セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

奪われた女神のいのり〈前編〉

2017年08月19日 23時59分14秒 | クエスト184以降
またまたまたたいそう遅くなりましたすみません&続きものになってしまいましたしかも続きはまた明日で更にすみませんの追加クエストもどき。ドラクエ11へのオマージュのつもりだったんですが、どこがと言われるとビミョーかもです(笑)強いて言えば、時空を越える悪者と「あのときの僕を誰も知らない世界」というところでしょうか。11のネタバレはありませんのでご安心くださいませ。

 ミミは、珍しく女神セレシアに呼び出された。伝言したサンディ曰く、「とにかくなんだかチョー激ヤバなの!早くおねーちゃんとこ行ったげて!イザヤールさんと朝ごはん食べながらイチャイチャしてる場合じゃないっつーの!」そんなわけでミミは(イザヤールも)、朝食もそこそこに、神の国に向かったのだった。
 女神セレシアは、ミミが会うときはいつも穏やかな微笑みを浮かべているのだが、今日はその美しい顔は憂いで曇っていた。
「お呼び立てしてごめんなさい。けれど、ミミ、どうしてもあなたの力を借りる必要がある事態が起きたのです」女神は、ミミとイザヤールの顔を見た途端に安堵して表情が和らぎ、それぞれに言った。「イザヤール、あなたも来てくれたのですね。ただ、残念ながら今回は、あなたの力を借りるわけにはいかないのです」
「・・・ということは、天使の扉の向こうで何かが起きたということでしょうか?」
 イザヤールが言うと、女神は頷いた。
「さすがラヴィエルの兄だけありますね、その通りです。何か邪悪な存在が、時間と空間を越え、悪巧みをしているようなのです。
ミミ、あなたもよく知っている通り、天使の扉の向こうには、無数の世界が広がっています。あなたではない別のウォルロの守護天使が地上を守っていますが、まだ私が復活していない世界、堕天使エルギオスがまだ存在する世界もあります。そんな世界の一つに、更なる異世界から、邪悪な何者かが侵入したようなのです。
その何者かは、まだ私が世界樹の姿をしている世界に侵入し、魔剣神レパルドから、天使のあらゆる願いを叶える宝石『女神のいのり』を奪ったというのです。その世界の世界樹、つまりその世界の私が、夢を通じて必死に私に訴えてきたことで、そのような事態が起きてしまったのだとわかりました・・・。
女神のいのりは、天使にしか使うことができない宝石。つまり、邪悪な者が手にしても、本来なら何の害にもなりません。しかし、その邪悪な何者かは、どうやら地上に居る天使を狙い、彼もしくは彼女を操り女神のいのりを与えて、己の野望を果たそうと画策しているようなのです。それがもしも世界の滅亡を早めることだとしたら?無数のあらゆる世界を恐怖と絶望で支配しようとしているとしたら?そんな事態はなんとしても防がなければなりません」
 女神セレシアの言葉に、ミミは頷いた。天使の扉の向こうの無数の世界は、時間差と救世主の違いはあるが、女神セレシアが復活し堕天使エルギオスによる滅亡を回避し平和を取り戻すという目的は共通している。一つの世界でもし滅亡が起こってしまったら、他の平和な世界の数々にも、何らかの歪みと負の影響が起こってしまうだろう。それは防がなければならない。
「では私は、その世界のウォルロの守護天使と協力して、その事態を防げばいいのですね?」
 ミミが言うと、女神セレシアは悲しげに首を振った。
「残念ながら、そういうわけにはいきません。その世界のウォルロの守護天使が、邪悪な何者かに操られる可能性も皆無ではないからです。邪悪なる者は天使界に居る天使たちには手出しできないでしょうから、おそらく地上に居る天使たちにターゲットを絞り、操ろうとしてくるでしょう。そのターゲットはウォルロの守護天使かもしれないし、堕天使エルギオスかもしれないし、そしてイザヤール、その世界の、まだ天使であるあなたかもしれません。それにガナン帝国の他の囚われの天使たちの可能性だってあります。その中の誰かが女神のいのりを手にし、邪悪な何者かに操られてしまったら・・・。ミミ、あなたには、そうなる前に密かに女神のいのりを取り戻し、レパルドの元に戻すということをお願いしたいのです。然るべき時が来るまで、その力が悪用されないように・・・」
「え〜、なんでわざわざレパルドのトコに戻しちゃうワケ〜?」ここでサンディが口を挟んだ。「そっちの世界の天使に女神のいのり渡して、世界が平和になりますよーにって願わせたら、全部の問題一発で解決じゃん」
「サンディ、そういうわけにはいかないということを、あなたが一番よく知っているでしょう」女神セレシアは諭すように言った。「異世界の運命に、よそから来た者は、手助けはできても根底から覆すことは許されない。それをしてしまうのは破壊神や魔王と同じことになってしまう。その世界の運命は、その世界の者が決めるべきものです」
 サンディはふくれながらも内心は納得したらしく、ミミに向き直って言った。
「しょーがない、ミミ、さっさと女神のいのり取り戻しに行こ!場所は、アタシがおねーちゃんのチカラを感じ取れるから、そのチカラを追えばたどり着ける筈だし!」
 ミミは頷き、クエスト「奪われた女神のいのり」を引き受けた!

 今回は、天使の扉の向こうの天使に呼び出されたわけではないので、ラヴィエルの力を使うわけにはいかない。女神セレシアは言った。
「今回は特別に、天の箱舟のサンディの部屋からその世界へ出発してください。それから、これをお持ちください。聖なる結界があなたを守ると同時に、あなたが役目を済ませたらこの世界に戻す働きをします」
 セレシアは、ミミに「おわかれのつばさ」に似た虹色に輝く小さな翼を持たせてくれた。
 そんな女神の加護があっても、イザヤールはミミのことを心配し、一緒に行けないことを無念がった。
「原則一つの世界に同じ人間は二人存在できない、無理を通せば時空の破壊を引き起こすかもしれない、頭ではわかっているのだが・・・しかし・・・」
「大丈夫よイザヤール様、セレシア様のご加護があるし、サンディも居てくれるし。絶対無事に帰ってくるから」
「だが、その邪悪な存在は、レパルドから女神のいのりを奪うことができた強者だぞ。やはり心配だ・・・。サンディ、君は天使の扉の向こうの世界で同時に何人でも存在できるのだろう?その力で私もどうにかならないか?」
「ムチャ言わないでよイザヤールさん〜、アタシがそれできるのは女神の妹だからだもん!・・・たぶん。ミミはアタシが守ったげるから、いい子で留守番してなさい」
「・・・わかった。頼んだぞ」
 天の箱舟に移動すると、イザヤールはミミを固く抱きしめ、囁いた。
「おまえなら役目を果たせる、信じている。だが、もしも危機に陥ったら、どんな無理を通しても助けに行くからな」
「・・・はいっ」
 ミミは元気に返事をしたが、しばらく彼と離ればなれになることはやはり心細くて、彼の腕の中で濃い紫の瞳を密かに潤ませた。それからきりっと頭を上げて、サンディの部屋に入り、セレシアの用意してくれた天使の扉に飛び込んだ。

 扉を抜けると、ミミはいつものようにリッカの宿屋のロビーに立っていた。と言ってもここは、ミミのいつものリッカの宿屋ではない。ミミでない誰かがこっちの世界のリッカたちと暮らしている、よく知っていながらある意味知らない場所だ。自分はよく知っているのに、ここのリッカたちは自分のことを全く知らないんだと考えると、いつも少し寂しくなってしまうが、今回はそんなことを考えている場合ではない。
 カウンターに座っていた天使の扉の番人ラヴィエルはミミを見て頷き、言った。
「よく来たな。事情はよくわからないが、切迫した状況だとは聞いている。私もできるだけ力を貸そう。君以外の誰も、君の世界に侵入させたりしないで守ってみせるから、安心して役目を果たしてくれ」
 こっちのラヴィエルさんも優しいなとミミはにっこり笑ってラヴィエルに頷き、さてとりあえずどこに向かおうかと、サンディに聞いてみた。
「ねえサンディ、女神のいのりの力の気配、どの方向に感じる?」
「ん〜とね〜、あっ!ビビッと来た!こっち!ウォルロの方向!」
「え、ウォルロ?!何で?」
「知らないワヨ、女神のいのりパクったヤツに言ってよー」
 とにかく急ごうとミミは外に出てルーラでウォルロに向かった。到着すると、全く緊迫感の無い相変わらずのどかな風景で、スライムたちがぴょんぴょん跳ね、モーモンがふわふわと飛んでいた。
「本当にここ?」
「うるっさいわね〜、アタシがおねーちゃんのチカラの気配間違えるワケないデショ・・・って!アレ!あのモーモン!」
「えっ、モーモン?!」
 サンディが指差す方向を見ると、一匹のモーモンが懸命に飛んでどこかに行こうとしていた。その体の周囲には、黒いもやのように見える不穏な気配が漂い、他のと変わらない愛らしい見た目の筈なのに、嫌悪感と恐怖を見る者に与えていた。そしてその前足には、美しく光る宝石がしっかり握られていた!まさしく女神のいのりだった。
 ミミは急いで捕まえようとしたが、そのモーモンはジャンプできる範囲より高く飛んでしまっている。
「サンディ!お願い!」
「え〜、マジで〜?」
 サンディはしぶしぶとはいえ素早くモーモンに近寄ったが、モーモンはいきなり目を見開き、牙を剥き出してサンディに噛みつこうとしてきた!
「このサンディちゃんをナメんじゃないワヨ!」
 そう叫んでサンディは、何故か持っていたようせいの杖でモーモンを叩こうとしたが、モーモンは素早く身をかわした!ミミも地上からブーメランを投げてモーモンに宝石を落とさせようとしたが、モーモンは百発百中の筈のミミのブーメランをひらりとかわし、そしてモーモンにあり得ないスピードで飛び去ってしまった。
「なんなのよあのモーモン!絶対魔王クラスの何かにとり憑かれてる的スピードじゃん!」
「とりあえず、飛んでいった方向に行ってみようよ」
 ミミは地面を全力疾走し、サンディは空中を全力飛行していると、しばらくして目を回してのびているモーモンを発見した。ぶち模様が同じことから先ほどのモーモンと同じものと思われたが、邪悪な気配はすっかり消えており、手に女神のいのりも持っていなかった。ミミが抱え上げるとモーモンはつぶらな目をぱっちりと開けて、きょとんとした顔でミミを見つめた。
「憑いてたヤツが逃げちゃったパターンじゃんねこれ・・・」
「サンディ、女神のいのりの気配はどこに向かってるの?」
「んー、山とかぶっ飛ばして、どんどん北東方向に向かってるっぽい。セントシュタイン?ベクセリアとか?・・・あれっ、いきなりワープしたっぽい!」
「どういうこと?」
「ルーラとかできるヤツにとり憑いたとか?」
「そんな、それじゃまさか・・・」
「エラフィタ辺りで気配が消えたから、とりあえずエラフィタに行ってみよーよ!」
「そ・・・そこまでわかるの?」
 エラフィタ地方に着いてみると、先ほどのモーモンと同じように、目を回してのびているこれまたモーモンと、キメラが麦畑に落ちているのを見つけた。キメラは目を開けると、悔しそうに呟いた。
「ヘンな黒いモヤモヤしたヤツに飛びかかられたと思ったら・・・そのまま意識が無くなって・・・あー!オレのキメラのつばさも無くなってるー!毎朝ブラッシングで抜けた羽集めてせっかく作ったのにー!」
 どうやら何者かは、モーモンを操ってウォルロから山を越えてエラフィタに行き、そこで遭遇したキメラのつばさを奪ってワープしたらしい。
「サンディ、ワープした先は?!」
「あー急かさないでよ〜。・・・んー、やっぱりガナン帝国?」
 聞くやいなやミミはガナン帝国に向けて急いでルーラを唱えた。〈続く〉
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