セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

謎の魅力交換所(後編)

2016年03月05日 18時03分32秒 | クエスト184以降
遅くなりましたが今週の追加クエストもどき後編。前回のあらすじ、持っている能力を魅力に変えてくれるという謎の神官を調べる為に、依頼人と共に神官の居る洞窟を訪れたミミとイザヤール。神官に、能力と引き換えに魅力を更に上げる提案をされたミミの答えは・・・。テーマ的にもっとシリアスな展開になるかなと思っていたんですが、テーマをあんまりうまいこと消化できずに依頼人のキャラクターのせいかライトな展開になりました(笑)魅力って容貌だけじゃないけっこう範囲の広い曖昧かつ複雑な属性だと思っているので、うつくしそうでアップするのも容貌だけじゃない何かなんだろなと勝手に思っています。

 この神官の言いたいことは、腕力や知性が無くとも、魅力で他者を思うままに操れれば、楽に生きていけるし人を支配できる、そういうことなのだろう。いくら才能があって努力しても、人当たりが悪くて衝突ばかりして人生がうまくいかない人々が存在するということも、ミミは守護天使だった経験から、よく知っていた。でも・・・。
「私は」ミミは濃い紫の瞳を決意の色で更に濃くして煌めかせ、神官に返答した。「私が愛している人々に愛されている、それだけで充分なの」
 綺麗になれれば愛する人に相応しくなれるかも、と思っていた頃だったなら、能力を引き換えに魅力を手に入れられると聞いたら、心が揺れたかもしれない。でも、今は。この世で一番愛しい人が、ミミの何もかもそのままが愛しいと、言ってくれているから。そして、結局魅力というものは、内面の充実が伴って真に花開くものと知っているから。能力と引き換えに上げようとは、思わない。
「なるほど、必要を感じないと思われているなら、仕方ないですな」神官はあっさりと引き下がった。が、すぐにターゲットを変えた。「後ろの紳士お二方は如何です?カリスマ性のあるイケメンこそ、帝王の地位やハーレムの主に、一番近い者だと思いますよ」
「神官らしくない発言だな。私にも不要だ」
 イザヤールは、皮肉な笑みを唇の端にかすかに浮かべて即答し、それこそ鋭い眼光で神官を見つめた。
「えっ、夢のハーレム?!カノジョを何人持っても許されるって、ちょっといいかも・・・って、ははは、だから冗談ですって~」
 魔法使いの青年は、ミミとイザヤールに睨まれるというよりむしろ悲しげな視線と憐れむような視線を受けたのが堪えたらしく、慌てて取り消した。
「では、ここに用が無いということですな。それなら早々にお引き取り願いたい。私の能力を必要とされる方は、まだまだたくさんいらっしゃるのですから」
 神官はそう言うと、上り階段の方を慇懃な手つきで指し示した。丁寧なしぐさだが、帰れという意味合いなのだろう。
「私たちは、あなたの立っている後ろの下り階段の先の、宝の地図の洞窟のボスの居るフロアに用があると言ったら、通してくれますか?」ミミは神官をじっと見つめながら尋ねた。
「そういうことでしたら」神官は肩をすくめてあっさりと道を開けた。「どうぞお通りを。お邪魔をして失礼しましたな」
 だが彼は、階段を降りていくミミたちの後ろ姿を見送りながら、愛想のいい笑顔を酷薄な笑みに変えていた。

 ミミたちが階段を降りると、そこはやはりボスのフロアで、奥の方に宝の地図の洞窟のボスのうちの一体、イデアラゴンの姿が見えた。
「あっさり通してくれたっていうことは、あの神官はここのボスとは何も関係ないってことなのかな?」
 ミミは首を傾げて言った。
「そうとも限らないぞ。宝の地図の洞窟のボスは、倒してもそのうち復活する不死の身だからな。我々が何度倒したところで復活するのだから、共犯だとしても痛くも痒くも無かろう」そう言ってイザヤールは肩をすくめた。
「え~、このままボス戦に突入しちゃうんですかー?!神官の意図を確認に来ただけのつもりだったんで、ボス戦はちょっと予定外ですよう~。それより、こっそり神官の様子を窺うんじゃなかったんですかー」
 魔法使いの青年はボス戦になりそうな成り行きにうろたえだした。
「大丈夫だ、下がって見ていてくれれば、イデアラゴンなら我々二人でも何とかなる。そうだな、ミミ?」
 イザヤールの言葉にミミは頷いた。
「とりあえずイデアラゴンを倒して、その後すぐにダンジョンを脱出せずにあの神官の様子を見れば、本当にイデアラゴンと無関係かどうかも調べられると思うんです。私たちが必ずあなたをお守りしますから。・・・それでもダメですか?」
「え~、ミミさんがそこまでおっしゃるなら、いっかな~。じゃ僕、マホカンタとバイキルトくらいはしますけど、しっかり守ってくださいねー」
 イデアラゴンは呪文攻撃を主に使ってくる魔物なので、呪文を跳ね返すことのできるマホカンタやミラーシールドを使っておけば、だいたい自滅してくれるのだ。今回もその作戦で行けば人をかばいながらでも充分戦えると判断して、ミミとイザヤールはイデアラゴンに戦いを挑むことにした。念のためミミは回復と攻撃両方の呪文が使える賢者に転職した。
 だが、いざ戦いになって、戦闘前のイデアラゴンの言葉が常と違ったので、ミミとイザヤールは緊張で全身の神経を鋭く尖らせ、身構えた。
「ごふっふっふ・・・ヤツの心の迷いの如く混迷した人間どもの心のおかげで、新たなチカラを蓄えることが、できそうだ・・・。何のことかわからぬか?ならばわからないまま死ぬがいい!」
 イデアラゴンとの戦闘になった!

 とりあえずいつもの対イデアラゴン戦のように、呪文返しの防御をすることにして、魔法使いの青年がマホカンタを唱えるまでの間かばえるようイザヤールは「におうだち」をし、ミミは「やまびこのさとり」で呪文を二回唱えられるようにした。するとイデアラゴンはイオナズンを唱えてきたが、その威力が何故かいつもよりも強力で、一身にダメージを引き受けていたイザヤールは、かなりの高ダメージを受けた。
(そんな・・・いつものイデアラゴンと強さが格段に違う・・・!)
 やはり油断はできないとミミは急いでイザヤールに回復魔法をかけたが、今度はそのミミにイデアラゴンは、メラガイアー並みに威力のあるメラゾーマを唱えてきた!強烈な炎の玉をもろに受けて、彼女は歯を食い縛ったが、冷静な判断を保ってイザヤールと共にミラーシールドを使って、魔法攻撃をパーティ全員で跳ね返せるようにした。
 するとイデアラゴンは、今度は「ためる」を使ってテンションを上げて殴りかかってきたのを、やはりイザヤールが前に出て受け止めたが、やはりなんといつもの数倍のダメージを受けて、受け止めた究極の盾も軋むような音すら立てた。だがそのダメージのおかげで必殺チャージをできた彼は、テンションブーストの発動準備を始めた。やはり明らかに攻撃威力もアップしていると見て取ったミミはスクルトでパーティ全員の守備力を上げた。魔法使いの青年も、フォローしてくれてイザヤールに攻撃力アップの呪文バイキルトをかけた。
 ミミたちの守備力が上がったのを見て取ったイデアラゴンは、また呪文攻撃に戻ったが、今度はミミたち全員呪文返しの効果を持っていたので、高威力のイオナズンのダメージが三人分跳ね返されイデアラゴンは大ダメージを受けた!イザヤールはテンションブーストを発動し一気にテンションを上げ、バイキルトがかかりスーパーハイテンション状態のはやぶさ斬りで斬りつけた!
 通常ならイデアラゴンはそれで倒れてもおかしくないダメージだったが、やはりHPも高くなっているのか、まだ倒れなかった。だがミミがドルマドンの二回がけをし、それに怒り狂ってまたイオナズンを唱え跳ね返されて、イデアラゴンは結局自滅した。一同は安堵の息をついて、互いに無事を確認し合った。
「イザヤール様、大丈夫?」
「ああ、おまえこそ、怪我の具合は?」
「私は大丈夫。・・・無事でよかったの・・・」
「あの~、お二人さん、一応僕のことも心配してくれません?おかげさまで無傷ではありますけど・・・」
 イデアラゴンが倒れると、いつもとは異なり、手に持っていた本が落ちていた。ミミはそれを拾い上げ、イザヤールと一緒に用心しながらも思いきって開いてみると、本の中からたくさんの光の玉が飛び出して、あっという間にどこかに散らばっていった。
「今の・・・何?」
「何だかエネルギーの塊のようだったが・・・」
 改めて本のページを見てみると、全て白紙だった。
「そんな・・・強化されたイデアラゴンが、倒されるとは・・・」
 上り階段の方から声がしたので、一同がそちらを見ると、先ほどの神官が丸顔を蒼白にして、へなへなと座り込んでいた。
 すっかり気落ちした神官が白状したところによると、イデアラゴンに契約をもちかけられて、人間の持つ力の収集をすることになった。集めた力をエネルギーに変換してイデアラゴンに集めて、強化していたのだ。力を奪われた人間たちは、実は気付かぬ間に「うつくしそう」を与えられていて、それで自分の持つ能力を引き換えに魅力を手に入れたと信じ込まされていたのだった。
「私は本当に信じていたのだ・・・腕力や知性を使うのは、結局下働きの者たちの役目で、特権は人心を掌握できて利用できる者こそが握るものなのだと・・・。努力する者は搾取され利用され続け、頭は空っぽだがずるくて美しい女、口のうまい要領のいい怠惰な男が、うまいこと生きている姿を、散々見てきた故に、な・・・。だから、本当に思っていたのだ。不要な能力なら、エネルギーに変えて有効に使える者に集めても何も問題あるまい、と・・・」
 この神官も人を騙していたとはいえ、信念は嘘ではなかったことが、余計にミミを切なくさせた。
「もう一度人間と信仰を見つめ直し、真の幸福とは何か考えてみたいと、あなた方を見て思いましたよ。お礼を言うべきかもしれませんな。・・・止めてくれて、ありがとう、と・・・」 そう言って、神官は去って行った。
「なーんだ、じゃあ僕のカノジョも、怪力と引き換えに魅力をアップしたんじゃなくて、力を奪われてうつくしそうで魅力アップしていただけなんですねー」
 やれやれと魔法使いの青年は苦笑した。
「先ほどのあの光が、集められたそれぞれの力だとすると、君の恋人の戦士としての力も、今頃戻っているかもな」
 イザヤールが言うと、魔法使いの青年は意気揚々と叫んだ。
「じゃあ、力が戻る上に前よりキレイになった、ってことですね!ラッキー!これもミミさんが助けてくれたおかげです、お礼に今度二人っきりでお食事でも・・・って、イザヤールさん顔恐い怖いコワイ!冗談ですってー!」
 魔法使いの青年はお礼にと「魔力のたね」をくれて、一同はセントシュタインに帰った。

 数日後。ルイーダの酒場のところに、あの魔法使いの青年が、また訪れた。
「うっうっ、ルイーダさーん、僕の傷心を癒してくれるカワイイ女戦士さん紹介してくださいー!」
「あら、やっぱり彼女にフラれたわけ?」
「やっぱりってなんですかー!彼女、せっかく力も戻ったのに、『もうヘタレカレシに甘えられ守り続けるなんてまっぴら、スーパースターに転職して女の子らしく扱ってもらえる新しい人生送る!』って言って、行っちゃったんですー!あんなにカノジョの為に頑張ったのにー」
「力を取り戻したのは成り行きで、頑張ったのは主にミミとイザヤールさんでしょ。大丈夫、スーパースター職の厳しさを知ったらすぐに帰ってくるから、ちょっと待ってみたら」
 ルイーダの予言通り、間もなく魔法使いの青年の恋人の女戦士は間もなく戻って来ることになるのだが、戻った際に彼が性懲りもなく他の冒険者の女の子を口説いている真っ最中に出くわして、戻った怪力でバキバキにしばいたという。〈了〉
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2 コメント

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必要だったのは… (神々麗夜)
2016-03-07 14:19:18
遅コメ失礼します
強化されても結局跳ね返された呪文に自滅したイデアラゴンに必要だったのは力より賢さだったのでは…?w
近年、TVでよく観る馬鹿を売りにするタレント…好きになれないです。はい。可愛い!ってよりウザい!って思うタイプです。
しかしルイーダさんが紹介しようとした荒くれパーティってつまり上の『強烈パーティ』みたいな?

もしもうちのパーティ+aがあの神官にあっていたら
リリン「あたくしは強さ、優しさ、美しさ、知識全て完璧ですから必要ありませんわ」
ククール「俺も持って生まれた美しさと才能があるから必要ないな」
シェルル「僕も別に今の人生になんの不便もないし。可愛い彼女と友達がいるし」
レレン「魅力って食べ物?」
神官「ナルシストと惚気と馬鹿のパーティだった…あ~もう行って下さい」
ゴンタ「(あの軟弱連中をぶっ潰す為に後をつけてきたら変な神官に会っちまった…)力を無くすだと?ふざけんな!力こそ全てだ!!」
ゴスッ!
神官「脳筋だった…しかも殴られた」
エイト「(ククールとチーズについて語ろうと追いかけたら変な神官に会ったw)へぇ!魅力が上がるのかいいね!お願いしよっかな」
神官「やっとまともなのが…」
エイト「このチーズを魅力的に!」
神官「チーズか!もうやだ…」
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案外有効あらくれパーティ (津久井大海)
2016-03-08 00:33:10
神々麗夜様

いらっしゃいませこんばんは☆いえいえ、コメントはいつの記事だろうとお好きな記事に、気の向いたとき記入をどうぞ大歓迎、でございます☆お気遣いありがとうございます☆

イデアラゴン、ゲーム内容と同じような戦闘シーンにしてみましたが、呪文返しで自滅、こちらとしては楽ですけど、ほんと賢さが足りないっぽいですよね。アウルートやレパルド辺りなら絶対いてつくはどうかけてくるでしょうに。

はい、まさに一昨日の記事の「強烈パーティ」状態だと思われます。でもさすがに強くて役に立つあらくれパーティ、案外いいのではないかと。

そしてきっと自信があることこそ、悪者につけこまれない最大の防御かもです!そちらのパーティの皆様はそれをわかってわざとおっしゃって撃退する作戦・・・ですよね?wしかもチーズですか!チーズが手放す能力って、味とか?(ダメじゃん!)
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