クリスマスも間近。相変わらずリッカの宿屋は大盛況で、ほっと一息つけるのは、皆が寝静まった夜だったりする。
昼間の賑やかさが嘘のように静まり返ったロビーで、宿屋の若き女主人リッカは、綺麗に飾り付けられたクリスマスツリーを見上げていた。スタッフ一同で、思い思いに楽しく飾り付けた自慢のツリーだ。
(子供の頃・・・てっぺんに飾られたお星さま欲しかったっけな・・・)
幼い頃のことを思い出して、彼女は微笑みを浮かべた。ウォルロ村の宿屋でも、ささやかながらクリスマスツリーは飾られた。
クリスマスが終わると、リッカの父親は、ツリーに飾られた星をそっと外して、優しく笑って彼女に渡してくれた。今思えばそれは金色の厚紙で簡易に作られた物で、すぐに壊れるかなくすかしてしまったのだけれど。それでもしばらくは、「サンタさんからのプレゼント」と共に、大切にしていたものだ。
リッカの父親は宿屋の仕事で忙しく、「サンタさんからのプレゼント」は、祖父が用意してくれていたのかもしれない。それでも未だ心のどこかで、サンタクロースがどこかに居ればいいな、と彼女は思っている。
(ミミとの冒険で会ったクロースさんて、本当にサンタクロースだったりして・・・)
ミミと冒険に出ると、不思議で楽しいことがたくさんある。みんなでお互い助け合っているから、宿屋の女主人と冒険者は、おかげでちゃんと両立できていて、「宿屋のことばっかりでいいのかな」という迷いもなくなった。
不思議と言えば、もしサンタクロースがいなければ、とても説明がつかないことが、昔一度だけあった。リッカの祖父がひどい風邪をひいてしまい、父親はその看病と宿屋の経営でてんてこ舞いになった年のことだ。
もちろんリッカも一生懸命手伝ったが、まだ幼すぎてあまり役には立たなかった。サンタさんにお手紙書く時間もなかったけど、ちゃんと来てくれるかなあ。そんな不安を抱えて眠った。
しかし翌朝、靴下の中には、ちゃんと欲しかったプレゼントは入っていたのだ。あのときのリッカの父親は、今思い出してさえも本当に驚いていたようだった。実際、彼も祖父も用意するのは不可能だったし、家の出入口には鍵がかかっていて、村の誰も入れる筈はなかったから。
あのときもらったブローチ、まだ持っていたっけな。リッカは楽しそうにハミングしながら、しまっている場所の心当たりを、あれこれ思い返した。
翌朝。ミミはふと、リッカがなんとなくいつもと違うことに気が付いた。しばらく見つめて、バンダナにブローチを着けているからだと、ようやく気が付いた。
「リッカ、それ・・・」
ミミが呟くと、リッカは嬉しそうににっこり笑った。
「子供の頃クリスマスにもらったブローチなの」
「雪の結晶の形なのね。可愛くて綺麗」
リッカ、ほんとはね、私・・・そのブローチの事は、よく知っているの・・・ミミは心の中で呟く。私も昔・・・同じ形の物を持っていたから・・・。
(天使界に置いてきてしまって、もう二度と取りに行けないけど・・・)
今度イザヤール様に、また作ってくれるようおねだりしちゃおうかな。ミミもまたにっこり笑い、今日も爽やかに、一日が始まった。〈了〉
昼間の賑やかさが嘘のように静まり返ったロビーで、宿屋の若き女主人リッカは、綺麗に飾り付けられたクリスマスツリーを見上げていた。スタッフ一同で、思い思いに楽しく飾り付けた自慢のツリーだ。
(子供の頃・・・てっぺんに飾られたお星さま欲しかったっけな・・・)
幼い頃のことを思い出して、彼女は微笑みを浮かべた。ウォルロ村の宿屋でも、ささやかながらクリスマスツリーは飾られた。
クリスマスが終わると、リッカの父親は、ツリーに飾られた星をそっと外して、優しく笑って彼女に渡してくれた。今思えばそれは金色の厚紙で簡易に作られた物で、すぐに壊れるかなくすかしてしまったのだけれど。それでもしばらくは、「サンタさんからのプレゼント」と共に、大切にしていたものだ。
リッカの父親は宿屋の仕事で忙しく、「サンタさんからのプレゼント」は、祖父が用意してくれていたのかもしれない。それでも未だ心のどこかで、サンタクロースがどこかに居ればいいな、と彼女は思っている。
(ミミとの冒険で会ったクロースさんて、本当にサンタクロースだったりして・・・)
ミミと冒険に出ると、不思議で楽しいことがたくさんある。みんなでお互い助け合っているから、宿屋の女主人と冒険者は、おかげでちゃんと両立できていて、「宿屋のことばっかりでいいのかな」という迷いもなくなった。
不思議と言えば、もしサンタクロースがいなければ、とても説明がつかないことが、昔一度だけあった。リッカの祖父がひどい風邪をひいてしまい、父親はその看病と宿屋の経営でてんてこ舞いになった年のことだ。
もちろんリッカも一生懸命手伝ったが、まだ幼すぎてあまり役には立たなかった。サンタさんにお手紙書く時間もなかったけど、ちゃんと来てくれるかなあ。そんな不安を抱えて眠った。
しかし翌朝、靴下の中には、ちゃんと欲しかったプレゼントは入っていたのだ。あのときのリッカの父親は、今思い出してさえも本当に驚いていたようだった。実際、彼も祖父も用意するのは不可能だったし、家の出入口には鍵がかかっていて、村の誰も入れる筈はなかったから。
あのときもらったブローチ、まだ持っていたっけな。リッカは楽しそうにハミングしながら、しまっている場所の心当たりを、あれこれ思い返した。
翌朝。ミミはふと、リッカがなんとなくいつもと違うことに気が付いた。しばらく見つめて、バンダナにブローチを着けているからだと、ようやく気が付いた。
「リッカ、それ・・・」
ミミが呟くと、リッカは嬉しそうににっこり笑った。
「子供の頃クリスマスにもらったブローチなの」
「雪の結晶の形なのね。可愛くて綺麗」
リッカ、ほんとはね、私・・・そのブローチの事は、よく知っているの・・・ミミは心の中で呟く。私も昔・・・同じ形の物を持っていたから・・・。
(天使界に置いてきてしまって、もう二度と取りに行けないけど・・・)
今度イザヤール様に、また作ってくれるようおねだりしちゃおうかな。ミミもまたにっこり笑い、今日も爽やかに、一日が始まった。〈了〉
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