セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

守り、護られ

2023年02月12日 22時56分15秒 | クエスト163以降
ものすご~くお久しぶりのイザヤール様帰還記念イザ女主話。当サイトでおそらく何度も書いてるであろうテーマですが、やはり「元天使であり元師弟である」二人ならではの思うこと、儚いながらもどこか永遠を感じさせる希望を、書いていきたいと思っています。

 遠くの方から聞こえていた魔物たちの咆哮も、今はすっかり止んでいた。仕留めたと思った相手に思いがけない強烈な反撃を受け、恐れをなして逃げ出していったらしい。人間になったというのに、魔物たちからの扱いは天使の頃とさほど変わらないなと、イザヤールは思わず微かな笑みを浮かべた。
「イザヤール様、大ケガなさったのに、なんで笑っていらっしゃるんですか・・・」
 回復魔法をかけてくれていたミミが、涙の溜まった目で唇を震わせるのを見て、イザヤールは胸を衝かれた思いで笑みを引っ込めた。百戦錬磨の日々を経て、ミミの「痛みを極度に恐れる」傾向はだいぶ克服されたが、他者の痛みを、殊に愛する者の痛みを我が事より辛く感じてしまう性分は、相変わらずなのだった。それは、地上の守り人として相応しい心ではあるが、本人の精神的傷にもなる諸刃の剣だ。
 数分前、彼は、痛恨の一撃を放ってきた敵からミミを庇って、その怪我を負ったのだった。もう数えきれないほど繰り返した行為で、毎回躊躇いも後悔も無い。だがこうして毎回悲しい顔をさせてしまうことで、心は痛むのだった。それでも彼は、ミミの為に身を投げ出すことをこれからも決してやめるつもりは無かった。
 そしてそれは、ミミの方も同じなのだろう。自惚れでもなんでもなく、ミミも他者を、殊に愛しい者を守るためなら躊躇いなく身を投げ出す質であることを、元師匠であった故もあって、イザヤールはよくわかっていた。だからこそ、そんな彼女を守りたくて、彼は盾となるのだが・・・これでは堂々巡りだ。イザヤールは、今度は思わず苦笑した。
「もう、また笑って。何がそんなにおかしいんですか?」
 ほんの少し拗ねたように膨らませたミミの頬に、指先でそっと触れたイザヤールは、今度ははっきりと笑って答えた。
「いや、我々は本当に、似た者同士だと思ってな」
「え・・・」
「せっかく救われた命だが、私は、おまえの為なら何度でも同じ事をする」
 そうだ、イザヤール様はそういう人だと、ミミは悲しくも少し誇らしく思った。自分を庇って、ガナサダイと相討ちになった時のようなことを、これからも何度でも繰り返すだろう。
「それは、私だって・・・」
 ずっと想ってきた、誰よりも大切な人だから。ミミの瞳が、星を宿したような煌めきを浮かべた。言葉よりも雄弁に、貴方を守る為ならと、語っている。
「なら、我々は、お互いをしっかり守らないとな」
 互いに守り合い助け合い続ければ、きっと、共に生きて、地上の守り人としての役割を果たしていける。それが、天使にとってはほんの刹那の、儚い時間だとしても・・・。
 頬に触れた、彼の指先があたたかい。イザヤールが目の前で一度命を落としてから帰って来てくれるまでの日々の間、このぬくもりにも二度と逢えないのだと、ミミの心は鋭い痛みと凍りついた無感覚の間を交互に振れていた。
 堕天使エルギオスを止める為に人間になることを選んだ彼女は、命を終えた後も、天使たちのように星にはなれない。人としての短い命を終えても、愛しい者のところへ行けないかもしれないという思いは、考えないようにしても彼女の心を苛んでいた。
 そんな日々の後、信じられない奇跡の積み重ねで、このぬくもりを取り戻した今でも、幸せすぎて夢まぼろしのようだと思う時もある。しかしその恐れを打ち砕くほどに、彼は天使の頃から変わらない心身の力強さと疑い様の無い愛情を湛え、たとえ刹那だとしても決して幻ではないのだと、日々彼女に知らしめていた。
 命許される限り、二人で生きて、地上を守っていく。そして、もしかしたら、人としての命が果てた後も。
「では、そろそろ行くか」
 しばらくして、二人は立ち上がった。一瞬早く立ったイザヤールが、ミミに手を差し伸べる。
「どっちが怪我人だったかわからないの・・・」
 困ったような顔でほんのり頬を赤らめ、それでも彼女も嬉しそうにその手をしっかりと掴む。もう二度と、掴み損ねることのないように。〈了〉
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