セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

危険な落とし物〈前編〉

2017年12月02日 23時56分12秒 | クエスト184以降
土曜日のしかもギリギリ更新でしかも続き物でまだ完結しないんか〜い!の追加クエストもどき。ほんと申し訳ございません・・・。というわけで今回も続き物、前後編で終わる・・・かな?前回の忘れ物に続いて今回は落とし物捜しクエストですが、今回落とした人がサンディの為にまたひと騒動な予感、そして場所は限定されているとはいえ、なんとあの異世界に出張して、天空の古戦場を冒険することになってしまいます。どうなることやら〜。

 宝石や鉱石の中には、明らかに魔力を有する物もたくさん存在する。むしろ魔力が結晶化して宝石状になるものも少なくない。そんな石を手に入れて強力な装備品を作るのが錬金術師の腕の見せどころだ。ミミは、今日もオーブやオリハルコンなど貴重な宝玉や鉱石を錬金釜カマエルに入れながら、ふと呟いた。
「そういえば、宝箱やキャプテン・メダルからたくさんもらっているから普段意識していないけれど、私、オリハルコンの鉱脈って見たことないかも・・・」
「オリハルコンは、元来神々の為の金属だからな。人間の力の及ぶ鉱脈は存在しないのかもしれない。それこそ、神々の世界にあるのかもな」錬金を手伝ってくれているイザヤールが、オリハルコンを光にかざしてしげしげと眺めながら答えた。「許されることなら、いつか、見てみたいものだな」
「はい。きっと、美しいだけでなく、とても神秘的だと思うの」
 ミミは濃い紫の瞳を輝かせて頷いた。だが、思いもかけずその願いがすぐに叶うとは、二人はそのとき予想だにもしていなかったのだった。

 その後また錬金の材料集めに行こうと、ミミとイザヤールが天の箱舟に乗り込むと、いろいろな物が溢れかえってたいへんなことになっていた。お菓子の箱が山と積まれ、主に女性用とおぼしき衣類があちこちに散らばり、凄そうな装備品がちらほらと無造作に置かれ、モンスターのぬいぐるみらしい物が無惨にひっくり返っていた。
 これはいったい何事かとミミとイザヤールが呆然としていると、ワンピースの山の一つが蠢いて、中から魔物・・・ではなく自称美少女妖精の頭が表れた。
「サンディ!帰ってたの?おかえりなさい♪」
 ミミが駆け寄ると、サンディもミミに飛びつくように抱きついてきた。
「ただいまーミミ!ロトゼタシアってなかなかイケてるトコだったワヨ♪けっこうのんびりしてきちゃった〜♪食べ物も超おいしくてさー、太っちゃったかも〜」
 サンディはこのところしばらく、ロトゼタシアなる異世界を旅していたらしい。どうやらちょうど今日帰ってきたところのようだ。
「そんなにいいところなの?旅の話、聞かせて、聞かせて!」
 ミミがわくわく顔でせがみ、サンディがいざ話し始めようとしたところで、アギロの怒鳴り声が箱舟内に響き渡った。
「こらっ、サンディ!喋る前に片付けるのがスジってもんだろう!なんだこれは!」
「テンチョーマジうるさい!アタシだって好きで散らかしてんじゃなくて、ちゃんと理由が・・・ってそーだ、忘れてたー!アレ探してるとこだったー!」
 サンディは再び、散らかした物の山に首を突っ込み、かき回すように放り投げ始めた。
「ないっ、ないっ、やっぱりないんですケドー!」
「サンディ、もしかして探し物をしているのか?」イザヤールが呆れ顔で言った。「それなら、こんな風にばらまかないで、一度きちんと片付けてから探した方が効率がいいぞ」
「イザヤールさん、正論ムカツク・・・」
「そんなこと言わないで」ミミが必死になだめた。「私も手伝うから、ね?」
 こうして村の元守護天使のお片付けスキルも相まって、箱舟内は瞬く間にきちんと片付いた。分別されすっきりとした荷物をサンディは調べていたが、絶望の表情を浮かべて叫んだ。
「やっぱり無いー!どどどどーしよー!」
「お、落ち着いて、サンディ、いったい何を探しているの?」
「ゲットしたばかりのピアス」
「そっか、確かにすぐに無くしちゃったら悲しいよね」
「それだけじゃないんだよね・・・。実はさ〜、そのピアスにくっついてる宝石が、マジスゴイ魔力持っててさ〜。このアタシサンディちゃんくらいイケてないと、制御できなさそっつーか悪いヤツの手に渡ったらマジヤバそうっつーか・・・」
 気まずそうに爪をいじりながら呟くサンディに、アギロは怒りを通り越して呆れた口調で言った。
「そんな危なそうなモンを無くしてくるなんてどんな了見だ。気持ちの弛みすぎにも程があるぜ」
「仕方ないじゃん、たぶん絶対あのとき無くしたんだもん!なんかやたらでかくて凶暴な魔物が、アタシを丸呑みしよーとして必死に避けてコケたことがあったからー。たぶんそのとき落としたっぽいしー」
「そうなんだ、でも無事でよかった・・・」ミミは濃い紫の瞳を潤ませた。「もしもサンディに何かあったら、私・・・」
「ミミ〜!アンタやっぱり超優しいわ〜!テンチョーと大違い!・・・でね、その超絶優しいミミにお願いがあるんだケド・・・」
 この時点でイザヤールとアギロはイヤな予感がしたが、ミミ本人はきょとんとしていた。
「なあに?サンディ?」
「お願い!アタシと一緒に、ピアス探しに行ってくんない?アレそのまま放置しといて、いい人が使うんならまあいいけど、悪いヤツが利用したらマジヤバそうだから!」
 やっぱりな・・・とイザヤールとアギロは苦笑し、アギロはイザヤールの肩をぽんと叩いた。どうせおまえも行くんだろ?という意味の肩ポンだ。ミミはサンディの言葉を聞いていきいきと瞳を輝かせ始めた。
「ほんと?ほんとに?!ロトゼタシアってところに行ってもいいの?」
「そ、そんなわくわく顔で見ないでよ〜。アタシは超エライから割とフリーパスだけど、フツーは世界から世界へ移動するのは、もんのすごくたいへんなことなんだから!連れてくのが一人ならともかく、二人ならなおさらだし!・・・今回は、そのピアス落としたっぽいダンジョンくらいにしか連れていけないからね、いい?」
「うん、もちろん♪」とミミ。
「二人?私も連れて行ってもらえるのか?ダメと言われても行くがな」やはりどことなくわくわく顔のイザヤール。
「だと思ったから連れていくんだし〜。でも言っとくけど、そのダンジョンマジヤバいからね!デート気分で行くとけっこうキケンだからね!」
 ミミとイザヤールは神妙に頷いたが、表情はやはり楽しそうである。ミミとイザヤールはクエスト「危険な落とし物」を引き受けた!

 道具袋と装備袋は持っていけるということでひと安心ではあるが、ダンジョンにしか行けないということは、アイテムが足りなくなっても買い足せる見込みは無いということだ。ミミはダメ元で聞いてみた。
「ねえサンディ、カマエル連れていっちゃダメ?」
「ダメ!」
「だよね・・・」
 出発場所は、例によってサンディの部屋の謎の旅の扉だった。星空のど真ん中のような空間のこの部屋自体も大いに謎なのだが、その謎が解ける日が来るかは不明である。
 それはともかく、まずサンディが旅の扉に飛び込み、ミミとイザヤールもすぐにそれに続いた。
 旅の扉を抜けると、そこはこれまでに無いタイプの形状の場所だった。ちょっとした小島くらいの地の縁に沿うように、道が螺旋を描いてすり鉢状の底へと続いている。真ん中はぽっかりと空いた空間で、底が見えないくらいに深い。穴の底から強く吹き上げる風と、穴の底に向かって吹き下ろす風の両方の流れがあるようで、あちこちに小さな竜巻が起きていた。そして、目の前にある巨大な柱には、美しい炎が燃えて辺りを煌々と照らしていた。
「このダンジョンはね、一つの大きな島みたいのが空に浮いていて、その中にあるの。だから、残念ながら今のアンタたちじゃどちらにしても外には出られないわね。すっごく高いところにあるんだもの」サンディが説明した。
「天空に浮かぶ島か・・・。まるで天使界のようだな・・・」イザヤールが呟く。
「よかった、島の地中を歩く作りで。縁に沿って歩いてまた落ちたらちょっと怖いもの」と今まで何度も高所から落下経験者のミミ。
「ちょっと怖いどころじゃないデショ!」
「今までの経験からすると、下に水があればなんとか大丈夫かな〜・・・なんて」
「全っ然大丈夫じゃなーい!」
 ともかく三人は、螺旋状の下り坂道に沿って歩き始めた。歩いてみてわかったが、この道はずっと底まで続いているわけではなく、ところどころ崩れ落ちたりして何ヵ所か途切れているようだ。しかし道沿いの壁面にときどき洞穴が有り、そこが迂回路になってちゃんと先まで進めるらしい。せっかくなので、洞穴は全て覗いてみることにした。
 しかし、のんびり探索という雰囲気ではなさそうだった。道を塞ぐように魔物たちがうろうろと歩いている。見馴れないものが大部分だったが、たくさんの剣を持つ甲冑姿の骸骨や、ドラゴンの骨と思われるものや、王冠を被った骸骨など、ゾンビ系の魔物が多いようだ。その中で、ミミの世界でもお馴染みのキラーアーマーも居て、ミミはちょっとだけ嬉しくなった。
 サンディによると、それぞれ「じごくのきし」「ドラゴンゾンビ」「デッドエンペラー」という魔物らしい。じごくのきしとドラゴンゾンビは、生きている人間がやってきたのを見るやいなや、骨や武器をガチャガチャ鳴らしながら駆け寄って襲いかかってきた!
 ゾンビ系なら炎の攻撃や呪文が有効だろうが、光もまた有効と踏んだ二人は、ギガブレイクとグランドネビュラを同時に放つことで光の力を更に増幅させて、アンデッドの群れを一掃した。
「これ、もしかして連携技?」
「名前は何にするかな」
「今考えてる場合かっつーの!」
 道沿いにある洞穴の一つに入ってみると、何かがキラリと光った。しかしその周辺を、屈強な男を乗せたドラゴンが何体か飛んでいる。
「あれはそこらのおっさんじゃなくてガーディアンっつー魔物ヨ!気を付けて!」サンディが叫ぶ。
 そこらへんのおじさんがドラゴンに乗ってるとは思わないけれどなあ・・・と思いつつミミは、イザヤールと共にドラゴン斬りを放ち、反撃されて多少ダメージは受けたが、倒すことができた。
 すると、上に乗っていた男は逃げ出したが、ドラゴンの方はその場に残っていた。まだやる気かとイザヤールが眼光を鋭くして剣を構えると、ドラゴンは哀願するような鳴き声を出して、ミミに向かって頭を垂れた。そして見上げてきた目は涙ぐんでいる。可哀想になったミミがドラゴンの頭をなでてやると、ドラゴンはすりすりとミミの手に額をこすりつけて甘えてきた。
「大丈夫よ、あなたが攻撃してこないなら、私たちも何もしないわ」
 そう言ってミミが歩き出すと、ドラゴンは彼女の後を着いてきた。ミミが戸惑っていると、イザヤールが苦笑しながら呟いた。
「どうやら、ミミになついてしまったようだな」
「え・・・。ねえドラゴンさん、私はガーディアンにはなれないよ?」
 ミミがドラゴンに言うと、サンディは笑って言った。
「でもミミ、アンタは元ガーディアン・エンジェルじゃん」
「それはそうだけど・・・」
「冗談はともかく、ホントにコイツに乗れるんじゃない?試してみれば?」
 そこでミミは、馬に乗るようにドラゴンに乗ってみた。ふわふわと移動する感触がなかなか楽しい。ドラゴンの方も、いい子いい子、とミミになでられて嬉しそうだ。
 ドラゴンが移動したことで、落ちていた光る物が拾えるようになった。イザヤールが拾い上げると、それは美しい宝石だった。
「錬金に使えそうだな」そう言いつつ彼は、ミミの為のアクセサリーにできそうだな、と内心考えながら、ミミにも見せようとドラゴンに近寄った。
 するとドラゴンは、イザヤールから逃げるようにミミを乗せたままぱたぱた飛び、洞穴から出てしまった。
「お願い、止まって。あの人も、あなたに意地悪なんてしないから」
 ミミがドラゴンに頼むと、ドラゴンは素直に止まったが、止まるのが一瞬遅かった。下へと吹き下ろす風に翼を取られ、ドラゴンはミミを乗せたまま穴の底へとまっすぐ下降していった!
「ミミ!」
 イザヤールとサンディは、同時に叫んだ。〈続く〉
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