セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

ウソから出たアレ

2016年04月01日 23時59分22秒 | クエスト184以降
ギリギリエイプリルフール更新の追加クエストもどき~。当然エイプリルフールネタですが・・・。

 今日は地上の一部の地域では、罪の無いウソや軽いいたずらをしても許される風習があるという。つまりはエイプリルフールだが、元天使で天使界にはそのような習慣がなかったミミは、そのことを今年はすっかり忘れていた。という訳で、エイプリルフールを満喫しようとしているサンディの格好の餌食になりそうなところだったのだが・・・。
「ねーねーミミー!今日はバニーのカッコして市場に行くと武器からアイテムからオール半額らしーワヨ!行かなきゃ絶対ソンじゃね?」
「・・・今は特に必要な物無いし、半額でも恥ずかしいから別にいいかな・・・」
「マジに検討すんなあー!つまんない!超つまんないんですケド!」
 ミミは完全に騙されているがリアクションがつまらないでサンディはしばらくむくれていたが、やがてニヤリとして呟いた。
「ミミ~、イザヤールさんがカワイイウサギさん見たいって言ってたワヨ~」
「イザヤール様はそんなこと言わないもの・・・。で、でもうさみみバンド着けよっかな・・・」
「すごく騙されてるし!」
 そんな次第でミミは今日が何の日かようやく思い出したのだが、特に何もできないまま昼になり、鍛治屋から帰ってきたイザヤールとリッカの宿屋の食堂で楽しく昼食をとっていた。ちなみに彼も今日が何の日か忘れているらしい。
 食べ終わって錬金の素材集めにでも出かけようかと二人が立ち上がったところへ、フード付きのローブをまとった魔術師風な姿の若者が近付いてきた。彼はものすごく心配そうな顔で、しかも周囲に聞こえないように囁くような声で話しかけてきた。
「あの、あなたは、大魔王をばんばん倒すことでも有名なミミさんですか?」
 ばんばん倒すって・・・。とミミはちょっと困ってから、首を傾げた。
「何か私にご用ですか?」
「お~、ウワサ通りめっちゃカワイイしナイスバディですね~。そちらでも有名ですよー、一見全然強そうに見えないカワイさなのに最強な冒険者さんだって」
 それを聞いてミミは複雑そうな表情を浮かべ、イザヤールは少し顔をしかめたが、若者は一転深刻そうな顔になり、言った。
「・・・って、楽しく世間話している場合じゃないんです。実はたいへんなんです」
「何かあったんですか?」
「実は・・・」若者は、ますます暗い顔をして言った。「・・・テキトーに洞窟の床に魔法陣を描いたら、大魔王を召喚しちゃったんです・・・」
 それを聞いたミミとイザヤールは、きょとんと数秒間ほぼ無表情でいたが、やがてミミは小さく吹き出して笑い、言った。
「あはっ、もしかしてエイプリルフールですか?さすがに私だって騙されないですよ?」
 すると若者は、絶望的な表情になって言った。
「ああー!やっぱり信じてもらえないー!・・・みんなそう言って信じてくれないんですが、マジなんですってー!」
「・・・しかしなあ、本当に大魔王を召喚したら、とっくに無事では済まないのでは?」
 イザヤールが不審そうに尋ねると、若者は答えた。
「それが、何故かぐっすり眠ってて、攻撃してこなかったんですよー。それでそ~っと抜け出てきたんですけどー、でも起きたらマジでヤバくないですか?!その前に何とかしないと・・・!」
 若者の切羽詰まった様子に、初めは見知らぬ人が仕掛けてきたエイプリルフールかと思っていたミミとイザヤールも、これはとりあえず真偽を確認した方がいいと思い始めた。
「イザヤール様、これはたとえ騙されてでも、念のため確認に行った方がいいんじゃ・・・」
「そうだな、顔も口調もいまいち信憑性が無い若者だが、万が一事実ならたいへんなことになるからな」
「あのー、イザヤールさん、ボク本人に聞こえるように言うのやめてもらえますー?」
 こうしてとりあえず、うっかり召喚してしまったというその洞窟に行ってみることにした。ミミはクエスト「ウソから出たアレ」を引き受けた!

 若者がびくびくしながら案内してくれた洞窟に行ってみると、入り口には「立ち入り禁止」と書いてある立て札が立ててあった。それのせいで更に如何にもウソくさく見える。
「これは?」
 ミミが尋ねると、若者は胸を張って答えた。
「あー、誰か入っちゃうとたいへんだと思って、ボクが立てときましたー」
「かえってみんな気になって入っちゃうんじゃ・・・」
 幸い怪しすぎて誰も入った者は居ないようで、三人が忍び足で入っていくと、洞窟の中には確かに奥に巨大な何かが居た。近付いてみるとそれはなんと、本当に大魔王エスタークだった!しかしエスタークは深く眠っているようだ。
「ほんとに大魔王・・・」
「しかも眠っているようだな・・・」
 ミミとイザヤールは顔を見合わせ、声を潜めて囁き合った。
「ね?ね?ホントだったでしょ?どーしましょー、コレ~!」
 若者は半ベソで言ったので、ミミは提案してみた。
「偶然描いた魔法陣で出て来ちゃったのなら、魔法陣の一部を消したら居なくなるんじゃないですか?」
「で、でも、消してる間に目を覚ましたら・・・」
「大丈夫、私たちが消してきます」
「もしも奴が目を覚ましたら、君は洞窟の外に逃げてくれ」
「ははは、はい、よろしくお願い致します~」
 岩陰から見守る若者を残して、ミミとイザヤールはそっとエスタークに近付いた。ミミは足で地面に描かれた文字の一つをこすってみたが、消えなかった。
「あー!すみませーん、チョークと間違えてクレヨン使いましたー!」
 若者が遠くから手をメガホンにして叫んだ。
「お、大きな声を出さないでください・・・」
 ミミは慌ててたしなめたが、時既に遅く、エスタークは目を覚ましてしまった!
「・・・私の眠りを覚ますのは誰だ・・・」
 エスタークは大魔王の中でも特に手強く、攻撃力が非常に高いので、いくらミミとイザヤールでも、二人では正直勝つのは難しい。リッカたちが一緒の四人でも油断すれば負ける可能性もあるからなおさらだ。だが、とにかく起きてしまった以上、戦って勝つしか助かる道はない。
「逃げてください!」
 ミミは若者に向かって叫んだが、若者は半ベソのまま逃げずにこちらにやってきた!
「こうなったのもボクのせいですから、ボクも何とかしますー!手持ちのアイテムで何とか魔法陣の文字消しますから、3ターン・・・いえ2ターンだけ時間を稼いでください!」
 2ターンなら何とかもつと、二人は力強く頷いた。イザヤールは若者にエスタークの攻撃が及ばないよう「かばう」の構えをし、ミミはどんな攻撃が来ても全回復できるよう備えた。
 エスタークはメラガイアーをミミに向かって唱えてきた!爆炎がミミを包む!そして次にイオナズンを唱えてきて、若者をかばっているイザヤールは二回分のダメージを受けた。ミミは何とかベホマズンをタイミングを合わせて唱えることができたので、二人の傷は瞬く間に治った。その間若者は、大きな背負い袋の中から、クレヨンで描いたものを消せそうなアイテムを必死に探していて、ようやく見つけたらしかった。
 次のターンで若者は必死に地面をアイテムでこすって魔法陣の文字を消そうとし、ミミはやはり回復の準備を、イザヤールは若者をかばう体勢を取った。するとエスタークはしゃくねつの炎を吐いてきた!二回分のダメージがイザヤールを襲う!そして両手の剣を思いきり振ってきて、それはミミを直撃して、ミミは深傷を負って壁に叩きつけられた。それでも彼女は必死に回復呪文の詠唱をしようとした。
 と、そのとき、また炎を吐く構えをしていたエスタークの姿が、ワープしたように消えた。魔法陣の文字が消えたらしい。
「き、消えました~」
 若者は泣き笑いしながらへたりこんだ。ミミとイザヤールは傷は痛んだが思わず笑い、ミミは安心して回復魔法を唱え、二人の傷を治した。
「何を使って消したんですか?」
 回復したミミが尋ねると、若者はクレヨンがこびりついた短剣を見せた。これで地面を削り取ったらしい。
「消しゴムと迷ったんですけどね~、文字がのびて更に変なの出てきたらまずいと思ってー。消しゴム見つからなかったし」
 見つからなくてよかったかもしれない、とミミとイザヤールは苦笑した。
「ミミさん、イザヤールさん、本当にありがとうございました、ボクこれからテキトーな魔法陣描くの絶対やめます!」
 そう言って若者は、クレヨンを削り取った短剣、ソウルブレイカーをお礼にくれたのだった。

 こうしてなかなかたいへんな一日となったが、無事リッカの宿屋に帰ってきたミミとイザヤールは、部屋にもうひとサプライズあることをまだ知らない。リッカのエイプリルフールの軽いいたずらで、たくさんのスライム風船が部屋を埋めている。〈了〉
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