セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

渇きの山

2016年07月16日 11時30分46秒 | クエスト184以降
今週も土曜午前更新で誠にすみません〜の追加クエストもどき。今回は「善意は必ず善意で報われるとは限らない、むしろ酷い目に遭うとわかっていてもどこまでできるか」的なテーマのことを書きたかったんですが、ミミは幸か不幸かサバイバルに関してはパニックに陥りにくい質なので、そこまで追いつめられることもなく、先に言っちゃいますが解決しちゃいました(笑)せめて物語のヒーローヒロインには、自分も、仲間も、他者も助けられる気合いを持っててもらおう、なんてご都合主義なことを思います。

 グビアナ砂漠で「みがきずな」を探していたミミは、砂の中にキラリと光る物を見つけた。拾い上げてみると、どうやら瑠璃でできているネックレスの玉の一粒のようだった。ところどころはまだ滑らかさを保っていてそこが光っているのだが、摩耗している部分もかなりあって、かなり古いものであることらしいのは窺えた。
 文字か何か書いていないかなと、ミミはそれを日にかざしていて、その拍子にまた砂の中で光る玉を見つけた。少し離れたところに落ちている。それを拾い上げると、また少し離れたところで砂の中が光る。三つめの玉を拾い上げてミミは、これは誰かが道しるべに落としていったものだろうかと考えた。
(もしかして、盗賊に拐われた女の子が、こっそり道しるべに落としていった、とか・・・?)
 それにしては、まるで遺跡の中から出てくるような古びた石の玉なのが少し気になるが、もし本当に道しるべなら、見失わないうちに早く追わなくてはならない。今は奇跡的に落ちている玉を追えているようだが、砂嵐であっという間に埋もれて見失ってしまう可能性もある。
 それでも彼女は一瞬ためらった。砂漠のバザーで買い物をしているルイーダとロクサーヌは、ミミがみがきずなを拾ったらすぐに帰ってくると思っている。なかなか帰らなかったら心配をかけてしまうだろう。それに、この手の道しるべは、今までの経験からするとあまりいい予感はしない。一人で行くと大ピンチの危険に遭遇する確率がウォルロでスライムに遭遇するより高そうだ。
 だが結局ミミは、追えるだけネックレスの玉を追ってみることにした。もしも本当に誰かの助けを求める声無き叫びならば、ルイーダたちに知らせている間に手遅れになる可能性もある。大丈夫、何とかしてみせる、とミミは思った。
(またイザヤール様やサンディにも心配かけないように頑張らなきゃ・・・)
 今日二人が共に居ないのは、サンディは出張ネイルサロンの仕事で、イザヤールはエルシオン学院の夏期(万年極寒の地で夏期と言うのも少々奇妙な感じだが)集中授業の臨時講師に呼ばれていたからだった。別行動の度に危ない目に遭っていると、実際サンディにはよく言われている。ミミとしては、そんなつもりはさらさら無いのだが。

 ネックレスの玉が片手にいっぱいになった頃、グビアナの西の高台のふもとにたどり着いた。この高台は、空から降り立つことでしか行けない場所で、頂上は毒の沼地で満たされ、ばくだん岩や恐ろしい魔神ギリメカラなどがうろうろしている普段ならあまり近付きたくない場所である。まさかこの上にネックレスの主は居るのかな、でも天の箱舟を呼ばないと行けないのにな、とミミが思っていると、奇妙なことに、これまで全く気付かなかった細い緩やかな山道があって、そこにもネックレスの玉は落ちていた。サンディだったら、「うわ、超怪しい〜!しかも絶対超ヤバいフラグなんですケド!」と叫ぶところだ。
 武器アイテムを確かめ、防具をあらゆる災いに強い大天使のローブに替えると、ミミは用心しながら山道に入って、ネックレスの玉を追った。砂漠の山らしく、道の両脇は乾いた岩と砂が固まった層になっていて、湧水の一滴どころかもちろん草木一本生えていない。ネックレスの玉の今まで拾ったものをポケットに入れ、新たに拾い続けていると、かなり登った辺りで、人が倒れているのを見つけて、ミミは慌てて駆け寄った。
 倒れていたのは、古風な衣装を身にまとった若い女性で、ミミが抱き起こすとうっすらと目を開けて、かすれた声で呟いた。
「水・・・を・・・」
 ミミが急いで水筒の水を与えると、女性は貪るように飲んで、大容量をたちまち半分以上空にしてしまった。それから彼女は、ほっと息をついて、元気になった声で礼を言った。
「助かったわ、ありがとう。あら、それは私のネックレスの玉ね。これを追って来てくれたのね」
 ミミは頷き、ネックレスの玉を彼女に返してやってから、尋ねた。
「あなたはどうしてここに?私だって、この高台に道があるなんて今まで知らなかったし、人が居るような場所ではないのに」
 すると女性は、ミミの問いには答えず別のことを言った。
「ここは『渇きの山』よ。この先にも、私みたいに倒れている人が、たくさん居るわ。助けてあげてくれる?」
 なんでそんなことになっているかわからないが、それはたいへんとミミは頷いた。ミミはクエスト「渇きの山」を引き受けた!

 女性と別れて急いで先に進むと、彼女が言った通り、山の中腹辺りで子供が倒れていた。ミミが水筒を彼にあてがうと、子供は中身をほとんど飲んでしまい、生き返ったように跳ね起きて、たちまち走り去ってしまった。
 強い日射しの中に長時間いるので、ミミは自らも渇きを覚えたが、あと何口分しか残っていない水筒の中身と先のことを考えると、さすがに飲んでしまう気にはなれなかった。それで我慢して山道登り続けると、今度は老人が倒れていた。
 老人は瞬く間に水筒を空にしてしまい、髭の奥の唇から何かもごもごと言うと立ち上がり、岩陰に姿を消してしまった。ミミが岩の後ろを覗いても、既にもう誰も居なかった。
 とにかくこれで、砂漠の必需品飲み水は無くなってしまったわけだ。この先倒れている人が居たらどう助けたらいいだろうとミミは自分の渇きよりそちらの心配をしながらとりあえず先に進んだ。すると、やはりまた人が倒れていた。今度は恰幅のいい中年女性で、たくさん水を必要としそうだった。
「ああ、苦しい・・・。水を、おくれ。死んじまうよ・・・」
 やはり彼女も水を要求してきた。ミミはそうだと思い出して、道具袋に入れてあった「けんじゃのせいすい」や「せいすい」を無いよりはいいだろうとすすめたが、それでは嫌だと女性は頑なに拒んだ。そして、どんどんぐったりと弱っていった。
 ミミは困ってしまったが、あることを思いついて思わず手を叩いた。なんで気が付かなかったのだろう、この女性を連れてルーラで町に戻ればいいのだ。ミミはルーラを唱えた!・・・しかし、不思議な力でかき消されてしまった!
 やはりここは、何か通常の地ではない異空間らしい。他の呪文も使えないのかと、ミミは慌てて試しにメラを唱えてみると、こちらはちゃんと小さな火の玉が出て発動したので、少し安堵した。だが、目の前の人をどう助けたらいいのか、まだそちらの答えは出ていない。
「・・・無いよりはいい、あんたの、若々しい体の、血を少し取って・・・あたしにおくれよ・・・でなきゃいっそ、あたしを殺しておくれ・・・」
 渇きで錯乱してきているのか、女性はほとんど声にならない声でミミに哀願してきた。血など与えれば、通常の人間なら血液に含まれる鉄分の作用で嘔吐を引き起こし、かえって脱水を促進してしまう。恐ろしい哀願にというよりそのような理論的な理由で困ってしまって、ミミは少し考え込んだ。が、間もなくあることを閃いて、頭上に電球が点るマークが見えそうなくらい晴れやかな顔になった。
「今、お水を用意しますからね。少し待っていてください」
 ミミは言って、まずはダーマのさとりでバトルマスターに転職し、固く拳を握りしめ、近くにあった大岩に、強烈な突きと蹴りを打ち込んだ!岩に大きな穴が空くと、それを地面から抜き出して横倒しにした。簡易な石のバスタブを作ったわけだ。
 それから再びダーマのさとりを使い、今度は魔法使いに転職して、マヒャデドスを唱えて辺りを分厚い氷の壁で覆い、そこにメラガイアーを唱えて巨大な炎の玉をぶつけた。氷はたちまち溶けて水になり、ざあざあと溢れんばかりに辺りに流れて、即席の石の桶もたちまち満たした。
 ミミはその水を水筒に汲み、にっこり笑って女性に差し出した。
「さあどうぞ、たくさんおあがりくださいね」
 女性は水筒をひったくるように取り、ごくごくと飲んだ。ミミも、石の桶から手酌ですくい、渇きを癒した。
「あまり慌てて飲むと、体に・・・」
 そう言いかけてミミが顔を上げると、女性の姿は消えていて、空になった水筒だけが地面に転がっていた。ミミは水筒を拾い、水をしっかり満たすと、先に進むことにした。水筒が空になったら、またここに戻ってもいいし、また先ほどのように呪文を唱えてもいい。

 いよいよ道は狭く険しくなり、頂上も近いかと思われる場所に、案の定というべきか、やはり誰か・・・というより何かが倒れていた。それは一頭の黒山羊で、口から泡を吹いて痙攣していた。動物や魔物だろうとクエストを引き受けるミミが、人で無くても放っておくわけがない。駆け寄って水筒の水を与えると、黒山羊はたちまち中身を空にした。それでもまだ足りないのか、弱々しい低音で唸っている。
 それでミミは先ほど作った石の桶のところに水を汲みに戻ろうとすると、黒山羊はローブの裾を噛んで放さなかったので、その場から移動できなかった。それでもう一度マヒャデドスとメラガイアーで水を作ろうとすると、ふいに黒山羊は嘲笑うような声でいななき、人間の言葉を話し始めた。
「なるほど、情けと知恵と力を兼ね備えし者、か・・・。どうやら、そなたはエビルフレイムの仲間には、なれなさそうだな。ならば我が生け贄となるがよい!」
 そう言うと黒山羊はたちまちギリメカラの姿に代わり、周囲に次々と、ミミが先ほど水を与えた者たちが現れた。そして彼らは、エビルフレイムに姿を変えた!
 ギリメカラもエビルフレイムも戦い馴れている相手だが、この数に一人で立ち向かうのはかなり厳しい。ミミはほぼ瞬時にやるべきことを判断して、扇スキルの「といきがえし」をした。すると、そのすぐ直後、エビルフレイムはいっせいに「やけつくいき」を吐き出してきた!しかしミミがといきがえしをしていたので息は跳ね返り、エビルフレイムたちはマヒしてしまった。
 もしもしゃくねつの炎を吐き出されていたら、エビルフレイムたちに跳ね返っても、何のダメージも与えられずに、ミミはじりじりと追い込まれていただろう。ツキも自分にあるみたいとミミは微笑み、ギリメカラに全力の攻撃を向けた!ギリメカラのつうこんのいちげきも盾の秘伝書で跳ね返し、イオナズンにも耐え、ギリメカラを倒した!
 ギリメカラを倒すと、エビルフレイムたちは、人間の姿に戻った。その中の、ネックレスの持ち主だった女性が、口を開いた。
「ありがとう、助けてくれて。私たちは、大昔砂漠で渇きで死んだ者たちなの。その怨念でエビルフレイムに生まれ代わった私たちは・・・ごくたまに現れた、私のネックレスの玉をたどって来てくれた人に水をねだり、人間の善意が脆くも崩れるのを見てきたわ。砂漠で自分の飲み水を全部くれて助けてくれる人なんて居なかった。初めの一人か二人は助けてくれても、自分の飲み水まで危うくなると、みんな逃げ出そうとしたのよ。当たり前よね。でも魔神に操られていた私たちは、それを逆怨みして、そんな人々を魔神の餌食に差し出した・・・。
けれどあなたは、出会う人々を助けることも、自分の命を守ることも、ちゃんとできた。知恵と力と優しさ全てを使ってね。そのおかげで私たちの魂も、自由になれた・・・。本当にありがとう・・・」
 その声が消えて気が付くと、ミミは砂漠の中に立っていて、足元には特別に瑠璃でできた「しんごんのじゅず」が落ちていた。日は、先ほどみがきずなを拾っていた頃からあまり高さが変わっていない。みんなに心配をかけずに帰れそうだとミミは微笑み、数珠を拾い上げた。〈了〉
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