セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

愛しきアイドルへ(中編)

2015年02月14日 23時59分20秒 | クエスト184以降
追加クエストもどき続き、前後編と言ってましたが、終わらず今回中編となってしまいました~、ウソついて申し訳ないです・・・!前回のあらすじ、ゴールドタヌに盗まれた依頼人のアイドルに捧げるバレンタインチョコレートを無事取り返したミミだったが、今度はそのアイドル「エグドラシル」が誘拐されてしまった!ガライの銀の竪琴やマローニの声ネタ懐かしい~。

 イケメン吟遊詩人アイドルユニット「エグドラシル」が拐われた?!突然な展開に、ミミとイザヤールは一瞬戸惑い呆然とした。今回のクエストの依頼人の少女がまた更にひどく泣きじゃくり出したので(もはやメイクはすっかり流れ落ちていた)、ミミはなるべく冷静な声音を出すよう努力しながら尋ねた。
「お、落ち着いて・・・。いったい何があったのか、話して」
 えぐえぐという嗚咽入りで聞き取り辛いながら少女が話したことによると、エグドラシルは、明日の夜バレンタイン野外ライブを行う筈だった。会場は東セントシュタインの海岸で、先ほどまでそのリハーサルをやっていて、熱心なファンたちはそのリハーサルまで熱い視線で見守っていた。ところが、海の向こうから、突然魔物たちがやってきて、ガライとマローニを連れ去ってしまったという。
「ヘルヴィーナスっていう魔物の仕業よ。あの魔女たちは、イケメンが大好きなのよ!それで連れてっちゃったんだわ~」
「ヘルヴィーナスが?どの方向に行ったか、わかります?」
「二人を連れて飛んで、また海の向こうの方へ行ったわ。きっと、小島の方。・・・そうそう、こんな変な地図を落としていったの。この印の場所に居るのかもしれないわ」
 そうだった、東セントシュタインの海の小島は、ヘルヴィーナスの棲息地だ。そこに行ったに違いない。そしてミミが少女の差し出した地図を受け取って見てみると、それは宝の地図の洞窟だった。ここに二人は囚われているのかもしれない。ミミとイザヤールは顔を見合わせて頷いた。
「泣かないで。きっと連れ戻してきてみせますから」
 ミミは言って、そしてイザヤールと共に再び外に出て、アギロホイッスルを吹いて天の箱舟に乗り込んだ。

 天の箱舟に入ると、ひと足先に戻っていたサンディが、何故かアギロに叱られていた。
「サンディおまえなあ、ワケのわからないチョコレートを作るのはいいが、きちんと片付けていけよ。なんだこりゃ、あちこちベトベトじゃねえか」
「テンチョーマジうるさいしー。ミミの冒険の記録に付き合ったんだもん、仕方ないじゃん」
「それとこれは別だ!なんでも途中で放り出していくのは感心しねえな」
「そんなコトゆーなら、テンチョーには義理チョコあげないからね!」
「いらねえ」
「即答かよ!」
 このやり取りの最中のタイミングでまた冒険に行くとは言いにくいなとミミは思ったが、おずおずとサンディに声をかけて、ヘルヴィーナスの所に行かなくてはならなくなったことを告げた。
「マジで?!やったー・・・じゃなかった、しょーがないわね~、行ってあげなきゃー。じゃ、テンチョー、あとよろしくね~」
「こら、サンディ!」
 怒るアギロにバイバ~イと手を振って、サンディはミミと一緒に行こうとしたが、よそ見をしていて、自分がほったらかしていたアイシングやカラーチョコでベタベタのボウルや泡立て器やらスプーンやらの山にまともに突っ込んでしまった。サンディの悲鳴とボウルやらが床に派手に落下する音が箱舟内に響いた。
「ヤダありえない!超ベタベタになっちゃった・・・」
 こうしてサンディはお風呂に入る為に出かけられないことになり、ミミとイザヤールは二人で東セントシュタインの小島に行くことになった。

 東セントシュタインの小島には、二つの家だけがあって、スピオとビーンという男たちがそれぞれ住んでいる他は、後は魔物がたくさんうろついているなかなか物騒な島だ。その中でも特に多いのがヘルヴィーナスだった。
 ミミとイザヤールはとりあえず高台の方に降りたって、先ほどの地図を取り出し辺りを見回した。すると、ミミはナゾの洞窟を発見した!さっそく行ってみようとしたミミの腕を軽く引いて抱き寄せ、一緒に木陰に隠れてイザヤールが囁いた。
「ちょっと待て、ミミ。あれを見てみろ」
 ミミが抱き寄せられたことにちょっとどきどきしながらイザヤールの視線の先を見てみると、今見つけたばかりの洞窟に、ヘルヴィーナスたちが次々と入っていくのが見えた。ガライとマローニを拐ったヘルヴィーナスたちの仲間である可能性が高い。ここにほぼ間違いないだろうと確信して、二人はステルスを使ってそっと洞窟に潜入した。
 中に入ってみると、そこは氷タイプの洞窟だった。やはりヘルヴィーナスが多く棲息している場所である。ヘルヴィーナスたち以外にも、氷タイプの洞窟に棲息する他の魔物たちがうろうろしていて、今のところは通常の宝の地図の洞窟との違いは見られない。
 どこかに、拐われた吟遊詩人たちが閉じ込められているかもしれないので、フロア中を隈無く探してみたが、誰かを閉じ込めておけるような場所はなかった。そのようにして数フロア降りた。
 五階ほど下に降りると、突然奇妙なフロアに出た。階段の周囲は氷の壁に囲まれた小部屋で、これまた氷でできた分厚い扉が堅く閉じていた。押してみると開いたので、ミミとイザヤールは用心しながら進んでみた。扉の先には、また同じような小部屋があって、やはり分厚い扉があった。魔物の居る気配はない。その扉を開けると、やはり同じような小部屋と先へと続く分厚い扉がある。
 もしや無限回廊なのかと、二人は今来た方を振り返ったが、開けてきた扉はそのまま開いていて、降りてきた階段も見えていた。とはいえ、これまでの経験上、あまりいい予感はしない。先に進むのは気が進まないが、仕方ない。
 そのようにして進んでいくと、ふいに二人の背後で、重く軋る音が断続的に聞こえた。はっと振り返ると、今まで開けてきた扉が、次々閉じていくのが見えた。
「特定以上の数の扉を開けると、上り階段側の扉から閉じてしまうトラップか・・・」
 イザヤールが眼光を鋭くして呟いた。閉じた扉を開けてみようとしたが、凍りついているようで開かなかった。無理に開ければ周囲の壁ごと崩落しかねないので、強引に開けるのは最後の手段にした方が良さそうだ。
「でも、次々開けて先に進むしかない、そうよね」
「ああ、そうだな」
 こうして次々扉を開けて進むと、やがて押しても引いても開かない扉の前に出た。これまでにも増して分厚い氷の扉だが、なんとその向こうからかすかに、美しい歌声と竪琴の伴奏が聞こえる!
 その扉は、これまでのものと違って鍵穴があった。鍵なんて見つけていないと普通なら慌てるところだが、ミミはさいごの鍵を持っている。あっさりと鍵は開いた!
 扉の向こうには、一人はこの上ない美声で熱唱中、もう一人は銀製らしい変わった竪琴でこれまたこの上ない美しい旋律を熱演中の、吟遊詩人たちが立っていた。一応氷の椅子やテーブルはあるが、使っていないらしい。そして二人の後ろには、下に続く階段があった。
 二人の吟遊詩人は、曲が一区切りしてようやく、扉が開いたことに気が付いて一瞬固まったが、魔物ではないということに気付いて、安堵の表情を浮かべた。
「ああ、助けにいらしてくださったのですね、ありがとうございます!私はエグドラシルの伴奏担当ガライです」と銀の竪琴を持つ青年が言った。
「ただ、ここからはまだ簡単には抜け出せないのです~ラララ~♪私はエグドラシルボーカルのマローニ♪」と、こちらは美声の青年。
「と、言うと?」
「実はこのフロアは、リレミトやおもいでのすずの効果も効かないしくみになっているうえに、我々が閉じ込められているこの部屋は、二人の人間が居ないと、下に降りる階段が現れないのです。つまり、我々は階段を目の前にしても、降りることができないのです。一人が階段を降りようと初めの段に足をかけた途端に、階段が消えてしまうのですから。・・・下のフロアにさえ行ければ、リレミトですぐ外に出られるのに・・・!」
 そう竪琴の青年は言って溜息をついた。
「魔女どもは~♪ガライの銀の竪琴の演奏の魅力と~♪さえずりのみつで培われた私の美声に魅了され~♪我々を拐ったのですラララ~♪」
 ボーカル担当の青年の言っていることは散文的で、いちいち歌にしなくてもよさそうなものなのだが、まるで素晴らしい歌謡でも聞いている気分になる不思議な魔力があった。さえずりのみつ効果恐るべしである。
「このままでは我々の歌と演奏を待っているファンたちを悲しませてしまいます・・・!無茶なお願いとは思いますが、明日のバレンタイン野外ライブが終わるまで、我々の代わりにこの部屋に居てくれませんか?ライブが終わったら、必ず、必ず戻ってきますから!」
「我々は誇り高きアイドル~♪約束は必ず守ります~♪」
 ミミとイザヤールは顔を見合わせた。なるほど、彼らがまた戻ってきてくれれば、今度はミミたちが下の階に進んで、このダンジョンの元凶を倒すこともできる。万が一彼らが戻って来なくても、自分たちならどうにかなる。むしろ彼らが脱出してくれれば、安心してかなり無茶な大暴れもできるというものだ。ミミとイザヤールは、吟遊詩人二人の代わりにこの小部屋に残ることを承知した。

 彼らを送り出した後、ミミはイザヤールにそっと寄り添い、呟いた。
「イザヤール様・・・。もう日付が変わって、バレンタインデーになっちゃったくらいの時間ですね」そして彼女は、道具袋から非常食用の「ふつうのチョコ」を取り出し、彼に手渡した。「バレンタインチョコ・・・。これになっちゃってごめんなさい・・・」
「いいや」イザヤールは受け取ったチョコレートを半分折ってミミに返し、微笑んで言った。「おまえとゆっくり過ごせる時間になるから、悪くないさ」
「イザヤール様・・・」
 氷の部屋に閉じ込め状態というのはかなりピンチな筈だが、ぬくぬくほのぼのしてあまり緊迫感のない二人だった。〈後編に続く〉
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