セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

永い渇き(前編)

2014年04月05日 02時27分36秒 | クエスト184以降
予告通り(泣)丑三つ時更新&続き物になってしまいましたの捏造クエストシリーズこと追加クエストもどき。前の記事でも書きましたが、依頼人の境遇が某探偵小説風でございます。導入部の舞台も別にグビアナでなくてもよかったのかもしれませんが、今回のテーマ?の「渇き」の象徴チックに敢えて砂漠を舞台とさせて頂きました。前後編でお送りする予定ですがもっと長くなっちゃったらどうしよう・・・。

 グビアナ砂漠は、広大で魔物も多く、縦断するには護衛が欠かせない。熟練冒険者のミミやイザヤールは、グビアナ城下町を訪れるとそんな護衛の仕事を頼まれることもしばしばあった。今日も、グビアナ城で働く女官の一人が、二人にそんな仕事を頼んできた。
「ご先祖の一人のお墓だけ、町からずっと離れた砂漠の中にあるの。お墓参りしたいけど、一人じゃちょっと砂漠越えをする自信が無いから、申し訳ないけどお付き合い頂けるかしら」
 そんな依頼をミミとイザヤールは快く引き受け、三人は炎天の砂漠を歩いて移動することとなった。グビアナ砂漠の魔物たちは、もはやミミたちの敵ではない。目が合わなくても逃げていく魔物たちを見て、女官は感心し、一同は支障なく目的地に着いた。だが、そこにあるのは、何の標も無い砂の丘だけだった。
「本当にここですか?」
 ミミが心配そうに尋ねると、女官は頷いた。
「ええ、代々伝わる地図に書いてあるから、間違いないわ。とっくに砂に埋まっているけどね」
「何故わざわざこんな場所に墓を?」
 イザヤールが尋ねると、女官は答えた。
「ここに眠っている彼女の遺言だったそうよ。贖罪だからって言い残したから、言われた通りここに葬ったんだって」
「贖罪?」
「このご先祖さまは、遠い外国の貴族のお屋敷に仕えるメイドだったんだって。でも、主である貴族に異常に気に入られて、そのあまりの執着ぶりに怖くなって、逃げ出したんだって。逃げられたことに怒り狂った貴族は、狂乱状態になって自分の家族や召し使いたちを無差別に殺傷して、最後に自ら命を絶ったそうなの。強烈なストーカーよね。怖い話だわ。後にそれを風の噂で聞いたご先祖は、逃げ出したことをものすごく悔やんだそうよ」
「それで、贖罪、か・・・」
 女官は砂の小山に持ってきた葡萄酒と清らかな水を注ぎ、祈った。ミミとイザヤールも祈りを捧げた。祈り終えた彼女に、ミミは尋ねた。
「そういえば、どうして急にご先祖のお墓参りをしようと思ったのですか?」
 そう聞かれて、女官は考え込むように眉をひそめた。
「うーん、どうしてかしら。何だか夢を見たような気がするからなんだけど、どんな夢なのかはっきり思い出せないの。でも、おかげで気分はすっきりしたわ、お二人ともありがとう。ひと休みしたら帰りましょう」
 そう言うと彼女は、駱駝に積んでいた簡易な日除けや敷物を下ろし、ひと休みの場所の用意を始めた。ミミとイザヤールもそれを手伝い、飲み物を摂ってひと息ついたところで、女官は日焼け止めの塗り直しを始めたので、二人は日除けの外に何となく出てみた。徒歩なら日が暮れてから移動するところだが、帰りはキメラの翼を使うので、日没を待つ必要はない。
 ミミは先ほど祈りを捧げた砂の小さな丘を見つめた。注いだ水や葡萄酒は、もはやすっかり乾いている。と、そのとき、砂の中に何かがきらりと光った。拾い上げてみると、それは古めかしい腕輪だった。砂まみれなので、どんな材質やデザインかはよくわからない。
 イザヤールが砂を落としてくれて、どうやら細やかな細工の銀製の腕輪らしいとわかった。ミミは日除けの中に戻って、その腕輪を女官に見せた。副葬品かもしれないと思ったのだ。
「え?これが砂の中に?でも、今さらお墓の中の物が出てくると思えないから、単なる落とし物じゃないかしら?もらっちゃいなさいよ、大丈夫、誰も怒らないと思うわ」
 女官はそう言って笑い、それでミミはとりあえずグビアナ城下町で落とし主が居ないか確かめることにして、その腕輪を持ち帰ることにした。

 女官を城まで送り届けた後、調べてみたところ、結局、腕輪の持ち主はグビアナ城下町には居なかった。学者に見てもらうと、数百年前の物ではないかということだった。
「じゃあもしかして、本当に副葬品だったのかな・・・」
 今夜はグビアナに泊まることにしたので、宿屋の一室で腕輪を眺めながら、ミミは呟いた。それなら元の場所に返してこないと、と思ったそのとき。
 腕輪が淡い光を放ち、そこからすうっと、古風な衣装に身を包んだ女性の姿が現れた!当然幽霊なのだろうが、もはやそんなことでは驚かないミミとイザヤールは、冷静に相手を観察した。愛らしく儚い感じの美しさの、まだうら若い女性のようだ。悲しそうな顔で二人を見つめている。容貌は全く違うが、雰囲気がどこか僅かにミミを思わせるとイザヤールは思った。
「もしかして、あなたが、子孫の方を通じて私たちに助けを求めてきたのですか」
 半ば確信してミミが言うと、女性の幽霊は頷いて言った。
『はい。私は、昼間あなた方が同行した娘の先祖です。あの娘の夢枕に立ち、地上に残る天使様を呼んで頂きました』
「私たちは、もう天使ではないけれど、できるだけ力になります」
「だが、何故今なのだ?もっと早く、それこそ何百年の昔にでも、助けを求めることはできただろうに」
 ミミとイザヤールが頷き合ってそれぞれそう答えると、女性の幽霊は訳を話し始めた。
『私の子孫がお話しした通り、私は仕える主と故郷から逃げ出したことで、罪無き人々を犠牲にしてしまいました女です。まだ子供と言っていいほど幼く、考えも浅かった私は、恐怖の日々に堪えかねて、己が天涯孤独の身であることから、自分が逃げ出しても誰にも迷惑をかけることはない、ご主人様も私のことなどすぐに忘れてくださるだろう、そう考えて逃げました。それほどまでにご主人様のことが恐ろしかったのです。でも、その結果は・・・。
私はここグビアナにまで逃げ延びて、優しい夫と子供に恵まれ、幸せに暮らしておりました。おかげでお屋敷での忌まわしい記憶も、段々と薄れていきました。ですが・・・私が逃げ出した後、何が起こったかを知って、私は激しく後悔致しました。私さえ耐えていれば、あんなことにはならなかった・・・。その思いは生涯私を苦しめました。
それで長くはなかった命を終えた後、安息の地をここに定め、僅かにでも贖罪代わりになればとここでずっと静かに祈り続けておりました。知らなかったとはいえ、穢れた日々を送り多くの命を奪う原因となった罪深き私です。天使様と神様のご慈悲を受ける資格も勇気もありませんでした。しかし、邪悪な光が天を貫き、大きな地震いがあったあの日から、恐ろしいことにご主人様の気配を・・・忌まわしい邪悪さと悲しい気配を、地の底から感じるようになったのです。
星ふぶきの夜を過ぎてからは、その気配はいくらか和らぎましたが、それでも恐ろしくて私は今さらながら神様と天使様に救いを求め祈りました。そして、祈りは届きました・・・。あなた方が、いらしてくれた』
 ここで女性の幽霊は悲しそうな顔から微笑みに変わった。あどけないと言っていいような微笑みで、ミミは胸が痛んだ。
「あなたは何も悪いことをしていないのに・・・」
「もっと早く、救いを求めてくれればと、残念だ。もっと神と、天使を・・・信じてくれていたら」
 ミミとイザヤールが悲しげに言うと、女性の幽霊は頷いた。
『私も今ではそう痛感しております。結果的に私ばかりでなく、ご主人様が更に他の人を苦しめることになってしまいました。ご主人様は・・・人間としての命を終えた後、ばらばらになった魂のカケラが、魔物と化していたのだということを、最近ようやく知りました。地底と地上を往復する蠢く虫たちが、教えてくれたのです。火と土の洞窟に散っているのだと・・・。その気配が、地震いを期に、私のところまで届いていたのです。
魔物としての命を終えない限り、ご主人様の怨念は罪無き人々まで苦しめ続けることでしょう。そして、ご主人様だって苦しみ続けてしまいます・・・いくら忌まわしい人と言えど、それはあんまりです。どうか、お願いです。ご主人様をそんな地獄から解放しては頂けませんか』
「わかりました。・・・あなたは、とても優しい人ですね・・・」
 憎むべき相手の苦しみにまで思いを馳せることなど、なかなか容易にできることではない。その優しさも、おそらく彼女の主を惹き付けた一因だったのかもしれない。その不条理さに、ミミは深い悲しみを覚えた。ミミはクエスト「永い渇き」を引き受けた!

 女性の幽霊によると、彼女の元の主の魂は、火焔地獄の洞窟と、地底深くの奈落に散って、それぞれ十体ずつの「エビルフレイム」と「デスタランチュラ」になったという。
『その腕輪は、私が子供の頃から肌身離さず身に付けていた物です。ご主人様も私の腕輪だと知っていますから、その腕輪を見れば、ご主人様の魂の変化した魔物たちも、近付いてくるかもしれません。でも、くれぐれもお気を付けて・・・』
 女性の幽霊はその言葉を残して姿を消した。おそらく、一度砂漠の墓に戻ったのだろう。後には腕輪だけが残された。
 ミミとイザヤールは、さっそく手持ちの宝の地図の一覧を調べ始めて、「じごく」と名の付く火系の地図と、「奈落」と名の付く土系、すなわち自然系の地図を探した。ミミたちは一覧の備考に律義に地図の名前とボス、モンスターのランクに宝のランク等も記録してあるので、探すのは容易で、すぐに見つかった。
「手持ちの地図の中に該当するのがあってよかった・・・」
「そうだな。ところで、エビルフレイムもデスタランチュラも強敵だから、ルイーダの酒場に行って誰かに声をかけてはどうだ」
「はい。それと、サンディにも言わなきゃ。勝手に出かけたら、また叱られちゃう」
「そうだな」
 その晩はとりあえずグビアナの宿屋で休んで、翌朝まずは箱舟に乗り、サンディに引き受けたクエストの内容と事情を説明し、それからセントシュタインに飛んで、ルイーダの酒場でパーティ編成をした。今回はルイーダとロクサーヌが同行してくれることになった。ルイーダ曰く、
「エビルフレイム十匹にデスタランチュラ十匹?まあちょっとたいへんだけど、いつものようにダンジョンに潜っていたらそれくらいあっという間じゃない?」
 洞窟までの道中、ミミは今回の依頼の内容を更に詳しく説明した。ミミと冒険すると人外のものに依頼されるクエストはしょっちゅうなので、依頼人が幽霊だと言われても驚かなかったルイーダとロクサーヌだが、依頼人の境遇に、酷い話だと憤慨した。
「パワハラにセクハラにストーカーのトリプルハラスメントは許せませんわ!今の時代なら訴えれば勝てますのに!」
 ロクサーヌ、珍しく笑顔を封印して怒っている。
 セントシュタインから近かったので、まずは自然系の洞窟に入り、デスタランチュラを探すことにした。ミミは、少し緊張しながら、装備品の腕輪の代わりに依頼人の腕輪をはめた。イザヤールは少し心配そうに見つめたが、ミミは笑って大丈夫と首を振った。
 デスタランチュラは大概最下層付近に居る。ステルスで余分な戦闘は避けて、早くも棲息階にたどり着くと、早くも一匹、一際大きなデスタランチュラが寄ってきた。そのデスタランチュラは、何故かミミにばかり糸を絡めてこようとする。糸から身をかわしながら、ふとそのデスタランチュラの模様に目を留めたミミは、思わずぞっと身を震わせ、やはりその模様に気付いたイザヤールは、ミミとデスタランチュラの間を遮るように立ち、彼女をかばうように武器を構えた。通常のデスタランチュラなら髑髏のようであるその模様は、蒼白く頬の痩けた若い男の顔だった。〈続く〉
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