セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

ロイヤル材料をお願い致します

2010年11月06日 02時38分55秒 | クエスト184以降
 ハロウィンフェアも終わり、ロクサーヌの店では、次のロイヤル系なグッズのフェアに移っていた。売り上げも好調らしい。
 しかし、フェアから数日経った日のこと。ロクサーヌは、浮かない顔をしていた。そんな彼女を見て、ミミは心配になって尋ねた。いつも基本笑顔の彼女が、そんな表情をするなど、めったにないことなのだ。
「ロクサーヌさん、どうかした?」
 ミミの問いに、ロクサーヌはいつもの笑顔を浮かべ、答えた。
「いえ、大したことではありませんわ。実は、ありがたいことにフェアがたいへん好評で、特にアクセサリーが売り切れ状態なんです」
「え?それではどうして・・・」
 するとロクサーヌは、またうっすらと眉をひそめた。
「・・・フェアが終わるずっと前に品切れ状態にしてしまうなんて・・・。私、その自分のその読みの甘さにまだまだだ、と凹んでしまいましたの。普通のアクセサリーはかなりあるのですけれど、高級にするのに必要な、ルビーの原石が足りなくて・・・」
「ロクサーヌさん、水くさいの。そういうことなら」ミミはにっこり笑って言った。「ルビーの原石ならすぐ集めてこられるから。なんで言ってくれなかったの?」
「ミミ様・・・ありがとうございます。でも・・・」
「でも?」
「私、他の仕入れで、材料集めのお供ができませんの。それではあまりに申し訳ないですわ」
「そんなこと。大丈夫、一人ででも、行けるから」
 こうして、クエスト「ロイヤル材料をお願い致します」を引き受けたのだった。

 リッカもルイーダも、「ごめん、今日はムリ!」と手を合わせて謝り、大丈夫、とミミは結局イザヤールと二人で出かけることになった。
 しかし、二人がリッカの宿の玄関から出ていくと・・・カウンター内の三人は、一斉に、「にやり」としか表現しようのない表情を浮かべたのであった。
「でも・・・騙したみたいでちょっと悪いよね・・・」リッカが少し済まなそうな表情になって言った。
「でも本当にルビーの原石は必要でしたのよ。助かりますわ」とロクサーヌ。
「奥手な二人はね、やっぱりこうやって周りで応援しなきゃね」ルイーダは腕を組み、微笑を浮かべて言った。
 見ていてじれったいのでなるべく二人きりの機会を作ってやって、とっととくっついてもらいましょう。これが、宿屋兼パーティーメンバーの共通の思いなのだった。
 しかし生憎、三人は知らなかったが、二人ではなく実は三人で出かけていったのである。・・・もちろん、その三人目とは、サンディのことだ。

 天の箱舟は、今日も絶好調らしい。アギロが許可を出したので、イザヤールもまた運転をさせてもらった。
「おまえさんもなかなかスジがイイねえ。どうだい、運転士試験、受けてみねえか?」
 アギロが言うと、サンディが頬を膨らませた。
「テンチョー!なんでミミはともかく、イザヤールさんまでアタシより先に試験ススメるのヨっ!・・・グレてやる~」
「グレるとどうなるの?」ミミは思わず聞いてみた。
「ギャルやめてゴスロリ系になるのヨ」
「・・・それ、グレてるの?」

 まず最初の採取地、オンゴリの崖に到着した。するとサンディが急にアクビをして言った。
「あ~、なんだかアタシ眠くなっちゃった~。モンスターも逃げるだろーし、二人で行ってきてヨ」
「どうしたのサンディ?珍しい。・・・ま、いいか、僧侶の私はともかく、パラディンのイザヤール様が居てくれるし」
 首をかしげながら二人が行ってしまうと、アギロはサンディを叱りつけた。
「こら、おめェはミミに付いてくのも自分の役目って決めてんだろ?てめえでやるって決めた事を投げ出すたあ感心しねえな」
 するとサンディは頭を強く振って答えた。
「テンチョーわかってな~い!いーい?今ミミとイザヤールさんは~、イイ感じでくっつきそーな瀬戸際なのっ!アタシたちがほっといたらあの二人、きっとまた天使になるまでくっつかないわヨっ」
「・・・そ、そーなのかい。・・・イイねえ、青春だなァ。オレも若い時のことを思い出すよ」
「テンチョーの若い時・・・?(まったく想像つかないんですケド!)」

 オンゴリの崖に降り立ち、ミミはルビーの原石を拾う前に、立ち並ぶ数多の墓石にそっと祈りを捧げた。
「ここは宝石の鉱山で、彼らはその採掘にも従事させられていたのだろうな・・・」イザヤールが呟く。
 こうして集められた石は、おそらく帝国の美しい女たちを飾ったであろう。採掘した者の、苦しみや悲しみを知ることもなく。ミミは体を震わせた。荒涼とした地に吹く風が身を包み、死者たちの絶望と悲しみが押し寄せてくる。
 辛かったよね、悲しかったよね。でも、ここにもう居ては駄目。あなたたちの愛する人たちは、天国で待ってくれている。早く逢いに行ってあげて。
 祈り続けるミミに、すがり付くように死者たちの悲しみが集まる。そして・・・誘うように包み込もうと・・・。そんな彼女を見て、イザヤールは思わず叫んだ。
「!・・・ミミっ、行くなっ!」
 叫ぶと同時に彼は、死者たちの気配を振り払うようにミミを引き寄せ、彼らから庇うように抱き締めた。そして、低い、だが力強い声で呟いた。
「・・・死者たちよ、おまえたちの居るべき所は此処ではない。神の御元へ行け。・・・そこで必ず、懐かしい者たちに逢えるだろう・・・」
 心なしか、辺りの気配が鎮まった。そしてミミが、閉じていた長い睫毛を上げて、しっかりとした光の瞳でイザヤールを見つめると、彼は思わず安堵の息を吐いた。
「一人で全ての悲しみを負おうとするな。・・・いいな」
「・・・はい。ご心配おかけしてすみませんでした」
 雲が切れて、日の光が柔らかく辺りをくるむ。二人は、全てではないが、かなりの数の魂が上っていくのを見た。
「我々にもまだ・・・いくらか天使の力が残っていたということか・・・」
 この地から悲しみと苦しみが消え去る日はまだ遠いけれども。焦らずに少しずつでも解放できれば。墓石の群れを見つめながら、イザヤールは回した腕に無意識に力を込める。
 ミミの震えが止まると、彼はまた彼女の瞳を見つめて尋ねた。
「大丈夫か?」
「・・・はい」
 やがてどちらともなくそっと身を離し、二人は少し照れくさそうに、目的の石を拾い始めた。

 箱舟に戻ると、サンディがどことなくにやにやして言った。
「おかえり~」
 あ、サンディ何か誤解してる、ミミは思った。イザヤール様は、死者たちから私を庇ってくれただけ。心配かけちゃった。
 見ていたのかな?サンディは。イザヤールは思った。まあ別に構わない。・・・もうミミへの想いを表すことに、疚しさを覚えたりはしない。とにかく、無事でよかった。

 他の採取地にも寄り、無事ルビーの原石を持ち帰ると、ロクサーヌは喜んで受け取った。
「ミミ様、イザヤール様、ありがとうございます。これは私の感謝の気持ちですわ」
 そう言って彼女は、「ロイヤルバッジ」を差し出した。
「あれ?ロクサーヌさん、これ・・・」
 確かこれとかの材料足りなくて私たち出かけたんじゃあ?首をかしげるミミたちに、済まし顔をしているロクサーヌだった。〈了〉

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