今週も丑三つ時も過ぎちゃって更新でごめんなさいですがわ~い寝オチはしなかったよ~って、ハードル低すぎなんですけどの追加クエストもどき。クエストそのものもお話もたいそう平和な内容となりました。バブルスライムがアイデンティティー消失と言ってもいいデトックスに興味を持った理由とは?!(笑)スライム属の進化って、やはり突然変異なんでしょうか。いずれにしても、環境適応力がとても高そうです。それにしても、バブルスライムの宝箱はスライムゼリーはともかく、何故どくけしそうなのでしょう?やはりどこか毒無し生活への憧れだとしたら、何か不憫かも・・・。
バブルスライムは、ご存知の通り、毒の沼地でも生きていけるように環境に対応したスライムである。対応しているだけあって、彼らも自ら毒を持っている。その毒は、周囲の瘴気が蓄積されたものとも、食べている毒を含んだ食物の成分の蓄積など、諸説あるが、冒険者に厄介であることに変わりはない。
ある日ミミがエラフィタ付近を歩いていると(お届けものを済ませた帰り道に、ついでにちょっと麦畑の見回りもしようと考えたのだ)、そんなバブルスライムのうちの一匹に声をかけられた。
「うわぁ~、キミ、キレイだねー。お肌も髪もツヤツヤ、目もうるうるして澄んでるし。きっと、デトックスがうまくいってるんだね~」
バブルスライムにいきなり褒められてミミは少し戸惑ったが、素直にお礼を言った。
「そ・・・そう?ありがとう」
「ねーねー、どんなデトックスしてるのー?」
ミミは特に毒排出を意識して暮らしているわけではないのでちょっと困ってしまった。
「う~ん・・・。普通の冒険者暮らしだから、特に何かをしているわけじゃないの。暮らしている宿屋のごはんとお風呂のおかげなのかも」
ミミのことを知る者が聞いていたら、殊にサンディ辺りだったら、「どこが『普通の』冒険者なのよー!アンタらのハードな冒険に付き合えんのこのアタシくらいなもんじゃない!」などと言いそうだが、幸か不幸か今ミミは一人だった。よってツッコミが入ることもなく、従ってバブルスライムは、平均的な冒険者の暮らしをイメージしたようだった。
「んー、デトックスはやっぱり食事とお風呂と運動なんだねー」
勝手に納得して頷いているバブルスライムに、ミミは尋ねてみた。
「あなたはバブルスライムよね?それなのにどうして毒消しみたいなことに興味があるの?」
するとバブルスライムは、一瞬慌ててわたわたしてから答えた。
「えっとお、ちょっとした好奇心てヤツ?ボクたちバブルスライムから、毒を抜いてみたら、いったいどーなるのかな~みたいな?毒抜き生活ちょっと試してみたいかな~って思って」
「そうなの?でも、あなたたちは毒に適応してきた種族でしょう?毒抜き生活なんかして、大丈夫かな・・・。逆にダメージになっちゃうとか、ないの?」
「そこなんだよねー」バブルスライムは困ったようにうねうねしながら言った。「手持ちのどくけしそう食べ続け生活をして、毒抜きしてみよっかな~なんて思ったんだけど、それでもし逆に体壊したらどーしよーって思って断念したんだよね~。それで、もっとゆるいデトックス方法ないかなーって思って聞いてみたわけ。やっぱり生活から立て直して地道が一番かな?みたいな」
「そうだったのね。でも、毒の沼地に馴れているあなたが、綺麗な水のお風呂とか入ったりするのも、ちょっと心配だったりしない?」
「んー、ボクは大丈夫だと思うけど、お風呂があっという間にドロドロになってダメかもー。キリがなさそうだよね~。やっぱりまずは食事から変えてみようかなあ。でもどくけしそう食べてボクごとなくなってもイヤだし・・・」
考え込み始めたバブルスライムに付き合っていると日が暮れてしまいそうなので、ミミは「じゃあ私はこれで・・・」と立ち去ろうとした。だが、そのときバブルスライムはいい方法を思いついてしまったらしく、ぴょいんと飛び上がって言った。
「そーだ!ダメージ受けても、回復も同時にすればいいんだ!ねえ、キミも冒険者なら、『特どくけしそう』のことは聞いたことがあるよね?どくけしそうたくさん渡すからさあ、それでできるだけたくさん作ってきてくんない?作ってきてくれたら、一個につき『スライムゼリー』一個あげるからさあ~」
スライムゼリーはちょうど欲しかったところなので、ミミはバブルスライムの頼みを聞くことに決めた。ミミはクエストを「チャレンジ毒抜きライフ」引き受けた!
ミミはバブルスライムからたくさんどくけしそうを預かると、リッカの宿屋に帰ってカマエルのところに行き、さっそく特どくけしそうの錬金を始めた。
特どくけしそうは、「上どくけしそう」二つでできるが、その「上どくけしそう」を作るには、どくけしそうの他にやくそうが必要だ。幸いやくそうはたくさん持っていたので、まずはバブルスライムから預かったどくけしそうとやくそうを組み合わせて、せっせと上どくけしそうを作った。
「錬金釜とは、便利なものだな」しばらくして、ミミの背後から待ち遠しかった声がした。「錬金釜無しで同じようなものを作ろうとすると、煮詰めて成分を凝縮させるのにどれほど時間がかかったことか」
振り返るとやはりイザヤールが立っていて、「ただいま」を告げた。ミミは花が開くような微笑みを浮かべてそっと彼に寄り添い「おかえりなさい」を返してから、嬉しそうに呟いた。
「ずいぶん早く帰っていらしたから、びっくりしちゃった。はぐれメタルのお散歩なのに」
「はぐれメタルの散歩だから、早く済んだとも言える」イザヤールは苦笑して答えた。「今日は『ぶとうかの証』を装備していたから、前より楽ではあったがな。だが、相変わらずの猛スピードだった。エラフィタ辺りも走ったぞ。おまえが用のある時間帯でなくて少々残念だったがな」
イザヤールは以前、ペットとして飼われているはぐれメタルを預かり、恐ろしい速度で駆け回るはぐれメタルを逃亡させずに何とか散歩をやりきったので、飼い主とそのはぐれメタル両方の尊敬を得てしまい、度々散歩を頼まれるようになってしまったのだった。大概断るが、職業武闘家時の勘とすばやさの調子を確認したい場合などは、こうしてたまに引き受けるのである。
「それで、何故たくさん上どくけしそうを作っているんだ?」
そこでミミは、バブルスライムから頼まれたクエストのことを話した。なるほど、確かにバブルスライムから毒が抜けたらどうなるか多少気になるな、とイザヤールは笑い、錬金を手伝ってくれた。
こうして上どくけしそうから特どくけしそうも短時間でたくさん作ることができたので、ミミはさっそくそれを届けに行くことにした。今度はイザヤールも一緒に行って、クエストが済んだら帰りはシュタイン湖に寄って月と星空を眺めてくることに決めた。
仕事の後の楽しみもできたので、二人はさっそくバブルスライムのところに出かけていった。
バブルスライムのところに戻ると、バブルスライムはミミと一緒に来たイザヤールを見て、ちょっと驚いたようだった。
「え、キミは、確か・・・」
「ん?私が何か?」
イザヤールが怪訝な顔をすると、バブルスライムはなんでもない、と、慌てて特どくけしそうに注意を向けた。
「おー、特どくけしそうこんなにたくさん♪ではさっそく・・・」
バブルスライムは、ミミに特どくけしそうと同じ数のスライムゼリーを渡すと、さっそく特どくけしそうをもぐもぐと食べ始めた。おいしくないのか有毒生物の拒絶反応なのか、目を白黒させていたが、なんと全部食べきってしまった!
しばらくして、どうやら毒が消えたせいで消滅、などということは免れたらしいバブルスライムは、ミミにおずおずと尋ねた。
「ねー、ボク、何か見た目変化ある~?毒々しい緑色が消えたとか、爽やかになったとか、さあ」
「えっと・・・見た目的には、そんなに変わってない・・・かな」
「えー!そんなあー!」バブルスライムはがっくりして更にぺたりとしたが、急に闘志を燃えたぎらせるかのように身を起こした。「それなら、何か変わるまで特どくけしそうを食べ続けてやるう~!どくけしそう用意するから、また頼むねー」
「ねえ」ここでミミが尋ねた。「どうしてそんなに毒抜きにこだわるの?ただの好奇心だけでそこまでできるとは、思えないのだけれど」
「えー、えっと、それは・・・」
バブルスライムはあからさまに慌てあたふたし、しばらくもじもじしていたが、やがてようやく白状し始めた。
「実は・・・」バブルスライムは、イザヤールをちらちら見ながら言った。「前にさあ、このおにいちゃんが散歩に連れてたはぐれメタルに、一目惚れしちゃって・・・。まずは何とか声だけでもかけて、お友達になりたかったんだけど、いつもマッハな速度で行っちゃうから、全然ダメでさあ。だからボク、まずは毒を抜いてから、今度は少しずつミスリル鉱石を食べていけば、そのうちはぐれメタルに近付いていって、すばやさ上がって、追いつけるようになるんじゃないかな、って考えて・・・」
それで自分を見たとき様子がおかしかったのかとイザヤールは納得し、ミミは気の毒そうに言った。
「そうだったの・・・。でも、毒を抜いてミスリル鉱石を食べても、すぐはぐれメタルになれるとは、思えないんだけど?」
「うう・・・やっぱりそう?」
またがっくりしてぺちゃんこになったバブルスライムに、ミミは慌ててイザヤールに頼んだ。
「ね、イザヤール様、今度のお散歩のとき、このバブルスライムくんを連れていって、そのはぐれメタルさんに会わせてあげてくれない?せめてお話しだけでもできたら、もしかしたらお友達になれるかもしれないもの」
「それは構わないが」イザヤールはいささか困惑しながら答えた。「まあ恋愛は自由だから、私がとやかく言うことではないが・・・。しかし、先方も応えてくれるとは限らないぞ?」
「わかってるよ~そんなこと!バブルスライムごときが、はぐれメタルちゃんに憧れるなんてお笑いぐさだって!でも、まずはせめてお友達から・・・」
はりきるバブルスライムに、イザヤールはおそるおそる尋ねた。
「なあ・・・。念のため、本当に一応念のため言っておくが、あのはぐれメタルは、オスだぞ?もちろん恋愛の対象が異性に限らないとかは重々承知しているが・・・って、おいっ、大丈夫か?!」
バブルスライムは、ショックで固まっている!やがて、魂が抜けたような声で、呟いた。
「オス・・・?そうなの・・・?ウソでしょ・・・?」
「知らなかったの?!」
「知らなかったのか?!」
ミミとイザヤールは同時に叫び、気の毒そうに顔を見合わせたのだった。
こうして、ひどいショック状態のままよろよろ帰っていったバブルスライムだったが、その帰路で可愛いメスのバブルスライムに一目惚れし、毒抜きチャレンジから一転、すごい猛毒バブルになろうと今度は「どくどくヘドロ」を大量に摂取しようとして、仲間たちから止められたという。〈了〉
バブルスライムは、ご存知の通り、毒の沼地でも生きていけるように環境に対応したスライムである。対応しているだけあって、彼らも自ら毒を持っている。その毒は、周囲の瘴気が蓄積されたものとも、食べている毒を含んだ食物の成分の蓄積など、諸説あるが、冒険者に厄介であることに変わりはない。
ある日ミミがエラフィタ付近を歩いていると(お届けものを済ませた帰り道に、ついでにちょっと麦畑の見回りもしようと考えたのだ)、そんなバブルスライムのうちの一匹に声をかけられた。
「うわぁ~、キミ、キレイだねー。お肌も髪もツヤツヤ、目もうるうるして澄んでるし。きっと、デトックスがうまくいってるんだね~」
バブルスライムにいきなり褒められてミミは少し戸惑ったが、素直にお礼を言った。
「そ・・・そう?ありがとう」
「ねーねー、どんなデトックスしてるのー?」
ミミは特に毒排出を意識して暮らしているわけではないのでちょっと困ってしまった。
「う~ん・・・。普通の冒険者暮らしだから、特に何かをしているわけじゃないの。暮らしている宿屋のごはんとお風呂のおかげなのかも」
ミミのことを知る者が聞いていたら、殊にサンディ辺りだったら、「どこが『普通の』冒険者なのよー!アンタらのハードな冒険に付き合えんのこのアタシくらいなもんじゃない!」などと言いそうだが、幸か不幸か今ミミは一人だった。よってツッコミが入ることもなく、従ってバブルスライムは、平均的な冒険者の暮らしをイメージしたようだった。
「んー、デトックスはやっぱり食事とお風呂と運動なんだねー」
勝手に納得して頷いているバブルスライムに、ミミは尋ねてみた。
「あなたはバブルスライムよね?それなのにどうして毒消しみたいなことに興味があるの?」
するとバブルスライムは、一瞬慌ててわたわたしてから答えた。
「えっとお、ちょっとした好奇心てヤツ?ボクたちバブルスライムから、毒を抜いてみたら、いったいどーなるのかな~みたいな?毒抜き生活ちょっと試してみたいかな~って思って」
「そうなの?でも、あなたたちは毒に適応してきた種族でしょう?毒抜き生活なんかして、大丈夫かな・・・。逆にダメージになっちゃうとか、ないの?」
「そこなんだよねー」バブルスライムは困ったようにうねうねしながら言った。「手持ちのどくけしそう食べ続け生活をして、毒抜きしてみよっかな~なんて思ったんだけど、それでもし逆に体壊したらどーしよーって思って断念したんだよね~。それで、もっとゆるいデトックス方法ないかなーって思って聞いてみたわけ。やっぱり生活から立て直して地道が一番かな?みたいな」
「そうだったのね。でも、毒の沼地に馴れているあなたが、綺麗な水のお風呂とか入ったりするのも、ちょっと心配だったりしない?」
「んー、ボクは大丈夫だと思うけど、お風呂があっという間にドロドロになってダメかもー。キリがなさそうだよね~。やっぱりまずは食事から変えてみようかなあ。でもどくけしそう食べてボクごとなくなってもイヤだし・・・」
考え込み始めたバブルスライムに付き合っていると日が暮れてしまいそうなので、ミミは「じゃあ私はこれで・・・」と立ち去ろうとした。だが、そのときバブルスライムはいい方法を思いついてしまったらしく、ぴょいんと飛び上がって言った。
「そーだ!ダメージ受けても、回復も同時にすればいいんだ!ねえ、キミも冒険者なら、『特どくけしそう』のことは聞いたことがあるよね?どくけしそうたくさん渡すからさあ、それでできるだけたくさん作ってきてくんない?作ってきてくれたら、一個につき『スライムゼリー』一個あげるからさあ~」
スライムゼリーはちょうど欲しかったところなので、ミミはバブルスライムの頼みを聞くことに決めた。ミミはクエストを「チャレンジ毒抜きライフ」引き受けた!
ミミはバブルスライムからたくさんどくけしそうを預かると、リッカの宿屋に帰ってカマエルのところに行き、さっそく特どくけしそうの錬金を始めた。
特どくけしそうは、「上どくけしそう」二つでできるが、その「上どくけしそう」を作るには、どくけしそうの他にやくそうが必要だ。幸いやくそうはたくさん持っていたので、まずはバブルスライムから預かったどくけしそうとやくそうを組み合わせて、せっせと上どくけしそうを作った。
「錬金釜とは、便利なものだな」しばらくして、ミミの背後から待ち遠しかった声がした。「錬金釜無しで同じようなものを作ろうとすると、煮詰めて成分を凝縮させるのにどれほど時間がかかったことか」
振り返るとやはりイザヤールが立っていて、「ただいま」を告げた。ミミは花が開くような微笑みを浮かべてそっと彼に寄り添い「おかえりなさい」を返してから、嬉しそうに呟いた。
「ずいぶん早く帰っていらしたから、びっくりしちゃった。はぐれメタルのお散歩なのに」
「はぐれメタルの散歩だから、早く済んだとも言える」イザヤールは苦笑して答えた。「今日は『ぶとうかの証』を装備していたから、前より楽ではあったがな。だが、相変わらずの猛スピードだった。エラフィタ辺りも走ったぞ。おまえが用のある時間帯でなくて少々残念だったがな」
イザヤールは以前、ペットとして飼われているはぐれメタルを預かり、恐ろしい速度で駆け回るはぐれメタルを逃亡させずに何とか散歩をやりきったので、飼い主とそのはぐれメタル両方の尊敬を得てしまい、度々散歩を頼まれるようになってしまったのだった。大概断るが、職業武闘家時の勘とすばやさの調子を確認したい場合などは、こうしてたまに引き受けるのである。
「それで、何故たくさん上どくけしそうを作っているんだ?」
そこでミミは、バブルスライムから頼まれたクエストのことを話した。なるほど、確かにバブルスライムから毒が抜けたらどうなるか多少気になるな、とイザヤールは笑い、錬金を手伝ってくれた。
こうして上どくけしそうから特どくけしそうも短時間でたくさん作ることができたので、ミミはさっそくそれを届けに行くことにした。今度はイザヤールも一緒に行って、クエストが済んだら帰りはシュタイン湖に寄って月と星空を眺めてくることに決めた。
仕事の後の楽しみもできたので、二人はさっそくバブルスライムのところに出かけていった。
バブルスライムのところに戻ると、バブルスライムはミミと一緒に来たイザヤールを見て、ちょっと驚いたようだった。
「え、キミは、確か・・・」
「ん?私が何か?」
イザヤールが怪訝な顔をすると、バブルスライムはなんでもない、と、慌てて特どくけしそうに注意を向けた。
「おー、特どくけしそうこんなにたくさん♪ではさっそく・・・」
バブルスライムは、ミミに特どくけしそうと同じ数のスライムゼリーを渡すと、さっそく特どくけしそうをもぐもぐと食べ始めた。おいしくないのか有毒生物の拒絶反応なのか、目を白黒させていたが、なんと全部食べきってしまった!
しばらくして、どうやら毒が消えたせいで消滅、などということは免れたらしいバブルスライムは、ミミにおずおずと尋ねた。
「ねー、ボク、何か見た目変化ある~?毒々しい緑色が消えたとか、爽やかになったとか、さあ」
「えっと・・・見た目的には、そんなに変わってない・・・かな」
「えー!そんなあー!」バブルスライムはがっくりして更にぺたりとしたが、急に闘志を燃えたぎらせるかのように身を起こした。「それなら、何か変わるまで特どくけしそうを食べ続けてやるう~!どくけしそう用意するから、また頼むねー」
「ねえ」ここでミミが尋ねた。「どうしてそんなに毒抜きにこだわるの?ただの好奇心だけでそこまでできるとは、思えないのだけれど」
「えー、えっと、それは・・・」
バブルスライムはあからさまに慌てあたふたし、しばらくもじもじしていたが、やがてようやく白状し始めた。
「実は・・・」バブルスライムは、イザヤールをちらちら見ながら言った。「前にさあ、このおにいちゃんが散歩に連れてたはぐれメタルに、一目惚れしちゃって・・・。まずは何とか声だけでもかけて、お友達になりたかったんだけど、いつもマッハな速度で行っちゃうから、全然ダメでさあ。だからボク、まずは毒を抜いてから、今度は少しずつミスリル鉱石を食べていけば、そのうちはぐれメタルに近付いていって、すばやさ上がって、追いつけるようになるんじゃないかな、って考えて・・・」
それで自分を見たとき様子がおかしかったのかとイザヤールは納得し、ミミは気の毒そうに言った。
「そうだったの・・・。でも、毒を抜いてミスリル鉱石を食べても、すぐはぐれメタルになれるとは、思えないんだけど?」
「うう・・・やっぱりそう?」
またがっくりしてぺちゃんこになったバブルスライムに、ミミは慌ててイザヤールに頼んだ。
「ね、イザヤール様、今度のお散歩のとき、このバブルスライムくんを連れていって、そのはぐれメタルさんに会わせてあげてくれない?せめてお話しだけでもできたら、もしかしたらお友達になれるかもしれないもの」
「それは構わないが」イザヤールはいささか困惑しながら答えた。「まあ恋愛は自由だから、私がとやかく言うことではないが・・・。しかし、先方も応えてくれるとは限らないぞ?」
「わかってるよ~そんなこと!バブルスライムごときが、はぐれメタルちゃんに憧れるなんてお笑いぐさだって!でも、まずはせめてお友達から・・・」
はりきるバブルスライムに、イザヤールはおそるおそる尋ねた。
「なあ・・・。念のため、本当に一応念のため言っておくが、あのはぐれメタルは、オスだぞ?もちろん恋愛の対象が異性に限らないとかは重々承知しているが・・・って、おいっ、大丈夫か?!」
バブルスライムは、ショックで固まっている!やがて、魂が抜けたような声で、呟いた。
「オス・・・?そうなの・・・?ウソでしょ・・・?」
「知らなかったの?!」
「知らなかったのか?!」
ミミとイザヤールは同時に叫び、気の毒そうに顔を見合わせたのだった。
こうして、ひどいショック状態のままよろよろ帰っていったバブルスライムだったが、その帰路で可愛いメスのバブルスライムに一目惚れし、毒抜きチャレンジから一転、すごい猛毒バブルになろうと今度は「どくどくヘドロ」を大量に摂取しようとして、仲間たちから止められたという。〈了〉
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