セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

メラも積もれば

2014年06月27日 23時55分17秒 | クエスト184以降
今週はギリギリ間に合いましたの追加クエストもどき。メラゴーストネタ再び・・・メラゴーストネタは何故か海水浴シーズンにやってきます。ていうかメラゴーストネタを思い付いてから待てよメラゴーストネタやったことなかったっけと後で思い出して確認しました(笑)以前のネタが気になる方は2012年7月のクエスト184以降記事「花火より美しく」をご覧くださいませ~。二年前かあ。雷こそ起こしませんでしたが、気温差雲発生シーンは無理やり入れました。でもドラクエ世界では、雨は精霊が降らせているという方が正しいんでしょうねえ。それとも雲の大王辺りか。

 夏至を過ぎてから、セントシュタイン地方もだんだんと夏らしい陽気に近付いていた。東セントシュタインの海岸では、今年も海水浴場にする為の準備が進められている。
 だが、海開きを前に事件は起きた。海の家にする為に建てられかけていた簡易な小屋が、朝になったら黒焦げの残骸になっていたのだ。海岸に現れるモンスターたちも、最近ではここが海水浴場になることは毎年むしろ楽しみにしていて(海の家の氷菓や軽食にすっかりハマってしまったらしい)、海岸パトロールなども協力的だっただけに、余計に不穏な出来事だと言えた。
 安全が確認されるまで海の家の建設は中断となり、今年の海水浴場の立役者の一人ロクサーヌは、この事態を重く見て(海水浴場の有無でショップの水着の売り上げが全く変わってしまうのだから)、ミミとイザヤールに原因調査を依頼した。
「ミミ様、イザヤール様、これは由々しき事態ですわ。今年の売り上げ・・・いえ、海水浴場の治安に関わる大問題ですわ!セントシュタインの夏を平和な楽しいものにする為にも、ぜひとも原因を明らかにして頂けませんかしら?」
 頼まれる間でもなく原因を調べるつもりだったミミとイザヤールは、もちろんロクサーヌの依頼を引き受けた。

 ミミとイザヤールはさっそく東セントシュタインの海岸に向かった。気のせいか、まだ七月にもならないというのに、海岸に近付くにつれて気温が上がっているような妙な熱気を感じた。問題の小屋の跡に行ってみると、焦げて折れた柱の残骸がまだ残っていて、何もないより痛々しい感じを与えた。
「これは・・・火の熱が断続的に当たったような燃え方だな」
 炭化した木材を慎重に調べたイザヤールが呟いた。ミミも木材の破片や柱を観察して、頷き答えた。
「あ、ほんと・・・。こちら側は焦げているけど、反対側はほんの少し燃えてないところも残っているのね。・・・まるで、小さな火を連続してぶつけたみたい。例えば・・・」
「メラを連続して、小屋にぶつけたような?」
「はい。メタルブラザーズの、メラストームみたいな・・・」
 だが、この辺りにメタルブラザーズが棲息しているのは見たことがない。それから二人は、辺りを更に調べたが、火災を発生させるような物はもちろん、貝殻ひとつ落ちていなかった。
 と、そのとき。真っ黒な何かが数体、二人のところによろよろと近付いてきて、ミミとイザヤールの目の前に来て、ばったりと倒れた。初めは何かわからなかったが、シルエットをよくよく見ると、それはどうやら黒コゲになったウパソルジャーたちらしいとわかった。
「どうしたの?!」
「いったい何があった?!」
 魔物たちと言えどあんまりなやられっぷりの彼らの姿に、ミミとイザヤールが思わず駆け寄って叫ぶと、ウパソルジャーらしい者たちの一匹が、弱々しく答えた。
「め、メラに・・・」
「メラ?」
「メラに・・・やられた・・・ぐふっ」
 言い終えたウパソルジャーは、力尽きてがくりと首を垂れたが、ミミが慌ててベホマラーをかけてやって、彼らはつやつやと復活した。
「助かった~、ありがとう!」
「いったい何があったの?」
 改めてミミが尋ねると、ウパソルジャーたちは口々に説明を始めた。
「いつものように海岸パトロールしてたらさ、なんだか気温が上がってきて・・・。メラゴーストに囲まれて、メラの集中砲火を受けたんだ」
「どうして?同じ魔物同士なのに?」
「いや、それがさあ・・・」ウパソルジャーたちの顔が、気まずそうになった。「パトロール中うっかり悪口言っちゃったんだ。『今年の夏は暑くなりそーだなあ、メラなんか目じゃない暑さだよねー』って。ほら、メラゴーストは、メラの悪口言われるのすっごく気にしてるから」
「あ、そうか、そうだよね」
 メラゴーストは、『今どきメラなんて小学生でも使わないよね~』という心無い言葉への怒りから生まれたと言われている魔物である。それだけに、炎系呪文の基本中の基本であるメラの悪口が許せないようで、その話題にはものすごく敏感になっている。以前の海水浴シーズン、そんなメラゴーストの一人からクエストを依頼されたこともある。
「メラゴーストたち、今は頭に血が上っちゃって、メラを唱えまくって止めてくんないんだよ~。ねえ、なんとかメラゴーストたちを説得してくれないかなあ?頼むよ~。太陽熱で砂浜が焼けてるだけでも裸足の足にはキツイのに、大量メラが続いていたらあんまりにあんまりだよ~」
 ウパソルジャーたちが頼んできた。確かに海水浴場の為にも、なんとかしなくてはなるまい。ミミはクエスト「メラも積もれば」を引き受けた!

 ウパソルジャーたちにメラゴーストたちを見かけた方向を聞いて、ミミとイザヤールは波打ち際沿いに移動を始めた。
「では、海の家が燃えたのも、メラゴーストのとばっちりというわけか。人騒がせな」
 イザヤールが眉をひそめた。
「メラゴーストにメラを濫用するのをやめてもらえるといいんだけれど・・・なんて説得しようかな」
 ミミがそう言って間もなく、辺りが急に暑くなってきた。太陽がいきなり二つになった、とでも言いたくなるような、焼け焦げそうな暑さで、サマードレス姿のミミも、バトルマスター装備のイザヤールも、玉のような汗が吹き出し始めた。はっとして振り返ると、メラゴーストの大群がずらりと並んで居た。
「メラの悪口を言うなメラ~」
 メラゴーストたちから、熱が立ち上って、辺りを蜃気楼のように揺らめかせるほどだった。どうやら怒りで我を忘れているようだ。
「ええっ、私たち悪口なんて言ってな・・・」
 ミミは懸命に首を振って否定したが、メラゴーストたちは聞き入れなかった。
「問答無用メラ!怒りのメラをくらえメラ!」
 メラゴーストたちは、いっせいにメラを唱えてきた!
 メラとはいえ、こんなにいっせいに唱えられれば、メラゾーマくらいの威力はある。メラゾーマの五、六発くらいは耐えられるほど強くなった二人ではあるが、イザヤールはとっさに盾を構えミラーシールドを発動して、ミミをかばうように彼女とメラゴーストたちの間に立った。
 小さな火の玉はミラーシールドに跳ね返されて、メラゴーストたちに次々当たったが、メラゴーストたちはその火の力を吸収して、ますますメラを唱えまくってきた。それが跳ね返されては吸収、を繰り返し、やがてメラゴーストたちは巨大化してきた!
「しまった・・・。メラゴーストたちが、自分たちのメラで強化している・・・!」
 己の判断ミスに唇を噛むイザヤールに、ミミは首を振って言った。
「いいえ、イザヤール様のおかげで、魔法使いに転職する時間が稼げたの」
 ミミは「ダーマのさとり」を使い、魔法使いに転職した。だが、氷系呪文で反撃する間もなく巨大化したメラゴーストたちは、メラミ並みに威力の上がったメラを唱え続けてきたので、イザヤールはとっさにミミを抱えて岩陰に飛び込んだ。
「ミミ、私が飛び出して奴らの注意を引く。後は頼むぞ」
「え、でも・・・」
「ミラーシールドはまだ有効だから、私に危険は無い。心配するな。ただし一気に片を付けないと、跳ね返したメラで奴らはまた力を盛り返してしまう。特大のマヒャデドスを頼む」
「・・・わかりました、でも、気を付けて・・・」
 無事を祈ってミミは彼をぎゅっと抱きしめると、イザヤールは彼女にキスを返してから、岩陰から飛び出して、岩を踏み台に高くジャンプして、巨大化したメラゴーストのうちの一匹に斬りかかった。メラゴーストは「ぴょいん」と跳ねて身をかわしたが、それも計算のうちだった。
 イザヤールは砂の上を素早く転がり、メラゴーストたちから一定の距離を取った。メラゴーストたちは、威力の上がったメラの一斉砲火をしてきたが、そこへミミの氷系最強呪文マヒャデドスが炸裂した!巨大な氷柱が天を突き上げるように現れ、鋭い刃となってメラゴーストたちに襲いかかる!
 メラゴーストたちは悲鳴を上げて縮み、元の大きさに戻って、ばたばたと砂の上に倒れたが、呻くような声で口々に呟いた。
「まだまだメラ・・・!スライムたちにできて、エレメント系の我々にできないわけがないメラ・・・!合体技いくメラ!」
 普通の大きさに戻ったメラゴーストたちは、なんとぴょいぴょいと合体を始めて、今度は巨大な一匹のメラゴーストになった!ミミはもう一度マヒャデドスを唱えようとしたが、合体でメラゾーマ並みにパワーアップしてしまったメラを唱えられてしまって間一髪で避け、唱えることができなかった。彼女の足元の砂が爆炎で飛び散り、それに吹き飛ばされて、呪文は直撃こそしなかったものの、ミミは砂の上に叩きつけられるように落ちた。
「ミミ!」
 イザヤールはミミに駆け寄り、また彼女をかばうようにメラゴーストの前に立ちはだかったが、もうミラーシールドの効果は切れている。ミミは起き上がってイザヤールと並んで立とうとしたが、捻った脚に激痛が走り、思うように動けない。今度は無傷では済まない、敢えて攻撃を受けて反撃するしかないと二人で覚悟を決めたそのとき。
 にわか雨が降ってきた。
 メラゴーストたちのせいで熱せられていた海岸で水蒸気が発生していたところへ、ミミの強力なマヒャデドスで瞬間的に気温が一気に下がったことで、その極端な温度差で雲が発生してしまったらしい。
「わー!雨嫌いメラー!」
 巨大メラゴーストは、まごまごし始めた。思いがけない隙ができて、この機会を逃すまいとイザヤールは剣を構え、ギガブレイクを放った!激しい電撃をくらった巨大メラゴーストは、元の大きさに戻ってばらばらと落ちて、雨を避けるように逃げていった。

 豪雨は間もなく止んだ。
「大丈夫か?」
 イザヤールは尋ね、ミミは頷いたが、立とうとして彼女は激痛に思わずぎゅっと目をつぶった。ミミの捻った脚を調べ、骨折はしていないことを確かめたイザヤールだったが、彼女が痛みをどれほど苦手としているか知っているので、不憫で仕方なかった。バトルマスターの彼も、そして今魔法使いのミミも、回復呪文は使えない。常備している「せかいじゅのしずく」を使おうとしたイザヤールに、ミミはそれは大袈裟すぎると慌てて止めた。
「イザヤール様、たかが捻挫にせかいじゅのしずくなんて、もったいなすぎるの・・・。今転職して、自分で回復呪文かけるからっ」
 あたふたとするミミに、イザヤールはふと尋ねた。
「ミミ、動かさなければ痛くはないか?」
「あ、はい・・・」
「それなら」
 イザヤールは、ほんの少し悪い笑みを浮かべた。こんな顔をされる時はだいたい、どんなことをされるか決まっている。あっという間に抱き上げられ、このまま帰ろうと言われてミミは、赤くなってもがいたが、暴れると捻った脚に鋭い痛みが走るので、イザヤールの腕の上でじっとしているしかなかった。
 そこへ、反省して謝りに来たメラゴーストたちと、メラゴーストたちを正気に返してくれたお礼を言うためにウパソルジャーたちがやってきた。
「ありがとう~、はい、これお礼」
 ウパソルジャーたちはお礼に格別に綺麗で大きな「白いかいがら」をくれた!だがすぐにその場を去らず、それからしばらく、わくわく顔でお姫様抱っこ中のバカップルの後をぞろぞろついてきたのだった。
 今年の夏も、いろいろな意味で暑苦しくなりそうである。〈了〉
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