セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

ビビりリハビリ大作戦

2013年05月17日 23時13分29秒 | クエスト184以降
今週は案外さくさく書けましたの捏造クエストシリーズこと追加クエストもどき。依頼人がモンスターだとお笑い系な展開の話となります傾向。スケアリードッグの性質については、モンスター図鑑175のスケアリードッグの項参照です。さすが恐ろしいと臆病なという意味の名前を持つだけあります見事なビビりモンスターです。イザヤール様、今回出番が少ないと思いきや・・・そして女主ミミ、特訓に関しては案外容赦なく絶妙に厳しいタイミングで行うことが判明(笑)

 ガナン帝国領在住、スケアリードッグは悩んでいた。他でもない、己れの臆病過ぎる性質にである。彼はいつもと言っていいほど心臓が縮み上がる思いで日々を暮らしていた。毒の沼が出すガスの湧く音にも飛び上がり、枯れた灌木が折れる音に気絶しそうになり、果てはキラーアーマーが「元気か?」と声を上げるだけでおたけびを上げる始末だった。
 そのおたけびで、こんな場所にまでやって来る命知らずの冒険者をなんとか追い払えていたが、そのおたけびが通用しない冒険者が居たらどうしよう、と考えるだけでもう気が遠くなりかけていた。だが、実際そんな悪夢のような出来事が、先日あったのである。若いくせにやたらに落ち着き払った、剃髪精悍な戦士風の男が、スケアリードッグの渾身のおたけびにも全く怯まずに向かってきたのだ。
 そのときスケアリードッグがあまりに怯えたので、とどめをさされることは何とか免れて命拾いしたのだが、それもまた心的傷害となって、哀れにもスケアリードッグはますます些細な物音に怯えることとなってしまったのだった。ちなみにその冒険者は、たまたま考古学者の依頼を受けてグビアナ銀貨を探しに来ていたイザヤールだったのだが、もちろんスケアリードッグはそんなことは知らない。
 とにかく、この性格をなんとかしなければ、心臓マヒで命を落とす可能性がシャレにならない。まだぴっちぴちの十代なのに、そんな死に方はゴメンである。どうしたらこの「ビビりな性質」を直せるのか、悩んでいるという訳だった。
 と、スケアリードッグが物思いに耽っていたところへ、視界の端に何か白いものが通り過ぎた。
(ままままさか幽霊?!)
 魔物が幽霊を怖がるというのも何ともおかしな話だが、恐怖の予感に怯えきった心は、理屈ではどうにもならない。スケアリードッグは、おたけびにしか聞こえない恐怖の悲鳴を上げた。すると、その「白いもの」は、びっくりしたように立ち止まり、身構えてきた。
 動きを止めたそれをよくよく見れば、長い白いドレスに身を包んだ人間の娘だった。長い睫毛に縁取られた濃い紫の瞳を見開いて、ちょっと首を傾げて立っている様は、人間と言えどもなかなか可愛らしく、怯えたのが恥ずかしくなるくらいだった。この娘はもちろん、カデスの牢獄跡のレストランでリッカたちと女子会待ち合わせで、だからムーンブルクドレスを着用していたミミだったのだが、当然スケアリードッグはそんなことは知らない。
 こんな小娘はおたけび一発で追い払えるだろう。て言うか、追い払えないと困る。・・・しかしそもそも、如何にも非力そうな人間の娘が、こんな軽装でこんなところに居るのはおかしいのではなかろうか。まさか昔ここで滅んだという人間の帝国の幽霊だったりして・・・!と、スケアリードッグの恐怖妄想はとめどなく続き、今にも泣きそうになっていた。
 ミミは、そんなスケアリードッグを相変わらず首を傾げて眺めていたが、戦意はなさそうだと判断して、そっと移動しようとした。だが、怯えきったスケアリードッグは、そんな静かな動きにも過剰反応した。
 わああ動いたー!スケアリードッグはパニックになり、捨て身で突進してきた!ミミははっと身構えて、思わずカウンターをしてしまったからたまらない。スケアリードッグはその鮮やかなカウンターをまともにくらい、赤い巨体は宙に吹っ飛んだ。そのまま地面に激突し、のびてしまった。
 ちょっとやり過ぎたかな・・・とミミは心配そうにスケアリードッグの様子を見守ると、よろよろ立ち上がった彼がさめざめと泣き始めたので、驚いて目を見開いた。なおも向かってくるとかならわかるが、泣き出す魔物なんてめったにお目にかかれない。
「うわああん、オレはもうこんなチキンハートはイヤだあ~!」
 嘆くスケアリードッグの言葉を聞き、ミミはスケアリードッグが非常に怖がりな魔物であることを思い出した。
「でも、仕方ないんじゃ・・・?あなたの種族は、みんなデリケートなんでしょ?」
 ミミが言葉を選んで遠回しな言い方をすると、スケアリードッグは厳つくて怖い顔を涙で濡らして見上げた。人間にこんな優しい言葉をかけられるとは、夢にも思わなかった。
「でも、オレこのまんまじゃ、最終的にショック死しちゃうよ。まだぴっちぴちに若いのに、まだ超しもふりにくを食べたこともないのにー!そんな死に方イヤだー!こんな性格直したいー!」
 そう言ってまたさめざめと泣く。ミミは思わず同情してしまってスケアリードッグの側にしゃがみこんで泣き止むのを待っていると、彼はゆっくりと身を起こしてようやく泣き止み、言った。
「アンタは人間にしちゃあ優しいなあ。なあ、どうしたらこの性格を直せると思う?」
「う~ん・・・」急に尋ねられてミミは困惑したが、一生懸命考え、答えた。「とりあえず、ちょっとくらい大きな音に驚かないよう馴れたらいいんじゃないかな・・・?」
「なるほど!」スケアリードッグはたてがみをゆさゆさ揺すって感心した。「じゃさあ、優しいアンタに頼みがある!大きな音がするアイテムや、びっくりするアイテムを集めてきてもらえないかなあ?そういうのに馴れて、鍛えたいんだ」
「それは構わないけれど、私、お友達とご飯の待ち合わせをしているの。持ってくるのは、ご飯が済んでからでもいい?」
「もちろん!いくらでも待つよ!」
 ミミはクエスト「ビビりリハビリ大作戦」を引き受けた!

 それからミミは駆け足でレストランに入り、既に待っていたリッカたちに少々の遅刻を詫び、おいしい食事をしながら遅刻の理由を話した。
「そっかー、スケアリードッグって見た目あんなだけどとっても怖がりなんだよね。ちょっと可哀想かも」
 リッカが頷いた。
「大きな音が出るアイテムと言えばやはりハッピークラッカーですわ☆ちょうど入荷してございましてよ」
 にっこり微笑みながらちゃっかりアピールするロクサーヌ。
「他に『ばくだんいし』なんかも使えそうね」
 ルイーダが呟くと、ロクサーヌが瞳を輝かせた。
「爆弾と言えば、夏の新商品の『ばくだんいわ形ビーチボール』も入荷しましたのよ。突然投げつければ、心臓を鍛えるのにうってつけですわ☆」
「普通の人の心臓にも悪そう・・・」思わず呟くリッカ。
「みんな、ありがとう。じゃあロクサーヌさん、帰ったらハッピークラッカーと新商品のビーチボールを売ってくれる?」
 ミミが頼むと、ロクサーヌはますます輝くような笑みを浮かべた。
「喜んで!『ばくだんいし』をオマケ致しますわ♪」
 それから女子たち四人は、しばしスケアリードッグのことは忘れて、コース料理の続きと、デザートのスイーツに舌鼓を打ったのだった。

 ミミはロクサーヌの店で複数のハッピークラッカーと、ばくだんいわ形ビーチボールを一つ入手し、道具袋に入っていたばくだんいしもありったけ持ち、依頼者であるスケアリードッグの待つ場所に戻った。
「お待たせ」
 ミミが声をかけると、スケアリードッグは飛び上がった。これでは鍛えても見込みは薄いかもしれない。
「わー!・・・ああびっくりした、アンタかあ・・・。お、いろいろ用意してくれたんだあ、ありがとう」
 だが、この様子では、いきなりハッピークラッカーを鳴らしたら本当に気絶しそうである。急遽ミミは、もっと穏やかな音から始めることにした。
「いい?あなたの後ろで『天使のすず』をランダムに鳴らすから、それに馴れたらハッピークラッカーを使いましょう」
「え~。いくらオレがビビリーでも、天使のすずの音くらいで・・・」
 ちりん。このとき、ミミは鈴を振った。
「ひいー!!」
 びくんとするスケアリードッグ。
「・・・ね?これから始めた方が、いいでしょ?」
 ミミが申し訳なさそうな、しかしちょっと苦笑も混じった顔で、呟いた。
 やがてさすがに、不意討ちで鳴らされても、天使のすずでは驚かないようになった。そこで、いよいよハッピークラッカーを使うことにした。
「ちょっとハードル高いかな?」
 ミミが心配そうに呟くと、スケアリードッグは少々むくれた。
「なんだよう、さっきから訓練してんだ、いくら何でも・・・」
 ぱあん!ミミはハッピークラッカーを鳴らした!
「ひいいー!」
 おたけびに近い悲鳴を上げるスケアリードッグ。
 だが、そんなことを繰り返すうちに、スケアリードッグはついにハッピークラッカーの音にも馴れてきた。
「この音にも馴れてきたのってすごいの」
 ミミが嬉しそうに言うと、スケアリードッグは喜んだ。
「マジで?じゃあオレもちょっとは性格改善に・・・」
 ここでミミは突然、「ばくだんいわ形ビーチボール」を投げた!
「ぎょえーーー!!」
 スケアリードッグは大陸中に響きそうな絶叫をしたが、何とか気絶は免れた。
「気絶しなかったじゃない、すご~い☆」
 ミミが文字通り天使のような微笑みを浮かべ手を叩くと、スケアリードッグは痙攣しながらも弱々しく笑った。
「そ、そうか?オレ、なんか行ける気がしてきた!ありがとー!お礼にこれを受け取ってくれよ」スケアリードッグは「いやしのうでわ」を差し出した。「びびっちゃあこれで癒されてたんだけど、もう無くても行ける気がする!オレ頑張るよ!」
「もらっちゃって大丈夫なの・・・?」
 自信を付けたのはいいことだけど大丈夫かなあ、とミミは心配になったが、スケアリードッグは押し付けるように渡してきた。ミミは「いやしのうでわ」を手に入れた!
「よーし、もーちょっと刺激の強いショックを・・・」
 と、やや調子に乗ってスケアリードッグが言いかけたそのとき。
「ミミ、クエストは終わったか?手伝うことはあるか?」
 ミミを迎えにイザヤールが現れた!
 彼の姿を見た途端にスケアリードッグは信じられないくらいの高さで飛び上がり、絶叫し、そして・・・気絶した・・・。
「え、え、何でイザヤール様を見て気絶するの?!イザヤール様はそんなに怖くないのに」
「いったいどうしたんだ、このスケアリードッグは?」
 うろたえるミミ、戸惑うイザヤール。ミミはこのスケアリードッグがイザヤールにこてんぱんにされていたことなど知らなかったし、イザヤールもそんな出来事をすっかり忘れていた。
 ようやく気絶から醒めたスケアリードッグから事情を聞いて、ミミとイザヤールは気の毒がったり苦笑したりした。
「それならば、性格を直すより心臓を鍛えた方が手っ取り早くはないか?」
 何気なくイザヤールが提案すると、スケアリードッグは思いの外食いついた。
「その手があったか!とりあえず毎朝ジョギングから始めようかなあ?」
 その後スケアリードッグは宣言通り毎朝のジョギングを始めたが、同じような目的でジョギングを始めた別のスケアリードッグと出会い頭で衝突しそうになり、それに驚いてお互いに絶叫し、共にしばらく気絶していたという。〈了〉

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