クリア後話、クエスト61大魔法使いギビリンのクエスト関連話です。リッカたちもまだパーティメンバーになっていない頃の、ちょっとヤンデレ気味な?悲しい女主話ですが、最後にちょっと希望が・・・。
星ふぶきの夜からしばらくの間、ミミはどこか悲しげで寂しげだった。体の具合が悪そうな訳ではなく、むしろ以前より更に冒険や人助けに励んで忙しく動き回っていたが、懸命に隠そうとしても隠しきれない影のようなものが、優しい微笑みにも濃い紫の瞳にも潜んでいた。
再びサンディとアギロに再会し、天の箱舟を運転するようになってから、その影は少しずつ癒えて、輝くような笑顔も時折見られるようになったが、故郷も愛する人も喪い、天使の仲間たちと言葉を交わすことも二度と叶わなくなった心の痛みは、そう簡単に消えない。喪ったものをいつまでも悲しんではいけない、前を向いて進むしか無いと自らを奮い起たせることで、実は余計に心を追い詰めていることに、ミミ自身は気付いていなかった。
だが事情を誰よりも知っているであろうサンディは、うまく言葉にはできないがミミのそんな心の動きに気付いていた。
「ね~、ちょっとミミ、アンタこの頃働きすぎじゃね?ぶっ倒れたらなんにもならないワヨ!」
「大丈夫。私、こう見えて頑丈だって、サンディもよく知ってるでしょ?ちゃんとのんびり休息もしてるし」
にこっと笑って返答するミミに、サンディは心配しながらどうにもしてやれないもどかしさを覚えて、悲しい苛立ちを抱いた。
「んもー、とにかく今日はもう休みなさい!アンタが頑張るとアタシも冒険の記録に付き合うんだからねッ!アタシまで休めないデショ!」
こんな風にしか言ってやれない。サンディの顔が一瞬泣きそうに歪むが、なんとか堪える。アタシが泣いてどーすんのよ、サンディは思った。ホントに泣きたいのは、ミミの方なのに・・・。それでもミミは、最近ようやく泣けるようになったんだよね。隠れて一人でこっそりだけど、さ。・・・それでも、泣くことすらできないくらい心が凍ってるより、ずっといい・・・。
「あ、そうか、ごめんね。じゃあ今日はもう冒険はやめて、リッカのお手伝いするから、箱舟に帰っても大丈夫よサンディ」
「だからそーゆーコトじゃなくて!休めっつーの!センパイ命令よセ・ン・パ・イ・め・い・れ・い!」
腰に手を当てふんぞり返るサンディに、ミミは笑って、ようやく承諾の返事をした。
「わかりました、センパイ」
「よろしい!ちゃんと休むのヨ。今日はトクベツに、アタシが一緒におねんねしてあげる!」
「えー、でもサンディ寝相悪いし・・・」
「うるさいわね!睡眠中もアクティブって言えっつーの!」
「うん、でも嬉しい」
ミミの顔に、和んだ微笑みが浮かぶ。ありがとう、サンディ。本当は、一人きりにしないでくれて、嬉しいの。くたくたにならないうちに一人きりになると、未だについ余計なことを考えちゃうから・・・。心配かけて、ごめんね。早く完全に元気にならなきゃね。声には出せない言葉を、心の中で呟き、ミミの微笑みが更に優しくなった。
そんなある日、ミミは自称「大魔法使い」ギビリンから、スライムジェネラルが持っている「呪力のモト」を取ってくるよう依頼された。それを持ってくれば望みを叶えてやるという彼の言葉に、期待してはいけないと思いつつも心がほんの少し揺らいだ。
本当の望みは叶わないと、ミミは必死に己に言い聞かせた。精霊でさえ、人間たちの願いを叶えるのはたいへんなことなのだ。そしてセレシアの力の結晶である女神の果実に願ってさえ、サンディたちとの再会は叶ったが、生涯一度と言っていいくらい強く、密かに愛し、恋していたあの人との再会は、やはり叶わなかった。あのときミミは、『みんなに、また会いたい』と願ったのだ。
他の天使たちと同様星となっているであろう師匠イザヤールとは、もしかしたら夜空を見上げる度に、そうとは知らずに会えているのかもしれない。だから、女神の果実の力でも叶わなかったように思えるだけかもしれない。でも、それならせめて、どの星が愛しい人なのか、わかりさえしたら。それとも、わからないということは、それほど愛していないということなのだろうか。そんなことを考えて、ミミの心は千々に乱れていた。
今回の依頼人が、本当に大魔法使いだとしても、女神さえ叶えられない願いを叶えることなど、できるのだろうか。・・・命を落とした天使と、再び会いたいという願いを・・・。運命で喪われた命は、神ですらどうにもできない・・・。でも、最初から無理だと思い込んでいたら、何もできないし奇跡も起こせない。だから、全力でやってみよう。たとえ、望み通りにならなくて酷く傷付いても。決意したミミの濃い紫の瞳は、深い陰影を描いて煌めいた。
スライムジェネラルとの戦いも、これまで通り一人で挑んだ。そろそろ、ルイーダの勧める冒険者たちとパーティを組むことも検討しなくもなかったが、自分の望みを叶えたいという目的のこのクエストは、苦しくても自力で挑むことが筋に思えた。
剣による攻撃とイオナズンでボロボロになりながらも、ミミはスライムジェネラルに勝って、呪力のモトを手に入れた。傷は、魔力切れで回復しきれなくて、ずきずきと痛い。痛いことがひどく怖く苦手だという質は、未だに治らない。だが、心の痛みの方がもっと苦しいのだということを知ってしまった今では、体の痛みはむしろ心の痛みの逃避先になってしまいそうで、そんな自分をミミは恐れた。現に過労を己に課して、悲しみから目を背けているのだから。
サンディに叱られ、リッカやルイーダたちに心配され労られたミミは、傷を癒し休息を取ってから、呪力のモトを渡しにギビリンの住む大魔法使いの井戸を訪れた。
井戸に入ると、ギビリンの弟子がぶつぶつ独り言を言っているのが聞こえた。
「・・・ったくあのオヤジも次から次へと、いつになったら飽きてくれるんだろうな・・・。次に手に入れてくるのは・・・ほしのカケラか。あーあこりゃ手間だぜ・・・」
ほしのカケラ?ミミは首を傾げてから、おずおずと声をかけた。
「あの・・・ギビリンさんはいらっしゃいますか?」
ミミに気付いて彼は、文字通り飛び上がった。
「・・・おっとお客さんですかい?ささっ!どうぞどうぞ、先生は中にいらっしゃいますよ」
ミミは奥に通され、ギビリンに呪力のモトを渡した。
「おおおお!でかした!それぞまさに呪力のモトじゃ!!ふむ、ではさっそく・・・」
ギビリンがいきなり呪力のモトを頬張ったので、こんな不気味な力を飲んじゃっていくら大魔法使いでも大丈夫かなあ・・・と、ミミは少々心配になった。
ギビリンが怪しい呪文を唱えると眩しい光が発せられて、ミミは眩しくて何も見えなくなった!・・・が、駆け寄ってくるギビリンの弟子の姿がちょっとだけ見えた気がした・・・。
「おぬしの望みは叶った!その手を見てみるがよい」
目が見えるようになるとギビリンがそう言って、ミミが手を見てみると、そこには「ほしのカケラ」があった。
「それこそがおぬしの望み、どうじゃ?当たっておるだろう?」
これが、私の望み・・・?ミミがほしのカケラを見つめながら立ち尽くしているのを見ると、ギビリンは続けて言った。
「・・・ふむ、おぬし自身まだ気付いておらぬのじゃろう。だが、それこそがおぬしが心の奥で本当に求めていたものなのじゃ。今はわからずともいつかわかる日がくるじゃろう」
ミミは釈然としない表情ながらとにかく礼を言って井戸を出、出た途端にサンディがぷうと頬を膨らませて叫んだ。
「何アレ!どこが大魔法使いよ、ヘタな手品しただけじゃん!てゆーかアイツの弟子がほしのカケラ持ってきただけだし!超インチキ!」
ミミの切ない望みも痛みも知らないで、心を弄ぶようなことをしてと思ったので、サンディは必要以上に怒った。だがミミは、怒りもせずに、手の上のほしのカケラを見つめた。
これが、イザヤール様の星の、カケラだとしたら。・・・私の願いは、叶ったということになるんだろうか。イザヤール様を、すぐ傍に。この手の中に、包んで。胸に、抱きしめて。
だが、手の上のほしのカケラは。輝きもぬくもりも無く、何も伝えてこない。・・・違う、ミミは小さく呟いた。違う。私の望みは。イザヤール様の微笑み、ぬくもり、声、意志、そんなもの全て。たとえこのカケラが本当にイザヤール様の星のカケラだとしても、イザヤール様の羽ほどにも、彼を感じさせない・・・。こんなの、違う・・・。
「違う・・・。サンディ、違うよ・・・」
呟いて、ミミはぽろぽろと涙を溢し始めた。サンディは、そんな彼女をびっくりしたように見てから、ぎゅっと抱きしめて彼女の頭をなでながら、頷いて囁き返した。
「うん、違う、違うよね、ミミ。こんなんじゃ、ないよね」
サンディはそう繰り返して、ひたすらミミの頭をなで続けた。ミミ、泣いていいのよ。怒っていいの。無理に前向きになれない日だってあって、そんな日は思いっきり悲しんで、いいのよ。
やがてミミは泣き止んで、睫毛に涙を散りばめたまま、泣き笑いのような恥ずかしそうな表情を浮かべた。
「でも・・・本当に望みの一部かもしれないから、インチキとは言いきれない・・・かも」
それを聞いてサンディは、やはり泣きそうだった顔を緩めて吹き出し、コツンとミミの頭を軽く小突いた。
「ホントにアンタって・・・どこまでお人好しなんだっつーの!」
そして二人は顔を見合わせ笑って、箱舟に帰っていった。
だが。そのとき二人は知らなかった。この星のカケラから作った天使のソーマが、「しんかのひせき」の材料となり、そのしんかのひせきを使って作った「セレシアのはごろも」を着てミミはレパルドに戦いを挑み、はごろもの回復効果のおかげでレパルドに辛勝して、「女神の祈り」を手に入れることになることを。それが、ミミの心からの望みを、叶えることに、なることを。〈了〉
星ふぶきの夜からしばらくの間、ミミはどこか悲しげで寂しげだった。体の具合が悪そうな訳ではなく、むしろ以前より更に冒険や人助けに励んで忙しく動き回っていたが、懸命に隠そうとしても隠しきれない影のようなものが、優しい微笑みにも濃い紫の瞳にも潜んでいた。
再びサンディとアギロに再会し、天の箱舟を運転するようになってから、その影は少しずつ癒えて、輝くような笑顔も時折見られるようになったが、故郷も愛する人も喪い、天使の仲間たちと言葉を交わすことも二度と叶わなくなった心の痛みは、そう簡単に消えない。喪ったものをいつまでも悲しんではいけない、前を向いて進むしか無いと自らを奮い起たせることで、実は余計に心を追い詰めていることに、ミミ自身は気付いていなかった。
だが事情を誰よりも知っているであろうサンディは、うまく言葉にはできないがミミのそんな心の動きに気付いていた。
「ね~、ちょっとミミ、アンタこの頃働きすぎじゃね?ぶっ倒れたらなんにもならないワヨ!」
「大丈夫。私、こう見えて頑丈だって、サンディもよく知ってるでしょ?ちゃんとのんびり休息もしてるし」
にこっと笑って返答するミミに、サンディは心配しながらどうにもしてやれないもどかしさを覚えて、悲しい苛立ちを抱いた。
「んもー、とにかく今日はもう休みなさい!アンタが頑張るとアタシも冒険の記録に付き合うんだからねッ!アタシまで休めないデショ!」
こんな風にしか言ってやれない。サンディの顔が一瞬泣きそうに歪むが、なんとか堪える。アタシが泣いてどーすんのよ、サンディは思った。ホントに泣きたいのは、ミミの方なのに・・・。それでもミミは、最近ようやく泣けるようになったんだよね。隠れて一人でこっそりだけど、さ。・・・それでも、泣くことすらできないくらい心が凍ってるより、ずっといい・・・。
「あ、そうか、ごめんね。じゃあ今日はもう冒険はやめて、リッカのお手伝いするから、箱舟に帰っても大丈夫よサンディ」
「だからそーゆーコトじゃなくて!休めっつーの!センパイ命令よセ・ン・パ・イ・め・い・れ・い!」
腰に手を当てふんぞり返るサンディに、ミミは笑って、ようやく承諾の返事をした。
「わかりました、センパイ」
「よろしい!ちゃんと休むのヨ。今日はトクベツに、アタシが一緒におねんねしてあげる!」
「えー、でもサンディ寝相悪いし・・・」
「うるさいわね!睡眠中もアクティブって言えっつーの!」
「うん、でも嬉しい」
ミミの顔に、和んだ微笑みが浮かぶ。ありがとう、サンディ。本当は、一人きりにしないでくれて、嬉しいの。くたくたにならないうちに一人きりになると、未だについ余計なことを考えちゃうから・・・。心配かけて、ごめんね。早く完全に元気にならなきゃね。声には出せない言葉を、心の中で呟き、ミミの微笑みが更に優しくなった。
そんなある日、ミミは自称「大魔法使い」ギビリンから、スライムジェネラルが持っている「呪力のモト」を取ってくるよう依頼された。それを持ってくれば望みを叶えてやるという彼の言葉に、期待してはいけないと思いつつも心がほんの少し揺らいだ。
本当の望みは叶わないと、ミミは必死に己に言い聞かせた。精霊でさえ、人間たちの願いを叶えるのはたいへんなことなのだ。そしてセレシアの力の結晶である女神の果実に願ってさえ、サンディたちとの再会は叶ったが、生涯一度と言っていいくらい強く、密かに愛し、恋していたあの人との再会は、やはり叶わなかった。あのときミミは、『みんなに、また会いたい』と願ったのだ。
他の天使たちと同様星となっているであろう師匠イザヤールとは、もしかしたら夜空を見上げる度に、そうとは知らずに会えているのかもしれない。だから、女神の果実の力でも叶わなかったように思えるだけかもしれない。でも、それならせめて、どの星が愛しい人なのか、わかりさえしたら。それとも、わからないということは、それほど愛していないということなのだろうか。そんなことを考えて、ミミの心は千々に乱れていた。
今回の依頼人が、本当に大魔法使いだとしても、女神さえ叶えられない願いを叶えることなど、できるのだろうか。・・・命を落とした天使と、再び会いたいという願いを・・・。運命で喪われた命は、神ですらどうにもできない・・・。でも、最初から無理だと思い込んでいたら、何もできないし奇跡も起こせない。だから、全力でやってみよう。たとえ、望み通りにならなくて酷く傷付いても。決意したミミの濃い紫の瞳は、深い陰影を描いて煌めいた。
スライムジェネラルとの戦いも、これまで通り一人で挑んだ。そろそろ、ルイーダの勧める冒険者たちとパーティを組むことも検討しなくもなかったが、自分の望みを叶えたいという目的のこのクエストは、苦しくても自力で挑むことが筋に思えた。
剣による攻撃とイオナズンでボロボロになりながらも、ミミはスライムジェネラルに勝って、呪力のモトを手に入れた。傷は、魔力切れで回復しきれなくて、ずきずきと痛い。痛いことがひどく怖く苦手だという質は、未だに治らない。だが、心の痛みの方がもっと苦しいのだということを知ってしまった今では、体の痛みはむしろ心の痛みの逃避先になってしまいそうで、そんな自分をミミは恐れた。現に過労を己に課して、悲しみから目を背けているのだから。
サンディに叱られ、リッカやルイーダたちに心配され労られたミミは、傷を癒し休息を取ってから、呪力のモトを渡しにギビリンの住む大魔法使いの井戸を訪れた。
井戸に入ると、ギビリンの弟子がぶつぶつ独り言を言っているのが聞こえた。
「・・・ったくあのオヤジも次から次へと、いつになったら飽きてくれるんだろうな・・・。次に手に入れてくるのは・・・ほしのカケラか。あーあこりゃ手間だぜ・・・」
ほしのカケラ?ミミは首を傾げてから、おずおずと声をかけた。
「あの・・・ギビリンさんはいらっしゃいますか?」
ミミに気付いて彼は、文字通り飛び上がった。
「・・・おっとお客さんですかい?ささっ!どうぞどうぞ、先生は中にいらっしゃいますよ」
ミミは奥に通され、ギビリンに呪力のモトを渡した。
「おおおお!でかした!それぞまさに呪力のモトじゃ!!ふむ、ではさっそく・・・」
ギビリンがいきなり呪力のモトを頬張ったので、こんな不気味な力を飲んじゃっていくら大魔法使いでも大丈夫かなあ・・・と、ミミは少々心配になった。
ギビリンが怪しい呪文を唱えると眩しい光が発せられて、ミミは眩しくて何も見えなくなった!・・・が、駆け寄ってくるギビリンの弟子の姿がちょっとだけ見えた気がした・・・。
「おぬしの望みは叶った!その手を見てみるがよい」
目が見えるようになるとギビリンがそう言って、ミミが手を見てみると、そこには「ほしのカケラ」があった。
「それこそがおぬしの望み、どうじゃ?当たっておるだろう?」
これが、私の望み・・・?ミミがほしのカケラを見つめながら立ち尽くしているのを見ると、ギビリンは続けて言った。
「・・・ふむ、おぬし自身まだ気付いておらぬのじゃろう。だが、それこそがおぬしが心の奥で本当に求めていたものなのじゃ。今はわからずともいつかわかる日がくるじゃろう」
ミミは釈然としない表情ながらとにかく礼を言って井戸を出、出た途端にサンディがぷうと頬を膨らませて叫んだ。
「何アレ!どこが大魔法使いよ、ヘタな手品しただけじゃん!てゆーかアイツの弟子がほしのカケラ持ってきただけだし!超インチキ!」
ミミの切ない望みも痛みも知らないで、心を弄ぶようなことをしてと思ったので、サンディは必要以上に怒った。だがミミは、怒りもせずに、手の上のほしのカケラを見つめた。
これが、イザヤール様の星の、カケラだとしたら。・・・私の願いは、叶ったということになるんだろうか。イザヤール様を、すぐ傍に。この手の中に、包んで。胸に、抱きしめて。
だが、手の上のほしのカケラは。輝きもぬくもりも無く、何も伝えてこない。・・・違う、ミミは小さく呟いた。違う。私の望みは。イザヤール様の微笑み、ぬくもり、声、意志、そんなもの全て。たとえこのカケラが本当にイザヤール様の星のカケラだとしても、イザヤール様の羽ほどにも、彼を感じさせない・・・。こんなの、違う・・・。
「違う・・・。サンディ、違うよ・・・」
呟いて、ミミはぽろぽろと涙を溢し始めた。サンディは、そんな彼女をびっくりしたように見てから、ぎゅっと抱きしめて彼女の頭をなでながら、頷いて囁き返した。
「うん、違う、違うよね、ミミ。こんなんじゃ、ないよね」
サンディはそう繰り返して、ひたすらミミの頭をなで続けた。ミミ、泣いていいのよ。怒っていいの。無理に前向きになれない日だってあって、そんな日は思いっきり悲しんで、いいのよ。
やがてミミは泣き止んで、睫毛に涙を散りばめたまま、泣き笑いのような恥ずかしそうな表情を浮かべた。
「でも・・・本当に望みの一部かもしれないから、インチキとは言いきれない・・・かも」
それを聞いてサンディは、やはり泣きそうだった顔を緩めて吹き出し、コツンとミミの頭を軽く小突いた。
「ホントにアンタって・・・どこまでお人好しなんだっつーの!」
そして二人は顔を見合わせ笑って、箱舟に帰っていった。
だが。そのとき二人は知らなかった。この星のカケラから作った天使のソーマが、「しんかのひせき」の材料となり、そのしんかのひせきを使って作った「セレシアのはごろも」を着てミミはレパルドに戦いを挑み、はごろもの回復効果のおかげでレパルドに辛勝して、「女神の祈り」を手に入れることになることを。それが、ミミの心からの望みを、叶えることに、なることを。〈了〉
私の所の女主も立ち直り自体は早かったですけど精神的ダメージは大きかったです。場合よっては身体の痛みも心の痛みも押し殺して突き進んだかもしれませんが男僧侶さんが似たような経験していたので
この辺りは気に掛けていたんじゃないかな…と。え?後にくっつく男パラディン…えっと…
まぁこの辺りは男僧侶さんに任せてましたね。実は男僧侶さんに泣き顔見せていたりします。
下手すれば女主取られてたかも(笑)
こんばんは☆悲しみを見ないようにして堪えるから強いのではなくて、悲しいという感情を受け入れた人が本当に強い人かなと思って書いた話なので、辛い系話ですが読んで頂けて嬉しいです☆
そちらの女主さんは、パーティメンバーが支えとなってくださったのですね。似たような痛みを知っている僧侶さんだからこそ、悲しみを分かち合い支えとなってくれたんですね、ステキです☆
辛い時の適切なサポートってけっこう恋愛感情に移行しそうな・・・パラディンさん、本当に危ないところだったのでは・・・(笑)