二人ともまた運転うまくなりやがったなあ、天の箱舟運転士アギロは目を細めた。その視線の先には、元天使だった人間二人が、仲良く並んで運転パネルの操作をしていた。
「ね~、テンチョーからも二人に言ってやってヨ~。幸せなのはわかるケド、見せつけるにも限度があるって。ここんとこミミの部屋に不意討ちで行くと、二人で居る時はほぼ必ずイチャついてんだもん」
箱舟アルバイトサンディ、爪を眺めながらそうぼやいて、頬をぷうと膨らませる。
「そりゃ只今青春中のお二人さんトコにいきなり押しかけるおまえが悪いんだろうが」アギロは笑った。
「アタシのせいー?!テンチョーはミミたちがどんだけイチャイチャしてるか半分も知らないから、そんなコト言えんのヨー!!」
声が大きかったのだろう、ここでイザヤールが振り返り、心外そうに眉をひそめて呟いた。
「見せつけているつもりはないのだが・・・」
「イザヤールさん、せめて涼しくなるまではミミとベタベタひっ付いてんのやめられないワケ?」
サンディにイザヤールが答えるより早く、ミミも振り返り、瞳をうるうると潤ませ、無意識なのかイザヤールの腕にそっと自分の手を絡め、切なそうな声で言った。
「サンディ・・・ほんとに、ダメ?」
「えー!!そんな顔されたら、カンペキアタシがワルモノみたいじゃん!も~、わかったワヨ~」
安心した顔で元天使のバカップルが運転に戻ると、サンディはやれやれと肩をすくめてから、急にニヤッと笑った。そしてアギロの側に近寄り、囁いた。
「テンチョー・・・ホントはわかってたんデショ、こんなふうになるコト」
「はあ?何の話だよ」
アギロは呆れてサンディの顔を見たが、その彼女の表情が、限りない優しさを込めてミミたちを見つめていることに気付いて、はっと息を呑んだ。
「ミミが女神の果実を食べて人間になった時も・・・いつかはこうやって幸せになる、ってわかってたんデショ?・・・だから、ミミが人間になるのをけしかけたんデショ?」
「そんなわけねえだろ」アギロは呟いた。「オレだってあのとき、とても悲しいのを堪えて、心を鬼にして言ったんだぞ。神をも越える堕天使を討つなんてでけえことができるのはミミだけだ、そう信じていたからな。・・・こんな嬉しい未来が待ってたなんてわかるわけないだろ」
するとサンディは、その言葉が聞こえなかったかのように、普段とは見違える厳粛な表情で呟いた。
「・・・マスタードラゴンたちは、全知全能、この世の全てを、過去から未来全てを知る、偉大なる竜である・・・」
「!・・・サンディ・・・おまえ・・・」
「な~んてネ」サンディはいつものいたずらっぽい表情に戻り、笑った。「おねーちゃんの受け売り☆」
「驚かすなよ」アギロは苦笑した。「おまえがそんな難しいセリフ言うなんざおかしいとは思ったよ」
「ソレどーゆーイミー!」
「だいたい、どんだけ偉大だとしてもな・・・未来だけは、読めねえんだ・・・。もしくは、読んでいたのと全然違う未来が来たりするのさ・・・」
「ふーん。そーゆーモンなの?」
「そういうもんだ」
それからサンディは唐突に、おやつ食べてこよ~、と、後ろの車両へと飛んで行った。その背中を見つめて、アギロは内心呟く。
(驚かせやがって。・・・一瞬ほんとにセレシアそっくりだったぜ・・・ま、当たり前だけどな)
ミミとイザヤールは、運転に夢中になりながらも、アギロとサンディの会話を耳に留めていた。
(グレイナル様は言ってた・・・幽閉されていたアギロゴスの魂は、肉体に戻った、と・・・)ミミは内心呟く。
(天使界の資料で読んだことがある・・・全知全能の神でもあった金色に輝く竜、マスタードラゴンはかつて、天空の血を引く伝説の勇者とその仲間たちを自らの背に乗せて、大空を翔け巡った、と・・・。この『天の箱舟』は、まさか・・・)イザヤールも、人知を越えた秘密に思いを馳せる。
「ね~、アンタたちも、シュークリーム食べる?」
おやつの箱を抱えて戻ってきたサンディの声で、夢想は一気に破られた。一瞬顔を見合せてから、思わず吹き出すミミとイザヤール。
「ナニよ!シュークリーム勧めてなんで爆笑されなきゃなんないのヨ!イミわかんないんですケド!・・・いーワヨ、アンタたちにはあげないから!テンチョー、二人で食べよ」
「サンディ、ごめんね、サンディに笑ったわけじゃないの~」
「じゃあ何なのヨ」
「いいじゃない、何でも」
「良くないっつーの!」
むくれるサンディと謝るミミを苦笑して見守る男たち二人。イザヤールと目が合うと、アギロはニヤッと口の片端を上げた。
オレたちが何者でも別にいいじゃねえか。ミミの仲間、それで充分だろ。
その笑いは、そう告げているようで。
(・・・確かにそうだな)
イザヤールは内心呟き、苦笑を笑みに変えて、頷いた。
ようやくシュークリームにありつけたミミも、内心呟く。
(サンディもアギロさんも、正体が何でもいいの。・・・私が天使であっても人間であっても、ミミであることは変わらないように、サンディはサンディ、アギロさんはアギロさんなんだから。・・・私の大切な人たちの、一人なんだから)
ミミはサンディを見つめ、にっこり笑った。
「・・・ミミ、アンタ何クリームほっぺたに付けてニコニコしてんのよ。そんなにおいしい?」
「え・・・クリーム付いてる?あ・・・どの辺?」
慌てふためいて赤くなるミミにイザヤールが近付き、すっと彼女の頬を指でなでて、その指を自分の口に運んだ。そして彼は微笑んだ。
「ほら、綺麗になったぞ」
「あ・・・ありがとうございます・・・」
嬉しそうに頬を染めて、食べかけシュークリームの上にうつむくミミ。
「ほらほら!テンチョー、いつもこんな感じなのヨー!」
サンディが訴えると、アギロは笑った。
「直接ぺろっとなめに行かないだけマシじゃねえか」
「あ、その手もあったか」イザヤールも笑う。
「テンチョー、イザヤールさんに変な知恵付けんなー!」
「冗談だ。ミミが恥ずかしがるから、そこまでしない」
「恥ずかしくなきゃすんのかよ!テンチョ~!なんとか言ってやってヨ!」
「若いってのはいいねえ」
「それだけかよ!」
ミミは、シュークリームを食べるのも忘れて、そのやり取りを楽しそうに見守った。
人間なのにこうして箱舟に乗って、不思議をたくさん探しに行ける私とイザヤール様。人間でも天使でもないと悩むのも、両方の経験をできると楽しむのも・・・全ては私たちの気持ち次第。
「ところでさ、ミミ、今日はいったいどこへ行こうとしてたワケ?」
サンディに言われてミミは我に返り、あ、と、ばつが悪そうな顔になった。
「着陸忘れてた・・・」
「んもー!世界何周してんの!・・・やっぱりアンタたちには、このサンディちゃんが付いてないとダメね~」
「アンタたちとは・・・私も入っているのか?」心外そうに呟くイザヤール。
「当たり前デショ!このダブルボケ元師弟バカップル!」
役目を終えた天使を神の国に運ぶのが使命だった天の箱舟は、今では元天使たちを運んで、今日も空を楽しげに翔けている。〈了〉
「ね~、テンチョーからも二人に言ってやってヨ~。幸せなのはわかるケド、見せつけるにも限度があるって。ここんとこミミの部屋に不意討ちで行くと、二人で居る時はほぼ必ずイチャついてんだもん」
箱舟アルバイトサンディ、爪を眺めながらそうぼやいて、頬をぷうと膨らませる。
「そりゃ只今青春中のお二人さんトコにいきなり押しかけるおまえが悪いんだろうが」アギロは笑った。
「アタシのせいー?!テンチョーはミミたちがどんだけイチャイチャしてるか半分も知らないから、そんなコト言えんのヨー!!」
声が大きかったのだろう、ここでイザヤールが振り返り、心外そうに眉をひそめて呟いた。
「見せつけているつもりはないのだが・・・」
「イザヤールさん、せめて涼しくなるまではミミとベタベタひっ付いてんのやめられないワケ?」
サンディにイザヤールが答えるより早く、ミミも振り返り、瞳をうるうると潤ませ、無意識なのかイザヤールの腕にそっと自分の手を絡め、切なそうな声で言った。
「サンディ・・・ほんとに、ダメ?」
「えー!!そんな顔されたら、カンペキアタシがワルモノみたいじゃん!も~、わかったワヨ~」
安心した顔で元天使のバカップルが運転に戻ると、サンディはやれやれと肩をすくめてから、急にニヤッと笑った。そしてアギロの側に近寄り、囁いた。
「テンチョー・・・ホントはわかってたんデショ、こんなふうになるコト」
「はあ?何の話だよ」
アギロは呆れてサンディの顔を見たが、その彼女の表情が、限りない優しさを込めてミミたちを見つめていることに気付いて、はっと息を呑んだ。
「ミミが女神の果実を食べて人間になった時も・・・いつかはこうやって幸せになる、ってわかってたんデショ?・・・だから、ミミが人間になるのをけしかけたんデショ?」
「そんなわけねえだろ」アギロは呟いた。「オレだってあのとき、とても悲しいのを堪えて、心を鬼にして言ったんだぞ。神をも越える堕天使を討つなんてでけえことができるのはミミだけだ、そう信じていたからな。・・・こんな嬉しい未来が待ってたなんてわかるわけないだろ」
するとサンディは、その言葉が聞こえなかったかのように、普段とは見違える厳粛な表情で呟いた。
「・・・マスタードラゴンたちは、全知全能、この世の全てを、過去から未来全てを知る、偉大なる竜である・・・」
「!・・・サンディ・・・おまえ・・・」
「な~んてネ」サンディはいつものいたずらっぽい表情に戻り、笑った。「おねーちゃんの受け売り☆」
「驚かすなよ」アギロは苦笑した。「おまえがそんな難しいセリフ言うなんざおかしいとは思ったよ」
「ソレどーゆーイミー!」
「だいたい、どんだけ偉大だとしてもな・・・未来だけは、読めねえんだ・・・。もしくは、読んでいたのと全然違う未来が来たりするのさ・・・」
「ふーん。そーゆーモンなの?」
「そういうもんだ」
それからサンディは唐突に、おやつ食べてこよ~、と、後ろの車両へと飛んで行った。その背中を見つめて、アギロは内心呟く。
(驚かせやがって。・・・一瞬ほんとにセレシアそっくりだったぜ・・・ま、当たり前だけどな)
ミミとイザヤールは、運転に夢中になりながらも、アギロとサンディの会話を耳に留めていた。
(グレイナル様は言ってた・・・幽閉されていたアギロゴスの魂は、肉体に戻った、と・・・)ミミは内心呟く。
(天使界の資料で読んだことがある・・・全知全能の神でもあった金色に輝く竜、マスタードラゴンはかつて、天空の血を引く伝説の勇者とその仲間たちを自らの背に乗せて、大空を翔け巡った、と・・・。この『天の箱舟』は、まさか・・・)イザヤールも、人知を越えた秘密に思いを馳せる。
「ね~、アンタたちも、シュークリーム食べる?」
おやつの箱を抱えて戻ってきたサンディの声で、夢想は一気に破られた。一瞬顔を見合せてから、思わず吹き出すミミとイザヤール。
「ナニよ!シュークリーム勧めてなんで爆笑されなきゃなんないのヨ!イミわかんないんですケド!・・・いーワヨ、アンタたちにはあげないから!テンチョー、二人で食べよ」
「サンディ、ごめんね、サンディに笑ったわけじゃないの~」
「じゃあ何なのヨ」
「いいじゃない、何でも」
「良くないっつーの!」
むくれるサンディと謝るミミを苦笑して見守る男たち二人。イザヤールと目が合うと、アギロはニヤッと口の片端を上げた。
オレたちが何者でも別にいいじゃねえか。ミミの仲間、それで充分だろ。
その笑いは、そう告げているようで。
(・・・確かにそうだな)
イザヤールは内心呟き、苦笑を笑みに変えて、頷いた。
ようやくシュークリームにありつけたミミも、内心呟く。
(サンディもアギロさんも、正体が何でもいいの。・・・私が天使であっても人間であっても、ミミであることは変わらないように、サンディはサンディ、アギロさんはアギロさんなんだから。・・・私の大切な人たちの、一人なんだから)
ミミはサンディを見つめ、にっこり笑った。
「・・・ミミ、アンタ何クリームほっぺたに付けてニコニコしてんのよ。そんなにおいしい?」
「え・・・クリーム付いてる?あ・・・どの辺?」
慌てふためいて赤くなるミミにイザヤールが近付き、すっと彼女の頬を指でなでて、その指を自分の口に運んだ。そして彼は微笑んだ。
「ほら、綺麗になったぞ」
「あ・・・ありがとうございます・・・」
嬉しそうに頬を染めて、食べかけシュークリームの上にうつむくミミ。
「ほらほら!テンチョー、いつもこんな感じなのヨー!」
サンディが訴えると、アギロは笑った。
「直接ぺろっとなめに行かないだけマシじゃねえか」
「あ、その手もあったか」イザヤールも笑う。
「テンチョー、イザヤールさんに変な知恵付けんなー!」
「冗談だ。ミミが恥ずかしがるから、そこまでしない」
「恥ずかしくなきゃすんのかよ!テンチョ~!なんとか言ってやってヨ!」
「若いってのはいいねえ」
「それだけかよ!」
ミミは、シュークリームを食べるのも忘れて、そのやり取りを楽しそうに見守った。
人間なのにこうして箱舟に乗って、不思議をたくさん探しに行ける私とイザヤール様。人間でも天使でもないと悩むのも、両方の経験をできると楽しむのも・・・全ては私たちの気持ち次第。
「ところでさ、ミミ、今日はいったいどこへ行こうとしてたワケ?」
サンディに言われてミミは我に返り、あ、と、ばつが悪そうな顔になった。
「着陸忘れてた・・・」
「んもー!世界何周してんの!・・・やっぱりアンタたちには、このサンディちゃんが付いてないとダメね~」
「アンタたちとは・・・私も入っているのか?」心外そうに呟くイザヤール。
「当たり前デショ!このダブルボケ元師弟バカップル!」
役目を終えた天使を神の国に運ぶのが使命だった天の箱舟は、今では元天使たちを運んで、今日も空を楽しげに翔けている。〈了〉
今度こそコメント1番乗り出来たかな?
天の箱舟ってクーラーありますかね。
マスタードラゴンの名前が出て他シリーズとの繋がりに妄想が膨らみます。
ポ〇モンとハ〇ポタ(屋敷しもべ妖精)に熱中してやや放置ぎみでしたが…ついに、やっと、てゆうか遅すぎなんですケド!師匠のクエストにたどり着きました。
しかしまたもや問題発生。レパルドだかレオパルドに会った事が無い。
うーむ、どの地図に入っても瞬殺されるな。
一番乗りでございますよこんばんは☆おお、ついにあのクエストに!vvvおめでとうございます!
しかしレパルドは強敵ですよねえ・・・。ヤツはまじんぎりを使ってくるので、回復役の一人に盾の秘伝書を持たせることと、そして1ターン休みを使ってくるので、全員に何かしらの回復アイテムを持たせることをオススメします☆回復役が1ターン休みにされたときの保険です。
箱舟内、クーラーどうなんですかね~w何か怪しげな装置を伴ってあるような気もします。動力はやはり星のオーラ?ww
レパルド無事撃破できますよう、「おうえん」!あ、イザヤール様を仲間にしたら、ぜひ二人でラヴィエルさんに話しかけてみてください☆
それを確信づいた描写は無かったですよね
イザヤール師匠、
「見せつけてるつもりはない」って言っている割には、充分他の人に見せつけてますよね?
( ´艸`)
おはようございます☆ゲーム内で曖昧描写なので、津久井のヘボい妄想し放題で楽しいです♪
アギロさん、誰かに正体について追及されても、「オレの正体?普通の箱舟運転士に決まってんだろ」と答えそうなイメージ。箱舟運転士って、普通かよ!なんてツッコミ受けそう。
イザヤール様、見せつけているつもりはないらしいです。単に隠さなくてよくなったので、堂々としているだけです。「そーゆーのを見せつけてる、っつーの!」byサンディ