セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

奪われた女神のいのり〈後編〉

2017年08月20日 23時58分52秒 | クエスト184以降
続き遅くなりましたが、追加クエストもどき後編。前回のあらすじ、まだ女神セレシアが復活していない天使の扉の向こうの世界で、天使のあらゆる願いを叶える宝石女神のいのりが何者かに奪われたことを知ったこの世界の女神セレシアは、ミミに女神のいのりの奪還を依頼する。ミミはサンディと共にその世界に行き、女神のいのりを奪った者を追跡するが・・・。タイムパラドックスとかやると脳がこんがらがるので今回はやめておきました(笑)イザヤール様、留守番で出番無いと見せかけて実は・・・。

 ミミはルーラでガナン帝国城の前に到着した。城は以前ミミも見た通りに帝国の者たちが張ったバリアで覆われており、帝国の支配下に入った者しか入ることはできなかった。
「・・・ということは、女神のいのりを奪った何者かも帝国城には入れないってことだから、少なくとも中の囚われの天使やエルギオス様に近付くことはないってことかな?」
 ミミが呟くと、サンディが腕組みして考え込んでから、慌てて叫んだ。
「ってことは、女神の果実を集めて世界中をうろついてるイザヤールさんか、もしくはこの世界のアンタに当たるヤツが狙われるってことじゃん!ヤバイってー!特にこっちの世界のイザヤールさんが狙われて操られちゃったら、こっちの世界の天使じゃきっと止められないわよ!」
 そう言っている矢先に、少し離れた所から、刃を激しく交える金属音が聞こえてきた。ミミとサンディがはっとしてその方向を見ると、ミミにとってものすごく見覚えのある姿の天使と、先ほどのモーモンのように邪悪な気配をまとったキラーアーマーが戦っていた!何者かがとり憑いていることで、キラーアーマーはずっと強くなっているらしく、剣術の達人であるイザヤールが、じりじりと追い詰められているほどだった。
 モーモンの様子やキメラの話から察するに、女神のいのりを奪った何者かは、どうやら実体の無い一種の負のエネルギーのような存在で、とり憑こうとする相手を気絶させることで憑依できるらしい。それで現在どういう経過をたどったかは知らないが、キラーアーマーにとり憑いていて、天使であるイザヤールと戦っているということは・・・。その理由に思い至って、ミミはぞくりと体を震わせた。イザヤールを気絶させて、乗り移る気なのだと。
「イザヤール様!」
 ミミは思わず叫んで駆け寄ろうとしたが、サンディに止められた。
「ミミ、ダメ!こっちのイザヤールさんはアンタのこと知らないんだし、人間の姿のアンタが天使のイザヤールさんが見えて助太刀したなんてなったら、超ややこしい話になっちゃう!」
「でも、このままじゃ・・・ごめん、サンディ!」
 ミミは叫んで、剣を抜いて全力で走り、キラーアーマーに渾身の力で斬りかかった!得体の知れない存在に操られてずっと強力になっていたキラーアーマーも、剣を極めたミミの斬りに勝てる筈もなく、甲冑を縦に真っ二つにされて崩れ去った。キラーアーマーにとり憑いていたモノは、黒いつむじ風となって慌てて逃げ去った。
 キラーアーマーは消え去り、後には何も残っていなかった。どうやら何者かは女神のいのりを持って逃げてしまったらしい。ミミは溜息をついて剣を納めた。イザヤールの方を見ないようにはしていたが、今さら見えないふりをするのは無駄なこともわかっていた。
「おまえは・・・何者だ?」
 背後からイザヤールの声がする。振り返れば、懐かしい天使姿の彼の姿が目に映るとわかっている。だが、このイザヤールにとって、自分は全く見知らぬ存在なのだ。いっそ聞こえないふりをして立ち去ろうかとも思ったが、その前にイザヤールが目の前に回り込んで立ち塞がった。
「その姿・・・。人間なのに、私の声が聞こえ、見えているようだな?何故私を助けた?」
 翼と光輪のある懐かしい姿のイザヤールが、厳しい表情でミミを見つめていた。彼の声は、淡々としているが冷徹さを秘めている。敵に対峙する時の声音だ。「自分の」イザヤールと違うとわかっていても、ミミの唇は思わず震え、濃い紫の瞳が憂いを帯びる。それでもミミは、せいいっぱいの冷静な口調で答えた。
「私が何者かは、あなたには関わりの無いことです。私は、あなたを襲っていた邪悪な存在を追っている者。あなたに構っている時間は無いの」
 そう言ってミミは立ち去ろうとしたが、いくら足が速くても、翼のある者から逃げきれるわけはなく、イザヤールはふわりと飛んでまたミミの前に回り込んだ。
「その言葉を信じろと?おまえが、我々の目的を邪魔立てしない存在などと、どうして信じられる?」
「あなたもさっきのキラーアーマーが通常のものでないことに気付いているでしょう?・・・信じてもらうしか、ないの・・・お願い・・・」
 ミミは瞳を潤ませてじっとイザヤールの瞳を見つめた。その真摯な眼差しに、表情はほとんど動かないものの、彼がかすかに動揺しているのがミミにはわかった。ああ、こんなかすかな心の動きがわかってしまうくらい「私の」イザヤール様と同じなんてと、ミミはまた小さく吐息する。
 イザヤールも、ミミが悪しき存在ではないことくらい気配でとっくに気付いているのだろう。だが、ガナン帝国に恭順するふりをしている手前、怪しい人間を放置するわけにはいかないのだという彼の立場もよくわかる。どうしたらいいのかとミミがためらっている間に、距離はじりじりと詰め寄られていく。
 彼は再び剣を構えた。そして、目にも止まらぬ速さで刃を振り下ろしてきた!ミミは思わず剣で受け止めようとしたが、イザヤールの剣は、ミミをぎりぎり避けて後ろの岩に突き刺さった。
「おまえは身をかわして私の攻撃を避け、私は怪しい人間を仕留め損ねて逃がしてしまった、そういうことにしておこう」イザヤールは呟き、ほんの僅かに、ミミにわかる程度にだけかすかに微笑み、囁いた。「・・・さっき助けてもらった、礼だ」
 そして彼は剣を岩から引き抜くと、ガナン帝国城の方へ歩き出した。
 ミミはその翼と背中を呆然と見送りながら立ち尽くし、追いかけて引き留めたい衝動にかられた。今ここで自分がこのイザヤールを拐って、この世界の救世主がガナサダイを倒すまでどこかに閉じこめておけば、この世界のイザヤールは、ガナサダイと相討ちになって命を落とすことは無くなる・・・。そんなことをしてはいけない、イザヤール様は後でそれこそ女神のいのりの力で生き返るのだとわかっていても、むざむざ一度死なせるとわかっていて立ち去らせるのが、ミミにはとても辛かった。
 ミミは思わず手を遠くなっていく彼の後ろ姿に伸ばし、彼の名を呼ぼうとした。だが、何とか思いとどまり、うなだれた。この世界のイザヤール様を助けるのは・・・この世界のイザヤール様の唯一の弟子だけなんだからと自分に言い聞かせて。震える唇を懸命に噛みしめたが、涙は一滴、ぽろりと落ちた。
 と、ここでミミは、サンディに頭を小突かれた。
「おセンチになってるトコ悪いケド、そんな場合じゃないワヨ!さっきのヤツが、今度は『だいまじん』にとり憑いて引き返してきたし!」
「ええっ?!」
 みるみる地響きが近付いてきて、確かにあの邪悪な気配をまとっただいまじんが突進してきていた!
「どーやらアイツ、人間や天使は気絶させなきゃ操れないけど、魔物には比較的簡単に憑依できるみたいなんですケド!」
「サンディ、そういうことは早く教えてよ〜!」ミミはとりあえず逃げながら嘆いた。
「じゃあついでにもう一つ教えておくけど、アイツが操った体から抜け出した時に、アンタがおねーちゃんから預かった翼でひっぱたけば、アイツはとりあえず元居た世界までバシルーラ・・・じゃなかった、ぶっ飛ばせるらしいワヨ!ただしもちろん『女神のいのり』を取り返してからでないとたいへんなことになっちゃうからね!」
「でもとり憑いた体を倒す度に女神のいのり持って逃げられてるし・・・どうやって取り返せばいいの・・・」
 ミミは走りながら考え込んだが、ふとあることを閃いて足を止め、何者かがとり憑いただいまじんに向き直った。そして、曲芸スキルの「アクロバットスター」を活用して、だいまじんの攻撃をかわしながら、ひたすらお宝スキルの「ぬすむ」を繰り返した。
 辛抱強く続けて、ミミはついに女神のいのりを取り返した!
 だいまじんにとり憑いていた何者かは、女神のいのりがミミに取られたことに気付くと、慌ててだいまじんから飛び出し、実体の無い姿でミミに襲いかかろうとした。実体が無いとはいえ、女神の加護が無い普通の人間だったら、その邪悪な気配を振り払うのは容易ではなかっただろう。しかし、ミミはこの時を待っていた。
 ミミは女神セレシアからもらった虹色の翼を握り、それで思いきりその「何か」を打った!打たれた途端にそれは凄まじい咆哮を上げ、虹色の球に包まれて、虚空へと消えた!
「これで・・・『アレ』は、本来居た世界に帰ったの・・・?」
 ミミはおそるおそる呟いた。
「そーよ!おねーちゃんもダテに女神やってないんだからね!それくらい朝飯前よ!しかも当分悪いコトできないオプション付き☆それこそ、ヤツの世界の勇者が現れる時まで、とかね☆」
 自分たちが倒してしまう方がいい気もするが、女神には女神の考えがあるのだろう。そもそも、倒せる存在なのかもわからない。あのような邪悪な気配が実体を手に入れたとき、魔王という存在になるのかもしれないなとミミは思い、自分の命ある限り、あのような存在から人々を、世界を守っていこうと改めて決意した。
 それからミミは、レパルドの居る宝の地図を取り出し、女神のいのりを届けに行った。レパルドは、攻撃を仕掛けてくることもなく、ミミが差し出した女神のいのりは、宙にすうっと浮き、レパルドに吸い込まれるように消えていった。それを見届け、ミミは洞窟を出た。
「お疲れ〜。さ、早く帰って、おねーちゃんとイザヤールさんに報告して安心させたげよ〜」
 サンディの言葉にミミは頷き、女神セレシアからもらった虹色の翼を使って、自分の世界へと帰った。

 気が付くとミミは、天の箱舟のサンディの部屋の中に立っていた。イザヤールは旅の扉の傍に立ち、かすかな苦悶を浮かべて渦巻く扉を見つめていたが、ミミの姿が現れた途端に飛びつくように引き寄せ、固く抱きしめた。
 ミミはあたたかな腕の中で安堵の吐息をし、「私の」イザヤール様のところに帰ってこられたんだ、と緊張が解けてくたりと彼にもたれかかった。
「ただいま、イザヤール様」
「おかえり。・・・無事で、よかった・・・」
 イザヤールの冷徹さのカケラもない優しい声が、耳元で囁く。親しい人みんなが、ちゃんと今の私を知っていてくれている世界。ミミは、ぬくもりと安堵に包まれながら、内心呟いた。
「あのさ〜、アタシも帰ってきてんですケド・・・」しらけた顔でサンディが言った。
「ああ、お疲れ。ミミを守ってくれて、ありがとうな」
 イザヤールが思いがけなく素直にお礼を言って、サンディは戸惑った。
「ちょっ・・・素直にお礼言われるとかえって調子狂っちゃうし!」
 その後三人は、神の国の女神セレシアに報告に行った。
「セレシア様、女神のいのりを奪った『アレ』は、何者だったのでしょうか・・・」
「肉体無き魔王以前のもの、とも言えるし、肉体を失った魔王『だった』もの、とも言えるでしょう。・・・時の矢印など無意味な世界に棲むものなら、どちらであっても同じようなもの・・・。今回は、あなたのおかげで、その存在が実害を起こすことを食い止めることができました。ありがとう、ミミ。私も、女神として、悪しき存在がまたこのようなことを起こさぬよう、しっかり見守っていきます。・・・そうそう、これはささやかですが、私の感謝の気持ちです」
 女神セレシアは、「しんかのひせき」を三つくれた!
 リッカ宿屋に帰ったミミは、リッカたちにあたたかく出迎えられまたほのぼのした気持ちになったが、一方ミミから別の世界の自分のことを聞いたイザヤールは、そっちの自分もミミに恋をしたのではとやきもきし、ミミにそれは絶対ないのにと不思議がられたという。〈了〉
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2 コメント

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分かってはいても (神々麗夜)
2017-08-22 21:28:01
別の世界と言ってもその人の運命が分かっている方からすれば辛いですよね、今ここでこの世界のイザヤールを押さえればこの世界の主人公が自分みたいな思いをしなくて済む、でもそうしてしまうと他の世界、ミミちゃん自身の世界を崩壊し兼ねない、セレシアの言う通りそれこそ魔王と変わらない行為になってしまうんですよね。
ミミちゃんに任された任務もあくまで本来在るべき状態に戻すだけであって必要以上に干渉はできない…でも過去を変えられないのは辛い…前半でサンディもそっちの主人公に女神の祈りを渡して世界平和を願って貰えばいいと言っていますが、イザヤール様を失ったミミちゃんを見ているからこその発言なんでしょうね。

もし色んな世界のイザヤールが集まったら?
イザイザ…
イザA「私の弟子が錬金釜に馬のフンを…」
イザB「弟子が風呂に入らなくて…」
イザC「弟子が女子のパンツを冠る…
イザイザ
イザやん「うちのリリンはワガママでおてんばで…」
ミミ©イザ様「馬のフンやパンツよりはずっとマシだと思うが…」
イザD「そう言うお前の弟子はどうなんだ?
ミミ©イザ様「ミミは頑張り屋で誰にでも手を差し伸べる優しくて自慢の弟子であり恋人で…え?」
イザE「ずるい!そんな素直で可愛い子を恋人にするなんて!」
イザF「つるつる頭のくせに!」
ミミ©イザ様「お前もな!ていうか全員つるつる頭だろ⁉︎…ってうわぁあっ!」
なんとミミちゃんのイザヤール様に沢山のイザヤールが降り注ぐ!
イザイザイザイザ〜

テレテレテレレ〜♪
ククール「おはようリリン、今日も愛してる…ってどうした?」
リリン「あ、ククール…変な夢見たの」
クク「どんな夢?」
リリ「ミミのイザヤールさんに沢山のイザヤール師匠が降り注ぐ夢」
クク「本当にどんな夢⁉︎」
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ありがとうございます☆ (津久井大海)
2017-08-23 10:36:15
神々麗夜様

いらっしゃいませおはようございます☆おお、書きたかったことが伝わった感じがして嬉しいです。ありがとうございます!
相手の危機をわかっていて何もできないというのはとても辛いと思うんですよね。それが(異世界とはいえ)大切な人ならなおさら。今回はその干渉の禁忌の葛藤をちらっと書けたんですが、いずれまた考えてみたいです。

スライムシャワーのようにイザヤール様が降ってくる!そちらの女主さんの夢でしたか、よかった〜(笑)彼氏さん不在なようですが、悪夢(笑)を見た彼女さんをフォローするのは貴方の役目では・・・。
カマエル「きりんのおうぎやおかしなくすりの錬金には、馬や牛の落とし物を普通に使います。このカマエル、錬金釜としてそれくらいでは動じません!(キリッ)」
当サイトイザ「異世界の自分が降るということはパラメーターはほぼ互角だろうな、とりあえず『だいぼうぎょ』で防ぐか」
サンディ「うちのコイツらも絶対どこかズレてるんですケド・・・」
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