がしているように、火事にならないよう細心の注意を払って燃えたままにしておいた。旅人に、ここが結界のある場所と教える為という。老人の希望の星、サントハイムの名物爺のブライに憧れているという老兄弟、なかなかどうして彼らもまた、まだまだしっかりしている。
それからミミとイザヤールは、アルマトラとその友人のスライムに会いにアルマの塔に入った。ここの魔物は強力なものばかりだがミミたちの敵ではなく、慌てふためいて逃げたり、柱の陰からこっそり二人にみとれていたりしている。だいまじんも、天の箱舟に乗れる元天使たちを見て悔しそうに歯噛みしているが、今日は襲いかかることはなかった。
だが、一体のギガンテスが、突進せんばかりの勢いでどすどすと走ってきた。イザヤールはとっさにミミの手をつかみ、彼女の体を引き寄せて一緒に素早く身をかわした。それから二人は、武器を抜いて身構えた。
「フンガー!ちがう、ちがう」
ギガンテスは慌てて首をぶんぶん振って、敵意のないことを示した。油断なく見つめながらも二人が武器を下ろすと、ギガンテスはたどたどしく言った。
「オレ、おまえたちのあさごはん、みてた。うまそう、たべたい」
このギガンテス、どうやら塔の上から、二人の朝食光景を見ていたらしい。
「けど、おまえたちのあさごはん、オレにはすくなすぎ。たくさん、腹いっぱい、うまいあさごはん、たべたい」
ギガンテスをお腹いっぱいにするには、いったいいくつの卵が要るんだろう・・・。ミミが考えている間に、ギガンテスは続けて言った。
「オレ、いいれぴし(レシピのことらしい)聞いた。アンドレアル、卵、でかい。それならオレ、腹いっぱい。でかいキノコ、この辺の森の中、ある」
「へえ」ミミは感心した。「アンドレアルの卵って、大きいんだ?」
「それにしても、その巨大キノコは、毒性は大丈夫なのか? 」
イザヤールは眉をひそめて口を挟んだ。
「きありーすればだいじょうぶとオレ聞いた」
「それ、ホントに大丈夫なの?!」
甚だ不安なものの、とにかく材料は集めることにした。ミミはクエスト「作って!特大朝定食」を引き受けた!
ミミとイザヤールは、先にアンドレアルの卵を探しに行くことにした。キノコは、採ってしまうと一気に鮮度が落ちそうだったからだ。
アンドレアルは、レベルの高い火山系宝の地図の洞窟に居る。手持ちの地図を調べ、二人は条件の合う洞窟に向かう為、天の箱舟に乗った。
「やだお二人さん、イチャイチャキャンプデートしてたと思ってたら、クエスト引き受けちゃったワケ?」
箱舟三両目で、秋色ラメ入りマニキュアを吟味していたサンディが、呆れたようなからかうような口調で言った。
「で、デートじゃないもの・・・。特訓だもん・・・」
ミミは頬を染めて弱々しく反論した。だが内心ちょっぴり罪悪感を感じた。もし修行や訓練が苦しいものでなければならないのだとしたら、楽しいこと嬉しいことばかりの今回の特訓は、特訓になっていないのかもしれない。
「とにかくサンディ、今日も冒険の記録を頼むぞ」
僅かに気まずそうに咳払いするイザヤールに向かって、サンディはくすくす笑ってから頷いた。
やはり火山系ダンジョンは暑い。暑いというより熱い。ステルスを使って余計な戦闘は回避できているが、最下層近くまで潜るのは容易なことではない。
「あづい!モーダメ、水のはごろも貸してー」
「サンディ、その口調、モーダメ王みたいね」
「よゆーなのねミミ!」
そんな調子で進んで行ったが、アンドレアル出現フロアに来たら、ただ進むばかりではなくアンドレアルの巣をチェックしなければならない。一説によると、アンドレアルは孵化しない無精卵も捨てないで置いておくと言われている。今回はそれを頂くという訳だ。
ようやくアンドレアルの居るフロアに到着すると、姿を消したまま何匹か尾行してみた。しかし一向に巣らしきところに向かう気配はない。
「そもそも巣なんてあるのかな・・・?」
今までアンドレアルの巣を意識したことなどないので、どこが巣なのかもはっきりしない。アンドレアルと卵があって初めて認識できる程度のものかもしれない。だが、辛抱強く尾行しているうちに、どうやらそれらしき場所にやってきた。孵る予定の卵はアンドレアルたちが厳重に取り囲んでいる。巨大な竜がずらりと並ぶ様は壮観だが、この数のアンドレアルと戦ったら、命がいくつあっても足りないだろう。
孵化しない卵は、端の方にきちんと積み重ねてあった。とても大きな卵で、なるほどこれならギガンテスの胃袋も満たせそうだ。ミミたちは息を殺して忍び寄った。いくらこちらの姿が見えないとはいえ、こんな大きな卵が動いたら、見つからない筈がない。担ぎ上げたら、全速力で走って逃げきるしかない。
ミミとイザヤールは階段までの距離を目で測り、最短ルートを計算した。そして両側からそっと卵を持ち上げて、ゆっくりと動かした。そして互いに頷くと、一気に走り始めた!アンドレアルたちは、叫び声を上げて追いかけてきた!走るもの、飛ぶもの、やたらにやけつく息を吐くもの、様々だ。
巨大な卵を壊さないようにかつアンドレアルに追い付かれないよう走るのは、たくさんのアンドレアルと戦うのと同じくらい難儀だったが、何とか階段までたどり着き、転がり落ちるように降りて逃げきった。
「ミミ、サンディ、怪我はないか?」
「はい。イザヤール様は?」
「大丈夫だ。お互い無事でよかった」
「ちょっとー、アンタたち、卵の心配も少しはしなさいヨー!」
幸い卵も、アンドレアルのものだけあって殻も固くて丈夫だったので、ヒビ一つなく無事だった。そこで、箱舟で移動の間だけ少しだけ休んで、続いて巨大キノコ探しに向かった。
ミミたちはアルマの塔の近くに戻り、森に入ってギガンテスの言う巨大なキノコ探しを始めた。
「あれば昨日食料探ししている時に気付きそうだけど・・・」
呟きながら歩いていて程なく、ミミは驚きのあまり思わず固まって歩みを止めた。
「イザヤール様、これ」
ミミに袖を引っ張られてイザヤールも彼女が見つけた物を見、彼もまたさすがに驚いた。
「これは・・・」
それは、大きすぎるのと色が枯木にそっくりなので見過ごしていた、巨木のようなキノコだった!よくよく見ても、枯れ木が立っているようにしか見えない。胞子が着いているので、ようやく判別できたのだ。
二人は斧を構え、大木を切り倒すようにキノコを切り、それから装備を剣に変えて厚さを揃えて切って、調理できる場所にまで持ち帰った。同じように食べられる物になるかかなり不安だったが、メラミで平たい大きな岩を熱してフライパンの代わりとし、何とかキノコを炒めた。
卵は、殻の上部を切り落として殻の中で調味料と共に混ぜて、キノコの上に流し込んだ。ハンマーを振り回すコツを利用して、二人で力とタイミングを合わせてひっくり返し、何とか巨大なオムレツは完成した!
他に大量のどくけしそうのサラダと、小麦粉ととうもろこし粉の粉袋まるまる使って作ったパンケーキも添えて、特大朝定食も出来上がった。
ギガンテスは喜んでさっそく食べ始め、更に喜んだ。
「うまい!あさごはん最高!」
「もう夕御飯なんだけど・・・」
しかもギガンテス、皿代わりの板まで一緒に噛み砕いていたので、本当に味がわかっているのかも怪しかったが、とにかく大いに満足したらしかった。ギガンテスは、「ちからのたね」をくれた!
上機嫌で帰っていくギガンテスを見送り、あくびをしながら天の箱舟に帰っていくサンディを見送り、ミミとイザヤールは顔を見合わせた。
「さて・・・。我々は、そろそろ夕食の仕度をするか」
「はい♪」
楽しいサバイバル訓練は、まだまだ続きそうだ。〈了〉
平和が訪れたこの世界には、今日もちゃんと朝がやってくる。アルマの塔に程近い森の一角の広場にも、等しく爽やかな朝がやってきた。広場には聖なる力で結界が作られていて魔物が入ってくることはない。
結界内には、夕べからずっと燃えていた焚き火が、新たに薪を加えて、一段と火勢が上がった。その焚き火の傍に座っていた濃い紫の瞳が印象的なレンジャーが、淡い薔薇色の唇をちょっとすぼめて、新しい薪に着いたばかりの火の粉を吹いた。それから、程よく逞しい体躯の精悍なレンジャーを振り返って、にっこりと笑った。
「おはようございます、イザヤール様。もう少し休んでいてよかったのに」
「おはよう、ミミ。おかげでよく眠れたから、つい起きてしまった。何か手伝おう」
レンジャー二人はもちろんミミとイザヤールで、二人はサバイバルの特訓の一環で、アルマの塔の近くのこの森に、野営に来ていたのだった。夜は交代で見張りをし、ミミの番の時に朝になったので、朝食の仕度を始めたという訳だ。
「ありがとうございます。では、昨日採ったキノコを、薄くスライスして頂けますか」
「了解」
キノコが鮮やかなナイフさばきでたちまち見事にスライスされる間に、ミミは小型の鍋を火にかけた。フライパンにも煮込みにも、やり方によっては蒸し器にも使える優れものだ。森で拾ったナッツを絞った油を垂らし、くるくると回して馴染ませる。彼女が微笑み顔を上げて頷くと、すかさずイザヤールはスライスしたキノコを鍋に放り込み、それからすぐに卵を取り出し、器に入れてフォークで混ぜ始めた。
「キノコのオムレツ、そうだな」
「大正解です☆さすがイザヤール様♪」
百年以上一緒に過ごしているのは伊達ではない。こんな日常行動の互いの段取りや望みは、言葉がいらないくらい熟知している。だがだからこそ、互いへの思いやりや愛情は、言わずともわかるなどと言わずに、なるべく素直に言葉にしようと、共に考えている。愛情を互いに言葉に出せたのは、百年のうちのほんの最近なのだから。
綺麗に焼けたオムレツが二つ出来上がって、今日のはイザヤール様の作るのに近くうまく焼けたと、ミミが思わず小さくガッツポーズをすると、その可愛い拳にイザヤールが自分の大きな拳の甲を愛情込めてコツンと当てて、二人は顔を見合わせて微笑んだ。こんな生活ができることを幸せだと、心から思う。
朝食を済ませた二人は、野営をしている広場から出て、水汲みや薪拾い、食料探しを始めた。焚き火は、いつもはここに居る老人の兄弟二人がしているように、火事にならないよう細心の注意を払って燃えたままにしておいた。旅人に、ここが結界のある場所と教える為という。老人の希望の星、サントハイムの名物爺のブライに憧れているという老兄弟、なかなかどうして彼らもまた、まだまだしっかりしている。
それからミミとイザヤールは、アルマトラとその友人のスライムに会いにアルマの塔に入った。ここの魔物は強力なものばかりだがミミたちの敵ではなく、慌てふためいて逃げたり、柱の陰からこっそり二人にみとれていたりしている。だいまじんも、天の箱舟に乗れる元天使たちを見て悔しそうに歯噛みしているが、今日は襲いかかることはなかった。
だが、一体のギガンテスが、突進せんばかりの勢いでどすどすと走ってきた。イザヤールはとっさにミミの手をつかみ、彼女の体を引き寄せて一緒に素早く身をかわした。それから二人は、武器を抜いて身構えた。
「フンガー!ちがう、ちがう」
ギガンテスは慌てて首をぶんぶん振って、敵意のないことを示した。油断なく見つめながらも二人が武器を下ろすと、ギガンテスはたどたどしく言った。
「オレ、おまえたちのあさごはん、みてた。うまそう、たべたい」
このギガンテス、どうやら塔の上から、二人の朝食光景を見ていたらしい。
「けど、おまえたちのあさごはん、オレにはすくなすぎ。たくさん、腹いっぱい、うまいあさごはん、たべたい」
ギガンテスをお腹いっぱいにするには、いったいいくつの卵が要るんだろう・・・。ミミが考えている間に、ギガンテスは続けて言った。
「オレ、いいれぴし(レシピのことらしい)聞いた。アンドレアル、卵、でかい。それならオレ、腹いっぱい。でかいキノコ、この辺の森の中、ある」
「へえ」ミミは感心した。「アンドレアルの卵って、大きいんだ?」
「それにしても、その巨大キノコは、毒性は大丈夫なのか? 」
イザヤールは眉をひそめて口を挟んだ。
「きありーすればだいじょうぶとオレ聞いた」
「それ、ホントに大丈夫なの?!」
甚だ不安なものの、とにかく材料は集めることにした。ミミはクエスト「作って!特大朝定食」を引き受けた!
ミミとイザヤールは、先にアンドレアルの卵を探しに行くことにした。キノコは、採ってしまうと一気に鮮度が落ちそうだったからだ。
アンドレアルは、レベルの高い火山系宝の地図の洞窟に居る。手持ちの地図を調べ、二人は条件の合う洞窟に向かう為、天の箱舟に乗った。
「やだお二人さん、イチャイチャキャンプデートしてたと思ってたら、クエスト引き受けちゃったワケ?」
箱舟三両目で、秋色ラメ入りマニキュアを吟味していたサンディが、呆れたようなからかうような口調で言った。
「で、デートじゃないもの・・・。特訓だもん・・・」
ミミは頬を染めて弱々しく反論した。だが内心ちょっぴり罪悪感を感じた。もし修行や訓練が苦しいものでなければならないのだとしたら、楽しいこと嬉しいことばかりの今回の特訓は、特訓になっていないのかもしれない。
「とにかくサンディ、今日も冒険の記録を頼むぞ」
僅かに気まずそうに咳払いするイザヤールに向かって、サンディはくすくす笑ってから頷いた。
やはり火山系ダンジョンは暑い。暑いというより熱い。ステルスを使って余計な戦闘は回避できているが、最下層近くまで潜るのは容易なことではない。
「あづい!モーダメ、水のはごろも貸してー」
「サンディ、その口調、モーダメ王みたいね」
「よゆーなのねミミ!」
そんな調子で進んで行ったが、アンドレアル出現フロアに来たら、ただ進むばかりではなくアンドレアルの巣をチェックしなければならない。一説によると、アンドレアルは孵化しない無精卵も捨てないで置いておくと言われている。今回はそれを頂くという訳だ。
ようやくアンドレアルの居るフロアに到着すると、姿を消したまま何匹か尾行してみた。しかし一向に巣らしきところに向かう気配はない。
「そもそも巣なんてあるのかな・・・?」
今までアンドレアルの巣を意識したことなどないので、どこが巣なのかもはっきりしない。アンドレアルと卵があって初めて認識できる程度のものかもしれない。だが、辛抱強く尾行しているうちに、どうやらそれらしき場所にやってきた。孵る予定の卵はアンドレアルたちが厳重に取り囲んでいる。巨大な竜がずらりと並ぶ様は壮観だが、この数のアンドレアルと戦ったら、命がいくつあっても足りないだろう。
孵化しない卵は、端の方にきちんと積み重ねてあった。とても大きな卵で、なるほどこれならギガンテスの胃袋も満たせそうだ。ミミたちは息を殺して忍び寄った。いくらこちらの姿が見えないとはいえ、こんな大きな卵が動いたら、見つからない筈がない。担ぎ上げたら、全速力で走って逃げきるしかない。
ミミとイザヤールは階段までの距離を目で測り、最短ルートを計算した。そして両側からそっと卵を持ち上げて、ゆっくりと動かした。そして互いに頷くと、一気に走り始めた!アンドレアルたちは、叫び声を上げて追いかけてきた!走るもの、飛ぶもの、やたらにやけつく息を吐くもの、様々だ。
巨大な卵を壊さないようにかつアンドレアルに追い付かれないよう走るのは、たくさんのアンドレアルと戦うのと同じくらい難儀だったが、何とか階段までたどり着き、転がり落ちるように降りて逃げきった。
「ミミ、サンディ、怪我はないか?」
「はい。イザヤール様は?」
「大丈夫だ。お互い無事でよかった」
「ちょっとー、アンタたち、卵の心配も少しはしなさいヨー!」
幸い卵も、アンドレアルのものだけあって殻も固くて丈夫だったので、ヒビ一つなく無事だった。そこで、箱舟で移動の間だけ少しだけ休んで、続いて巨大キノコ探しに向かった。
ミミたちはアルマの塔の近くに戻り、森に入ってギガンテスの言う巨大なキノコ探しを始めた。
「あれば昨日食料探ししている時に気付きそうだけど・・・」
呟きながら歩いていて程なく、ミミは驚きのあまり思わず固まって歩みを止めた。
「イザヤール様、これ」
ミミに袖を引っ張られてイザヤールも彼女が見つけた物を見、彼もまたさすがに驚いた。
「これは・・・」
それは、大きすぎるのと色が枯木にそっくりなので見過ごしていた、巨木のようなキノコだった!よくよく見ても、枯れ木が立っているようにしか見えない。胞子が着いているので、ようやく判別できたのだ。
二人は斧を構え、大木を切り倒すようにキノコを切り、それから装備を剣に変えて厚さを揃えて切って、調理できる場所にまで持ち帰った。同じように食べられる物になるかかなり不安だったが、メラミで平たい大きな岩を熱してフライパンの代わりとし、何とかキノコを炒めた。
卵は、殻の上部を切り落として殻の中で調味料と共に混ぜて、キノコの上に流し込んだ。ハンマーを振り回すコツを利用して、二人で力とタイミングを合わせてひっくり返し、何とか巨大なオムレツは完成した!
他に大量のどくけしそうのサラダと、小麦粉ととうもろこし粉の粉袋まるまる使って作ったパンケーキも添えて、特大朝定食も出来上がった。
ギガンテスは喜んでさっそく食べ始め、更に喜んだ。
「うまい!あさごはん最高!」
「もう夕御飯なんだけど・・・」
しかもギガンテス、皿代わりの板まで一緒に噛み砕いていたので、本当に味がわかっているのかも怪しかったが、とにかく大いに満足したらしかった。ギガンテスは、「ちからのたね」をくれた!
上機嫌で帰っていくギガンテスを見送り、あくびをしながら天の箱舟に帰っていくサンディを見送り、ミミとイザヤールは顔を見合わせた。
「さて・・・。我々は、そろそろ夕食の仕度をするか」
「はい♪」
楽しいサバイバル訓練は、まだまだ続きそうだ。〈了〉
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