セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

復元!ガラスのくつ

2012年09月21日 23時57分07秒 | クエスト184以降
今週はギリギリ金曜日更新の捏造クエストシリーズこと追加クエストもどき。今回もおとぎ話サンドリヨン(シンデレラ)モチーフのクエストです。とはいえ女主がヒロイン役という訳ではなく・・・まあ以下はご覧頂き。「ガラスのくつ」は、DQ6に登場の装備品。綺麗ですが、どんなに硬質ガラスだとしても、戦闘には不向きと思った記憶がありますw「黄金のカカオ」は捏造アイテムですので、詳細が気になる方はバレンタインの頃の追加クエストもどき「プレミアムなカカオ」をご覧くださいませw

 お馴染みリッカの宿屋には、冒険者から普通の旅行者まで、様々な人が訪れる。よって、客の年齢層も様々だ。
 全ての客の要望に応え、かつ満足してもらうのは至難の業だが、それを可能にしているのが、さすがに宿王リッカの面目躍如、というところである。憂い顔のお客様も、滞在中にはやがて笑顔に、が彼女の密かなモットーだ。
 だが、今日は、そんなリッカでも笑顔にできない客が滞在していた。上品な老紳士で、一見何不自由していなさそうだが、来たときから沈んだ顔をしていた。不機嫌なのではない。何か悩み事があるらしく、溜息ばかりついているのである。食欲もないようで、せっかくの心尽くしの料理もほとんど手付かずだ。
 客の事情を詮索するつもりは毛頭ないが、できればお客様にはセントシュタインでの思い出が楽しいものであってほしい。そんな次第でリッカは、今日もほとんど手付かずの食事の盆を下げながら、優しく尋ねたのだった。
「お客様、何かお困りのことがございますか?ここは冒険者の宿屋でもありますから、僭越ながらもしかしたら何かお役に立てるかもしれません」
 すると、老紳士は少し驚いたように目を見開いてから、弱々しく微笑んだ。ここに来て初めて見せる微笑みだった。
「ありがとう、優しいお嬢さんや。ご心配をおかけしましたな。ここのサービスに不満があるわけではございませんぞ。むしろ、居心地が良いのと、そして帰るには気が重いことがありましてな。つい辛気くさい顔で逗留してしもうた」
「差し支えなければ、その理由をお話し頂けますか?」
「しかし・・・こればかりはどんな優秀な宿屋の主でもどうにかなるとは思えませんがな・・・」
 老紳士は渋っていたが、まあ見せるだけならと、大切そうにビロード貼りの箱を取り出した。ちょうど靴箱くらいのサイズだ。だが、蓋を開けて出てきた中身は、これでもかとばかりに粉々になったガラスの破片だった!
「お客様、これは・・・」
 と、さすがのリッカもびっくりして尋ねると、老紳士は訳を話し始めた。
「わしは、とある由緒ある家で若様の教育係をしております。先日、屋敷で舞踏会が開かれまして、招待状無しに飛び込みで訪れた美しい女性に、若様は一目惚れなさいましてな。しかし、その女性は、舞踏会が終わる前に名前も言わずに帰ってしまわれた。ただし、あまりに慌てた為か、靴を片方落としていかれたのです。それは、ガラスでできた、素晴らしく美しい靴でした」
 ここまで聞いて、リッカはものすごくイヤな予感がした。老紳士は話を続けた。
「恋煩いのあまり寝込んでしまった若様の代わりに、わしはその手がかりの靴を持って、世界中の主な町を巡りました。同じ靴の片割れを持つ美女を探してな。
しかし、うっかり迷い込んだ人里離れた場所で、なんとギガンテスに遭遇してしまいまして。そのギガンテスは一応おなごだったのか、自分にも靴が合うか試させろと、止める間もなく足を入れようとして・・・結果はご覧の通りという訳です・・・」
 ああやっぱり、という顔で、リッカは粉々になったガラスの破片を見つめた。ということは、これはガラスの靴の破片ということになる。
「破片は何とか全て集めましたが、ここまでバラバラになってしまうともう、なんともはや・・・唯一の手がかりまで失ってしもうて、若様になんと申し上げたらよいか・・・」
 リッカは困惑して「元ガラスの靴」の破片を見つめたが、やがて口を開いた。
「あの、解決の可能性は高くはないですけど、私、ものすごく根気強い人を二人知ってます。その二人なら、もしかしたら・・・」

 それからしばらくして。リッカは、ミミとイザヤールの部屋に居た。
「ごめんね、ミミ、イザヤールさん。勝手に預かってきちゃって。でも無理だったら、ちゃんと私からお断りするから。お客様も、あんまり期待してなかったし」
 するとイザヤールは、破片の一つをつまみ上げて呟いた。濃い紅茶のような色の澄んだ瞳が、心なしか生き生きと輝いている。
「これはどうやら、ヒールの一部のようだな」
 この難易度の高そうな修復作業で、すっかり元守護天使魂に火が点いてしまったようだ。粉々になったものの修復を(夫婦や恋人関係も含む)、三百年の間にどれだけやってきたことか。
「じゃあこっちは、爪先部分かな・・・?」
 ミミも、濃い紫の瞳を輝かせて、楽しそうに言った。パズルは普段あまりしないが、細かい作業は嫌いではない。
 そんな二人の様子を見て、あのお客様に希望が出てきたと、リッカはほっと安堵の息を吐いた。
「こんなにバラバラだけど・・・どう?組み立てできそう?」
「時間はかかるかもしれないが、とにかくやってみよう。・・・しかし、どうやってくっつけるかが問題だな」
 イザヤールが腕組みをして考え込むと、ミミが提案してきた。
「以前壊れたハンマーを直すときに、『ジェリーマン』が落とす『ねばねばゼリー』を使ったことがあるの。ガラスにも使えないかな?」
「なるほど、やってみる価値はあるな」
 こうしてミミたちはクエスト「復元!ガラスのくつ」を引き受けた!

 さっそく、ジェリーマンから「ねばねばゼリー」を入手しに、グビアナ地下水道に向かうことにした。ジェリーマンはそこにしか棲息しないからだ。だが、下水道に入るには、女性専用の水浴場から降りるしかない。
「私は・・・入れないな」
 イザヤールが困惑気味に呟いた。
「ミミが一緒だから、特別に大丈夫だと思うけど?」
 リッカが言うと、彼は苦笑した。
「しかし、いくら許可が出ても、ごつい男が入ってきては、女性たちも困惑するだろう。遠慮しておこう」
 すると、成り行きを見ていたサンディがニヤニヤしながらまぜっかえした。
「貸し切りにしてもらえばいーじゃん☆帰りにミミとイチャイチャ水浴びしてくればー」
 一瞬イザヤールは考えたが、すぐに首を振った。
「いや、やはりここでパーツの場所をある程度推測しておく方が時間にムダが無い。ミミ、すまないが『ねばねばゼリー』の確保は頼んだぞ」
「はい、イザヤール様」
 ミミがちょっと残念そうに頷くと、サンディがからかった。
「イザヤールさん、今ちょっと、それいいかもと思ったデショ~。ミミと水浴び」
 そう言われてイザヤールは眉間に溝を寄せ、リッカに聞こえない声でひとこと呟いた。
「うるさい」
「やだ図星?!」
 すると、そのやりとりを聞いていたミミは、ほんのり頬を染めてイザヤールに囁いた。
「イザヤール様・・・。もしご所望でしたら、グビアナではないけれど、後で『天使の泉』で、ご一緒に水浴びしませんか」
「!!ミミ・・・」
 そんな次第で、別行動になったのに何だか嬉しそうなバカップルは、それぞれの仕事に向かったのだった。

 その後ルイーダとロクサーヌにも声をかけて、四人でグビアナに移動し、水浴場を通り抜けて、地下水道に向かった。
「そういえば、前も四人でここにクエストで来たことありましたわね。黄金のカカオを取り戻しに来たと記憶しておりますわ」
 ロクサーヌが言った。
「さすがロクサーヌ、記憶がいいわね~。今日もできれば、水浴びで来たかったわね」
 ルイーダが笑って言うと、ミミが微笑んで一同に告げた。
「ねばねばゼリーを手に入れたら、みんなはゆっくり水浴びしていって。すぐ落としてもらえるといいのだけれど」
「任せといて!」
 全員張り切って答え、各々気合いを入れてお気に入りの武器を装備した。
 明るく爽やかな水浴場とはうって変わって、魔物の巣窟である地下水道は、ひやりと暗くて相変わらず不気味だった。お呼びでない魔物を追い払い、ジェリーマンを探す。
 こんなときに限ってなかなかジェリーマンは現れなかったが、ようやく一匹見つけて、四人はさっそく戦いを挑んだ。しかし残念ながら、このジェリーマンは「ねばねばゼリー」を持っていなかった。
 こんなことを飽きるほど繰り返し、汗だくになってきた頃。ようやくひときわぐねぐねしていたジェリーマンが、「ねばねばゼリー」を落とした!
 全員が心からほっとして、早々に地下から引き上げた。

 ミミがセントシュタインに戻ると、イザヤールは相変わらずガラスの破片とにらめっこをしていたが、帰ってきた彼女を見て渋面を解いて微笑んだ。
「おかえりミミ、よく頑張ったな。こちらもだいたい、どこがどのパーツかわかったぞ」
 彼はそう言うと同時に立ち上がり、抱きしめようとしてきた。ミミも喜んで抱きつこうとしてから、はっと気付いて身を引いた。
「どうした?」
「私・・・ずっと地下水道で戦っていたから、汗まみれ泥んこまみれなの。イザヤール様まで汚れちゃう」
 しかし彼は笑って、構わず抱きしめた。
「いいさ。さあ、お互い一息ついて、天使の泉に水浴びに行こう」
「・・・はい♪」
 こうして仲良く地下に向かった二人だったが、未だ季節外れ残暑の為か、今日に限って天使の泉は、大盛況だった。すました顔のラヴィエルまで居た。
「・・・まあ、どうせこんなことだと思っていたが・・・」
 二人は顔を見合わせ苦笑し、さっさと汗を流したのであった。そして部屋に戻って、今度は断面にねばねばゼリーを載せながら組み立て作業を始めた。うっかりすれば余分な部分までくっつけてしまいそうになる、繊細で根気の要る作業だ。
 焦って違う部分をくっつけては台無しなので、集中力が切れたら交互に休む、ということを繰り返し、慎重に粘り強く作業を続け、やがて。いつまでも終わらないかと思われた作業が、ついに完了した!ガラスの破片は、完全な靴の形に戻った!
 さすがに繋ぎ目のヒビまでは修復できないが、それが模様のようになって却って美しく、ところどころプリズムまで放っている。ミミは、疲労も忘れてうっとりと見つめた。
「綺麗・・・本当に、お姫様の靴みたい・・・」
 それを聞いたイザヤールは笑って、戯れにミミの傍に跪き、組み上がったガラスの靴を彼女の足元に差し出して言った。
「どうぞ、姫君」
「イザヤール様ったら・・・ちょっと履いても、大丈夫?」
「もちろん」
 ガラスの靴は本当に華奢で美しい。自分の足に合うわけがないと、ミミが笑って足を滑り込ませると、なんと靴は、ぴったりと合った!
「ま、まあ足のサイズが同じ人はたくさん居るし・・・」
「そ、そうだな」
 思わぬ偶然に動揺した二人だったが、特にイザヤールは、ミミを決して依頼人の主に会わせないことを固く決意した。探している娘と違おうが、靴がぴったり合ったこんなに可愛い娘の方に気が移ることは間違いないと思ったのである。

 リッカも靴の完成を喜び、さっそく依頼人に届けた。
「私の大切な仲間たちのおかげで、直りました!」
 完璧に組み立てられたガラスの靴を見て、依頼人は大喜びした。
「かたじけない、直接お礼を言わせてくれぬか!」
 依頼人はミミたちにも繰り返しお礼を言って、「グリーンオーブ」をくれた!そしていそいそ若様の元へと帰っていった。

 しかし数日後。老紳士は、浮かぬ顔で再びリッカの宿屋にやってきた。
「若様ときたら・・・!わしが留守の間に、白雪のように美しい娘さんに気持ちが移っておりました!わしの苦労はいったい・・・!」
 わしの教育が悪かったと凹んで、老紳士のプチ家出はしばらく続いたという。〈了〉

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