セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

お嬢様の小鳥ちゃん

2014年11月22日 04時14分05秒 | クエスト184以降
遅くなりましたが何とか寝オチ免れましたの追加クエストもどき~。今回は非常に馬鹿馬鹿しくかつそんな間違いするか?!とツッコミたくなるようなお話です。服装や髪型が違うだけで、正体にさっぱり気付かないという展開のアニメを見ていて思いついた話です。なんでアレがお嬢様なんだあり得ないというツッコミはナシでお願いしますv当初は籠に閉じ込められる女主が書きたくての話だった筈なんですが、今回閉じ込められ感ゼロでしたので、またいつか別でやりたいと思います(笑)

 紫と、微妙に色合いを変えている黄を使った襞も美しいおどりこのドレス。華奢な肩や綺麗なくびれのウエストを露にする大胆なデザインは、木枯らしの始まりつつあるセントシュタインでは少々寒そうだろうが、快適な温度に保たれているリッカの宿屋では、この格好で過ごすのに何ら問題はなかった。そんな訳でミミは、愛用のこのドレスでラウンジに居た。新米の踊り子に頼まれて、ダンスの指導をしていたのである。
 見物人に飛び入りの生徒がどんどん増えて、一時はラウンジ内が大混雑だったが、レッスンが終了すると落ち着いた。ミミはほっと息をついて、ひと休みしようかなと立ち上がった。ひと休みで立ち上げるというのもおかしな話だが、今ルイーダの酒場のカウンターで番をしているイザヤールに、飲み物をもらいに行こうと思ったのだ。
 ロビーに出ると、イザヤールは既にミミに冷たい飲み物を用意していて、グラスを掲げて微笑んだ。嬉しくなって彼女がバーカウンターに歩み寄ろうとすると、その前に思いがけずも、たった今外から入ってきた老婆に呼び止められた。
「おお、そのお姿は!ぜひともちょっと頼まれてくださらんか!」
 サンディに言わせるとお人好し属性が根っから染み着いているミミは、その呼び止めで立ち止まり、老婆をテーブルに案内して、話を聞くモードに入った。通常ではこれで飲み物はしばらくおあずけになってしまうところだが、イザヤールが気を利かせて、ミミにはグラスを、老婆には温かい飲み物のカップを持ってきてくれた。
 ミミはイザヤールに目一杯の感謝と愛してるの眼差しを送ってから老婆に向き直り、尋ねた。
「私にどんなご用ですか?」
「実はの、うちのお嬢様の小鳥が最近、行方不明になってしまってな、探してくれる冒険者を雇おうとここへやって来たんじゃが、そしたら入った途端におまえさんに出会った!これも神様の思し召し、一緒に来てくださらんか!」
「小鳥を探すお仕事ですか?喜んでお引き受けします」
 そうミミが答えると、老婆は首を振った。
「いいや、小鳥探しではなくてな、おまえさんには、小鳥の代わりをしてほしいんじゃ」
「え?どういうことなんですか?」
 老婆の言っていることの意味がわからなくて、ミミは目をぱちくりさせた。
「おまえさんの着ておるそのドレス、お嬢様の小鳥にそっくりなんじゃよー。小鳥が見つかる間だけでいいんで、お嬢様の小鳥の代わりをしてくれんかの~」
「え・・・」あんまりにとんでもない頼みごとに、ミミはものすごく戸惑った。「あ・・・あの、いくらなんでも、ドレスの色が似ているだけでは、どうやっても小鳥の代わりになれないと思うんですけれど・・・」
「大丈夫じゃよ、うちのお嬢様は最近、細かいことを気にしなくなったでな」
「いくら細かいことを気にしない方でも、さすがに人間と小鳥は間違わないと思います・・・」
 しかし、老婆があまりに頼み込むので、ミミは、こんなに頼むのは何か他に理由が隠されているのかもしれないと考え、とりあえず一緒に行ってみることにした。ミミはクエスト「お嬢様の小鳥ちゃん」を引き受けた!
 このやりとりを聞いていたイザヤールは、老婆の頼みが訳がわからなすぎるので心配になって、カウンターから再び出てきて、ミミについていくと言い張った。イザヤールを見た老婆は、満足そうに手を叩いた。
「おお、おお、こちらは小鳥捜索をお願いできそうな強そうなお兄さんじゃのう~。ぜひ頼みますぞ」
 こうしてなんだかよくわからないまま、ミミとイザヤールは老婆と一緒に出かけた。

 老婆はキメラの翼を放り投げ、二人をものすごく壮麗な屋敷に連れてきた。貴族か大富豪が住んでいそうな規模だ。執事が恭しく玄関を開け、長い廊下を応接室まで案内してくれる間、老婆はミミたちに説明した。
「ワタシはこの屋敷のお嬢様にお仕えする乳母ですじゃ。正確には先々代のご主人様の乳母ですがな、先々代からずーっとお仕えさせて頂いとる。・・・しかし実はな、どうも最近、お嬢様の様子が少々おかしいんじゃ」
「と、言いますと?」
「お嬢様が急に、背が伸びてふくよかになっとるような気がするんじゃ。しかもどうもおてんばになって、口数も少なくなったし・・・」
 小鳥の行方不明と屋敷の令嬢の急激な体格の変化に果たして因果関係があるのかどうかわからなかったが、とにかく令嬢本人に会えばはっきりするだろうと、ミミは考えた。老婆は今度はミミとイザヤールを、問題の令嬢の部屋に案内した。
 部屋は、家具や調度品に異常が無ければ、豪奢で如何にも華やかな女性らしい部屋の筈だった。しかし、この有り様はいったいどういうことだろう!床には木屑や羽が散らばり、壁はあちこちに凹みがあり、まるで大惨事の後のようだ。
「まーたお嬢様、美容体操を派手になされたなー。困ったもんじゃ」
 ぶつぶつ言う老婆に、そういう問題かとツッコミを入れたくなったミミとイザヤールだったが、とりあえず黙っていた。
「幸いお嬢様は今、庭園をお散歩中でいらっしゃるから、今のうちに鳥籠に入ってくだされ」
 そう老婆はミミを促し、金ぴかで造花や宝石を飾った、エレベーターサイズの檻のような物の前に連れていった。
「こ・・・これが鳥籠・・・ですか?」
 たとえ鳥籠だとしても、鶏か鳩小屋と言いたくなるようなサイズだ。
「そうじゃよー。ささ、早く入って」
 ミミは道具袋に「さいごのかぎ」を忍ばせつつ素直に鳥籠?の中に入った。この鍵さえあれば、たとえ閉じ込められても抜け出せるから安心だ。
「では、私は小鳥を探せばいいのだな。手がかりがあったら教えて頂けないか」
 鳥籠?に入って梁のように太い止まり木にちょこんと座るミミを、心配そうに見ながらイザヤールが呟くと、老婆は小さな額縁入りの絵を取り出した。
「お嬢様の小鳥の肖像画ですじゃ。なかなかよく描けておりますでの」
 イザヤールが額を受け取って見てみると、そこ描かれていたのはなんと、モンスター「にじくじゃく」だった!
「な・・・。これのどこが小鳥だ?!」
「お嬢様にとっては小鳥じゃがな。ほれ、そのドレスと似たような配色じゃろ」 と、老婆はミミのおどりこのドレスを指差す。
「全然違う!どちらも紫が入っているというところぐらいしか共通点が無いだろう!」
 令嬢どころか屋敷の使用人全員大雑把なのかとイザヤールが呆れた。どうりで鳥籠?が大きく、ミミが「小鳥の代わり」になるわけである。とにかく、小鳥が脱走していたとして、しかもにじくじゃくだとすると、このまま放置しておくわけにはいかない。早く探さなければ、本当に危険だ。
「イザヤール様、先に小鳥・・・じゃなかった、にじくじゃくを探しに行ってくれませんか?後から私もすぐに参りますから」
 ミミが言うとイザヤールは渋った。
「しかし・・・おまえをこの部屋に置いていくのはどうも・・・」
 そうこうしている間に、廊下からずしずしと重たい足音が響いてきた。
「お嬢様がお部屋に戻って来なすった!とりあえず隠れてくだされ!」
 そう言って老婆がイザヤールを無理やりクローゼットの中に押し込むと、間一髪その直後に、部屋の扉がバーンと開いた。

 部屋に入ってきたのは、華やかなピンクのドレスに、長い金髪を背中に垂れた、体格がいいと言うには、あまりに巨大すぎる者だった。これでは確かに、ミミでも小鳥のように感じるかもしれない。その衣装と髪型にもかかわらず、女性かどうかも、断言はできなかった・・・あまりにも筋肉質で逆三角形の体型だったからだ。
 そもそも最大の問題は、金髪の下から覗く瞳が、ぎょろりと大きな一つ目で、青緑色の肌の色、横に裂けた口からは、鋭く尖った牙がはみ出ていることだった!
「おお、おかえりなさいまし、お嬢様」
 老婆が言うと、「お嬢様」は唸り声でお返事した。それから彼女?は、鳥籠をじろりと見た。が、鳥ではなく人間の娘が入っていることには全くノーリアクションだった。ミミは反射的に武器を構えそうになったが、じっと我慢した。
 つまり、「お嬢様」は、どこからどう見ても立派な魔物だった。イザヤールは、クローゼットの扉の隙間から彼女?を見て、ミミが危ないと飛び出し、剣を構えて鳥籠の前に仁王立ちした。すると、老婆が叫んだ。
「なんてことをなさるんじゃ!?お嬢様に剣を向けるとは!」
「お嬢様だと?ふざけるな、どう見ても『ギガンテス』にしか見えないぞ!」
 イザヤールの言葉を聞いた途端、老婆は仰天した。
「なんじゃと?!ギガンテス?!・・・ああ、なんてことじゃ、ギガンテスをお嬢様と思っていたとは!入れ替わっていた真っ赤な偽者だったなんて!」
「ほ・・・本気で言ってるのか・・・?」
 ふざけているのではないかと思われるくらいだが、どうやら老婆は本気で言っているらしかった。すると、「偽者お嬢様」が呟いた。
「お・・・オラのカンペキなへ・・・へんそーをみやぶるとは・・・た、大したものなんだな、フンガー!」
 いや、今まで気付かない方がおかしいから!と、ミミとイザヤールはサンディ風のツッコミを内心入れまくった。ちなみに当のサンディ本人は、本日クリスマスコフレの予約に行ってしまった為、欠席なのである。
 ミミは鳥籠から飛び出し、彼女もまた剣を抜いてギガンテスに詰問した。
「本物はどこへ拐ったの?」
「し・・・知りたかったら、オラに勝つことだな・・・。だが、絶対オラには勝てないんだな・・・フンガー!」
 ギガンテスが、金髪のカツラとピンクのドレスを脱ぎ捨て、襲いかかってきた!
 しかし、ものの何秒もしないうちに、ミミとイザヤールの剣コンボ(はやぶさ斬り)をくらって、あっさりと降参したのだった。
「うう・・・オラの負けなんだな・・・フンガー、ホントのコト、言う・・・ホンモノは、地下室に、小鳥と一緒に閉じ込めてるんだな、フンガー!」
 ミミとイザヤールと老婆が急いで地下室に向かうと、長い金髪の何者かが、壁の方を向いてうずくまっていて、その腕にはぬいぐるみを抱えるようににじくじゃくが抱かれていたが、あまりにきつく抱きしめられて、死にかけていた。
「お嬢様!」
 老婆の声にその誰かが振り向くと、なんとその顔は一つ目で顔色は青かった!
「さ・・・サイクロプス?!」
 ミミが叫び武器を構えると、老婆が不思議そうに言った。
「うちのお嬢様はれっきとしたサイクロプスじゃよ。代々セレブなサイクロプスの由緒ある家系でな。そんなお嬢様を、ギガンテスなんかと間違ってしまうとは、ワタシもボケたもんじゃ」
「・・・」
 ミミとイザヤールは、なんとも言えない表情で顔を見合わせた。
「・・・。帰ろうか、ミミ」
「はい、イザヤール様・・・」
 だが、帰ろうとした二人を、サイクロプスは思いきりハグして(感謝からとはいえ二人がこんなに守備力が高くなければ危なかった)、助けてくれたお礼にと、特大サイズのプリンセスローブをくれたのだった。

 数日後、ミミとイザヤールのところにまた老婆が尋ねてきた。
「この前は世話になったのう。お嬢様の小鳥がまた逃げたんで、探してくれんかの?」
 おそらくサイクロプスお嬢様のハグに音を上げて逃げたのだろう。にじくじゃくを哀れに思い、今度はその頼みを引き受けなかった二人であった。〈了〉
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