セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

あんまりに、暑いから

2015年07月20日 03時37分37秒 | クエスト163以降
暑いので少しでも涼しい気分話にしようと思ったらなんだか真夜中テンションになっちゃったような気がするのイザ女主話。何も不思議なことは起こってないんですが何か不思議、そして二人ともなんだかちょっとだけ「らしくない」ことをしてます。暑さのせいです、たぶん(笑)

 あんまりに暑いせい・・・。ミミは、目を閉じて水にたゆたいながら、思う。誰も居ない、魔物も居ないからって、慎重すぎるくらい用心深い自分たちが、こんな無鉄砲なことをするなんて。
 ミミとイザヤールは、宝の地図の洞窟を探険していて、魔物が出ない地底湖のフロアを見つけたのだった。豊かで清らかな水は海とはまた違う深い碧を湛えていて、汗と疲労にまみれた体を浸せば、どれほど癒されるだろうと思わせた。・・・だからといって、普段の自分たちなら、二人一緒に、装備をかなぐり捨てて水に全身を沈めるなんて、きっとしないだろうに。
「泳いだら、気持ち良さそう」
 このフロアにたどり着いて、人どころか魔物一匹居ないと知ったとき、ミミは言ったのだった。
「そうだな。泳ぐか?」
 私が見張っているから、と言うイザヤールに、ミミはグラデーションを描く濃い紫の瞳で見上げ、呟いた。
「泳ぐなら、一緒がいいな・・・」
 冒険中に、しかも洞窟内でこのようなことを言うなど、叱られてもおかしくなかった。けれど、イザヤールは当然のことを言われたかのように、かすかに笑って答えた。
「・・・そうだな。そうしよう」
 岩に武器を深く突き刺した以外は、特に何もせずに装備をその辺に置いた。
「もしも誰かに持っていかれそうになったら、キラージャグリングの玉を投げて止めますからね」
「大丈夫だ、私が岩でも投げて止めてやる」
「それでも持っていかれたら・・・」
「潔く諦めよう」
「はい」
 こうしてミミは薄手の亜麻の袖無しシャツだけ、イザヤールはズボンだけという姿で、湖の中を魚のように泳いだり、水草のように漂ったり、ただ浮いていたりしていたという訳だった。
「・・・叱られるかと、思ってた」
 藍を溶かしたような水底を背にして、白い天然の天井を見上げながら、ミミが呟いた。
「何故だ?」
 並んで同じように隣に浮きながら、イザヤールが訊いた。
「無謀なことする、って」
「無謀か。そうかもな」呟いて、彼は楽しげに微笑む。
「イザヤール様らしくないの」
「おまえだってそうだ」

 暑さのせいだ、はからずも二人で、同時に呟いた。

 互いに少し驚いてしばらく沈黙してから、どちらからともなく思わず小さく吹き出し、それから弾けるように笑った。
 ミミはくるりと体の向きを変えて、岸まですうと泳ぎ、岩の上に腰かけた。イザヤールもその後を追い、しかし彼は水から出ないで、燃えるような瞳で彼女を見つめた。

 あんまりに、あついから・・・。

 水を吸った薄手の亜麻布が、肌に貼り付いてひどく重い。その重みと視線から逃げるようにミミは再び水の中に身を沈め、ゆっくりと彼の方へと近付いて、陰影と煌めきを湛えた瞳で恋人を見上げた。
 二人ともおかしいのは、あんまりに暑いから、そのせいなんだから・・・。内心呟いて、ミミは体を、愛しい者の腕の中に、預けた。〈了〉
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