ミミは今日もルイーダの酒場のカウンター席の隅にちょこんと腰かけて、軽めのカクテルを味わっていた。
綺麗な色の酒とグラスに目を輝かせてうっとり見つめるミミを、ルイーダは楽しそうに見つめ、おもむろに頭をなでた。
「ルイーダさん?」
ミミが首を傾げると、ルイーダは笑った。
「あらごめんねミミ。あなたって、可愛いから、な~んかなでなでしたくなっちゃうのよね~」
「それ・・・子供っぽいってこと・・・?」
ミミがやや悲しげに尋ねると、ルイーダは首を緩く振って否定した。
「子供っぽいとも違うのよ。うまく言えないけど、なんか保護意識をかきたてるっていうか・・・可愛い小動物を思わずなでたくなる感じに近いっていうか」
「・・・?」
釈然としない顔のミミを、可愛い、とまたなでるルイーダ。そんな様子を、たった今帰ってきたイザヤールが、少し離れたところで見ていた。微笑ましいな、と唇を緩めたが、その笑顔にはほんのかすかに、複雑なものが混じっていた。
その後ミミは満面の笑みでイザヤールを出迎え、二人で軽く飲んでからいつもの部屋に戻ると、サンディがソファーをゆったり占領していた。
「あ、二人ともおかえり~。あ、そーだミミ、テンチョーがついでにコレを渡してくれって」
「あ、『カデスの星』のみんなへのお手紙!きっとみんな喜ぶなあ♪」
メンバーの喜ぶ顔を想像して、嬉しそうに濃い紫の瞳を輝かせるミミに、サンディは手を伸ばした。
「チョー喜んじゃって、カーワイイ☆よしよし」
そう言ってミミの頭をなでなでするサンディ。
「サンディもなの?」
「も、ってナニよ?」
「ルイーダさんも私の頭をなでなでしたから・・・なんで?」
「なんでって、アンタってな~んかなでなでしたくなるのヨ。それだけヨ」
「だからなんで~?」
「そーね~、やっぱこのツヤツヤ髪の毛、なでててキモチイイのもあるのかな~。ね、イザヤールさん☆」
サンディがミミの頭をなでるのを、また先ほどのような微笑みプラス僅か複雑表情で見守っていたイザヤールは、急に話を振られて、いくぶん慌てた。
「あ・・・それはある、かもな・・・。とにかく、可愛いからなでたくなる、というのは全くその通りだ」
「たぶんラヴィエルさんもそーだよネ☆聞いてこよー☆」
サンディが行ってしまうと、イザヤールはさっそくミミに近寄り、彼女の頭をそっとなでた。
「ようやく私の番だな」と冗談めかして呟いて。
ただし、前の二人のなで方と違い、指は髪の間にくぐらせて滑るように動き、そして優しく耳や頬、輪郭に沿って顎までそっと辿る。その動きと、指先の熱が、彼女の頬を染め、瞳を潤ませる。
「さすがに女の子たちに妬く訳には行かないが・・・ああしてお預け状態にされると、少し妬きたくなるな」
かすかに笑いながら囁き、イザヤールは指を滑らせ続けた。
「イザヤール様、私・・・友達や、街のお年寄りとかでも、頭をなでてもらうの、ダメですか・・・?」
心配そうにミミは尋ねた。それを聞いてイザヤールは少し恥ずかしそうにまた笑った。
「さすがにそんなことは言わない。心配するな。・・・おまえがみんなに好かれるのは嬉しいし、私を悲しませるようなことは決してしないと、信じているからな」
イザヤール様になでてもらうのがもちろん一番好き、とミミは内心呟く。大好きな手で、一番大切な人になでてもらうのが。
「イザヤール様・・・信じてくれてありがとう・・・。こういうことの方は、絶対イザヤール様としかしないから、これからも心配しないでくださいね」
そう囁き彼女は、ますます頬を染めて、遠慮がちに恋人の唇に自分の唇で軽く触れた。目を見開いてからそのまま、触れたやわらかな唇を優しく食み始め、捕らえにかかるイザヤール。
自分だけが。こうすることを許し許されている。その幸福感に互いに酔いしれた。
廊下側の部屋の扉が開く音で、我に返った。サンディがラヴィエルを連れて来たのだろう。からかわれる前に離れなくては、と、名残惜しげに身を僅かに離す二人。
内側の扉が開く前に、また一瞬だけ、顔が重なる。
それから、イザヤールはまたミミの髪をなでた。そこへ入ってくるサンディとラヴィエル。
「イザヤール~、ミミの頭をなでに来たぞ。貸せ」
「なんだそれは」
苦笑するイザヤールと、私はひょっとしてアイテム扱い・・・?と首を傾げるミミ。
「イザヤールさんの頭もツルツルしててキモチよさそーだけど、なでたら叱られそーだよね~」サンディが呟く。
「当然だ」
「イザヤールさんじゃないワヨ。ミミによ」
「うん、ダメだからねサンディ。・・・私だって、めったになでなでできないんだから・・・」
「なでたかったのか?!」
「はい・・・」
サンディとラヴィエルは吹き出し、それを睨み付けたイザヤールだったが、やがて、自らも笑い出した。そんな一同を見つめ、なんで笑うの?と一人少しふくれるミミだった。〈了〉
綺麗な色の酒とグラスに目を輝かせてうっとり見つめるミミを、ルイーダは楽しそうに見つめ、おもむろに頭をなでた。
「ルイーダさん?」
ミミが首を傾げると、ルイーダは笑った。
「あらごめんねミミ。あなたって、可愛いから、な~んかなでなでしたくなっちゃうのよね~」
「それ・・・子供っぽいってこと・・・?」
ミミがやや悲しげに尋ねると、ルイーダは首を緩く振って否定した。
「子供っぽいとも違うのよ。うまく言えないけど、なんか保護意識をかきたてるっていうか・・・可愛い小動物を思わずなでたくなる感じに近いっていうか」
「・・・?」
釈然としない顔のミミを、可愛い、とまたなでるルイーダ。そんな様子を、たった今帰ってきたイザヤールが、少し離れたところで見ていた。微笑ましいな、と唇を緩めたが、その笑顔にはほんのかすかに、複雑なものが混じっていた。
その後ミミは満面の笑みでイザヤールを出迎え、二人で軽く飲んでからいつもの部屋に戻ると、サンディがソファーをゆったり占領していた。
「あ、二人ともおかえり~。あ、そーだミミ、テンチョーがついでにコレを渡してくれって」
「あ、『カデスの星』のみんなへのお手紙!きっとみんな喜ぶなあ♪」
メンバーの喜ぶ顔を想像して、嬉しそうに濃い紫の瞳を輝かせるミミに、サンディは手を伸ばした。
「チョー喜んじゃって、カーワイイ☆よしよし」
そう言ってミミの頭をなでなでするサンディ。
「サンディもなの?」
「も、ってナニよ?」
「ルイーダさんも私の頭をなでなでしたから・・・なんで?」
「なんでって、アンタってな~んかなでなでしたくなるのヨ。それだけヨ」
「だからなんで~?」
「そーね~、やっぱこのツヤツヤ髪の毛、なでててキモチイイのもあるのかな~。ね、イザヤールさん☆」
サンディがミミの頭をなでるのを、また先ほどのような微笑みプラス僅か複雑表情で見守っていたイザヤールは、急に話を振られて、いくぶん慌てた。
「あ・・・それはある、かもな・・・。とにかく、可愛いからなでたくなる、というのは全くその通りだ」
「たぶんラヴィエルさんもそーだよネ☆聞いてこよー☆」
サンディが行ってしまうと、イザヤールはさっそくミミに近寄り、彼女の頭をそっとなでた。
「ようやく私の番だな」と冗談めかして呟いて。
ただし、前の二人のなで方と違い、指は髪の間にくぐらせて滑るように動き、そして優しく耳や頬、輪郭に沿って顎までそっと辿る。その動きと、指先の熱が、彼女の頬を染め、瞳を潤ませる。
「さすがに女の子たちに妬く訳には行かないが・・・ああしてお預け状態にされると、少し妬きたくなるな」
かすかに笑いながら囁き、イザヤールは指を滑らせ続けた。
「イザヤール様、私・・・友達や、街のお年寄りとかでも、頭をなでてもらうの、ダメですか・・・?」
心配そうにミミは尋ねた。それを聞いてイザヤールは少し恥ずかしそうにまた笑った。
「さすがにそんなことは言わない。心配するな。・・・おまえがみんなに好かれるのは嬉しいし、私を悲しませるようなことは決してしないと、信じているからな」
イザヤール様になでてもらうのがもちろん一番好き、とミミは内心呟く。大好きな手で、一番大切な人になでてもらうのが。
「イザヤール様・・・信じてくれてありがとう・・・。こういうことの方は、絶対イザヤール様としかしないから、これからも心配しないでくださいね」
そう囁き彼女は、ますます頬を染めて、遠慮がちに恋人の唇に自分の唇で軽く触れた。目を見開いてからそのまま、触れたやわらかな唇を優しく食み始め、捕らえにかかるイザヤール。
自分だけが。こうすることを許し許されている。その幸福感に互いに酔いしれた。
廊下側の部屋の扉が開く音で、我に返った。サンディがラヴィエルを連れて来たのだろう。からかわれる前に離れなくては、と、名残惜しげに身を僅かに離す二人。
内側の扉が開く前に、また一瞬だけ、顔が重なる。
それから、イザヤールはまたミミの髪をなでた。そこへ入ってくるサンディとラヴィエル。
「イザヤール~、ミミの頭をなでに来たぞ。貸せ」
「なんだそれは」
苦笑するイザヤールと、私はひょっとしてアイテム扱い・・・?と首を傾げるミミ。
「イザヤールさんの頭もツルツルしててキモチよさそーだけど、なでたら叱られそーだよね~」サンディが呟く。
「当然だ」
「イザヤールさんじゃないワヨ。ミミによ」
「うん、ダメだからねサンディ。・・・私だって、めったになでなでできないんだから・・・」
「なでたかったのか?!」
「はい・・・」
サンディとラヴィエルは吹き出し、それを睨み付けたイザヤールだったが、やがて、自らも笑い出した。そんな一同を見つめ、なんで笑うの?と一人少しふくれるミミだった。〈了〉
今回はゆったりとしたほのぼの系で、前半は仲間に頭をなでられるだけの一見するとシンプルな愛情表現が描かれていましたが、見ているこちらは癒されました。
後半は………それを見て妬いてないといいつつも、自分の番になると本音が出てしまうイザ様の描写がかわいかったです。
今回のミミさんは積極的でしたね。自分からキスを求めた流れがあってか、ラストのミミさんのセリフが母性本能に満ちている気までして、かわいさ満点。見ていて楽しかったです。
お昼の隙間にこんにちは☆真夜中テンションはやはりあきませんなあの津久井ですw
癒されて頂いてよかったです(笑)うちの女主、やはりツッコミというよりはいじられ系なので、女の子仲間たちに「なでなで」される事態になるようですw
母性というのは意外!でしたので、なるほど~と逆に考えさせられました☆ようやく弟子意識脱却できてきたのでしょうか?なんて。
そしてほのぼのと言って頂いて本当によかった・・・危ないかと思っていたのでww
改めてありがとうございました!