セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

謎の魅力交換所(前編)

2016年03月05日 12時34分26秒 | クエスト184以降
遅くなりました&案の定前フリ長で続きものになっちゃいましたの追加クエストもどき。最近「弱さでの支配、ってのもあるよな~」とふと思ったことから思いついた話です。あと見た目ってもちろん大事ですけど、内面の個性も伴わないと魅力にならないんだろうなあ、なんて当たり前なことも思ってみたり。本日もバタバタ家庭事情につき続きはまた後ほどでお許しくださいまし。

 最近、ある宝の地図の洞窟が大人気になっているという噂が、冒険者の集う場所ルイーダの酒場で盛んに囁かれていた。
「どんな洞窟なんでしょう?レアアイテムがたくさんある洞窟だと嬉しいですわね」
 自らのショップの珍しい品揃えに燃えるロクサーヌが、いつもより更に輝くような笑顔で言った。
「お客様情報によると、アイテムじゃなくて、特別なスキルを身につけることができる洞窟らしいよ。どんなスキルなんだろうね。宿屋の経営力アップとか?まさかねー」
 リッカが言うと、ルイーダが笑って情報を補足してくれた。
「リッカ、あなたの向上心には頭が下がるけど、もちろん違うわよ。なんでも、手持ちの能力を『魅力』に変えてくれる不思議な力を持った神官が居る洞窟らしいわよ。ダーマ神殿の大神官の能力と似ているのかしらね」
「手持ちの能力を、魅力に・・・?」
 話を聞いて、ミミは深刻な表情をして考え込んだ。それはどういうことなのだろう。
「まあ、私たちには必要無いわよね」ルイーダがいたずらっぽく笑い、冗談めかした口調で言った。「だって私たちみんな、充分魅力的だもの、ねえ?」
 それで一同も笑い、ミミも緊張がほぐれて表情は和らいだ。
(もしかしてその洞窟に居る神官さんは、訪れた人々の能力、すなわち長所を最大限に引き出すことで、よりその人を魅力的に見せる効果的な方法をアドバイスしてくれるのかな・・・?そうだといいな)
 しかしどこか漠然とした不安を感じたので、ミミは近いうちにその洞窟と神官を調べてみようと決意した。

 そんな矢先のことだった。それから数日後、ルイーダの酒場に一人の困り果てた青年が訪ねてきた。この酒場をたまに利用しているが、普段は恋人の女戦士とコンビで冒険するのを基本としている魔法使いである。
「ルイーダさん!腕の立つ戦士を紹介してください!」
「あらどうして?あなたは戦士ならカノジョさんで間に合っているでしょ?ケンカでもした?」
「違うんです!それが、その・・・」
 彼の説明によると、恋人の女戦士は、今噂の洞窟に潜り、見違えるような姿になって帰ってきた。例の神官に、女戦士としての怪力を「魅力」に変えてもらったのだという。それを聞いても初めは意味がわからなかった魔法使いの青年は、どちらかと言えばおしゃれには無関心で少々ワイルド過ぎた彼女が綺麗になったことを喜んでいた。だが・・・。
「彼女、本当に剣術とか使えなくなって、自慢だった腕力も無くなっちゃったんです。フォークより重い物も持てなくなっちゃって、前は僕の代わりに軽々開けてくれたジャムの蓋も、『あ~ん、開かないわ~、ねえお願い~、開けて~ん』なんて言う始末で。これじゃとても冒険連れて行けませんよ。しかも本人は、それを不便に思うどころか、女の子扱いされてみんなにちやほやされだしたって喜んじゃってるし」
「え?ホントに力が無くなっちゃったの?その妙な神官に説得されて、力が無くなったふりしてぶりっこしてるとかじゃないの?」
「いや、僕も最初はそれ疑ったんですけど、どうもほんとみたいなんですー。ギガンテスに踏まれてもへっちゃらなあの逞しさはどこへ、って感じで」
「それはなかなか問題ね。・・・で、とりあえず別の戦士を連れてその洞窟に行くつもりね?」
「はい、そうなんです!何があったのか調べたいんですが、僕、魔力と色男っぷりには自信ありますが腕力はからきしですから」
「わかったわ。間違いなく最強クラスの戦士を今紹介す・・・」
「あ、そうそう、強いだけじゃなくてもちろんカワイイ女の子の戦士を紹介してくださいねー。僕、むさ苦しいパーティになるのはイヤなんでー。性格は勝気もいいけど戦士なのにおしとやかとかも萌えるなー。あ、あとルイーダさんみたいなナイスバディな娘がいいです」
「・・・」
 ルイーダは呆れたが、頼まれた通りの冒険者を紹介するのが彼女のプロとしてのプライドである。ただし、もちろんこのまま青年の思うツボにしてやるつもりもなかった。美しくも妖艶、かつどこか小悪魔的な笑顔で、ルイーダは答えた。
「しょうがない子ねえ。いいわ、特別大サービスで、注文通りの戦士に加えてもう一人、これまた最強クラスのバトルマスターを紹介してあげるわ☆」
「マジですか?!バトルマスターだと戦士も極めた強者じゃないですか!強くてカワイくて色っぽい戦士系二人!やったあ☆」
「そうねえ、二人とも強くて容姿端麗で色気もあって性格良くてナイスバディは保証ね」
 もう一人はカワイイではなく男前、そして彫刻のような体躯の均整の取れた筋肉質の男の体を「ナイスバディ」と表現していいのかどうか甚だ疑問はありそうだが、ルイーダはしれっと保証した。そして、大声で呼びかけた。
「ミミさーん!イザヤールさーん!ご指名よー!」

 数分後。現在戦士職で骨格は華奢だが出るところはしっかり出ている悩ましい肢体をアマゾネスチェインに包んだ、愛らしい顔のミミに、魔法使いの青年は小躍りせんばかりに喜んだが、もう一人の「最強クラスのバトマス」が、確かにその部分に関しては偽りは無かったものの、現れたれっきとした男性のイザヤールを見た途端に、テンションが一気に下がっていた。
「ちょっとルイーダさん!むさ苦しいパーティはイヤだって言ったじゃないですか!」
「イザヤールさんは、逞しいけど知的で清潔感もあるタイプだから、全然むさ苦しくないでしょ。文句があるならこの二人じゃなくて、あらくれ二人を紹介したっていいのよ」
「ちぇ~。まあミミさんがカワイイからいっか。しかもこう見えて強いんなら、僕、今のカノジョと別れてミミさんを新しいパートナーにしようかな~♪・・・あっ、やだなあ、じょ、冗談ですよ」
「最初に言っとくけど、この二人もあなたみたいに恋人同士でコンビを組んで冒険しているのよ。ミミにちょっかい出したらイザヤールさんにギガスラッシュされる可能性があるからやめといたら」
「えーっ、しかもミミさんのカレシっ?!・・・はいはいわかりましたよ、冗談だって言ったじゃないですかあ~」
 ミミとイザヤールには幸いにもこのやりとりは聞こえていなかったが、イザヤールはノリの軽そうな今回の依頼人に多少懸念を感じて、ミミにおかしなことをしたらギガスラッシュどころかギガブレイクだと(さすがに当てるつもりは無いが)考えていた。
 それはともかくミミは、調べようと思っていた件の調査ができることになったのと、懸念が当たってしまいそうなことに関心が集中していた。
「それでは、あなたの彼女さんは、一人でその洞窟にいらして、帰って来たらそんな状態になっていたのですね。・・・力を奪われた、ってことでしょうか?」
「そうみたいなんですよー。僕も一緒に行けばよかったんですが、その日はお腹壊しちゃっててー。詳しいことわかんなくて、すみません~」
「まずその怪しげな神官を問い質した方が良さそうだな」
「イザヤールさんなら相手もビビってすぐにいろいろ白状しそうですねー・・・わーん、僕も睨まないでくださいよー!」
「別に睨んだつもりは無いのだが」
「ではとりあえず、その洞窟まで行ってみましょう。案内お願いできますか」
「はいっ、喜んで!よかったら先に遊園地か花の名所かイケてるレストランでもご案内しま・・・だから冗談ですって~」
 イザヤールの鋭い眼光により魔法使いの青年は軽口をやめ、きちんと案内することを改めて約束した。ミミはクエスト「謎の魅力交換所」を引き受けた!

 依頼人は例の洞窟の地図の写しを持っていたので、ミミたち三人はさっそくその宝の地図の洞窟に向かった。洞窟自体は遺跡タイプで出てくるモンスターはミミたちにとってはさほど苦戦する相手ではなく、回復アイテムさえ準備していけば、女戦士一人でも充分攻略できそうなダンジョンだった。
 宝の地図の洞窟ということは最下層に待ち受けているボスが居る筈だが、能力を魅力に変えてくれるという神官がその手前のフロアに居る為、この洞窟を訪れる者の目的はその神官なので、みんな最下層まで行かないで引き返すらしい。というより、もしかすると神官が最下層への階段の通路を塞いでいるのかもしれない。
「ダンジョンに居る神官って、普通は怪しいと思うんじゃないですか・・・?」
 ミミがごもっともな疑問を口にした。
「僕もそう思ったんですけど、魅力が上がるならそんなことどーでもいいと思う冒険者も多いみたいで」魔法使いの青年はやれやれと首を振りながら答えた。「それに僕のカノジョ、こー言っちゃなんですけど、戦士で脳ミソも筋肉でできてるような娘なんで、その辺何も疑問に思わなかったみたいですし」
 三人は、神官に会う前に、そのままストレートに疑惑をぶつけるか、それとも魅力を上げたい冒険者のふりをして近付くかの打ち合わせを始めた。
「う~ん、でも僕、魅力はこれ以上上げよう無いくらい美形だからなあ。ミミさんだって、こんなにカワイイのに更に魅力上げたいなんて言いに行ったら不自然でしょう?イザヤールさん、あなたの睨みで白状させる方向でどうです?」
「ミミがこれ以上魅力を上げる必要が無いくらい可愛いのは認めるが、もしその神官が何か悪巧みをしているとすれば、私が睨むくらいで白状するとはとても思えないが」
「あ、あの、イザヤール様・・・///」
「大丈夫ですよ!イザヤールさんの鋭い眼光なら、地獄の帝王だって裸足で逃げ出しますよ!」
「私が睨んでもエスタークが逃げ出したことは無いが」
「エスタークは元々裸足っぽいですしね」
「二人ともつっこむとこそこですか?!もしかしてカップルでけっこう天然ですねっ?!」
 そのような脱線もありつつの相談の結果、いきなり行動を起こすのではなく、神官に会ってみて話を聞き、不審な点を感じたら隠れてこっそり様子を伺って正体を暴く、ということで手筈はまとまった。
 しばらく下のフロアに降り続けていて、やがて魔法使いの青年は言った。
「地下八階か。カノジョは、確か神官にここで会ったって言っていましたから、そろそろ見つかるかもです」
 三人がフロア中を捜索すると、程なく下り階段の近くに、神官らしき男が立っているのが見つかった。不気味な雰囲気というよりは、むしろ陽気な感じでやや太めの中年の男で、しかも愛想のいい笑顔を浮かべていた。神官は、ミミたちに気付くと、笑顔をさらに明るくして、両手を広げて歩み寄りながら、言った。
「おお、ようこそいらっしゃいました!生きていく最高の武器は、腕力でも知性でもなく、他者を虜にする魅力です!あなたの持つ力を、美貌はもちろん、女性なら色気に、男性ならカリスマ性に変えて、ハッピーライフを送りませんか?」
「あ、あの、私たち・・・」ミミは神官の陽気さに戸惑いながらもようやく口を挟んだ。「そうじゃなくて、どうして能力を他の能力に変えるなんてことができるのか、お尋ねに来ただけなんです」
「なるほど」神官は、ミミたちの顔を交互に眺めながら、頷いた。「ご心配はムリもありませんが、それは企業ヒミツでしてな。でもまあ聞いてください、この世界を争いだらけにしているのはなんですか?腕力です。この世界を破滅の縁に追いやるのはなんですか?神をも畏れぬ知性です。その点、美と魅力による支配は、誰も不幸にせず、むしろ崇拝する喜びさえ生み出すのですよ!あなた方は充分お美しいですが、あなた方の魅力をもっと強化すれば、世界を従えることも不可能ではありませんな。さあさあ、ものは試しに、如何です?」
 この神官は、持論を心から信じきって言っているらしかった。感じる気配も、魔物のものではなく、人のもののようだ。
「私は・・・」
 ミミは、返答の為にゆっくりと口を開いた。〈続く〉
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