セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

伝えて・・・あの子に

2011年05月27日 23時57分50秒 | クエスト184以降
 今日のミミは、ロト装備ですっかり揃えた姿で、部屋から出てきた。伝説の勇者の装備なのだが、彼女が着ると、厳ついというよりはどことなく可愛らしい。
 自分は赤系の色の神々の装備に身を固めたイザヤールは、目を細めて彼女を見つめた。青い兜の下からこぼれる、晩秋の木の葉の色の髪が、やはり青い鎧に映えて、とても美しい。
「今日はロト装備か」
 彼が微笑んで囁くと、ミミは少し恥ずかしそうににっこり笑った。
「ロクサーヌさんが言ってたんです・・・今日は、伝説が始まった記念日なんだそうです。・・・よくわからないけど。だから、装備してみました」
「そうか」
「でも、それだけじゃなくて・・・」ミミは瞳の陰影を増して呟いた。「夢の中で、誰かに頼まれたの・・・」
「夢?」
 イザヤールは怪訝そうに首を傾げた。

 昨夜のことだ。ミミは、奇妙な夢を見た。
 夢の中でミミは、神殿のような、城のような空間に居た。辺りは、靄のような白い光に包まれ、視界が覚束無い。その視界の向こうに、ぼんやりと巨大な竜のようなシルエットが見えた。
 そのシルエットから、声が聞こえた。美しい、高貴な女性のような、声だった。
『元天使の少女よ・・・大魔王と戦う力を持つ少女よ・・・あなたに、お願いがあります・・・』
「私にできることなら」ミミは答えた。
『伝えて欲しいのです・・・。私の・・・に、・・・竜王に、伝えて欲しいのです・・・あなたを、今でもずっと愛し、見守っていると。誤った憎しみから、解き放たれるようにと・・・』
「わかりました、伝えます」
『ありがとう・・・。竜王の元へ行くときは、伝説の勇者の装備で行ってください・・・。私が、光の玉を託した、勇者の・・・』
「光の玉?」
「伝説の勇者ロトの・・・装備で・・・お願い・・・』
 ミミはクエスト「伝えて・・・あの子に」を引き受けた!

 そこで目が覚めたのだ。
「夢でもクエスト引き受けるなんて、とことんお人好しネ」
 サンディがひらひら飛び回りながら言い、言いながらもクエストリストに追加すべくリスト帳を引っ張り出した。そんな彼女に向かってにっこり笑ってから、ミミは言った。
「ただの夢かもしれないけれど、気になって。・・・だから、行ってみることにしました、大魔王竜王の所へ。ご一緒して頂けますか、イザヤール様?」
「もちろん」
 煌めきと陰影を増した瞳のミミを優しく見つめ、イザヤールは即座に頷いた。
(命を懸ける場所に行くときは、いつでも、一緒だ・・・)
 青い鎧と赤い鎧は、そっと寄り添って階段を下りた。
 そんな二人がルイーダの酒場に行くと、他の冒険者の注目が集まった。
「あら、もしかして二人とも、今日はいつもより気合い入ってる?」ルイーダが楽しそうに言った。「私も、今日友達が来る日じゃなきゃ、一緒に冒険行きたかったわ~。で、今日はどこ行くの?」
「宝の地図の洞窟の大魔王、竜王と戦ってこようと思うの」
「まあ、なかなか強敵ね。でも、ミミたちなら大丈夫ね」
 リッカとロクサーヌも一緒に出かけてくれることになり、ミミは「竜王の地図」を開いて、一同は大魔王の元へ向かった。

 大魔王竜王とは、もう何度も戦っている。今日も苛烈な炎と、痛恨の一撃の猛攻がミミたちを苦しめる。だが、フバーハを二度がけし、盾の秘伝書を回復役のロクサーヌに持たせたことで、着実に反撃を続けていった。
 バイキルトのかかったミミのはやぶさ斬りがとどめとなり、竜王を倒した!
(結局、何も起こらなかったな・・・)
 ミミは内心呟き、静かにロトの剣を下ろした。
 竜王はいつものように起き上がり、経験値の欲しそうな目でこちらを見てくる・・・筈だった。
 だが。今日のその目は。
 竜王は唸り、憎しみに瞳を燃え上がらせて、ロト装備に身を固めたミミを見つめ、言った。
「その紋章は・・・我ら竜の一族から、光の玉を奪った人間のもの・・・おまえか・・・?おまえが・・・」
「光の玉?奪った?」
「許さぬ・・・!我は光の玉を奪ったのではない!人間が奪った我が一族の物を、取り戻しただけだ・・・!」
 竜王が再び襲いかかってきた!

 先刻と比べものにならない猛攻が始まった。竜王が吐き出す炎は、更に激しさと熱を増し、尾を振り回してミミたちをなぎ払う。
 壁に叩きつけられ、荒く息を吐きながら、ミミは叫んだ。
「待って!・・・私は・・・あなたに伝えに来たの・・・!夢の中で、聞いたの!」
「・・・夢?」
 竜王の動きが止まった。
「夢の中で、竜の影が言ってたの・・・『あなたを、今でもずっと愛している、見守っている』そう伝えてと」
「竜の・・・影・・・」
「綺麗な、女の人の、声だった・・・」
 竜王は固まったかのように動かなくなった。その牙の並んだ口だけが、僅かに動いた。
「竜の影はこうも言ったの・・・『誤った憎しみから、解き放たれるように』、と!」
 ミミが続けて叫ぶと、竜王は目を閉じた。そして、そのまま去って行ってしまった。後には、宝箱だけが残された。
 一同は、しばらく呆然としていたが、やがて、リッカがぽつりと呟いた。
「さっきね・・・竜王が、口だけ動かしてたとき・・・私には、こう言ってた気がしたの・・・」
 私もたまに同じ言葉を呟くことがあるから。そう言ってリッカは目を伏せた。
「何て言ってたの?」
 ミミが尋ねると、リッカは少し恥ずかしそうに言った。
「笑わないでね・・・こう言ってた気がしたの・・・『お母さん』って」
「そう・・・」
 ミミは笑わなかった。では、夢の中で私に語りかけてきたあの声は。もしかしたら・・・竜王の・・・。
 そして、竜王は。何か人間に誤解を抱くようなことが起きて、大魔王への道へと歩み、奇しくも勇者ロトの子孫に倒されることとなったのかも・・・。
 時空を越えた謎に、運命の不思議さに、ミミは溜息をついた。
「ミミ様~、宝箱にはレッドオーブが入っていましてよ☆」
 ロクサーヌの声に現実に引き戻され、ミミはとりあえず、引き上げることにした。

 その晩もミミは夢を見た。昨夜の夢と同じ場所、同じシルエットと声が語りかけてくる。
『ありがとう・・・憎しみからすぐに解放されるのは、容易ではないけれど、いつかは、きっと・・・。ありがとう・・・』
 光はますます強くなり、シルエットは溶け込むように薄れていった。
『あなたに・・・神々と竜の・・・祝福を・・・』
 ここで目を覚ましてミミは身を起こした。
「どうした?」
 隣の寝台で眠っていたイザヤールも目を覚まし、心配そうに起き上がった。
「あ・・・起こしてしまってごめんなさい・・・。昨日と同じ場所と声の夢を、見ました」
 イザヤールは黙って頷き、そっとミミの傍らに座って、優しく抱きしめてきた。
「ありがとうって言ってくれました。私に、神々と竜の祝福を願ってくれました・・・」
 ミミは呟いて、幸せそうに彼の腕の中に収まった。
「世界には、不思議なことが、時空を越えた先には、もっと不思議なことが、たくさんあるんですね・・・。知りたいです、もっと、たくさんの不思議を」
「そうだな」
 ミミの言葉に、微笑んで頷くイザヤール。そして、しっかりと彼女を抱きしめて、囁いた。
「私も付き合わせてくれ。不思議を探し、その謎を解く旅に。・・・きっと、人間の寿命なら、一生を費やしても足りないくらいだろうな。生涯退屈とは無縁そうだ」
 顔を見合わせて笑い、それから唇を重ねる二人。だから、気付いていなかった。ミミの枕の下に、美しい虹色に光る、どこから来たのかわからない、不思議な竜のうろこが、入っていることに。
 それは、夢の中の依頼人の、クエストのお礼だったのかもしれない。〈了〉

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