セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

チョコヌーバの恐怖

2014年02月15日 00時35分27秒 | クエスト184以降
今週は30分遅れでお送りしますの捏造クエストシリーズこと追加クエストもどき。捻りもなくストレートにバレンタインネタですがバレンタイン当日に間に合わなくてトホホ。そしてバレンタインネタなのでやはり脱力感満載なストーリーでございます。何をどうしたらチョコがあんなことになるのか不明ですが、漫画なんかで見る料理下手の人の料理って何か動きますよね(笑)そしてバレンタインらしく相変わらずイチャなイザ女主です。

 リッカの宿屋では、今日はそれぞれの店の来客にチョコレートをサービスしている。宿屋の宿泊客はミルクチョコレート、ロクサーヌの店の客にはスイート、ルイーダの酒場はビター、レナのゴールド銀行はほぼカカオ分のダークと、それぞれ味が異なる凝りようで、全種類をコンプリートしようと燃える客が後から後からやってきて大盛況だった。友チョコも定着した昨今、もちろん女性客にも配っている。
 そんなロビーの喧騒から離れた厨房の片隅では、菓子ではない方の食欲をそそる匂いが漂っていた。ミミは小さな鍋と炉の一角を借りて、今年の本命チョコの仕上げをしていた。と言っても、鍋の中身はチョコレートではない。とろりと煮込まれた肉の塊が、赤ワインベースらしいソースの中にゆったりと浸っている。
「できた♪後は食べる前に温め直して、綺麗に盛りつけて・・・」
 火から鍋を下ろして、中身を可愛いシチューポットに移す。付け合わせのサラダは何にしようかなと、ミミは楽しく考えを巡らせた。今日も寒いから、やっぱり温野菜がいいかな。それとも、ウォルロの雪の下から摘んだ若菜がいいかな・・・と、心が弾む。
「ねーミミ、超おいしそうだけど、どこがチョコなワケ?」
 見物していたサンディが口を挟んだ。
「それはね・・・」
 と、説明しようとしていたところへ、そんな平穏を破る闖入者が現れた。

「すいません!ちょっとかくまってください!」
 どうやって入ったのか、スタッフしか入れない厨房に、一人の若者が飛び込んできた。
「お客様!厨房に入られては困ります!」
 コックや配膳担当のメイドたちが慌てて制止したが、若者は怯えきった顔で哀願した。
「追われているんです!お願いします、助けてください!」
 助けを求められたらとりあえず手を差し伸べるのが元守護天使のサガである。ミミは、とっさに空の樽を持ち上げて、若者の上にかぶせた。若者の姿が隠れた一瞬後に、厨房に今度は、フリルだらけの可愛らしいドレスを着た少女がまさに嵐のように飛び込んできて、声を張り上げた。その手には、何故かもぞもぞ蠢く大きな袋が握られている。
「ちょっとー!どこに隠れたのー!出てきなさいよー!」
 ミミは、かたかたと震える樽を隠すように前に出た。コックも、少女につかつかと歩み寄って、きっぱりと言った。
「お客様、ここは部外者の方は立ち入り禁止です。人をお探しなら、他を当たってください」
 少女は頬をふくらませて厨房を見回したが、若者の姿が見当たらなかったので。諦めて行ってしまった。
 もう大丈夫と頃合いを確認して、ミミは樽を再び持ち上げて若者を出してやった。彼はほっと安堵の溜息をついて、ミミたちにぺこりと頭を下げた。
「ありがとうございます、助かりました」
「いったい何があったんですか?」
 ミミが尋ねると、若者は暗い表情で説明を始めようとして、厨房の調理台に積んである予備のサービスチョコを見て、小さく悲鳴を上げた。
「ひい、ここにもチョコが!」
 ミミが驚いた顔をしたのを見て彼は我に返り、再びぺこりと頭を下げて謝った。
「あ、すみません。実は訳あってチョコを見るのさえ怖くて・・・」
 別に超モテモテでもうチョコ見るのもイヤってタイプには見えないんですケド、と、サンディが失礼な感想を挟む。
「さっきの方が関係しているんですか?」
 サンディの声が他の人に聞こえなくてよかったと思いながらミミは尋ねた。
「そうなんです。実は、僕を追ってきたのは、僕の彼女なんです。・・・とてもいい子なんですが、何せお嬢様育ちで料理が壊滅的にヘタで。なのに手作りチョコにこだわって、去年作ってくれたチョコを食べた僕は、一週間入院しちゃったくらいなんです」
「それで逃げてたんですか・・・」
「はあ・・・そうなんです。でも、いつまでも逃げきれるもんじゃないとはわかっています。たとえ今日にげきったって、食べないと、『私の愛を食べてくれないなんてー!もう別れるー!』って泣いちゃうし」
 別れた方がよくね?と、またサンディが余計な口を挟む。
「でも、それならどうして逃げていたんですか?」
 サンディにそんなこと言っちゃダメとこっそり首を振りながらミミが言うと、若者は悲壮な表情で答えた。
「食べる前に薬を用意しておきたかったんですが、間に合わなくて。薬の用意ができてから彼女のところに行って、チョコをもらおうって思っているんですが・・・今年のチョコは、もはや普通のばんのうぐすりくらいじゃ追いつかないかも・・・せめて『超ばんのうぐすり』があればなあ。・・・いや、『せかいじゅのしずく』くらい無いとダメかも・・・」
 それなら自室の道具袋に入っている。お安いご用とミミはにっこり微笑んだ。
「それなら、少々待って頂ければ、両方お持ちします」
「ホントですか!ありがとうございます!材料は必ずお返しします、・・・僕がチョコを食べてて、まだ生きていれば、ですけど・・・」
 ミミはクエスト「チョコヌーバの恐怖」を引き受けた!

 ミミはリッカに事情を話して若者をスタッフルームにかくまってもらい、自室に戻るついでにシチューポットを持っていき、『たいようの石』と一緒にキルトでくるんで、夕食まで部屋に置いておくことにした。おそらくいい感じに更に煮込まれることだろう。それから道具袋から『せかいじゅのしずく』と『超ばんのうぐすり』を出して階下に戻った。
 階段を降りながら、ミミはふと呟いた。
「依頼人さんの口ぶりだと、今年の彼女さんのチョコは、去年のより更に破壊力がパワーアップしているってことだよね・・・。見た目だけでわかるくらい凄かったのかなあ・・・」
「去年入院したときに、よっぽど懲りたんじゃね?」
 サンディは笑って言って肩をすくめた。だがミミは、少女が持っていた蠢く大きな袋が妙にひっかかっていた。なんだかものすごく不吉な予感がしたが、考えるとそれが現実になってしまうような気がして、それ以上深く考えることはやめた。
 ミミがロビーに降りた時には、ちょうど少女は宿屋中を探して諦めたらしく、ぷんぷんしながら外に出ていくところだった。
 若者がかくまわれている部屋までミミが戻ると、彼はテーブルの下に隠れていて、ミミが扉を開けた音にさえ怯えた。
「あの・・・そんなに怖がらないでください。お薬持ってきましたから」
「ありがとうございます。びくびくしてすいません・・・」
 若者は頭を掻き、せかいじゅのしずくと超ばんのうぐすりをじっと見つめて、言った。
「これで僕、頑張って彼女の愛のチョコを食べる勇気が出ました!ありがとうございます。・・・でも、すぐ倒れたら、自分で薬は使えないか・・・」
 そこでミミは、若者の後をこっそりつけて、チョコを食べて彼が倒れたら、とりあえず超ばんのうぐすりから使うことで話がまとまった。

 ちょうどその頃、イザヤールはグビアナからキメラの翼でセントシュタインに戻ってきた。サービスチョコで宿屋のバレンタイン以外に使う在庫分のゴールデンカカオまで使いきってしまった為、追加を買いに行くことを引き受けたのだった。
 今朝ミミが、「今年のチョコレートは夕食のときまで待って、ね?」と、言ったときのなんとも愛らしい表情を思い出して、イザヤールは思わず頬を緩めた。昨日もいろいろあって疲れているだろうに、今日は朝早くから厨房に行って、彼の為に何か作っているらしい。それで鍋を見てなければならなくて、グビアナに一緒に行けないことを悲しんだ彼女が、また可愛い。
 もっとも、夕べもちゃんと二人ともぐっすり眠れたので、イザヤールは疲れが残っていなかったし、ミミもそうだと言ってくれていた。だが、その言葉に甘えて無理をさせてはいけないなと内心呟き、明日はお返しに彼女を労ってゆっくりさせてやろうと決意して、宿屋の方に向かっていると、突然、城下町の広場の方から悲鳴や騒ぎが響いてきた。
 やれやれ、もうすぐミミの顔を見られると思ったらこれかと、眉を寄せてからイザヤールは、急いで広場に走った。見ると人だかりができているが、皆その中心から距離を置いていて、恐ろしそうに見たり、叫んだりしている。その視線の先には、如何にも戦えそうもない格好と体格の少女と、なんと、ドロヌーバにそっくりな魔物が居た!
 茶色く不定形でぐねぐねと蠢くその魔物は、今にも少女に襲いかかりそうだ。イザヤールは愛用のすいせいの剣を抜き、巡回の城兵や、近くに居た冒険者たちも集まってきた。とりあえず少女から魔物を離さなくてはと、イザヤールや城兵たちは素早く駆け寄って魔物に斬りつけたが、スライムよりももっと手応えなくそれは剣にくっついただけだった。すると、少女は叫んだ。
「ちょっとー!私のチョコに、何すんのよー!」
「は?」
「チョコ?!」
 イザヤールたちが困惑している間に、ルディアノへ帰ろう団の一員マリッサが、魔物に向かってメラミを放った!炎に包まれ、ドロヌーバそっくりな魔物は、ぼろぼろと崩れ落ち、砕け散った。焦げ臭さとなんとも言えない妙な匂いの中に、かすかにカカオの香りがした。
「あー!私の手作りチョコがあー!」
 少女は悲痛な叫び声を上げて、地面にぺたりと座り込んだ。
「手作りチョコだったのか?!今のが?!」
 いったい何をどうしたらチョコレートがこんなことになってしまうんだ・・・と、その場に居た群衆全員思い、ドロヌーバならぬチョコヌーバとして、長いこと人々の語り草となったのであった。

 そこへ、少女の恋人である若者がやってきて、おずおずと彼女に言った。
「逃げたりしてごめん、君の手作りチョコ、頑張って食べるよ・・・」
 すると、少女は甲高い声で泣き出した。
「もう遅いわよ!せっかく頑張って作ったのに、冒険者たちに切られたり黒焦げにされたりして、無くなっちゃったんだから!」
 そこへミミもやってきて、イザヤールに事情を説明したので、先ほどのドロヌーバならぬチョコヌーバは、本当に手作りチョコ(物質としてはかなり怪しいが)なのだとわかった。
 ミミはそっと少女の肩に手を置いて、言った。
「泣かないで。また作り直せばいいじゃないですか。私もお手伝いしますから」
「ちょうど極上のカカオもあることだしな」
 イザヤールも言って、ゴールデンカカオの袋を見せた。それで少女も泣き止み、一同はリッカの宿屋の厨房に戻って、無事ちゃんと食べられるチョコを作り(まともな物を作らせるのに苦労したが)、少女は若者に笑顔で手作りチョコを渡すことができたのだった。
「今年は入院せずに済みそうです、ありがとうございます!」
 若者はこっそりミミに囁き、せかいじゅのしずくと超ばんのうぐすりを返した他に、「きよめの水」をくれた!
 仲良く帰っていく二人を見送りながら、ミミはイザヤールに囁いた。
「イザヤール様も、私のチョコをもらって・・・」

 自室に戻ってミミは、メイド服に着替え、食卓の準備を始めた。手伝うと言うイザヤールを制し、彼女は言った。
「今日は私がお給仕するの♪」
 軽い前菜数種とコンソメとサラダと焼きたてのパンに続いて、シチューポットから皿に中身が盛り付けられた。
「これが、私のチョコ・・・。ソースの隠し味に、カカオを入れたの」
 お口に合うといいけれど、と呟き頬を染めるミミにイザヤールは微笑み、立ち上がって自分の椅子の隣にもう一つ椅子を置いて言った。
「ミミ、せっかくだから、一緒に食べよう。いいか?」
「・・・はい」
 彼の隣に腰かけ、幸せそうに彼女もまた微笑んだ。
 こうして今年も、同じチョコを分け合って、一緒に食べるバレンタインを過ごせた二人だった。〈了〉
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4 コメント

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チョコヌーバ笑 (神々麗夜)
2014-02-15 16:44:32
チョコヌーバ、10にいます(笑)
確かに動きや外見がそんな感じです。
それにしてもなにをどうすればチョコが蠢くのか…不思議です。
そして蠢くそれを彼氏に食べさせようとする彼女…一体なにを入れたんでしょうか
ちなみに私の女主が仲間の男性陣に配ったチョコ、本命の男パラディンと仲の良い男僧侶にはちゃんと愛情を込めた美味しい手づくりをプレゼントしたのですが、師匠には味は十分美味しいけどトゲトゲしていてのメタルスライム並に固い『いやがらせチョコ』を渡し、前回のバレンタインで中身(この時のは男僧侶と同じちゃんとしたチョコだった)も見ずにいきなりラッピング毎踏み潰し女主の逆鱗に触れた男バトマスには恨みを込めた『チョコヌーバレベル99』を無理矢理食べさせました



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バレンタインデーは…。 (Aria)
2014-02-15 23:02:42
どうも、Ariaです。
いや、チョコヌーバwドロヌーバにチョコ塗ったのですかww
控えると言ったマイパ話、ちょっとだけ。
アリア「はい、リート。バレンタインのチョコ」
リート「お、サンキュ。…メレンゲか。ん、うまいな」
サクラ「タクユキさん、どうぞ」
タクユキ「え?オレにも!?ありがとう。チョコクッキーか。うめぇ」
アリア「モモ~、ココアだよ~」
モモ「ぷみゅみゅ、ありぱ、しゅきぃ!」
サクラ「リートさんにも」
リート「ココアクッキー?ありがとな」
アリア「タクユキには義理チョコね」
タクユキ「義理とか言うな。悲しい響きだから」
アリア「あと、サクラにも友チョコね」
サクラ「わぁっ!ありがとうございます!あ、チョコでサクラの花作ってある!」
モモ「りーぽ、めれんげ、ちょーだい」
リート「誰がやるもんか」
タクユキ「モモ、はい、アリアからの義理チョコ(型抜き)ならやるからさ」
モモ「ぷいゅ~」
平和が一番…。
ちなみに私は、誰にもあげていない&もらっていないwwあははww
ではでは、今日の更新を楽しみにしています!
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なんと!(驚) (津久井大海)
2014-02-16 00:13:49
神々麗夜様

こんばんは~☆ええっ、チョコヌーバ10に実在ですかっ?!(笑)攻略本ちゃんと見とけばよかったの悲しき未だ未プレイでございますしくしく・・・。
はい、何故蠢くか全く謎ですが、彼女は魔王並のモンスター作成スキルの持ち主なのかもしれません。それとも近くに居た可哀想な生き物が巻き込まれたのか。

あああ、そちらの女主さん、チョコレートの品質がそのまま愛情とイコールなのですね☆『いやがらせチョコ』、メタルスライム並の強度は立派な武器になりそう、こちらのレシピも気になります、絶対武器屋で引っ張りだこではw
バトマスさん、自業自得とはいえ、チョコヌーバレベル99とは・・・生命の危機ではwお大事に・・・。でも乙女の贈るチョコ踏み潰しちゃダメですよね~。
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マイチョコが基本(涙) (津久井大海)
2014-02-16 00:32:04
Aria様

こんばんは~☆チョコヌーバウケてるみたいで嬉しいです(笑)
今年のバレンタイン、大雪パニックでチョコどころじゃなかったような・・・津久井みたいな残念な大人になってしまいますと、バレンタインはおもしろチョコを探す時期という認識になってしまいますので、若者の皆様はぜひ青春なさってくださいまし~!

そちらのパーティの女主さんと僧侶さん、一人ひとりにそれぞれの好みやイメージに合った物を贈っていらして、その細やかなお気遣い、二人とも女子力半端ない♪すごい♪
戦士さんたら、またモーモンちゃんと女主さんを巡ってプチバトルされていて可愛らしい☆うんうん、あげたくないですよね、せっかく自分の為に作ってくれた大切なもの☆
ステキなバレンタインですよね、平和が一番!
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