セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

氷の薔薇

2013年12月27日 23時56分49秒 | クエスト184以降
今年最後は何とか金曜日にお送りできましたの捏造クエストシリーズこと追加クエストもどき。本年も硬軟様々なクエストもどきにお付き合いありがとうございました♪タイトルはファンタジー風味ですが実は脱力系な話でございます。いやあ、文通って・・・という話です(笑)今や文通どころかオンラインでコミュニケーションが取れる時代ですが、会ったことの無い相手にホレるってかなり博打なのは、アナログもデジタルも変わらない気がします。まあ大概の方は文章通りのイメージな方が多いですが☆

 一年を通して銀世界であるエルシオン学院は、今日も相変わらずの雪模様だった。一時的に止んだ雪も、またすぐに降りだすとでも言いたげに、灰色の雲が重たく垂れこめている。
 この土地に来ると、セントシュタインやウォルロで感じる冬の寒さも、まだましなような気分になる。学院自体は、普段は生徒たちの活気であまり極寒を感じさせないが、冬期休暇であるこの時期、生徒や教師たちもほとんど帰省してしまっているので、がらんとした学舎や寮が、厳しい気温を余計に寒々しく感じさせた。
 幸い寮の一階の食堂は、まだ帰省していない一部の生徒たちの為に惜しみなく暖炉を焚いてくれていた。律儀にもエルシオンブレザーと、元々スカートとしては短めであるエルシオンスカートの上下セットでやって来てしまって少々後悔していたミミは、それで思わずほっと息を吐き出した。若さとギャルニーソと特製のブラックガードをもってしても、絶対領域を襲う寒さはなかなか厳しかったからである。
「あっ、ミミさん、来てくれたんだね!」
 寮から続く階段から、小柄な少年が駆け降りてきた。今回彼からのSOSを求める手紙で、ミミはわざわざ冬期休暇中の学院にやって来たのである。彼とはほとんど面識がなかったが、エルシオン卿お墨付き、学院の名誉生徒?であるミミとしては、エルシオンの生徒が困っていたら手助けするのはごく自然なことになっていた。
「手紙ではよくわからなかったんだけれど・・・困ったことってなあに?私に手伝ってほしいことって?」
 ミミが首を傾げて尋ねると、少年はパチンと手を合わせ、ミミを拝むようなしぐさをした。
「お願い、『氷の薔薇』を探すのを、手伝ってほしいんだ!」
「氷の・・・薔薇?」
「『こおりのけっしょう』が薔薇の花みたいな形になってる、とっても珍しくてキレイな結晶なんだ。みんなに探すの手伝ってもらおうにも、ほら、冬休みで帰っちゃってるし、ミミさんならルーラですぐに来てくれるからって思って、それでお願いしたんだ」
 ちなみに、彼の出した手紙は、ちょうどセントシュタインに帰省する生徒に託されたので、迅速に届いたのだった。
「探すのを手伝うのはもちろん構わないけれど、どうして必要なの?」
 そんな結晶があるなら見てみたいなと、ミミがわくわくしながら尋ねると、少年は一気に気まずそうな顔になってみるみる顔が赤くなった。
「実はさあ・・・文通相手に、送ってあげるってうっかり手紙で書いちゃって。相手の子、お花とキレイで繊細な物が大好きなんだって。で、砂漠の国グビアナに住んでるから、きっと喜んでもらえると思って。その・・・同じ年頃の女のコ同士の友情の証に、互いの居る場所の薔薇を交換しましょ、って、その子の喜びそうなこと書いちゃったんだよね」
「・・・女の子?あなた、男の子よね?」
 ミミがびっくりして尋ねると、少年はますますきまり悪そうな様子になり、もじもじした。
「その・・・カワイイ女のコと文通したくて、つい文通相手募集する時に、『十代のエルシオン学院女子生徒です。趣味はお料理とフラワーアレンジメント』って書いちゃったんだ・・・」
「嘘書いたの?!」
 ミミが呆れてその優しい顔を目一杯厳しくすると、少年は半ベソ顔になった。
「そのうち正直にほんとのこと打ち明けようって思ったんだ!でも、手紙のやりとり中のガールズトークっぽいので盛り上がっちゃって。今さら嘘だなんて言って、がっかりさせたくなくってさあ・・・。ね、お願い、せめて氷の薔薇だけは本物を送ってあげたいんだ!キレイな薔薇を見て喜んでほしいんだ!」
 そう言われてミミは、嘘は良くないと悩んだが、喜んでほしいという気持ちには偽りは無いと感じて、手伝うことに決めた。ミミはクエスト「氷の薔薇」を引き受けた!

 薔薇の形をした特殊な「こおりのけっしょう」は、おしゃれをしている「デビルスノー」を倒すとごく稀に落とすとのことだった。
「おしゃれをしているデビルスノーって、どんなの?」
 ミミが尋ねると、少年も困った顔で答えた。
「他のデビルスノーよりイケてるデビルスノーらしいけど・・・。きっと僕らから見たら全然わかんないと思うんだ。地道に倒し続けるしか無いんじゃないかな・・・」
 ほぼヒント無し。気合いでどうにかするしかなさそうだ。ミミは気の遠くなりそうな気持ちを奮い立たせて、極寒仕様の長期戦装備に着替えるべく、寮の階段を上っていった。そんな彼女の頭を、実は着いてきていたサンディが、励ますようにぽんぽんと叩いた。

 ちょうどその頃。ルイーダに頼まれ、グビアナにサンドフルーツ集めに行っていたイザヤールは、そのサンドフルーツを持っている「デザートランナー」を追いかけて砂漠を駆け回っていた。その最中、「サンドシャーク」の大群に襲われている、大柄な体格のあらくれ装備の男を見かけたので、急いで助けた。
「助かった、恩に着るぜ!」
 礼を言うや否や、ボロボロの体でまたサンドシャークの群れに向かって行こうとするあらくれを、イザヤールは慌てて止めて、尋ねた。
「無茶をするな!サンドシャークと何か因縁があるのか?」
「サンドシャークが持っている、『砂漠の薔薇』が欲しいんだ、止めてくれるな兄ちゃんよ!」
「砂漠の薔薇?」
「砂が長い年月をかけて、薔薇の花のような形の結晶になった物さ」
「ほう、そんな物があるのか」
 そういえば確か昔書物でそのような記述を読んだことはあると思い出したが、実物は見たことがなかった。それこそ綺麗な物が好きなミミに見せてやりたいと、イザヤールは思った。
「・・・ある人に、どうしても送ってやりたくてな。砂漠に落ちているらしいが、たまにサンドシャークが持っていることもある。広い砂漠を探すより、サンドシャークを倒す方が手っ取り早そうだから、戦っていたのさ」
「戦っていたというより、襲われていたというべきだったような・・・。そんな危険な目に遭ってまで、手に入れたいのか?どうしてそこまで?」
 イザヤールの問いに、あらくれ男は、急にもじもじとしてうつむいた。
「その・・・文通相手に送ってやりたくて・・・」
「文通相手?」
「あーっ、あんた今、笑っただろ?!こんな俺が文通なんておかしいって思っただろー!」
「いや、別に」
 そう答えるイザヤールの顔を、あらくれは尚も疑わしそうに見ていたが、イザヤールのポーカーフェイスは伊達ではない。何せ、ガナン帝国の将軍たちにも同胞の天使たちにも腹の内を見せなかった男である。淡々としたその表情には、何も窺えなかった。それであらくれは、話を戻した。
「文通相手は、まだ十代のエルシオン学院の女子生徒でさあ・・・。料理とフラワーアレンジメントが趣味だって書いてたから、グビアナの花でも送ろうかと思っていたら、その矢先に、『女のコ同士の友情の証に、お互いの居る場所の薔薇を交換しましょ』って手紙で書いてきてさ!すっげえロマンチックだろ?超カワイイだろ?こりゃ珍しい砂漠の薔薇を送るっきゃねえ!そう思ったんだ!」
 あらくれ男は、マスク越しでもわかるくらいに顔を赤らめている。
「話はわかった。だが、ひとつだけわからない部分がある」イザヤールが、僅かにポーカーフェイスを崩して、眉をひそめて言った。「今、『女の子同士の友情の証』と言わなかったか?たいへん失礼かもしれないが、私にはどうしても君は女性に見えないが」
 もしこのあらくれが万万が一女性だったら、ぶん殴られる覚悟でイザヤールが言うと、あらくれはみるみるしょげかえった。
「いやあ・・・実は・・・。こんなゴツい男じゃ怖がって文通なんてしてくれねえって思って、レースやリボンやお花大好きな、病弱で華奢な美少女ってフリをして文通始めたんだ・・・」
「・・・」さすがのイザヤールも、しばし絶句したが、調った精悍な顔を更に厳しくして、あらくれに言った。「まだ幼い女性を騙しているとは、感心しないな。本当のことを打ち明けたらどうだ」
「俺もそうしようと思ったさ!だけどよ、文通がめちゃくちゃ盛り上がって、今さらウソだなんて告げて相手の子をがっかりさせたくなくてさ・・・。全て偽りでも、せめて砂漠の薔薇だけは本物を送ってやりたい、綺麗だって喜んでもらいたいって、思ったんだよ・・・」
 まだ子供みたいな年頃の女の子を騙しているのは感心しなかったが、あらくれ男の真心は伝わってきた。しばらく考えて、イザヤールは口を開いた。
「私も砂漠の魔物に用事がある。ついでだから、よかったら手伝おう」

 再びエルシオン学院。露出ゼロの毛皮系防寒ばっちり装備に変えたミミは、やはりがっつり着込んだ依頼人の少年と共に、デビルスノーが多く棲息するエルマニオン海岸方面に出かけた。ちなみにサンディもさすがにしっかりと毛皮のコートを着込んでいる。エルマニオン海岸は、こおりのけっしょうの採取場所もあるので、ついでにそこに目当ての物が万が一落ちていないかの調査もできるというわけだった。
 可愛らしい雪だるまの周辺に落ちているこおりのけっしょうの中には、あいにく薔薇の花の形の物はなかった。そこで、デビルスノーに戦いを挑むことにした。
「僕、ブーメランの成績はちょっといいんです。頑張ります!」
 少年は張り切ってブーメランを構え、そして・・・。
 二時間後。イヤというほどデビルスノーを倒したものの、薔薇の花の形のこおりのけっしょうには巡り遇えず、少年は弱音を吐き始めた。
「ミミさ~ん、ちょっと休みません?一回学院に帰りましょうよ~」
 そうか、とミミは反省した。大人にもハードな特訓で有名なエルシオン学院の生徒とはいえ、依頼人は冒険者ではない。あまり無理をさせてはいけない。
「そうね、じゃあ、向こうに居るデビルスノーを倒したら、一回帰りましょう」
 その後デビルスノーの方から近寄ってきたが、ミミはふと違和感を覚えた。よくよく見るとそのデビルスノー、足にゲタではなくどことなくおしゃれなブーツを履いている!
「もしかして・・・これが、ちょっとおしゃれなデビルスノー?!」
 ちょっと、と言われて怒ったデビルスノーだったが、あっさりとミミの返り討ちに遭った。すると、何かキラキラした物を落とした。ミミは氷の薔薇を手に入れた!
「ありがとうミミさん!・・・そのうち僕、勇気出して・・・ほんとのこと打ち明けてみようかなって、思うよ」
 少年は氷の薔薇を受け取ってそう言って、ミミはにっこり笑って頷いた。それから少年は、お礼にと「たいようの石」をくれた。彼を学院まで送り、それからミミは、思ったより早く帰れてイザヤールに会えることが嬉しくて、弾む気持ちでルーラを唱えた。

 またまた一方イザヤールも、無事砂漠の薔薇と、ついでにサンドフルーツもちゃんと入手して、砂漠の薔薇をあらくれ男に渡すことができた。礼を言われ「あまつゆのいと」ももらい、セントシュタインへと帰ったのだった。
 そしてその晩、ミミとイザヤールは互いに今日の出来事を話して、互いの依頼人のそれぞれの文通相手の正体を知った。
「イザヤール様・・・どうしよう、ほんとのこと、教えてあげた方がいいのかなあ・・・」
「そうだなあ・・・」
 世の中には知らない方が幸せなこともある。しかし・・・。しばらく悩んだ二人だった。〈了〉
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ケーキ~!! | トップ | 大人風な帰宅遅理由 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿