セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

危険な落とし物〈中編〉

2017年12月03日 20時09分38秒 | クエスト184以降
追加クエストもどき前後編で終わりませんでしたの中編。前回のあらすじ、異世界旅行中に魔力の詰まったピアスを落としてきてしまったサンディに頼まれ、異世界のダンジョンを捜索することになったミミとイザヤール。ドラゴンに乗ったりと普段できないことを楽しんでいたが、気流に巻き込まれて・・・。引き続き天空の古戦場冒険中な三人です。

 ドラゴンは、ミミを乗せたままくるくる回りながら気流に乗って下降していく。だが、どうなることかと思う間もなく、ドラゴンはすぐ下のフロアに当たるらしい道上で止まり、ミミは少し拍子抜けした。
「ミミ!無事か?」
 上からイザヤールが覗き込んで叫んだ。
「はい!大丈夫」
 ミミは見上げて答えて、改めて辺りを見回した。すると、降りてきた気流の近くに、上に向かって流れている気流があるのを見つけたので、ドラゴンを促してその気流に乗った。ドラゴンはたちまち舞い上がり、ミミたちはすぐに元居た場所に戻った。
「んも〜、びっくりさせないでよね!」
 サンディは安堵の表情をごまかすようにふくれっ面になり、イザヤールはミミをドラゴンの上から抱き下ろしてから固く抱きしめ、ドラゴンはそれを見てちょっと面白くなさそうな顔をし、ミミは大げさなのと照れながらも嬉しそうにイザヤールを抱きしめ返した。
 ようやく落ち着いたところで、ミミはドラゴンと気流を振り返って言った。
「この子に乗っていたら、風に乗れたの。飛べる生き物は、あの竜巻に乗って上下に移動できるみたい」
「なるほど、ショートカットできるというわけか。そういえば、先ほど入った洞穴の中にも地面に深い穴があったが、あれももしかしたら近道なのかもな」
「へ〜、けっこう親切設計なのね〜。まあアタシは飛べるから、テキトーにあっちこっちうろついて底に行ったケドね〜」
 これで近道できることはわかったが、ミミとイザヤールはじっくり探険したかったので、ショートカットはせず道なりに歩いていくことにした。下っていくうちにまたいくつかの洞穴を見つけて、その中の一つに石碑が立っていた。ミミは石碑を読んだ。
『この巨大なる島は世界創世の時代より天空に浮かびて大地を見守り続けている。
この地はただの浮島にあらず。いかなる闇をも打ちはらう神聖なる金属の鉱脈が眠りし場所なり。』
「世界創世の時代からか・・・。我々の世界とどちらが古いのだろうな・・・」イザヤールが呟いた。
「神聖なる金属?それってもしかして、オリハルコンのこと?!」ミミが目を丸くして叫んだ。「オリハルコンの鉱脈を見てみたいなって思ってたら、こんなに早く叶うなんて!」
「え〜、ここ、オリハルコンなんてあったかなあ・・・」サンディは首を傾げた。「まあアタシは、ヤバい魔物のせいで全部は探険できなかったから、もっと奥にあったのかもね〜」
 洞穴は石碑の左右に続いていて、片方には宝箱があったが、蓋が開いていて中は空っぽだった。その点これまでの洞穴で見てきた宝箱と同じようだ。
 そこを出て更に下ると、遂に螺旋状の道の底にたどり着いた。だが、そこでゴールというわけではなく、やはり洞穴があって、まだ先があるようだ。穴の入口は狭くてドラゴンは入れないので、ドラゴンとはここでお別れとなった。ミミがほねつき肉を与えて頭をなでてやると、ドラゴンはミミにそっと鼻先をすりつけて甘えてから、名残惜しそうに去っていった。

 洞穴に入ってみると、鉱石の塊があって、ミミの世界でもお馴染みのかがみ石や、猫の目のような美しい緑の宝石が採れた。そして、その先の空間には、翼の生えた像が立っていて、その足元には焚き火の跡らしい燃えかすと煤があった。
「これ・・・守護天使像?」ミミは驚いて目を見開いた。
「どーかなー。この世界の人は、女神像って言ってたケド。この世界にもおねーちゃんみたいな女神が居るのかは知らないけどねー。とにかく、聖なる力はあるみたいよ」サンディが説明した。
「なるほど、結界になっているのだな。ここで休んでいけそうだ。ミミ、ひと休みしていくか?」イザヤールは尋ねた。
「そうね、先は長そうだし、ここで休んでいきましょう」
 そんなわけで一同はここで小休止を取ることにした。ミミとイザヤールは火を興して焚き火を作り、持ってきた食料を温めた。リッカ特製のお弁当のおかげで、ダンジョンの中ながら魔物も居ないここではのんびりピクニック気分が束の間味わえる。
 食事も終えて人心地がついたところで、ミミは食後のコーヒーのカップをサンディに渡してやりながら尋ねた。
「ところでサンディ、どうしてここに来ようって思ったの?」
「空に浮いてるから絶景が見られるかな〜って思ったのと、あとね、面白そうなウワサ聞いたから」
「面白そうなウワサ?」
「この浮島にはね、ぱふぱふを司る神さまが居るんだって!ミミなんかぱふぱふ向けバストなんだから、話聞いてみたら参考になるんじゃない?」
「さ、参考って・・・。サンディは、その神さまに会ったの?」
「それっぽいヒトは居たけど〜、アタシは女の子だから、フツーに挨拶してくれただけだったな〜。イザヤールさんが話せば、してくれるんじゃね?ぱふぱふ」
「するか!・・・充分間に合っている」
「何それチョー爆弾発言じゃん!?でもイザヤールさん、ミミが更にスキルアップしたら嬉しくない?」
 そんなやり取りを聞いていたミミは、もじもじしながらぽつりと呟いた。
「・・・イザヤール様が喜んでくれるなら、ぱふぱふの神さまにお話聞いてみようかなあ・・・」
「み、ミミ?!しなくていいからな!そもそもスキルアップってなんだ?!」
 充分休んだところでミミとイザヤールは気合いを入れ直して出発した。休憩した空間の先の方の出口からは、眩しい光がいっぱいに射し込んでいる。外に出てみて、ミミとイザヤールは思わず息を呑んだ。そこは、浮島の外側に面した崖道になっていて、目の前の景色は、見渡す限りの雲海だった。
 二人は、しばらく声も無くその景色に見入っていた。天使だった頃は、毎日のように当たり前に眺めていた、この光景。高山や天の箱舟からともまた違う、天使界からの眺めそっくりなこの空の景色に、思わず郷愁がこみ上げてきて、ミミとイザヤールは思わず無意識に互いの手を握りしめた。
「・・・サンディ、もしかして、こんな危険なダンジョンにもわざわざ旅していたのって・・・」
「私たちにも、この景色を見せてくれようと思ったから、か?」
 ミミとイザヤールが口々にぽつりと尋ねると、サンディは赤くなってそっぽを向いた。どうやら図星だったらしい。
「たまたま寄っただけだし!さ、そろそろ先に進むワヨ!」
 崖道を下っていくと、そこは行き止まりになっていた。崖っぷちに枯れ木が一本立っていて、そこから太い蔓が垂れて遥か下まで伸びている。
「もしかして、この蔓で下に降りるの?」
「そうみたい。アタシは飛べるから使わなかったケドね〜」
「強度は大丈夫なのか?」
 イザヤールがいささか不安そうに蔓を引いてみた。
「たぶん大丈夫じゃね?だいたいアンタら、ビタリ山の蔓で綱渡りなんて危ないコトしてんだし、何を今さら」
「それもそうだな。よし、私から下りよう。私の重さに耐えられるなら、ミミは余裕で大丈夫だろう」
 かなりの距離を滑り降りたが、二人は無事に下までたどり着いた。着いた場所は崖道の続きのようになっていて、ここには何やらもこもこの毛に包まれた二足歩行のネズミのような魔物がうろうろと歩いていた。サンディが旅の記録を引っ張り出し、ページをめくって言った。
「あれは『いなずまビリー』って魔物ヨ!雷雲の化身で、ゆくゆくは雷神となってロトゼタシア全土に雷をふらせようと企んでいるんだって!」
「くもの大王みたいな魔物なのね、なんだかもふもふしててちょっとカワイイけれど・・・」
「見た目によらず強いのよ、油断は禁物だからね!」
 雷雲の化身ということは、ジゴスパークなどの雷系の攻撃が効きにくいということだ。それならとイザヤールは装備をハンマーに換え、ミミはバックダンサーよびの構えをした。バックダンサーが異世界まで来てくれるのかいささか心もとなかったが。
 いなずまビリーたちは、人間たちがやってきたのを見て、針のようなデザインの剣を振りかざして襲いかかってきた。ミミはバックダンサーを呼び、不思議な竜巻を巻き起こした!こてんとひっくり返ったいなずまビリーたちだったが、倒されたわけではなく、逆に連携技の激しい雷を呼ぶダンスで対抗してきた!大ピンチではないがかなり痛い。しかしイザヤールのビッグバンでいなずまビリーたちはとどめをさされ、今度こそ彼らは倒れた。
「そんな・・・バカ・・・な、勇者しか使えない筈の技をこいつが、どうして・・・」
 倒れたうちの一匹が呟く。そうか、ビッグバンってこっちの世界では勇者しか使えない技なのか・・・と役に立つかどうかわからない知識を増やしつつ、ミミとイザヤールは道を下った。突き当たりの右側には、また洞穴の入口があり、二人は中に入った。

 洞穴の中は、鉱石がところどころ星のように光る神秘的な洞窟になっていた。だが、その場所に妙にそぐわない人物が立っていた。どこからどう見ても華やかなバニーガールである。
「え・・・誰?」ミミが目をぱちくりさせた。
「魔物の罠か?」イザヤールは眉を寄せた。
「あ〜アレがたぶんぱふぱふの神さまヨ」とサンディ。
「え?!あの人が?」
 半信半疑ながらも、ミミはバニーガールに話しかけてみた。
「あの・・・あなたは、ぱふぱふの神さまですか・・・?」
 我ながら変な質問だなあとミミは思ったが、バニーガールは微笑むばかりでその問いはスルーし、言った。
「うふふ、ぱふぱふ、してみる?」
「え・・・女の子でもできるんですか・・・?」
 どんなことになるのか少々気にはなったが、とりあえず先に進むことにした。
「あら、残念。気が向いたらまた来てね♪」
 バニーガールは笑顔で手を振って見送ってくれた。
「したいワケじゃないけどさ〜、なんでアタシにはフツーの挨拶だったワケ?」
 サンディがぼやく。それにはちゃんとこの場所のぱふぱふ独自の理由があるのだが、ここのぱふぱふ経験者以外誰もそれを知る由は無い。
 奥に進むと再び魔物が出てきて、赤い霧のような魔物や、まかいファイターをもっと巨大にしたようなドラゴン、アレフガルドで会ったことのある死神の騎士など、手強い魔物が次々に現れた。全力で戦い続け何とか更に奥に進むと、やがて巨大な鉄格子とその奥に居るやはり巨大な紫色の魔物が見えてきた。
「あーっ!アイツよー!何が閉じ込められてんのかな〜と思って見に行ったら、いきなり丸呑みにされそうになってコケたの!ってコトは、ピアスまだあの辺に落ちてるかも!」
「サンディ、わざわざあんな危なそうな魔物の入っている牢屋に入ったの?!」
「だって気になるじゃん〜」
「ということは、君の落としたピアスはあの牢の中に・・・。しかし、あの魔物はとても手強そうだぞ。今まで遭遇した魔物たちとは格段の力の差を感じる」
 イザヤールは眼光を鋭くして鉄格子の向こうの巨大な魔物を見つめた。ミミも頷き、唇を結んだ。見た目は手足の生えたクジラのようなこの魔物、顔つきはどことなく抜けているが、魔王クラスの力を感じる。さすがに二人で倒すのは厳しすぎるかもしれない。
「とりあえずサンディ、鉄格子越しに、ピアスがあるかどうか探してみよう」
 ミミは言ったが、鉄格子の中の地面は無情にも砂だった。埋もれてしまっていては、ここにあったとしても万事休すである。
 しかし、ミミたちはついていた。鉄格子越しに懸命に覗き込んでいると、砂の中に何かがキラリと光るのが見えた。だが、取りに行くには鉄格子の向こうに行かなくてはならない。魔物がそのままおとなしくじっとしているとは思えなかった。
「アタシが拾う間アイツを足止めしといてくれる?拾ったらダッシュで逃げよっ!」
「うん、わかった」
「やれやれ、仕方ないな」
 表情を引き締めながらも、二人は未知の敵と戦う高揚に、不敵な笑みを浮かべた。〈続く〉
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