セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

流転の腕輪

2012年05月12日 01時39分24秒 | クエスト184以降
今週も遅くなって失礼しましたの捏造クエストシリーズこと追加クエストもどき。今回は、DQ4の重要なキーワードアイテム、黄金の腕輪が登場です。ガナン帝国も、進化の秘宝みたいなものを作ろうと目論んでいたのではないかと妄想しまして、そんな話を書いてみました。ストーリーのベースは同じカテゴリの「過ちを、正させ給え」とほぼ同じテーマです。

 カラコタ橋は、玉石混淆様々な物が行き交う場所でもある。大概はがらくただが、たまにとんでもなく貴重な物が、この掃き溜めのような地に現れることがあるのだ。
 だが幸か不幸か、ここの住人たちは、その価値に気付いていないことが多い。デュリオに会いにカラコタ橋を訪れたミミとイザヤールは、そのうちの一人に会った。ここの住人の常で、残念ながらかなりべろべろに酔っ払っていた。
「おねいちゃん、カワイイねえ~。カワイイおねいちゃんには、キレーなアクセサリーがお似合いだよう」 彼は、危なっかしい手つきで、ポケットの中から何かを取り出し、イザヤールに向き直った。
「あんたカレシさんかい?男なら、カノジョさんにキレーなもん買ってあげるカイショーがないと~。この腕輪なんかどう?なんとたったの一万ゴールドぉ~!」
 彼が取り出したのは、黄金色に光る、見事に細工された腕輪だった。確かに美しい品だったが、どこか異様な気を放っている。どうせ盗品か、いずれにしてもあまり関わらない方がいい品だろう。
「ミミ、行くぞ」
「はい、イザヤール様」
 二人が放っておいて立ち去ろうとすると、男は慌てて立ちはだかった。
「じゃ、じゃあ五千ゴールド・・・って待ってー!・・・思い切って千ゴールド!」
 そんな男を振り切るように、二人は走ってその場を離れようとした。
 だがそのとき。どこからか、不思議な声が聞こえてきた。
『連れていってくれ、その腕輪を』
 ミミとイザヤールは思わず顔を見合わせた。目の前の男の半泣き声と重なっているから、彼の声ではない。近くには他に、人の気配もない。
 ミミとイザヤールは改めて腕輪を見つめた。それの漂わせる気配は、聖なる力とも邪悪ともつかず、ただ大いなる力としか形容しようのない気だった。強いて言うならば、「女神の果実」の放つ気配にもどこか似ていた。二人は顔を見合わせて小さく頷き、芝居を始めた。
「本当に綺麗な腕輪・・・ねえイザヤール様、買って」
「仕方ない、千ゴールドなら買うか」
 二人の声は呑気だったが、顔には僅かに緊迫感が漂っていた。この腕輪を、このまま人間たちの間に放置してはならない。二人の元天使の勘が、そう語っている。
 首尾よく交渉はまとまり、ミミたちは黄金の腕輪を手に入れた。

 その晩。リッカの宿屋に戻って、あらゆる珍しい物に詳しいロクサーヌに見せたが、彼女もこの腕輪のことを知らなかった。
「ステキなデザインですわ。レプリカを作って売り出したら、きっと人気が出ますわね。でも・・・」
「でも?」
「本物は、お店に置く気になれませんわ・・・何だか、人の手におえないチカラ、そんな気が致しますの」
 ラヴィエルやサンディにも聞いてみたが、二人もこの腕輪のことは知らなかった。
「ヤバそうだったら最悪、セレシアおねーちゃんに渡しちゃいなよ。たぶんどーにかしてくれるって」
 サンディの言葉に、それでいいのかなと思いつつも、女神様に聞いてみるのも手かな、とミミは思った。八方塞がりになったら聞いてみようかな。
 自室に戻ると、ミミは溜息をついて腕輪を眺めた。
「これ、どうしたらいいかな・・・イザヤール様、私たちが持っていて、大丈夫だと思いますか?」
「明日、古文書をあたって、もう少し調べてみよう。今日は休もう。部屋に置いていても、たぶん害はないだろう」
 あのとき聞こえた声は、なんだったのだろう。連れていってくれとは、どういうことなのか。
 謎の解明は明日に回すことにして、二人はとりあえず床に就いた。

 ミミは夢を見た。夢だとわかっていながら、現実感漂う奇妙な夢だった。イザヤールも傍らに居て、二人で一緒に黄金の腕輪を手に持っていた。
 腕輪の光が辺りを照らす以外は、月の無い夜のように真っ暗だった。だが間もなく、遠くが白くぽうと光った。その光はどんどん近付いてきて、側に来てようやく、それが白いフード付きローブをまとった、中老の男だとわかった。
「あなたは?」
 ミミが尋ね、イザヤールは彼女をかばうように立って眼光鋭くその男を見つめると、男は口を開いた。
「私は、古の錬金術師の魂。その腕輪は、私が作ったものだ。そなたたちに頼みがあり、その腕輪を託した」
「じゃあ、昼間の声は、あなたの?」
 男は頷き、言葉を続けた。
「頼みとは他でもない、その腕輪を破壊してほしい」
「何故だ?確かに強大な力を感じるが、邪悪なものとも思えない」
 イザヤールが尋ねると、男は答えた。
「だが、強大な力は、使い方によって聖にも邪にもなる。・・・この腕輪のモデルとなった『黄金の腕輪』は、かつて一人の天才錬金術師により異世界で作られた物で、魔王まで生み出すほどの恐ろしい物だったが、天空の血を引く勇者により魔王もろとも地上から姿を消した。
だが、かつてこの世界に存在したガナン帝国という国は、あらゆる古文書や情報を駆使して、様々な実験のみならず、様々な武器や道具の再現を試みた。私は・・・その一員として、『黄金の腕輪』を復元することに成功した」
 ガナン帝国と聞いて、ミミとイザヤールは、顔に緊張を走らせた。
「錬金術師としての全ての力を懸け、虚栄も、功名心も満たされたが、帝国に疑問を抱き始めた私は・・・完成したばかりの黄金の腕輪を、ドミール侵攻のさくさに火山に放り込み、それが知れてオンゴリの崖送りとなり、そこで一生を終えた。
だが、それで終わりではなかったのだ。火山の灼熱も、黄金の腕輪を破壊することはできず、やがて旅人に拾われ、人から人の手へと、世界を巡り続けて、今日に至ったのだ。
幸いこれまで誰もその力に気付かなかった。だが、いつまでも幸運を宛にしてはいられぬ。この腕輪は、深海に沈んだこともあったし、地中深く地割れに埋まったこともあったが、いつの間にか必ず出てきてしまうのだ。
頼む、この腕輪の力が悪用されぬうちに、そなたたちの手で、破壊を」
 ミミとイザヤールは頷き、ミミはクエスト「流転の腕輪」を引き受けた!

 と、ミミはここで目を覚ました。いつの間にか朝になっていて、黄金の腕輪は朝日を浴びて眩しい光を放っている。隣のベッドのイザヤールの方を見ると、彼もまた、少し呆然とした顔で腕輪を見つめていた。
「イザヤール様、私、夢を見ました」
「私もだ。・・・古の錬金術師に、腕輪の破壊を頼まれる夢ではなかったか」
「そうです」
 二人で同じ夢を見たということは、やはり夢というより、錬金術師の魂が訴えかけてきたのだろう。
 ミミとイザヤールは、腕輪を前にさっそく相談を始めた。
「ドミールの溶岩も平気では、炎で溶かすのも期待できませんね・・・」
「深海に投げ込むのも不完全だな」
「埋めてもダメみたいですし・・・」
「とりあえず、我々の力でどこまでできるか、やってみよう」
 さっそくミミとイザヤールは、ある宝の地図の洞窟に向かった。魔物が一切出ないフロアがある地図を持っていたので、そこで様々な試みをしようというのだ。
 まずは、神々の武器である彗星の剣を構えて、イザヤールは腕輪に向かってギガブレイクを放った。まともに電撃が命中したが、残念ながら腕輪は無傷だった。黄金に見えるが黄金ではないらしく、その後試みたメタル斬りも効果がなかった。
 ミミは魔法使いになって杖を振りかざし、メラガイアーとマヒャデドスを交互に放った。MPが切れたら回復して繰り返したが、腕輪は相変わらず黄金色の光を放っていて、壊れる様子はなかった。
 賢者に転職してドルマドンを放ったり、パラディンになってグランドネビュラをぶつけたりしたが、やはり効果はない。念のためバックダンサー呼びやバギムーチョも試した。が、やはり駄目だった。
「普通に壊すのは諦めた方が良さそうだな」
「そうですね・・・」
 ミミとイザヤールは床に転がる腕輪を前に考え込んだ。古の錬金術師は、自分たちの力を見込んでこの腕輪を託したのに。・・・錬金・・・。
「あ」
「そうか」
 二人はほぼ同時に呟いた。そして、急いでリッカの宿屋に戻ることにした。

 帰るとさっそくカマエルに直行し、黄金の腕輪を、リサイクルストーンと一緒に入れてみた。
「残念ですが、この組み合わせでは錬金できません」
 申し訳なさそうなカマエル。
「ダメだったの・・・」
 ミミががっかりすると、イザヤールは首を振って言った。
「諦めるのはまだ早い。リサイクルストーンを、三つに増やしてみよう」
 リサイクルストーン三個と共に腕輪を入れると、カマエルは吐き出さずもごもごと動き始め、やがて、一個の全く普通の「きんのブレスレット」を吐き出した!
 リサイクルストーンは、錬金された物質を最初の状態に戻すアイテムだ。しかも、戻るのはベースとなった物だけ。他に何を組み合わせて「黄金の腕輪」となったのか、もはや永久にわからないだろう。・・・それでいい。
 その晩、またミミとイザヤールは夢を見た。古の錬金術師が現れ、深々と頭を下げた。
「感謝する。・・・天使だった者たちよ・・・」
 そして、金のブレスレットを手に取り、代わりにミミに「しんかのひせき」を手渡して、背を向けた。そのままゆっくりと、彼は去っていった。やがて、遠くの白い光のようになって、消えた。
 ここで目が覚めた。昨夜枕元に置いた金のブレスレットは姿を消し、その代わりにミミの手の中には、「しんかのひせき」があって、ただの夢でないことを物語っている。イザヤールはベッドから滑り下りてきて、ミミの隣に腰かけ、彼女の手の中の石を見つめた。これとてかなり強大な力を持つ道具だけれど。幸いにも、悪用されることはない。
 制御しきれない強大な力を求めてしまうのは、人間のサガなのだろうか。二人は暫し黙ったまま、そっと身を寄せ合っていた。〈了〉

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