セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

森で消えた男たち

2012年09月08日 01時07分14秒 | クエスト184以降
今週も日付変わってすみませんの捏造クエストシリーズこと追加クエストもどき。今回は森と魔女?な話です。人間を動物に変えてしまう魔女の話は、ギリシャ神話からグリム童話から中国をはじめとする世界各地の昔話まで、たくさんあるようですが、今回は、そんな話に伴うどこか艶かしい雰囲気があまり出せなくて残念でございます。今回登場する「魔女」が、女性なのかそれともおネエキャラな魔物なのかは、ご想像にお任せ致します(笑)

 西ベクセリア地方は、鉄鉱石だけではなく、上質な木材を産出することでも有名である。広大な森は、ベクセリアの民たちが適度に管理して、森林資源が枯渇しないよう注意が払われている。そんな注意も必要がないほど、広葉樹の森は日々新しい木を増やし、王国時代から変わらない姿を保っている。
 木材に限らず、秋は木の実の宝庫でもあるここは、鉱石や木材採取の屈強な男たちばかりではなく、ナッツ類を集めて小遣い稼ぎをする若い娘たちもよく訪れた。もちろん一人では危険なので、人数を集めてグループを作り、ボディーガードを雇うのである。一人では一日分の稼ぎが吹っ飛んでしまうボディーガード代も、大人数で頭割りすれば一人あたりの負担が少なくて済むという訳だ。
 そんな用心をしていて平和が保たれていた西ベクセリアの森だが、最近奇妙な噂が流れていた。か弱い娘たちではなく、屈強な男たちが森で行方不明になっているというのだ。男たちは大概、冒険者や流れ者の採石労働者なので、どのくらいの人数が実際に姿を消しているのかはっきり把握されてはいなかった。
 その噂は、冒険者の集まり場であるルイーダの酒場にも届いた。
「あくまでも冒険者の間での噂なんだけどね。最近さっぱり顔を見せない人が、最後の行き先が西ベクセリアだって聞いた子も居る、そんな程度なのよ」物憂げな顔で、ルイーダが呟いた。「でも、気になるわね」
 地上の守り人としては、たとえ噂でも放っておくわけにはいかない。ミミとイザヤールは、さっそく西ベクセリアに向けて出発した。

 まだ木の実の季節には少々早い為か、はたまた不穏な噂の為か、森の入り口付近の空き地は、キャンプする者もなくひっそりと静まりかえっている。
「とりあえず、鉄鉱石の採掘場まで行ってみましょうか。森を抜けて行くから、何かわかるかも」
 ミミが提案すると、イザヤールは頷いた。
「そうだな。何が起こるかわからないから、慎重に行こう」
「イザヤール様。行方不明になるのは男の人だそうですから、私の傍から絶対に離れないでくださいね。私が必ずお守りします」
 濃い紫の瞳を潤ませて見上げるミミは、装備こそアマゾネス装備な女戦士仕様なものの、華奢で愛らしくて、見た目はどう見ても「お守りされる方」だ。イザヤールは愛しげに彼女の頭をなで、微笑んだ。
 と、そこへ、誰かが近寄ってくる足音が聞こえた。二人が振り返ると、悲しげな表情の若い女性が歩み寄ってきた。
「あなた方は、森に入られるのですか?冒険者の方々ですか?」
 女性の言葉に、ミミたちは頷いた。
「私たちに何か?」
 ミミが優しく尋ねると、彼女は思い詰めたような顔で言った。
「もし、森で、これと同じバンダナをしている男の人を見かけたら」女性は、首に巻いた緑色のバンダナをほどいて、見せてきた。「伝えてくれませんか。早く帰ってきて、と」
「その人は、あなたの・・・?」
 ミミが呟くと、女性は頷いた。
「私の許嫁です。ここでの仕事でお金を貯めて、来年の春には結婚しようって約束しています。・・・ここで週に一度会う約束をしていたのに、もう何週間も来ていなくて、心配で」
「わかりました、見かけたら必ずお伝えします」
 ミミはクエスト「森で消えた男たち」を引き受けた!

 西ベクセリアの森は、広大だが比較的歩きやすい。頭上に広がる広葉樹の葉は、隙間から太陽光が充分に降り注ぎ、森の中はそこそこ明るかった。ミミたちも、鉄鉱石の採取や宝の地図の洞窟探検で、この森を抜けることがしばしばある。魔物はそう手強くないし、森の中の道無き道は、冒険者ならそう苦にならない。屈強な男たちが行方不明になるとは、そう思えないが・・・。
 武器を持っている為に手はつなげない。ミミは時折不安そうにイザヤールを見上げながら歩いた。
「そんなに心配しなくても、そう簡単に拐われるつもりはないぞ」そう言って彼は笑った。
「わかっているつもりだけど、でも・・・」
 彼女は瞳を潤ませてイザヤールを見上げた。
「それにしても、噂が本当ならば、男なんか拐ってどうするつもりなんだろうな。力仕事にでも従事させるつもりかな」
 呟いて彼がまた笑ったそのとき、ひょっこりとマタンゴの群れが現れた!マタンゴたちはいっせいに「あまいいき」を吐いてきた!
 しかし、レベルが高くて眠りガードもばっちりな二人には効かなかった。マタンゴたちは瞬く間に蹴散らされた。
 マタンゴが「げんこつダケ」を落としていったので、ミミがそれを拾い上げようと地面に屈むと、何かがきらりと光るのが見えた。近寄って見ると、鎧の飾りの一部のようだった。
「イザヤール様、これ・・・」
 偶然落ちていただけの物かもしれないが、どことなく不穏な空気が漂う。
「ミミ、しばらく地面を見ながら歩いてみよう。他に何か見つかるかもしれない」
 しばらく歩いていくと、手袋の片方やアイテムの破片、帽子の羽飾り等、様々な物が見つかった。ミミとイザヤールは、西ベクセリアの拡大地図に、物が落ちていた場所の印を付けた。
「何だか、一見ばらばらに落ちているようだが、森の中心部から円形を描くように落ちているな」
「じゃあ、もしかして、この真ん中辺りに何か・・・」
 と、二人が地図を覗き込んでいると、何かがぽとりと落ちる音がした。思わずその方向を見ると、何やら爆弾石によく似た物が落ちていて、避ける間もなく破裂した!
 だが、二人を襲ったのは、爆風ではなく、石の中から放たれた眩しい光だった。ミミもイザヤールも目が眩み、一瞬立ち尽くした。
 イザヤールは、視界が利かない中、腕を掴まれて、掴んでいるのがミミではないことにすぐに気が付いた。逆に捕らえて、鋭い口調で尋ねた。
「おまえが人拐いの犯人なのか?何者だ!」
 だが、逆に捕まえていたことが仇になった。
 謎の敵は、何やら呪文を唱え、イザヤールごとどこかに消え去ってしまった!
 まだ目が見えなくなっているミミも、イザヤールと何者かが飛び去る気配はわかり、動揺して叫んだ。
「イザヤール様!」
 しかし無情にも返事はなく、視界が戻った頃には、イザヤールも謎の敵も全く姿が無くなっていた。
「サンディ、起きて!イザヤール様が、拐われたの!」
 サンディ、今日は西ベクセリア周辺なら余裕だろうと、ミミの懐で昼寝を決め込んでいたが、しゅるりと出てきて、ピンクの光からいつもの姿に戻って、慌てて言った。
「起きてるっつーの!おちおち落ち着きなさいよ、ミミ~!」
「サンディが落ち着いて~!ね、イザヤール様が連れていかれた方向、見なかった?お願い、見たって言って!」
「それがさ~、敵はルーラを使ったようなんだよね~。何か長いローブ着ていて、どっかで見たよーな・・・」
「ルーラ?!じゃあ、どこへ行ったのか、わからないのね。でも」
 ミミは瞳を強い決意で煌めかせ、地図を再び広げた。
「この森に居るとは限らないけれど、それでも一応、さっき調べようと思っていた場所に行ってみようと思うの。ほら、見て」
「ん~、何かが落ちてた場所が拐われた現場ってことは、確かに円形の中心はアヤシイわよね~。じゃ、さっさと行こ、ミミ!」
 ミミは走り出し、サンディは慌ててその後を追って飛んだ。

 一方イザヤールは、視界が戻ると、一見馬小屋かと見間違うような小屋の中に居た。一瞬馬小屋と錯覚した理由は、広々と、だが簡易に木で作ってあるだけでなく、小屋のあちこちに居る様々な種類の動物たちの為だった。犬、猫、羊、兎、豚、それこそ馬も居る。動物たちは、イザヤールを見ると、悲しそうな声で鳴き、騒いだ。犬の首には、緑色のバンダナが巻かれている。
「みんな、言うことを聞かないからこうなったのよ。こうなりたくなかったら、あたしの言うことを素直に聞くのね」
 セリフに似合わない耳障りな声にイザヤールが振り返ると、そこにはやたらに睫毛の長い、どうやら化粧をしているらしいビュアールが居た。睫毛も、どうやらつけ睫毛らしい。
「まさか、この動物たちは、人間なのか?!」
 イザヤールが眼光を鋭くしてビュアールを睨み付けると、ビュアールはうっとりと彼を見つめた。
「ああ、その表情、ステキ・・・いい男ね」
「ふざけるな、すぐに彼らを元に戻せ!」
 イザヤールが叫び、剣を構えると、ビュアールは笑った。
「そんなことしてもムダよ。逆らうなら、アナタも動物に変えてあげるわ。・・・そうねえ」ビュアールは、イザヤールを頭から爪先まで、その大きな一つ目でじろじろと眺めた。「アナタだったら、鳥、それも猛禽類になったらとても似合いそうねえ。鷹なんかどうかしら。大きな力強い翼、鋭い眼差し、誇り高いたたずまい、とってもお似合いよ」
「何故こんなことを。要求は何だ」
 油断なく身構えながらイザヤールが言うと、ビュアールは舌をチロチロと動かしながらにじり寄ってきた。
「アタシはここに、逆ハーレムを作ろうと思ったのよ。結界内に踏み込んだうっかりな坊やたちは、みんな連れてきたの。でも、どいつもこいつも、化け物とつきあう気なんかないってぬかしやがって!だから、動物に変えてやったのよ」
「生憎私も」イザヤールは、ゆっくりと剣を構えた。「愛しい恋人が居るから、彼女を裏切るつもりも毛頭ないし、動物になるつもりもない」
 口調の静かさとは裏腹に、イザヤールの周囲の空気が強いエネルギーを含んで揺れた。「ためる」を使って、テンションを上げたのだ。
「おバカさんねえ」ビュアールは老いたカラスが鳴くような声で笑った。「そう、そんなに鷹に変えてほしいの。いいわよ、そろそろ鳥も欲しいと思っていたから」
 ビュアールの杖から、禍々しい光が放たれ、イザヤールに襲いかかり、包み込んだ!
 光が薄れ、もやの中から現れた姿を見て、ビュアールは驚愕した。イザヤールは、鷹にも何にもならずに、そのままの姿で立っていた。
「なんで・・・何でよ」
「さあな」
 魔の呪いを受け付けない、天使だった故の数少ない名残だ。内心呟き、薄く笑ってイザヤールは剣を構えると、ビュアールに飛びかかった!しかし、ビュアールは怪しく瞳を光らせ、見つめた!深い眠りに襲われるイザヤール。
「くっ・・・しまった」
 意識を失う直前、己の油断に歯噛みする。だが、深い眠りは一瞬で覚めた。「めざめの花」が彼の眠りを覚ましたのだ。
「イザヤール様」
 小屋に駆け込んできたミミに、いいタイミングだとにっこり笑う。今度こそ、はやぶさ斬りがビュアールに炸裂した。

 ビュアールが塵と消えると、動物たちは人間の姿に戻った。ミミは、緑色のバンダナをしている男に、伝言を伝えた。
「あなたの婚約者さんが、伝えてくださいって。早く帰ってきて、と」
 男は頷き、首に巻いているのとは別のバンダナを取り出してミミに渡した。
「君たちのおかげで助かったよ、ありがとう。すぐに行ってやらなきゃ、彼女のところへ」
 そう言って彼は走り去った。ミミは「しっぷうのバンダナ」を手に入れた!
 小屋に居た全員、口々にお礼を言って去り、ミミたちだけが残った。
「魔女・・・だったんでしょうか。イシュダルのような」
 ぽつりとミミが呟く。そんな話を読んだことがある。森に住む魔女が、迷い込んだ人間を鳥や動物に変えると。
「かもな」
 イザヤールも呟き、二人は、捕らえておくことでしか繋ぎ止められない者に、いくらかの哀しみと憐れみを覚えた。
「さあ、我々も帰ろう」
「はい」
 誰も居なくなった小屋は、禍々しい気配も跡形もなく消え去っている。やがてここも、森で働く者たちの、休場となるだろう。〈了〉

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 本日のしばらくお待ちください | トップ | ありがとうコンプリート! »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ビュアールwww (神々麗夜)
2012-09-08 17:04:27
ビュアールですか!
そういえば某所の会話で以前ビュアールは単独狙いの攻撃の時、男性キャラばかり狙ったり、下位種に地獄のメンドーサ(恐らくメンズ+メドゥーサ)がいるのでおネエと決定したことがあります。(笑)
男性キャラにみとれると、「はい、決定!」と言いたくなる。他の魔物ではそうならないのに
触手に加え強制睡眠能力を持った危ないキャラなのになんか間違った方向のますます危ないキャラに…されてしまいました。
ザキ系がわりと効くので男僧侶
にはザラキーマしてもらってます。(笑)
男僧侶「寄るな!来るな!触るな!ザラキーマ!」
ビュアールABC「「「エクスタシー!」」」
男僧侶「まったく…なんなんだ…この蛇達は…」
ビュアール…怖いですね
それでは失礼します。



返信する
そうだったんですね~ (津久井大海)
2012-09-08 23:24:57
神々麗夜様

こんばんは☆あら~、ビュアールっておネエキャラ、ってイメージのお話がどこかで出てたことがあったのですね、知らなんだ~!

実は今回、当初はまたヘルヴィーナスに登場願おうと思っていたのですが、当サイトでは濫用し過ぎな感があるので、急遽同じ魔法使い系モンスターのビュアールに登場頂きましたが・・・。確かに何か使う技があれこれ怪しいんですよね(笑)

ビュアールの性癖真偽はともかくw色違いの「じごくのメンドーサ」のお宝が魔女装備なので、「まさかじごくのメンドーサって、女子・・・?」と疑ったことはあります(爆)

それにしても怖いですね~、男性美形キャラにザラキーマされて喜ぶビュアール・・・。
返信する

コメントを投稿