セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

奪われしスキル(後編)

2013年04月20日 03時44分27秒 | クエスト184以降
追加クエストもどき後編。引っ張るほどの話ではないんですが、前フリ長いのです前フリ(汗)怪しい神官は、邪神信者ということで、本当は「じごくのつかい」や「あくましんかん」にしたかったのですが、DQ9には出ないので断念。きとうしやようじゅつしとかは出ているのに~。アウルートがあの地図を持っているのはもちろん捏造です念のため。ところで本編中基本単独冒険者だった当サイト女主、最近ようやく少しずつ、誰かに頼ることができるようになってきた模様です。困った時は素直に助けてもらえばいいし、誰かが困っているときは助ければいい。そうシンプルに考えられたら生きやすいのかもなあ。

 ミミとイザヤールは、ダンジョンから出ると、とりあえずセントシュタインに戻ることにした。キメラの翼で戻ってきて、城下町の大通りをリッカの宿屋に向かって歩きながら、二人はこれからどうするか相談した。
「事情を話して、リッカたちの力を借りるか」
 イザヤールが呟くと、ミミは少し顔を曇らせた。
「こんな忙しい時に申し訳ない気がしちゃうの・・・いっそルイーダさんに、凄腕冒険者を紹介してもらった方がいいかも・・・」
「ミミ」僅かにたしなめる口調で、イザヤールは言った。「本当に困った時は、頼っていいのが仲間であり、友ではないのか。私はかつて、それができなかった。誰にも頼らずに、独力で何とかしようとした。だから結局、自分の手でエルギオス様を救い出すことはできなかった。おまえには同じ過ちをしてほしくない」
「イザヤール様・・・そうですね、ごめんなさい」
 ミミが瞳を潤ませて答えると、後ろからふいに声がした。
「そーよ!そもそも、アンタがまたアタシの留守中に勝手にクエスト行っちゃうのがいけないんだからっ。アンタはアタシが居ない時に限って危ない目に遭うんだから、アタシが着いてないとダメって言ったデショ」
「サンディ!妖精たちの女子会温泉旅行に行ってたんじゃ・・・」
「一泊二日って言ってたデショ、忘れたの?ったく~。今ちょうど帰ってきたのよ」
 サンディも加わったことで、ミミの曇っていた顔も明るくなった。
「で、ミミホントに特技も呪文も使えなくなっちゃったワケ?それってどんな感じなの?」
「う~ん・・・。動作したり呪文を唱えようとしてもね、頭に霞がかかって体が動いてくれないっていうか・・・。武器をただ単純に振ったりはできるんだけれど」
 その感じがもどかしい。そう思いミミがまたしょんぼりするのをしり目に、サンディはイザヤールにひそひそ囁いた。
「でもイザヤールさん、これってもしかしてミミにイケナイコトするチャンスじゃね?『イザヤール様のHー!メラガイアー!』なんて目には遭わないワケだし~」
「あのなあ・・・ミミは私に呪文や特技で攻撃など決してしないからな。たとえ私がどんなにイケナイコトをしても、だ」
「え?!今のさりげに爆弾発言じゃね?!」
 そんな会話をしている間に、リッカの宿屋に着いてしまった。
 ミミはカウンター内に入り、リッカとルイーダとロクサーヌに事情を説明すると、三人は口々に言った。
「それならその神官を探しに行く前に言ってくれればよかったのに相変わらず水くさい」
 それが三人の共通意見だった。
「うん・・・かえって厄介なことになってしまってごめんなさい」
「反省してるのね?それなら・・・」
 その後三人が提案してきたことに、ミミは驚愕した。それはダメと抗ったが、結局折れた。

 それから一時間後。ミミは、そわそわしながら、宿屋の受付と酒場の冒険者紹介とアイテムショップの店番をこなしていた。
「私にも頼ってくれ。こっそり手伝うから」
 ウインクするラヴィエル。ミミは、出かけたリッカたちの代わりに、懸命に留守番をしていた。
 アウルートを倒しに行くんなら、いっそ呪文と特技を取られたミミに代わって、私たちで行く方が良くない?そう気付いてしまったルイーダたち三人が、イザヤールを連れてアウルート退治に行ってしまったのだ。
 特技も呪文も無い自分は却って足手まといで、イザヤールをはじめ皆に任せておけば大丈夫だと頭ではよくわかっている。わかってはいるが、やはり心配は心配なのだ。サンディに頼み込んで、今回だけ特別にイザヤールに着いていてもらうことにした。
 宿屋の夕食の献立も決め、ロクサーヌの店も本日入荷分は売り切れとなり、酒場も混雑が落ち着いて、忙しさで気を紛れさせることができなくなり、ミミのまた心配でそわそわし始めた頃に、意気揚々とイザヤール以下四人プラスサンディが無事に帰ってきた。ミミは飛び付くようにして、皆のところに駆け寄った。
「みんな、おかえりなさい!」
「ただいま、ミミ。アウルートを倒したら、何かが解き放たれる気配がした。おそらく、依頼人をはじめ奪われたスキルは、本人たちの元に帰っただろう。後は、神官が奪ったおまえの特技と呪文の力だけだが・・・」
 イザヤールが言って何かを取りだそうとしたところへ、ロビーに今回の依頼人が駆け下りてきた。
「呪文と特技が戻ったよ!アンタたちがどうにかしてくれたんだな!ありがとう!」
 依頼人はミミの手を固く握ってぶんぶんと大きく振った。
「あの・・・私じゃなくてここに居るみんなが・・・」
「とにかくありがとな!これお礼だ!使ってくれよ!」
 依頼人は「オリハルコン」をくれて、張り切って出かけてしまった。ミミが困ったように手の上のそれを見つめていると、イザヤールが微笑んで彼女の頭を軽くなでて言った。
「ミミ、依頼人にとっては終わったが、おまえにとってはまだ終わっていないぞ。あの神官から、おまえの力を取り戻さなくてはな」
「ありがとう、みんな。・・・自分の力を取り戻すことだけは、私に決着させて、いい?」
 ミミが尋ねると、リッカたちは大きく頷いた。
「だがミミ、私だけは連れていけ。いいな」
 イザヤールの言葉に、ミミもまた素直に頷いた。
「頼りにしてるの・・・イザヤール様」
「いい子だ」
 微笑んでイザヤールはまたミミの頭をなでると、先ほど取り出そうとしていたものを広げた。
「これは・・・地図?」
「ああ。アウルートが持っていた。あの神官は、邪神に力を捧げると言っていて、てっきりアウルートがその邪神かと思っていたが、どうやら違うようだ。地図を見てみろ」
 地図は、シドーの地図だった!
「イザヤール様、これって・・・」
「どうやら奪った力は、邪神シドーに捧げようとしていたらしいな」
「なんて奴なの、アウルートすら力の一時預り所代わりにするなんて」ルイーダが呟く。「ミミ、シドーはアウルートよりずっと手強いわ。今回は絶対に戦ってはダメ、シドーの元へ神官が行く前に、押さえるのよ」
「きっとその神官は、ミミ様やイザヤール様がアウルートに返り討ちにされることを当てにしていたのですわね」ロクサーヌも言った。「今頃、アウルートが倒され、地図も奪われたことを知って、その神官は慌てている筈ですわ。地図の洞窟入り口で張っていれば、必ず遭遇できましてよ」
「ミミ、くれぐれも気を付けてね。ミミは優しいから、今度こそ手加減して逃がしちゃダメだよ」とリッカ。
 ミミは全員の言葉にこくりと頷き、気持ちを引き締めた。

 シドーの地図に記された洞窟に、程なく到着したミミとイザヤールは、入り口付近で神官を待つことにした。やがて、それほど待つことなく、外の光を背にして、長い影が洞窟内に向かって長く伸びた。神官の帽子が作る、独特のそのシルエット。待ち人が来たのだ。
「私の力を返して」
 ミミが立ちはだかると、神官は大げさに溜息をついて肩を竦めた。
「やれやれ、アウルートにも勝ってしまう方々とはね。これではこちらに勝ち目は無い、よろしい、お返ししましょう。・・・ただし・・・」神官の細めた目が妖しく光った。「地獄でね!」
 神官が正体を表した!なんとロードコープスが現れた!
 呪文も特技も無く、従ってマホカンタやミラーシールドの無いミミに、ロードコープスは容赦なくザラキーマをかけた。これが効いてしまえば、どれほどHPや腕力があろうと、関係なく倒れてしまう。
 だが、パキリと音がして、ミミのペンダントの石が代わりに砕けた。死の呪文に対して身代わりになってくれるという、かつての能力を持った特別な命の石が発動したのだ。
 イザヤールは、ロードコープスが次の行動に移る前にはやぶさ斬りをして大ダメージを与えた。その後すかさずミミも剣を、渾身の力で突き立てた!会心の一撃!ロードコープスは、断末魔を上げて灰になり、崩れ去った。
 ロードコープスが跡形もなくなると、ミミの奪われていた呪文も特技も、元に戻った。
「よかったな、ミミ。さあ早く帰ろう」
 強大な力という贄を手に入れそびれたことを覚ったのか、洞窟の奥から、シドーの怒りの気配がする。長居は無用だ。二人はさっさと洞窟を出ると、地図を閉じて洞窟の入り口を塞いだ。
「スキルは戻ったけれど・・・。ペンダント、壊れちゃった・・・」
 石が砕けて鎖だけになってしまったペンダントを指で探りながら、ミミは悲しげに呟いた。
「特別な命の石は、この前一緒にいくつか集めただろう。また作ってやるから、そんな顔をするな」
「・・・はい」
 強くなったつもりでも、一人でも頑張れるつもりでも、実は結局こうして守られたり、助けられたりしている・・・。イザヤール様にはもちろん、みんなにも、運にも。一時的にスキルを失ったことで、ミミは改めてそれを実感した。
 もうもちろんルーラも使える。だが、唱える前に、ミミはそっとイザヤールとサンディの手を片方ずつ握りしめて囁いた。
「ありがとう、イザヤール様、サンディ」
 帰ったら、みんなにも改めてちゃんとお礼を言わなきゃ。ミミは内心呟き、昨日もしも呪文や特技がなかったらという生活を想像していたことを思い出して、思わずくすりと笑った。
「どうした?ミミ」
「なんでもな・・・ううん、帰ったら話すね」
 特技や呪文が無くても。もしかしたら結局、人々を守る、そんな同じ道を歩んだのかもしれない。欠けている力を補い合い、助け合いながら。〈了〉

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2 コメント

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お久しぶりです (ちいはゲーマー)
2013-04-20 23:47:50
親戚のゴタゴタと連日体調を崩していた所為で一ヶ月近く死んでおりました。(苦笑)


敵に呪文や特技を奪われてしまったミミさんに一瞬どうなるかと思いましたが、無事に取り戻すことができてホッとしました。
というか師匠。本気なのか冗談なのかは分かりませんが、イケナイコト発言はギリギリアウトですよー。
( ´∀`)ノ

・・・・・・・さて、私も去年データが消えたと思っていた女主の初恋話(途中書き)が奇跡的に見つかったから、春が終わる前に完成させねば
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追加ベホマズン! (津久井大海)
2013-04-21 23:24:29
ちいはゲーマー様

いらっしゃいませこんばんは☆うわぁ、お家のことと体調のダブルパンチとはたいへんでしたね!お疲れさまです!
今はご快癒されていらっしゃいますか?ここ数日、また冬に逆戻り気候っぽいので、くれぐれもご自愛くださいませ!ベホマズン!

イザヤール様発言ギリアウトでしたか(笑)いったいどんなイケナイコトなのかは、ご想像にお任せ致します。

おお、消えていたと思っていたデータが奇跡の残存ですか!それは何とも喜ばしい~♪
書きかけの初恋話でいらっしゃるですって?!それはまた心踊る響きですね☆順調執筆祈願「おうえん」☆でもくれぐれもお体大切に!
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