セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

世界中のどこに居ても

2017年02月12日 23時59分03秒 | クエスト163以降
短いですがイザヤール様おかえりなさい記念話。しんみりできる年も忙しい年もあるでしょうが、いずれにせよ毎年この日も二人は幸せなようです☆

 普段は静かなウォルロ村だが、最近はほんの少し賑わっているらしい。滝の傍らに立っている翼のある像の前で、恋人同士が一緒に滝にかかる虹を見ると、幸運に恵まれるという噂が広まっている為のようだ。何故そんな噂が広まったのかは不明だが、幸せそうなある恋人たちがよくそこに佇んでいるからかもしれない。
「今年は、ちょっとしんみりしにくいですね、イザヤール様」
 その恋人たちの片割れ、元ウォルロの守護天使ミミは微笑んで、もう一人の元ウォルロの守護天使イザヤールを見上げた。
「確かに、多少雰囲気には欠けるな。夜にでもまた来るか」
 もう一人の片割れはそう呟き、楽しげに笑った。
 この滝は、二人にとって守護天使としての役割を始めた場所であり、そして・・・もう二度と会えないと思っていた師弟が、再び巡り会い、互いに秘めていた想いを、少しずつ解き放つ新しい日々が、始まった場所でもある。この村に立ち寄ることがあると、ついここに立ってしばらく佇んでしまうのは、感傷とわかっていても二人にとって大切な時間だった。
 今や二人は天使に比べて格段に寿命が短い人間となり、滝の傍の守護天使の役割は忘れ去られ、あらゆることが変わってしまったけれど。天使の頃から変わらない想いは、常に二人と共に在った。ただ気付いていなかっただけだ。そして、この滝も、役目を忘れ去られたとはいえ守護天使像も、これからも変わらずにここに在り続けることだろう。この恋人たちが、人としての儚い命を終えたずっと先も。
「何にしても、今年もイザヤール様と一緒にウォルロの滝に来られた、それがとても嬉しいの」ミミは、濃い紫の瞳に星のような煌めきを湛えて、呟いた。「・・・ううん、イザヤール様とまた会えた日に、イザヤール様と一緒に居られるなら・・・世界中の、どこでも嬉しい」
「ミミ・・・私もだ、おまえと過ごせるなら、どこに居ても・・・」イザヤールは彼女を愛しげに見つめ囁いたが、それからふと笑いだしそうな顔になって言った。「ふふ、こんな会話をサンディ辺りに聞かれたら、『じゃあヒドイダンジョンとか魔王の目の前とかでもイイワケ?』なんてからかわれそうだな。実際私は構わないが。おまえと一緒にダンジョンを冒険したり、魔王と戦うことも楽しい」
「私も楽しいです!・・・でも魔王たちがこんなこと聞いたら怒っちゃいそう・・・」
「かもな。せいぜい返り討ちに遭わないよう気を付けるとしよう」
 大真面目に言ってから、相好を軽く崩してイザヤールはまた笑った。この人のこんな笑顔を見、優しい囁きを聞き、あたたかい手に触れることができる・・・。そのことが、ミミの心を光で満たす。
 これからも、この人を、この日々を守っていく。互いに内心そう誓って、二人は微笑みを交わした。
「あーっ、ミミ、イザヤール!いいところに来た、何かやたらに忙しいんだよー、手伝ってくれよー!」
 宿屋の方から、ニードが大声で呼んできた。本当にしんみりできそうもないけれど。それでも幸せだと、二人は笑って駆け出した。〈了〉
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