たいそう更新遅くなりましてすみません~目を覚ましたら昼でしたああの追加クエストもどき。お盆も終わりということで、ネタバレしますとちょっとお盆らしいタイトルとお話となりました。ドラクエ世界ではお盆はなさそうですがそんな風習の地方もあるかな?ってことで。
蝉の声がじんわりと響いていた。強い太陽光に草や木はいっそう生い茂り、地面は揺らめいて陽炎を作っていた。ミミは、白いフードの下の額の汗を手の甲でそっと拭ってから、目的地の大木を眺めた。
移動魔法が使えても、町でも村でもない、「なんでもないところ」に行くには、天の箱舟に乗るか、こうして歩いていくしかない。しかし、今回は理由はわからないが、町から町への移動以外は、徒歩か船でと指定されていた。天の箱舟も船の一種かもしれないが、これは明らかに依頼人には想定外だろうから、避けた方が無難だろう。
今朝方のことだ。いつの間に貼られたのか、リッカの宿屋のロビーにある、冒険者の伝言板の端っこに、ひっそりとクエストの依頼が貼り付けられていたのだった。そこには、指定の場所を巡ってそこにある物を集めてから、ジャーホジ地方のとある一角に届けてもらいたいというものだった。たまたまその依頼を見つけたミミは、ちょうど依頼されたクエストは全て終えていたところだったので、引き受けようとその紙切れをそっと剥がして道具袋に入れた。その時点で「ミミは謎のクエストを引き受けた!」という状態になったのだが、そして出かけて、今こうして夏の日差しの中歩いているというわけだった。
(こうしてあちこち巡っている間に、偶然イザヤール様に逢えるといいな・・・)
今日の早朝に送り出したばかりなのに、虫が良すぎるかなと、ミミは頬をかすかに染めた。彼は、「漢(おとこ)の料理研究会」なる女人禁制の会の護衛を頼まれ、出かけていったのだった。それを見送りにロビーに降りたときに、ミミは伝言板のクエスト依頼を見つけたというわけだ。漢の料理研究会は、各地を巡って材料集めもするそうなので、運が良ければ本当に会えるかもしれない。海に落とした指輪を見つけるくらい低い確率かもしれないけれど。
ミミの方のクエストの集める物は、どことなくモーダメ王のクエストを思い出させるところがあった。さとりそうにあやかしそうなど、お香にもするような物もふくまれていたからだ。他には、いやしそうにキメラのつばさ、ゆめみの花、かぜきりのはねなどで、謎の依頼人はこれらをいったい何のために集めようとしているのか、錬金マニアのミミにもよくわからなかった。まあ錬金するとは限らないわけだけれど。
ようやくいやしそうの生えている大木に到着すると、ミミは思わずほっと息を吐き出して、採取する前に木陰に座った。梢を通る風がさやさやと葉を震わせ、その音が涼感を増して汗がすうと引いていく。目蓋を閉じて彼女は、ふとかすかな、ほんのかすかなたくさんの声を聞いた。風と一緒に、町の方に向かうこの声たちは。・・・死者たちの声。
ただし、悪いものではない。迷っているのでもない。ちょっとだけ、帰ってきたんだ、エリザさんみたいに。なんでだろう。口の中で呟いてミミはゆっくりと長い睫毛を上げた。濃い紫の瞳が、梢を見上げると、かすかな声はいつの間にか止んでいた。
ミミは我に返ったように勢いよく立ち上がると、せっせといやしそうを摘み始めた。まだまだたくさんの指定の場所を回らなくてはいけない。ぼんやりしている場合ではなかったよね、と、彼女は小さく苦笑した。
依頼が書いてある紙切れによれば、次に集めるのはキメラのつばさだった。さっそくエラフィタまでルーラで飛んで、小麦畑の傍の道を歩いた。金色に光ってさえ見える畑の海を抜けて、かかしの前に立つと、その足元にはキメラのつばさが三枚落ちていた。小麦と風が作る金色の海は、本当に小さな波のような音の連なりを立てている。その音に混じって、風に乗るように村の方に向かっていく小さな、かすかな囁きの数々は・・・。
ああ、ここでもだ、と、ミミは目を閉じた。どうして今日は、優しい死者たちの声が、たくさん聞こえるのだろう。なんで帰ってきているのだろう。
キメラのつばさを拾うと、今度の行き先はサンマロウのゆめみの花の生息地だった。ここでも、潮風に乗ってサンマロウの方へと向かっていく、かすかな死者たちの声が聞こえた。日除けにまとっているミミのフード付きのローブが、風をはらんでふわりとなびいた。青い碧い空を見上げると、白く光るカモメたちが飛んでいる。この潮風に、あのカモメたちに乗って、死者たちはサンマロウに帰っていくのだろうか。
何故なの?何故今日なの?ミミは小さく呟いて尋ねたが、死者たちの声はそれに答えず、やがて声は遠ざかっていった。
ゆめみの花の次に集めるのは、かぜきりのはねだった。かぜきりのはねならばサンマロウでも採取できたが、指定ではカルバドへ行くことになっていた。ここも回り道になるから、羽が採取できる場所まではかなり遠い。場所によって羽がどう違うんだろうとミミは首を傾げながらルーラでカルバドの集落に飛び、そこから採取地へ行こうとしたそのときに、嬉しくて信じられないとでも言いたげな声に、呼び止められた。
「ミミ、ミミなのか?!」
ミミも信じられなくて驚き、フードを脱いで振り返ると、そこにはやはりイザヤールが立っていた。
「イザヤール様こそ、どうしてここに?」
互いに駆け寄り、示し合わせていないのに出会った嬉しい偶然を確かめるように、暫し黙って見つめ合った。イザヤールの方は、護衛の続きということで、漢の料理研究会の面々が、馬乳酒を分けてもらいにカルバドに来たそのお供とのことだった。
ミミはロビーの掲示板にひっそりと貼られていたクエストのことを話し、その紙切れを見せ、書かれた指示に従って指定のアイテムを集めていることを話した。
「ほう?奇妙なクエストだな。しかも依頼人も謎か・・・」イザヤールはかすかに眉をひそめた。「ミミ、さほど難しくないクエストとはいえ、サンディも連れていった方が良くないか?」
「サンディは神の国に里帰り中なの」
「ああ、そうか、そうだったな」
心配そうなイザヤールに更に心配をかけそうで心苦しかったが、ミミは指定の場所に行く度に、その近くの町や村に向かう死者たちの声も聞こえることを、おずおずと話した。ただし、邪悪さや危険の気配を全く感じないことも告げた。
それを聞いたイザヤールは案の定、こっちの仕事を切り上げてついていくと言い出したので、それはイザヤール様の依頼人さんたちに申し訳ないとミミは、必死に押し留めた。二人は散々押し問答をした挙句、ミミが妥協案を出した。
「それならイザヤール様、アギロホイッスルを預けるから、お仕事が終わって私がまだリッカの宿屋に帰っていなかったら、ジャーホジ地方の指定の場所にいらして、待っていてくれる?」
イザヤールはなおも渋ったが、ようやくアギロホイッスルを受け取って、しぶしぶ護衛の仕事に戻った。
馬に乗るのもダメなのかな、草原を馬で駆けるって気分いいんだけどなあ・・・。そんなことを考えながら、ミミは大草原を歩いていった。大草原の夏は、春にも増して花が咲き乱れ、羊や馬たちが駆け回っていた。
かぜきりのはねがある大木の下に着くと、大きな風切り羽が何本か落ちていたので、ミミはそれを拾った。この場所の側には、長い流れの川がある。そのせせらぎ音に混じって、やはり死者たちの声がかすかに聞こえてきた。馬の代わりに大草原の風に乗って、カルバドに帰るのだろうか。ミミは、今度はさとりそうを取りにアイスバリー海岸に向かうことにした。
気温差を考えて更に分厚いマントを着込んだが、エルシオン学院から北上して向かったアイスバリー海岸の吹雪は冷たく、厳しかった。これまでの場所ではのんびり歩いていたミミも、海岸まで寒さをしのぐ為に全速力で走った。ここでも死者たちの声が聞こえることに、ミミはもはや驚かなかったが、その声たちは、エルシオン学院ではなくクロースの家の方に向かっていた。より近い暖かな灯りを求めたのだろうか。
いよいよ最後は、ナザムの魔獣の洞窟のそばに生えているあやかしそうの採取だった。それこそナザム村から長い長い距離だったが、ミミは焦らずのんびり歩き、無事に採取を終えた。ここでの死者たちの声は、やはりナザム村に向かっていた。
指定されたものが全部揃ったので、ミミはジャーホジ地方に向かう為に、とりあえずサンマロウへルーラを唱えた。ここから南下すれば案外近いということを知っていたからだ。ギャオースの群れも難なく蹴散らしてジャーホジ地方の指定の場所に到着すると、そこには一人の年老いたシスターが、静かに立っていた。その静かすぎるたたずまいにミミは違和感を感じたが、気配は死者のものではなければ、人外のものでもなかったので、とりあえず話しかけてみることにした。
「あなたが、このクエストを依頼された方ですか?」
ミミが紙切れを見せて尋ねると、彼女は頷いた。
「ええ。応えてくださる方がいて、本当によかった。各地を回って材料を集めるのは、さぞかしたいへんだったでしょう。歩いて回るのは、巡礼の意味もあるのです。これまでは毎年、私が自分で集めていたのですが、今年は歳のせいか体が思うようにうごきませんので、掲示板でお願いしましたの。応えてくださる方が居ると信じて、ね」
それから彼女は、ミミに集めた物を積み上げて火を着けるように頼んだ。
「これは、送り火なのです」シスターは言った。
「送り火?」
「年に一度帰ってきた死者の魂を、再び向こうの世界に導く為の灯りになる火です。私の故郷では、そう信じられていましたの。そして、あなたに材料集めに回ってもらった場所は、私が最期を看取った方々の思い出にまつわる地の近くの場所なのです」
なるほど、と、ミミは頷き、燃えていい香りを放つ草をシスターと共に眺めながら、祈りを捧げた。そうか、死者たちが帰ってくる日なんだ、だから声が聞こえたんだと、納得してミミは隣に居るシスターに話しかけようとした。
だが、いつの間にか、シスターの姿は消えていた。辺りに隠れる場所もない。驚いてミミがとりあえず探そうとすると、そこへイザヤールが天の箱舟から降りてきた。
「ミミ、遅くなって済まなかったな。・・・どうした?」
そこでミミが、ここにシスターが居たこと、送り火の為に材料を集めていたこと、いつの間にか姿を消してしまったことを説明すると、イザヤールは眉をひそめてミミにそのシスターの人相を尋ね、小さく吐息して呟いた。
「ミミ、実は遅くなったのは、護衛を終えてリッカの宿屋に戻ったときに、宿泊していた高齢の旅のシスターが、急に昏睡状態に陥って、医者を呼んでいたからなんだ。医者の話では、もう目を覚ますことはなかろうと言っていたが・・・。今、リッカたちが交代で付き添っている」
「じゃあ、私が会ったのは・・・?」
「おそらく生き霊ということになるだろうな」
だから、違和感こそ覚えたものの、死者の気配を感じなかったのだ。そしてミミたちは昨日まで数々のクエストで冒険に出ていたから、宿泊客の多いリッカの宿屋では、たまたま遭遇せず、それでミミはあのシスターがリッカの宿屋の宿泊客であることに気が付かなかったのだ・・・。
集めた草は、すっかり燃えて無くなっていた。ミミとイザヤールがセントシュタインに戻ると、ちょうどジャーホジ地方のあの場所でシスターが姿を消した時間辺りに、こちらでは彼女が息を引き取ったことがわかった。
「でもね、亡くなる直前、一度目を覚まして言ったの」リッカはミミに言った。「これを、あなたの綺麗な紫の瞳をしたお友達に渡して、ありがとうとお伝えくださいって。ミミ、知り合いだったの?」
「うん。知り合ったばかりだったけれど」
ミミは答えて、シスターの残したしんごんのじゅずを受け取った。
「おまえの送り火で、彼女も向こうに迷わず行けたのだろうな」
イザヤールが呟く。だったらいいな、とミミは、彼の腕に自分の頭をもたせかけた。〈了〉
蝉の声がじんわりと響いていた。強い太陽光に草や木はいっそう生い茂り、地面は揺らめいて陽炎を作っていた。ミミは、白いフードの下の額の汗を手の甲でそっと拭ってから、目的地の大木を眺めた。
移動魔法が使えても、町でも村でもない、「なんでもないところ」に行くには、天の箱舟に乗るか、こうして歩いていくしかない。しかし、今回は理由はわからないが、町から町への移動以外は、徒歩か船でと指定されていた。天の箱舟も船の一種かもしれないが、これは明らかに依頼人には想定外だろうから、避けた方が無難だろう。
今朝方のことだ。いつの間に貼られたのか、リッカの宿屋のロビーにある、冒険者の伝言板の端っこに、ひっそりとクエストの依頼が貼り付けられていたのだった。そこには、指定の場所を巡ってそこにある物を集めてから、ジャーホジ地方のとある一角に届けてもらいたいというものだった。たまたまその依頼を見つけたミミは、ちょうど依頼されたクエストは全て終えていたところだったので、引き受けようとその紙切れをそっと剥がして道具袋に入れた。その時点で「ミミは謎のクエストを引き受けた!」という状態になったのだが、そして出かけて、今こうして夏の日差しの中歩いているというわけだった。
(こうしてあちこち巡っている間に、偶然イザヤール様に逢えるといいな・・・)
今日の早朝に送り出したばかりなのに、虫が良すぎるかなと、ミミは頬をかすかに染めた。彼は、「漢(おとこ)の料理研究会」なる女人禁制の会の護衛を頼まれ、出かけていったのだった。それを見送りにロビーに降りたときに、ミミは伝言板のクエスト依頼を見つけたというわけだ。漢の料理研究会は、各地を巡って材料集めもするそうなので、運が良ければ本当に会えるかもしれない。海に落とした指輪を見つけるくらい低い確率かもしれないけれど。
ミミの方のクエストの集める物は、どことなくモーダメ王のクエストを思い出させるところがあった。さとりそうにあやかしそうなど、お香にもするような物もふくまれていたからだ。他には、いやしそうにキメラのつばさ、ゆめみの花、かぜきりのはねなどで、謎の依頼人はこれらをいったい何のために集めようとしているのか、錬金マニアのミミにもよくわからなかった。まあ錬金するとは限らないわけだけれど。
ようやくいやしそうの生えている大木に到着すると、ミミは思わずほっと息を吐き出して、採取する前に木陰に座った。梢を通る風がさやさやと葉を震わせ、その音が涼感を増して汗がすうと引いていく。目蓋を閉じて彼女は、ふとかすかな、ほんのかすかなたくさんの声を聞いた。風と一緒に、町の方に向かうこの声たちは。・・・死者たちの声。
ただし、悪いものではない。迷っているのでもない。ちょっとだけ、帰ってきたんだ、エリザさんみたいに。なんでだろう。口の中で呟いてミミはゆっくりと長い睫毛を上げた。濃い紫の瞳が、梢を見上げると、かすかな声はいつの間にか止んでいた。
ミミは我に返ったように勢いよく立ち上がると、せっせといやしそうを摘み始めた。まだまだたくさんの指定の場所を回らなくてはいけない。ぼんやりしている場合ではなかったよね、と、彼女は小さく苦笑した。
依頼が書いてある紙切れによれば、次に集めるのはキメラのつばさだった。さっそくエラフィタまでルーラで飛んで、小麦畑の傍の道を歩いた。金色に光ってさえ見える畑の海を抜けて、かかしの前に立つと、その足元にはキメラのつばさが三枚落ちていた。小麦と風が作る金色の海は、本当に小さな波のような音の連なりを立てている。その音に混じって、風に乗るように村の方に向かっていく小さな、かすかな囁きの数々は・・・。
ああ、ここでもだ、と、ミミは目を閉じた。どうして今日は、優しい死者たちの声が、たくさん聞こえるのだろう。なんで帰ってきているのだろう。
キメラのつばさを拾うと、今度の行き先はサンマロウのゆめみの花の生息地だった。ここでも、潮風に乗ってサンマロウの方へと向かっていく、かすかな死者たちの声が聞こえた。日除けにまとっているミミのフード付きのローブが、風をはらんでふわりとなびいた。青い碧い空を見上げると、白く光るカモメたちが飛んでいる。この潮風に、あのカモメたちに乗って、死者たちはサンマロウに帰っていくのだろうか。
何故なの?何故今日なの?ミミは小さく呟いて尋ねたが、死者たちの声はそれに答えず、やがて声は遠ざかっていった。
ゆめみの花の次に集めるのは、かぜきりのはねだった。かぜきりのはねならばサンマロウでも採取できたが、指定ではカルバドへ行くことになっていた。ここも回り道になるから、羽が採取できる場所まではかなり遠い。場所によって羽がどう違うんだろうとミミは首を傾げながらルーラでカルバドの集落に飛び、そこから採取地へ行こうとしたそのときに、嬉しくて信じられないとでも言いたげな声に、呼び止められた。
「ミミ、ミミなのか?!」
ミミも信じられなくて驚き、フードを脱いで振り返ると、そこにはやはりイザヤールが立っていた。
「イザヤール様こそ、どうしてここに?」
互いに駆け寄り、示し合わせていないのに出会った嬉しい偶然を確かめるように、暫し黙って見つめ合った。イザヤールの方は、護衛の続きということで、漢の料理研究会の面々が、馬乳酒を分けてもらいにカルバドに来たそのお供とのことだった。
ミミはロビーの掲示板にひっそりと貼られていたクエストのことを話し、その紙切れを見せ、書かれた指示に従って指定のアイテムを集めていることを話した。
「ほう?奇妙なクエストだな。しかも依頼人も謎か・・・」イザヤールはかすかに眉をひそめた。「ミミ、さほど難しくないクエストとはいえ、サンディも連れていった方が良くないか?」
「サンディは神の国に里帰り中なの」
「ああ、そうか、そうだったな」
心配そうなイザヤールに更に心配をかけそうで心苦しかったが、ミミは指定の場所に行く度に、その近くの町や村に向かう死者たちの声も聞こえることを、おずおずと話した。ただし、邪悪さや危険の気配を全く感じないことも告げた。
それを聞いたイザヤールは案の定、こっちの仕事を切り上げてついていくと言い出したので、それはイザヤール様の依頼人さんたちに申し訳ないとミミは、必死に押し留めた。二人は散々押し問答をした挙句、ミミが妥協案を出した。
「それならイザヤール様、アギロホイッスルを預けるから、お仕事が終わって私がまだリッカの宿屋に帰っていなかったら、ジャーホジ地方の指定の場所にいらして、待っていてくれる?」
イザヤールはなおも渋ったが、ようやくアギロホイッスルを受け取って、しぶしぶ護衛の仕事に戻った。
馬に乗るのもダメなのかな、草原を馬で駆けるって気分いいんだけどなあ・・・。そんなことを考えながら、ミミは大草原を歩いていった。大草原の夏は、春にも増して花が咲き乱れ、羊や馬たちが駆け回っていた。
かぜきりのはねがある大木の下に着くと、大きな風切り羽が何本か落ちていたので、ミミはそれを拾った。この場所の側には、長い流れの川がある。そのせせらぎ音に混じって、やはり死者たちの声がかすかに聞こえてきた。馬の代わりに大草原の風に乗って、カルバドに帰るのだろうか。ミミは、今度はさとりそうを取りにアイスバリー海岸に向かうことにした。
気温差を考えて更に分厚いマントを着込んだが、エルシオン学院から北上して向かったアイスバリー海岸の吹雪は冷たく、厳しかった。これまでの場所ではのんびり歩いていたミミも、海岸まで寒さをしのぐ為に全速力で走った。ここでも死者たちの声が聞こえることに、ミミはもはや驚かなかったが、その声たちは、エルシオン学院ではなくクロースの家の方に向かっていた。より近い暖かな灯りを求めたのだろうか。
いよいよ最後は、ナザムの魔獣の洞窟のそばに生えているあやかしそうの採取だった。それこそナザム村から長い長い距離だったが、ミミは焦らずのんびり歩き、無事に採取を終えた。ここでの死者たちの声は、やはりナザム村に向かっていた。
指定されたものが全部揃ったので、ミミはジャーホジ地方に向かう為に、とりあえずサンマロウへルーラを唱えた。ここから南下すれば案外近いということを知っていたからだ。ギャオースの群れも難なく蹴散らしてジャーホジ地方の指定の場所に到着すると、そこには一人の年老いたシスターが、静かに立っていた。その静かすぎるたたずまいにミミは違和感を感じたが、気配は死者のものではなければ、人外のものでもなかったので、とりあえず話しかけてみることにした。
「あなたが、このクエストを依頼された方ですか?」
ミミが紙切れを見せて尋ねると、彼女は頷いた。
「ええ。応えてくださる方がいて、本当によかった。各地を回って材料を集めるのは、さぞかしたいへんだったでしょう。歩いて回るのは、巡礼の意味もあるのです。これまでは毎年、私が自分で集めていたのですが、今年は歳のせいか体が思うようにうごきませんので、掲示板でお願いしましたの。応えてくださる方が居ると信じて、ね」
それから彼女は、ミミに集めた物を積み上げて火を着けるように頼んだ。
「これは、送り火なのです」シスターは言った。
「送り火?」
「年に一度帰ってきた死者の魂を、再び向こうの世界に導く為の灯りになる火です。私の故郷では、そう信じられていましたの。そして、あなたに材料集めに回ってもらった場所は、私が最期を看取った方々の思い出にまつわる地の近くの場所なのです」
なるほど、と、ミミは頷き、燃えていい香りを放つ草をシスターと共に眺めながら、祈りを捧げた。そうか、死者たちが帰ってくる日なんだ、だから声が聞こえたんだと、納得してミミは隣に居るシスターに話しかけようとした。
だが、いつの間にか、シスターの姿は消えていた。辺りに隠れる場所もない。驚いてミミがとりあえず探そうとすると、そこへイザヤールが天の箱舟から降りてきた。
「ミミ、遅くなって済まなかったな。・・・どうした?」
そこでミミが、ここにシスターが居たこと、送り火の為に材料を集めていたこと、いつの間にか姿を消してしまったことを説明すると、イザヤールは眉をひそめてミミにそのシスターの人相を尋ね、小さく吐息して呟いた。
「ミミ、実は遅くなったのは、護衛を終えてリッカの宿屋に戻ったときに、宿泊していた高齢の旅のシスターが、急に昏睡状態に陥って、医者を呼んでいたからなんだ。医者の話では、もう目を覚ますことはなかろうと言っていたが・・・。今、リッカたちが交代で付き添っている」
「じゃあ、私が会ったのは・・・?」
「おそらく生き霊ということになるだろうな」
だから、違和感こそ覚えたものの、死者の気配を感じなかったのだ。そしてミミたちは昨日まで数々のクエストで冒険に出ていたから、宿泊客の多いリッカの宿屋では、たまたま遭遇せず、それでミミはあのシスターがリッカの宿屋の宿泊客であることに気が付かなかったのだ・・・。
集めた草は、すっかり燃えて無くなっていた。ミミとイザヤールがセントシュタインに戻ると、ちょうどジャーホジ地方のあの場所でシスターが姿を消した時間辺りに、こちらでは彼女が息を引き取ったことがわかった。
「でもね、亡くなる直前、一度目を覚まして言ったの」リッカはミミに言った。「これを、あなたの綺麗な紫の瞳をしたお友達に渡して、ありがとうとお伝えくださいって。ミミ、知り合いだったの?」
「うん。知り合ったばかりだったけれど」
ミミは答えて、シスターの残したしんごんのじゅずを受け取った。
「おまえの送り火で、彼女も向こうに迷わず行けたのだろうな」
イザヤールが呟く。だったらいいな、とミミは、彼の腕に自分の頭をもたせかけた。〈了〉
いらっしゃいませこんばんは☆なるほどそうですよね、どちらかと言えばドラクエ世界ではハロウィンですよね~。死者の魂に持つ感覚が日本のお盆の感覚とはまた違いそうですが。
そうですか、そちらのイザヤール様、人間になったらお化けが怖くなっちゃいましたか~。モンスターの何割かはほぼ間違いなくオバケだと思うのですが、戦闘の際そちらは大丈夫なのでしょうか。気付いていらっしゃらなければよいのですが。
ヤングは自分のことをヤングと言わないと思います師匠(笑)それにしてもそちらの女主さん、おっさんの基準というより師匠の行動をおっさんの基準になさっているような・・・?
確かにドラクエ世界ではお盆なさそうというかどっちかといえばご先祖様を迎えるのはハロウィンかな?
うちの師匠、人間になったらお化けが駄目になってしまいました…それをうちのメンバー…特にピンク髪のお嬢さんと銀髪のお兄さんが放って置くはずもなく…
レレン「ククールさん、何か面白い話して」
クク「面白い話って…ん?おい、イザヤール」
リイザ「?」
クク「お前の左肩に白い…」
リイザ「ぴぎゃああっ!?」
クク(粉ついてるって言おうとしただけなんだが面白いから良いや)
リリ「うるさいですわ!おっさん!」
リイザ「お!?おっさん!?見た目ククール君よりヤングだろ!」
クク「ヤングって…」
リリ「金のと交換されるわ、弟子に人参押し付けるわ、変な悲鳴を上げる自称ヤングなんて、おっさんですわ!」
うちの女主のおっさんの基準って…
うちの師匠の左肩についてたのは小麦粉だったり