セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

気長に進化

2013年10月18日 23時59分26秒 | クエスト184以降
今週はギリギリ更新捏造クエストシリーズこと追加クエストもどき。タイトルからお察しの通りゆる~い話です。気が長すぎるスライムと、元守護天使たち(笑)オリハルキングという魔物は9のゲーム上実在しません念のため。

 スライムは、ある意味世界一有名なモンスターと言ってもいいくらいだが、例外はあるとはいえ「弱い」「カワイイ」というイメージが付いて回るのが現状である。カワイイはともかく、弱いイメージは心外だと、日々努力を重ねる者もいるが、その努力が勘違い方向に行っている者もいるようで・・・。
 ウォルロ村に用事があって出かけた帰り、ミミとサンディは奇妙な行動をするスライムに出会った。
「ミミ~、あのスライム何してんの?」
「さあ・・・」
 スライムは、ペロキャンをなめるかのように、だが必死の形相でオリハルコンをなめていた。だが、やがて長い溜息をついて小休止したので、ミミはその機会に尋ねてみた。
「どうしてオリハルコンをなめてるの?おいしくないよね?」
「うん、おいしくない」
 そのスライムは素直に認めた。
「じゃあどうして?」
「強くなりたいから」
「そ、そう?これで強くなれるかなあ・・・」
 ミミが戸惑いながらオリハルコンを見つめると、スライムは胸を張った。
「ただ安直に食べて強くなろうって話じゃないんだ!ちゃんと考えているのさ!オリハルコンなんてかじれないし、だいたい丸のみしたってお腹痛くしちゃうに決まってるし。でもこうして辛抱強くなめ続けていれば、唾液に溶け出したオリハルコンの微粒子が少しずつ体に蓄積されて、やがて立派なオリハルキングになれるって計画さ!」
「(オリハルキング?)そ・・・そう・・・。気の長い話なのね・・・」
 スライム何百年かかるかもしれないと、ミミは心配そうにスライムの傍らにしゃがんだ。サンディは、まためんどくさそーなコトに巻き込まれそう・・・。とビミョーな表情をしている。
「でもさあ・・・」
 スライムが言いかけて、そら来たとサンディは肩をすくめた。
「でも?」
「オリハルコンって特に味が無いから、ずっとなめてると飽きちゃうんだよね~」
 それはそうだよねとミミとサンディは頷いた。酸化もしない究極の金属だから、ひんやりする程度で味はほとんど無いだろう。
「それはおいしくないよね・・・」
「でしょでしょ?だからさあ、お願いがあるんだけど~」
 スライムの言葉に、やっぱりねとサンディはさっそく冒険の記録を引っ張り出し、ミミは頷いてクエストを受ける心の準備を始めた。
「オリハルコンをおいしくなめられるようにおいしい味を付けたいんだ。花のみつとかじゃどうもいまいちで。ねえ、『さえずりのみつ』を定期的に持ってきてくれない?その度にお礼はするからさあ」
 なかなか贅沢な注文だが、そしてスライムがオリハルキングとやらになれるとも思えないが、夢は応援するのが元守護天使の信条である。ミミはクエスト「気長に進化」を引き受けた!

 ミミはセントシュタインに帰ると、イザヤールやリッカたちにただいまの挨拶をしてから、さっそくカマエルのところに行ってさえずりのみつの錬金を始めた。何本かまとめて作ろうと思ったが、「花のみつ」と「きよめの水」、そして「ゆめみの花」がたくさん必要だ。作れるだけ作ったら材料集めに行こうかな、と、ほんのり漂う甘い香りに微笑む。
「それは『さえずりのみつ』か?」
 ルイーダに留守番を頼まれてシェーカーを振っていたイザヤールが、一段落してカウンター越しに覗き込んで微笑んだ。
「はい。頼まれたの、オリハルキングになりたいスライムに」
「スライム?オリハルキング??」
 呆気にとられた彼にミミが依頼のことを説明すると、イザヤールは笑った。
「なるほどな。メタル系スライムの例もあるから、一概になれないとは言えないかもしれないしな」
「だといいけれど・・・」
「この後さえずりのみつの材料集めに行くのなら、付き合ってもいいか?」
「ほんとに?嬉しい♪」ミミの頬がほんのり染まり、瞳が輝き出す。
 そんな二人を眺めるサンディとラヴィエル、どうやらクエストは錬金材料集めという名のデートのダシにされてしまいそうだわ~と、顔を見合わせ苦笑したのだった。

 材料集めに行く前に、ひとまずできあがったさえずりのみつを届けに行くと、スライムはまたせっせとオリハルコンをなめていた。変わった形の氷砂糖をなめている・・・というにはさすがに無理がある。
「わあ、さえずりのみつだ!ありがとう!はい、これお礼!」
 ミミは「ちいさなメダル」をもらった!
 スライムはさっそくオリハルコンにさえずりのみつをほんの少したらし、そして感激した。
「おいし~い♪よーし、これなら続けられるぞ~」
 オリハルキングになる前にまず美声になるのではないかと予感しつつ、ミミたちはその場を後にした。
 一週間後。ミミとイザヤールが次のさえずりのみつを届けに行くと、やたらに美声な、しかもメロディ付きで出迎えられた。
「さえずりのみつだね~ラララ~♪あ~りが~とう~♪ま~た頼んだよ~ルルル~♪」
「う・・・うん。歌、上手ね」
 戸惑いながらもミミが褒めると、スライムは喜んで跳ねながらまた歌いながら話した。
「ラララほんとに~?う~れしいな~♪この調子でが~んば~るよぉお~~♪」
 最後はご丁寧にビブラート付きだった。そして「星のかけら」をくれた。
 帰り道、ミミは楽しげに呟いた。
「何だか私、あのスライム君のところに通うの、楽しみになってきました☆」
「確かにな」イザヤールも同感らしい。「次に来たときは、どうなっているかな」
 その答えが知りたくて、まだ数日だが二人がまたさえずりのみつを届けに行くと、スライムはなんとシルクハットとヒゲと蝶ネクタイを着けて現れた!
「ひ、ヒゲ?!」
 ミミが驚くと、スライムは更に素晴らしくなった声で歌いながら説明した。
「ラララつけヒぃぃいゲ~♪あ~あ~麗しの~スラ美さ~んに~♪カッコよくキメ~て歌ってと~お~頼まれたから~♪」
「そ、そうなんだ・・・」
 しかしオリハルコンのことは忘れていないらしく、歌い終わるとまたさえずりのみつをたらしてせっせとなめていた。ヒゲが邪魔そうだったが。
 更に数日後。ミミとイザヤールがさえずりのみつを持って訪れると、この日は歌に出迎えられなかった。しかもスライム、ふっくらして、キングスライムのミニ版のようになっていた。
「ええっ、もしかしてホントにちょっと進化したの?!」
 ミミが驚いて尋ねると、スライムはぷるぷると全身兼頭を振って否定した。声は相変わらず美声だったが。
「違うよー。オリハルコンにかけたさえずりのみつをずっとなめてたら太っちゃってさあ~。しかもさすがに飽きたよー」
「そっか・・・。じゃあこれからどうするの?普通のチョコとか別の甘味持ってきた方がいい?」
「甘いものももうしばらくいいよう。それよりさあ・・・」ここでスライム、イザヤールにいきなり向き直った。「減量して筋肉付けなきゃ!そこのお兄さん、強そうだから、ボクのトレーナーになってよ!」
「は?!・・・ま、まあ構わないが・・・」
 戸惑いながらも素直に引き受けるイザヤール。
「そしてキミはマネージャーね!」
「ええっ、マネージャー?!」
 いきなりのよくわからない展開にミミは慌てたが、結局、トレーニングしながら相変わらずペロキャンのようにしているスライムのオリハルコンに、塩分補給の岩塩や疲労回復のレモン汁を振りかけたり、水を用意したりと見事にマネージャーぶりを発揮していた。そしてイザヤールは、素手スキルを活かして特訓に協力する形となり、進化の手伝いというより最強スライムの育成みたいだな・・・と思っていた。

 そんな予感は的中した。ミミやイザヤールと特訓した結果、このスライムは合体スライムよりも強いスライムと化していた。元々才能があったのかもしれない。・・・しかし。
 ある日のこと、さえずりのみつ届けからいつの間にかトレーニングの為に訪れるようになっていた二人に、スライムがしくしく泣いて訴えた。
「どうしたの?何かあったの?」
「痛いよ~」
「どこか痛むのか?」
 トレーニングが厳し過ぎたかと、二人はいささか慌てたが、スライムは泣きながらべろりと舌を出して続けて言った。
「オリハルコンをなめ続けたせいで、舌におできできちゃって痛いよ~」
「・・・」
「・・・」
 イザヤールは呆れ、自分も人も痛くなるのが苦手なミミは痛そうと身震いすることで、沈黙になった。そしてようやく気を取り直すと二人は、超ばんのうぐすりを飲ませてやった。
「大丈夫?もう痛くない?」
 心配そうにミミが尋ねると、スライムは一転、ぴょんぴょん跳ねて元気に答えた。
「うん!もうばっちり!でも・・・」ここでスライムはオリハルコンをちらっと見て嘆息した。「オリハルキングへの道は遠くなっちゃう・・・。また口内炎なるのいやだもん。だから」
 スライムは、オリハルコンをミミたちに差し出した。
「もう諦めるよ。このオリハルコン、あげる」
 すると、黙って聞いていたミミとイザヤールが、同時に声を上げた。
「簡単に諦めちゃダメ!」
「簡単に諦めるな!」
「夢なんでしょう?オリハルキングになるのが」
「無理をしてはいけないが、そう簡単に手放してはダメだろう、夢もオリハルコンも!」
「キミたち・・・」二人の言葉に涙ぐむスライム。
 ここで今日は同行していたサンディ、思わず絶叫でツッコミを入れた。
「何よこの変な熱血ドラマみたいな展開ー!」
 そして、ミミとイザヤールの耳元でひそひそ囁いた。
「まさか、スライムのよだれまみれのオリハルコンもらうのイヤだからとかじゃないわよね」
「当たり前だ!よだれが怖くて冒険者をやってられるか!」とイザヤール。
「そうよ、どくどくヘドロの方が怖いし」こちらはミミ。
 こうしてスライムは夢を諦めず口内炎にならない程度にほどほどに努力を続けることになり、また味付け無しでオリハルコン摂取をすることになったが、トレーニングのおかげでオリハルキングにならなくてもいいくらい強くなっていることに気付かないのだった。〈了〉
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