セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

代理ビルダー!〈前編〉

2016年07月23日 08時59分17秒 | クエスト184以降
土曜午前更新が普通になっちゃって反省するけど改善されないの追加クエストもどき。もろにドラクエビルダーズネタ、女主ミミとイザヤール様をドラクエビルダーズ風世界に放り込んでみました。バリバリにビルダーズネタは前から書きたかったんですが、理由は「なんで目玉焼きもハンバーガーもあるのに目玉焼きバーガーが思いつかないんじゃ〜!」と思ったからです(笑)そして、前後編では終わらない予感・・・。しばらくお付き合いくださいませ〜。

 熟練冒険者として経済観念もしっかり持っているミミは、買い物は大概きちんとした店ですることが多い。だが、バザールや不定期な市などで買い物をするのも決して嫌いではなかった。たとえ怪しげな店で金額が妥当でなくても、不思議な掘り出し物に出会って、それが新たな冒険に導いてくれたりするからだ。
 今日も彼女は、セントシュタイン城下町に来ていた流しのよろず屋をちょっと覗いてみた。装飾が派手なばかりで使い物にならない怪しげな武器が多い中で、一つだけ簡素でかえって目立ち、そしてどこか見覚えがあるものが目を引いた。
「これは・・・」
 ミミは思わずそれを手に取り、首を傾げた。丸木に棒を刺したようなそれは、お馴染みの魔物「おおきづち」の愛用武器の木製ハンマーだったからだ。
「ああ、それは『おおきづち』だよ。たったの70ゴールド!」
 よろず屋の言った値段は妥当かどうかわからなかったが、これはもしかしたら本当に魔物の「おおきづち」の大木槌なのかもしれないな、もしかしたら落として泣いているおおきづちが居るのかも、それなら返してあげたいなと思って、ミミは言い値で買うことにした。持ち主が居なければ野営に建築にと使い道もあることだし。
 その後ミミは西セントシュタイン中を歩き回り、おおきづちを落としたおおきづちは居ないかと探したが(『おおきづちを落としたおおきづちさんは居ませんか?』と呼びかけて少々ややこしいことになったがちゃんと通じた)、結局持ち主は現れなかった。
 それでミミはハンマーの方のおおきづちを持ち帰り、イザヤールに見せて、購入した経緯を説明した。
「これ、普通の木製ハンマーだと思っていたけれど・・・なんだか、不思議な気配をかすかに感じるの」
「確かにな」イザヤールは目利きな戦士の眼光でそれを手に取り、頷いた。「特に特殊効果は無いようだが・・・何の気配なんだろうな」
 さっそく使ってみようと、二人は今夜は急遽テント泊にすることにして、居心地のいいリッカの宿屋の自室を後にし、町の外に出た。適当な場所にテントを張る際の杭打ちに試しに使ってみようとしたのである。
 ミミは杭におおきづちを振り下ろした。あくまで普通の力加減で振り下ろした筈だった。
 だが、その一撃で、突然地面に巨大な穴が空き、勢い余ってミミは、その穴の中に落ちていってしまった。
「ミミ!」
 イザヤールは仰天したが、一瞬のためらいもなく、彼女を追って穴の中に飛び込んだ。

 気が付くとミミは、薄暗い見知らぬ遺跡の中で倒れていた。慌てて跳ね起きて辺りを見回したが、イザヤールの姿は無い。上を見上げても何故か、落ちてきた筈の穴は無く、硬い石で作られているらしい天井が広がるばかりだった。手には相変わらずおおきづちが握られている。
 もしかしてこのおおきづちのせいで、よく遭遇する異世界ワープに遭ってしまったのかと、ミミは少なからず動揺したが、とにかく気持ちを落ち着けなきゃと立ち上がった。それにしても、周囲も天井同様硬い石の壁ばかりだった。どうやってまずは外に出ようかと考えていると、突然あたたかな光が辺りを包み、美しく優しい声がミミに語りかけた。
『世界を救ったかつての守護天使、ミミよ・・・。あなたの力を、少しの間この地にも貸してください・・・』
「あなたは・・・?」
『私は、この地の精霊です。ミミよ、あなたがお察しの通り、ここはあなたが暮らしているのとは別の世界。この地は今、悪しき魔王により闇に閉ざされ、人々は大切な力を奪われてしまいました・・・』
「何を奪われたのですか?」
『物を創造する力です。これがあることで、人間は非力な存在ながら身を守り、文明を築くことができた。それを奪われた今、人間は滅びの道をたどるのも時間の問題です。ミミ、あなたの優れた錬金術師としての創造力の知識で、人々を助けてください。・・・もちろん、少しの間だけでいいのです。私が、本来その使命を託そうとしていた『ビルダー』を探すまでの間、人々に希望を与えてください。お願いできますね?』
「それはもちろん!・・・ところで精霊さま、私の他にもう一人、元守護天使を呼びませんでしたか?」
『・・・いいえ、私は、呼んでいません。ですが、もしかしたら、魔王の方が・・・』
 それを聞いてミミは蒼めた。もしイザヤールの方はこの地の魔王が呼んでいるとしたら、イザヤールは決して魔王に手を貸すことなどしないだろうから、彼は捕らえられるか酷い目に遭ってしまうかもしれないと考えたのだ。
『ミミよ、あなたの大切な、もう一人のかつての守護天使は、ビルダーを見つけるまでには、私が責任を持って必ず救い出します。あなたの役割を果たしてくれれば、それだけ早く彼に再会でき元の世界に帰れるのだと、どうぞ理解してください。この地の伝説の武器は、魔王の手により破壊されてしまいました。あなた方がいくら強くても、丸腰では強大な魔王には勝てません。どうか私を信じて、あなたの役割を果たしてください・・・』
 すぐにでもイザヤールを探しに行きたかったが、精霊の頼みを放っておけば、この地の人々が苦しむのだと思うと、精霊の言う通りにするしかなさそうだった。与えられた役割を果たしつつイザヤール様を探そうと、ミミは固く決意した。ミミはクエスト「代理ビルダー!」を引き受けた!

 一方イザヤールは、意識を取り戻すと同時に、自らが壁に鎖で縛りつけられていることに気付いた。両手首と両足首にがっしりした金属の枷がはめられ、その枷から伸びる太い鎖は、壁にしっかりと固定されていた。最強バトルマスターの怪力で引っ張ってみたが、枷も鎖も外せなかった。
 辺りを見ると、そこは自然の洞窟を改造した牢獄のようで、エルギオスが囚われていた牢獄を思わせた。鈍く光る壁掛け松明の灯りは、光を与えるというより、煙ってくすんで、周囲の気味悪さを否応なしに照らして心を沈ませる。
 それでもイザヤールは、慌てずに体を捩り、なんとか戒めを解こうとした。そうしてもがいていると、暗がりの方から、低く冷たい声が聞こえてきた。
『異世界のかつての優れた守護天使よ、わしと手を組まぬか?わしの味方になれば、世界の半分をくれてやろう。どうだ?悪い話ではあるまい?』
 イザヤールは鋭い眼差しで声のする方を見たが、相手の姿は見えない。彼は、低い淡々とした、だが大概の相手を震え上がらせることのできる、例の静かな迫力とも言うべき声で呟いた。
「・・・おまえは何者だ」
「わしは王の中の王」暗がりからの声が答える。大概の魔物や人間なら震え上がるイザヤールの気迫にも、全く動じた様子は無かった。「だから、おまえのような、優れた力を持つ者が、欲しい。・・・天使からすぐ死ぬ身の人間にされて、神のつまらぬ使い走りをしているより、世界の半分の支配者になって、おまえの真の能力を発揮する方が、よほど有益ではあるまいか?さあ、わしの味方になるのだ。そうすれば、世界の半分をおまえにやろう」
 何故自分のことを元天使だと知っているのか、王の中の王とは何者なのか、疑問は尽きなかったが、イザヤールはたった一言、簡潔に答えた。
「断る」
「そうか」暗がりからの声は、からからと笑った。「ならば、考えが変わるまで、いくらでもここに居るがいい。その鎖に繋がれている限り、おまえは飢えや渇きで死ぬことは無いから、時間だけはたっぷりとある。その間に、我が力を知り、考えを変えることになるだろう」
 暗がりの気配は遠ざかっていき、イザヤールは再び静寂の中に一人取り残された。鎖は渾身の力を振り絞っても、相変わらず切れる兆しも無かったが、彼は焦らずに、何とかここから逃げる方法に考えを巡らせた。
(ミミは、無事だろうか)
 共に囚われの身になってはいないらしいとイザヤールは判断した。もしそうなら、彼女を人質にして、味方になるよう取引をもちかけるだろうから。ここに居ないのならミミは大丈夫だろうと信じては居たが、それでも、彼女が今どうしているのか、一刻も早く無事を確かめたかった。
 イザヤールは、あることを思い付き、枷をはめられた部分が傷付くのも構わずに、再び戒めを解く努力を始めた。

 ミミは、精霊から、この近くの天から光の筋が射す地に行き、結界を作る旗を立てるように言われた。そうすれば、人々はそこに集まって暮らすことができる。ミミの役割は、集まった人々に物を作るところを見せて彼らが失った力を思い出させることと、魔王が送ってくる魔物の軍団を撃退することだった。
『あなたにとって異世界のこの地では、あなたの本来の力を充分発揮できないかもしれません』精霊は言った。『しかしあなたは、その知恵と、数々の魔王と戦った豊かな経験できっと乗り越えてくれると、私は信じています。さあ、まずはこの遺跡から出てください。あなたが手にしているおおきづちは、この遺跡の壁は壊せませんが、土壁は壊せます。土壁を壊せば、外へ出られるでしょう』
 ミミは言われた通り、辺りをよく見て、土壁の部分を探し、おおきづちを思いきり振った。土壁は崩れて、ぽっかりと外へと出られる穴が空いた。
 外に出て辺りを見渡すと、空はどんよりと曇り暗く、草原や丘陵の草木も、どことなく元気が無かった。それでも一筋、天から光が射している場所はすぐに見つかった。とりあえずあれを目指して行けばいいらしい。ミミはさっそく走り出した。
(イザヤール様・・・)
 ミミは、もしかしたら今この瞬間も捕らえられているかもしれない彼の身を思って、思わず濃い紫の瞳を潤ませた。唇をきゅっと噛んで泣くのは堪えたが、一刻も早く彼に会って無事を確かめたかった。たとえ囚われていたとしても、イザヤールなら何としてでも脱出するだろうと信じてもいたが、それでも不安がすっかり解消するわけではない。
 なんとか気をしっかり取り戻してミミが顔を上げると、いつの間にかスライムたちに囲まれていた。顔つきから察するに、友好的なタイプではないらしく、戦闘態勢のやる気満々タイプらしい。ミミは、とりあえずバギの呪文を唱えてみた。小さな竜巻がスライムたちを襲う!風に巻き上げられて、スライムはあっという間に蹴散らされた。
 これで少なくとも、初期呪文を使えるのはわかったが、異世界のこの地でバックダンサーやオオカミを呼べるかは甚だ心許ない。試しにバックダンサーよびやオオカミアタックを使ってみたが、案の定発動しなかった。武器も道具も一切無く、装備はこのおおきづちと、テント泊の為に着た「サマードレス」だけだ。セントシュタイン城下町のすぐ近くでのテント泊のつもりだったので、服も軽装だったのだ。まあたびびとの服や皮のドレスよりは守備力が高いので良しとするしか無いだろう。
 剣も無いので剣スキルも使えない。ハンマースキルは使えるかもしれないが、秘伝書を持っていないのでビッグバンは使えない。ライドインパクトは今試すと、周辺に甚大な被害を及ぼしそうなので、またの機会にすることにした。
 光の射す地に着くと、元は町だったのか、壁や建物の一部だったらしいものがたくさんあった。幾つかは修復すれば雨露はしのげそうだ。とりあえずミミは、光の射す地面に精霊から預かった旗を立てた。すると眩しい光が辺りを覆い、ちょうど町だった部分辺りまでが、聖なる力で守られた!〈続く〉
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