セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

サンタさんにお願い

2012年12月15日 01時45分11秒 | クエスト184以降
今週も遅くなってすみませんの捏造クエストシリーズこと追加クエストもどき。今回は軽いノリの話になる筈が、案外しんみりな話になりまして、自分でも意外です。感傷的すぎるかもしれませんが、寛容の季節ということでどうかご容赦くださいませ(笑)

 クリスマスも近い。ロクサーヌの店は、プレゼント用の珍しいアイテムを求める客で大繁盛だ。近所で買うと、プレゼントはサンタさんが持ってくるんだと信じている子供にばれてしまうからと、わざわざ遠方から足を運ぶ客も居た。
 そんな客の一人が、綺麗にラッピングされたモーモンぬいぐるみを大切そうに抱えながら、ロクサーヌに尋ねた。
「あのう、ついでにと言ってはなんですけど、ゆめみの花も売って頂けると助かるんですが」
 あいにくゆめみの花はクリスマスアイテムとしては想定外だ。ロクサーヌは笑顔は崩さないまま、しかし申し訳なさそうに答えた。
「本日は取り扱っておりませんが、すぐに取り寄せ致しますわ。宿屋のロビーでサービスドリンクを召し上がってお待ち頂けますか」
「あの、できればなるべくたくさん欲しいんですが」
「かしこまりました、そのように手配致しますわ。・・・ミミ様、いいところへ。ひとつ頼まれてくださいますか」
 サンタガールの格好で呼び込みに行っていたミミが、今ちょうど帰ってきた。事情を聞いて、彼女は頷いた。
「ロクサーヌさんも忙しいよね。じゃあ私が直接品物をお客様に渡して、売り上げを後でロクサーヌさんに渡す形でいい?」
「さすがミミ様、助かりますわ☆」
 ミミがその由を客に伝えにいくと、客の若者は照れくさそうに頭を掻いて言った。
「きっと、どうしてゆめみの花がそんなに必要なのか、不思議に思われているでしょうね。実は・・・しょうもない理由なんですが、僕には幼い妹が一人いまして、『今年はサンタさんが来るまで寝ないで起きているんだ』って駄々をこねまして。
子供のことですから起きてはいられないとおもいますから、大丈夫だとは思いますが、万が一本当に起きられていてしまって、サンタの正体が僕だとバレてしまっては、子供の夢を壊してしまうんじゃないかと。それで念のためゆめみの花を使って眠ってもらおう、そんな訳です」
「優しいお兄さんですね」
 ミミが微笑むと、若者は赤くなって更に頭を掻いた。
「いやあ、そんな・・・」
 小さな子の夢を壊さない為のクエストかあ、とミミは嬉しくなった。ミミはクエスト「サンタさんにお願い」を引き受けた!

 ちょうどその頃。イザヤールは、ケーキ屋に演出に使うと頼まれて、大きな木箱いっぱいの雪をエルマニオン雪原からセントシュタイン城下町のそのケーキ屋まで運び終えたところだった。
 ありがとう、ご苦労さまと、ケーキ屋の娘から仕事代とオマケの菓子を受け取り、ミミにいい土産ができたなと帰ろうとしていた彼は、その店のイートインコーナーでちょこんと座っていた小さな女の子に声をかけられた。
「そこの渋いお兄さん、ちょっといい?」
 ただ声をかけられただけでは自分のことだと気付かなかっただろうが、マントの裾をつかんで引っ張られたので、イザヤールは否応なしに立ち止まった。
「私に何か用か?」
 彼は女の子に尋ねた。剃髪に整った彫りの深い顔、そして強い戦士であることが一目でわかる無駄のない見事な体躯と、一見取っ付きにくい容姿にもかかわらず、彼はこんな風に子供に声をかけられることがしばしばある。精悍さの中にも弱き者への優しさが秘められているからだろう。
「お兄さんは冒険者だよね?もし『めざめの花』を持っていたら、あたしにくれない?」
 女の子は言って、期待に満ちた目でイザヤールを見上げた。あいにく、単独行動では目覚ましアイテムを持っていても意味はないので、彼の手持ちの道具袋には今はなかった。
「今手元にはないが、すぐに持って来られるが。何に使うのか、聞いてもいいか?」
 彼がしゃがんで、女の子に目線の高さを合わせて尋ねると、彼女はにっこり笑って頷いた。
「うん、あのね。あたし、クリスマスの夜、眠らないでサンタさんに会いたいの。だからめざめの花が欲しいの」
「・・・そうか」
 イザヤールは少し考え込んだ。めざめの花を渡すのは簡単だが、この子が寝ないで起きていては、サンタクロース代わりの役目をするつもりであろうこの子の親は、プレゼントを靴下に入れるタイミングにさぞかし困るだろう。そこで彼は聞いてみた。
「どうしてサンタクロースに会いたいのかな」
「お願いがあるから」
「お願い?プレゼントに関してか?」
「そう。・・・ずっといい子にするから、パパとママが帰ってくるのをプレゼントにしてください、そうお願いしたいの」
「君の親は、君をここに置いてどこかに行ってしまったのか?」イザヤールはいくらか慌てた。よりによってケーキ屋に置いていってしまったのか?
「違うよ~」女の子は笑った。「パパとママがお出かけしちゃったのはずっと前だよ。あたしはここで、お兄ちゃんを待ってるの。あたしのほんとのお兄ちゃん。ろくさーぬのお店、っていうところで買い物しているから、ここで待ってなって言ってたんだ。ここのてんちょーさんはお兄ちゃんのどーきゅーせーだったから、ちゃんと見ててくれるからって」
 どーきゅーせー?イザヤールは少し首を傾げてから、ああ同級生か、と合点した。ロクサーヌの店にこの子の兄が居るならちょうどいい。ひとっ走り行って、めざめの花を渡していいものかどうか相談しよう。女の子に彼女の兄の特徴をざっと聞いて、イザヤールはケーキ屋を出た。

 イザヤールがリッカの宿屋のロビー、すなわちルイーダの酒場とロクサーヌの店でもある場所に戻ってくると、女の子が言った通りの特徴の若者が、そわそわと隅のテーブル席で待っていた。声をかけようと近寄ると、そこへちょうどゆめみの花を抱えたミミがテーブルに向かってやってきたので、いくらか驚いた。
「イザヤール様?!おかえりなさい」
「ただいま、ミミ。おまえはこの人と知り合いなのか?」
「依頼人さんなの。イザヤール様こそ、この方にご用なの?」
 ミミとイザヤールと若者の話を総合した結果、それぞれ合点がいって、そして依頼人の若者は頭を抱えた。
「妹がめざめの花を欲しがってるんですか?!・・・参ったなあ」
「君たちのご両親は、旅に出ているのか?」イザヤールが若者に尋ねた。「妹さんは、サンタクロースにパパとママが帰ってくるようお願いしたいと言っていたが」
 それを聞いた若者の顔は曇り、瞳に悲しげな影が落ちた。
「両親は、去年揃って亡くなりました。どうしても妹には言えなくて。ちょっと長い旅に出ていると、言ってしまって・・・」
「・・・そうか。余計なことを聞いて、悪かった」
「いえ。・・・それより参っちゃいますよ、いくらゆめみの花を用意しても、めざめの花を持っていられては、効果相殺です。たとえ誰かにサンタクロースのふりをしてもらうとしても、妹の願いは叶うことはないし・・・」
「サンタクロースに、そのお願いは無理、って言ってもらうしかありませんよね」
 ミミがちょっと悲しげに言うと、若者は溜息をついた。
「そうですね、では、重ね重ねお手数ですが、誰かサンタクロースができる人を探してきてもらっていいですか」
「はい、とっても相応しい心当たりはあるのですけれど」
 でも、クロースさん、この時期忙しそうだよね・・・ミミは内心呟いた。お家に居てくれると、いいのだけれど。

 依頼人は妹を連れて自宅に帰ることにしたので、その場所を聞いて「サンタクロース」を連れていくことに手筈を決めてから、ミミとイザヤールはアイスバリー海岸のクロースの家に向かった。
 だが、残念なことに牧場に二頭の馬が居ない時点で、彼らの主のクロースも留守であることが、家に入る間でもなくわかった。念のため家に入って確かめてみると、クリスマスの翌日まで多忙で帰って来られないと、置き手紙がしてあった。
「そうじゃないかとは思っていたけれど、やっぱり困ったの・・・」
 ミミが悲しげに呟き、イザヤールも腕組みをして考え込んだ。
「仕方ない、私が女の子にめざめの花を届ける際に、サンタクロースからの伝言を預かったということにしよう。・・・願いは叶わない、と」
「私も・・・一緒に言います」
 ミミも決意の色を浮かべて言ったが、小さな女の子ががっかりすることを思うと、気が重かった。二人はやや足取り重く、依頼人とその妹の家に向かった。箱舟から降りる前、ミミはイザヤールに告げた。
「ひと足先にいらしててもらえますか?ちょっと準備が」
 言われた通りイザヤールが先に家を尋ねると、女の子は兄を押し退ける勢いで奥の部屋から走ってきて、やってきたのがイザヤールだと知ると、彼の手を引っ張って庭に連れ出して言った。
「めざめの花、お兄ちゃんにバレないように渡して!」
 イザヤールはめざめの花を渡したが、静かで、厳かな口調で、女の子の目をまっすぐ見て口を開いた。
「サンタクロースから、伝言を預かってきた」
「サンタさんに会ったの?!」
 女の子が目を丸くしていると、そこへサンタクロースの帽子をかぶり、サンタガールの服を着たミミがやってきた。これにまた着替える為に少し遅くなったのかと、イザヤールは納得した。
「こんにちは。私はサンタさんの助手です」ミミはぺこりと頭を下げた。「サンタさんは一人じゃ世界中の子供たちにプレゼントを配りきれないから、私もお手伝いしているの」
「じゃあサンタのお姉ちゃん?」女の子の丸くした目が更に大きくなった。ミミは小さく頷き、話し始めた。
「サンタさんがね、あなたのお願いは叶えられない、ごめんなさいって」
「どうして?あたしが悪い子だから・・・?」
 女の子が悲しげに言うと、今度はイザヤールが首を横に振って答えた。
「そうじゃない。サンタクロースでも、できないこともあるし贈れないプレゼントもある。・・・そうだな」
 最後の方はミミに言うと、彼女は頷いた。
「あのね、あなたのパパとママは」
「君たちの両親は」
 ミミとイザヤールが同時に口を開いたその時、ミミの依頼人である若者がいつの間にかそこに立っていて、女の子を抱きしめて、囁いた。
「パパとママはね」彼は僅かに震える声で囁いた。「とっても遠くに言っちゃったんだ。・・・だから、サンタさんにお願いしても、無理なんだ。帰っては来ないんだ」
「そっか・・・」女の子は呟いた。涙がぽろりと落ちた。「そうじゃないかなって思ってたんだ。だから・・・サンタさんにお願いしたら、もしかしたらどうにかなるかな、って・・・」
「気付いてたのか・・・ごめん、ごめんな」
 若者も声は抑えていたが、泣いていた。
「サンタのお姉ちゃん、じゃあもうパパとママには・・・二度と会えないの?」
「いいえ」ミミはきっぱりと首を振った。「あなたとお兄さんが、うんと幸せになって、いいこともたくさんして、お年寄りになって、ちょっと疲れて眠くなっちゃった時に・・・よく頑張ったね、偉かったねって、必ず褒めに来てくれるの。きっと・・・会えるよ」
 イザヤールも力強く頷くと、女の子はにっこり笑った。彼女の兄も、泣き笑いの顔で、頷いた。

 落ち着いてから、若者はどこか吹っ切れた清々しい顔で、ミミとイザヤールにお礼を言った。
「あなた方のおかげで、妹に両親の死を伝えることができました。ありがとう」
 そして彼は、ツリーの飾りの足しにしてくださいと、「ほしのカケラ」をくれた!
 後日談が少しある。クリスマスの夜、ゆめみの花とめざめの花の効果相殺で、結局女の子は普通に眠ってしまった。彼女の兄はこれ幸いと、足音を忍ばせて妹の靴下にプレゼントを入れに行ったが、靴下には既に何か入っていた。驚いて見るとそれは、蹄鉄の形をした可愛い幸運のお守りだった。呆然としている彼の顔の上に、窓の外の影が通る。それは、二頭の馬に引かせた橇に乗った、優しい顔の老人のものだった。
「サンタクロース・・・ホントに居たのか・・・」
 若者は楽しそうに呟き、自分のプレゼントのモーモンぬいぐるみも、靴下に入れた。〈了〉

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2 コメント

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Unknown (神々麗夜)
2012-12-15 10:08:23
確かに小さい子に親が亡くなったって言うのは言う側にとっても聞く側にとっても辛いですよね。
大人になっても辛いですけど…

目覚めの花と夢見の花を一緒に使うと相殺しそうですね。


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大人も子供も (津久井大海)
2012-12-16 00:21:26
神々麗夜様

こんばんは☆そうですね、悲しいことを聞くのも伝えるのも、たとえいくつになっても辛いことですよね。

ゆめみの花とめざめの花は相殺しそうと思ってのネタでしたが、めざめの花をあらかじめ使っても、実際のゲーム上では、特には眠り効果を防いだりしないですよね。この話の場合、お兄ちゃんに先にゆめみの花使われたら完全にアウトですし(笑)
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