セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

お年玉を分かち合い

2017年01月06日 01時08分44秒 | 本編前
久々の?天使界時代、どこか真夜中テンション?な両片想い話。昨年1月アップの同カテゴリ「お年玉」とほんの少し関連しています。昨日1月5日だったので苺ネタにしてみっか〜、という安直さと、内容自体もよくある話ですが、お年玉の分け方がちょっとだけ普通と違ってます(笑)

 天使界の長老オムイが、今年も全ての天使たちに「お年玉」を配った。お年玉が何なのか天使たち皆が実はよくは知らないのだが、とにかくオムイの配るお年玉とは、おいしいが特に魔力も何も無い普通のあめ玉だった。
 とはいえ、とてもたくさんの種類を用意して、それぞれにふさわしい(と彼が考えるらしい)ものをわざわざ配る手間暇は凄いと言えた。その情熱を文書作成に傾けてくれればと、側近の天使たちは嘆いていたが。この行事、どうやら長老が飽きるか忘れるかまで毎年続けられるらしい。
 今年、見習い天使ミミは、やわらかな紅色の可愛らしいキャンディをもらい、彼女の師匠のイザヤールは、彼の翼の色にそっくりな、美しい白色のキャンディをもらった。ミミはこの「お年玉」を素直に喜んでいたが、上級天使であり甘党とは言えないイザヤールは、さほどテンションは上がらず、長老の無邪気な思いつきに苦笑していた。そんなわけで彼は、自室に帰る道すがら、自分のもらったキャンディを弟子の手のひらに無造作に載せ、言った。
「おまえが、食べるといい」
「えっ・・・」ミミは一瞬、嬉しくて濃い紫の瞳を輝かせたが、間もなく小さくかぶりを振って、おずおずと呟いた。「でも、お年玉は一人一個食べなきゃいけないって、オムイ様が・・・。今年も無事に過ごせますようにって」
 どんなルールだとイザヤールは笑ったが、ミミは真剣な顔でイザヤールに白いキャンディを返した。彼はそれを受け取ろうとして、ふとなんとなくあることを思いついて、呟いた。
「ミミ、おまえの『お年玉』も、ちょっと貸してくれるか」
 ミミはなんだろうと首を傾げつつ、素直に自分のやわらかな紅のキャンディを師匠に渡した。かすかに苺の香りがするから、おそらく苺のキャンディなのだろう。イザヤールの持つ白い方の優しい甘い香りは、きっとミルク味だ。
 イザヤールはミミから少し離れて、二粒のキャンディを軽く宙に放り投げると、目にも止まらない早業で剣を抜いた。再び彼の手のひらに落ちてきたキャンディは、それぞれ綺麗に半分に切られて、四つの破片になって落ちてきた。そのうちの二つの破片、紅色と白いのを一つずつ、彼はミミの手のひらに載せた。
「これなら、一つ分になるだろう?」
 ミミの呆気にとられた顔を見て、イザヤールは我に返った。何故こんなことをしたのか、今さらながら自分でもよくわからなかった。勝手にお年玉を真っ二つにされて、ミミががっかりするだろうと内心焦ったが、そのミミは、みるみる愛らしい笑みを浮かべて、呟いた。
「三回、違う味が楽しめるんですね、嬉しい・・・」
 それに、と、声には出せないことを心の中で呟く。イザヤール様のキャンディをもらえて、とっても嬉しい・・・。
 しばらく手のひらの紅と白を眺めてから、ようやくミミは、やわらかな紅をまず口に運んだ。やはり苺味。いい香りがして、ほんのりと、甘酸っぱい。それを片側の頬に寄せて、今度は白を口に入れた。ふわりと広がる優しい甘味は、イザヤールに頭をなでられたときの優しい感触をどこか思わせて、彼女の胸を密かにきゅんとさせた。
 白いのは、やっぱりミルク味だった。やがて舌の上で一つになった紅と白のキャンディは、口中に苺ミルクの味を広げていく。二つの味が合わさり、別のおいしさになったことが嬉しかったが、一方でそのどこか官能的な甘味が、ミミの無邪気な表情に無意識の色香をかすかに加えた。
 そんなうっとりとしたミミの表情にイザヤールは一瞬息を呑み、僅かに切なそうな色を浮かべて、自分の手のひらのキャンディをいっぺんに二つ、口に放り込んだ。・・・確か、お年玉は魂の象徴だと、いつかオムイ様は言っていなかったか。聞き流していた筈の言葉が、脳裏に蘇る。口中で一体化した甘味のように、いつか、身も心も、こうして分かち合い、融け合うことができたら・・・。
 馬鹿なことを、と、イザヤールはすぐにかすかな自嘲を浮かべた。ミミの気持ちすら、確かめてもいないのに。否、せいぜい尊敬と親愛の気持ちであると、わかっているというのに・・・。彼は自嘲を保護者らしい微笑みに変え、尋ねた。
「・・・旨いか?」
 ミミは、思わず閉じていた目を開けて、目を瞑っていてしまったことに頬を赤らめ、こくりと頷く。それから、なんとなしに二人は、口の中のキャンディがすっかり無くなるまで部屋に戻らずに、庭園の片隅に並んで腰かけて、空を眺めていた。〈了〉
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