セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

砂に埋もれた愛と時間(前編)

2015年09月12日 00時48分39秒 | クエスト184以降
久々?前後編になってしまいましたの追加クエストもどき。今回もピラミッドを冒険する二人ですが、以前行ったピラミッドとは別のようです。文中に出てくる「以前の冒険」とは、同じクエスト184カテゴリの「微かなる不穏」(2011年2月)と「朝飯前の冒険」(2012年8月)のことです。かなり前ですね~。今回タイトルは当初「夕飯前の冒険」にしようかと思いましたが、それもなんかなあと思ってメロドラマ風なタイトルになってしまいました。グビアナの歴史ももちろん妄想の産物ですがこういうのを考えるのが楽しかったりします。

 ミミとイザヤールは、グビアナのオアシスで砂漠の広大な夕陽を眺めていた。近くに「ひかりの石」を採取に来て、その帰りにオアシスで少し休んでいくことにしたのだ。
「遥か遥か昔、グビアナ大陸は豊穣の地だったそうだ。私も生まれるずっと前だったから、伝え聞いただけで直接見たわけではないがな」
 夕陽で紅くさえ見える砂丘の尾根を見つめながら、イザヤールが呟いた。
「古代の巫女が、強大な力を持つオーシャンボーンの力を利用したから、大陸の南の窪地は、かつて広大な湖だった、そうよね」
 ミミは、以前の冒険の事を思い出しながら言った。
「そうだったな」イザヤールは頷いた。「そしてそれは、天使が生まれるずっと以前の話だった。その名残か知らないが、天使が古代グビアナ王朝を守護した時にも、グビアナは豊かな水を湛えた豊穣の地で、小麦等の農産物を世界中に輸出していただけでなく、あらゆる国の商人や学者、芸術家が集まった、文字通り世界の中心だったそうだ。グビアナの王族の権力も、今より遥かに強力だっただろうな。以前に迷い込んだピラミッドも、その時代に幾つも作られた物の一つなのだろう」
「そっか、ピラミッドって一つじゃないのね」
「そうらしい。きっと、砂の下の奥深くに、古代グビアナ王朝のピラミッドが幾つも眠っているのだろうな」
「かつては広大な緑の大地にピラミッドが点在していたグビアナ・・・。何か不思議な気分」
 そう呟いて、ミミは手元の砂をさらさらと掬っては落とした。そしてふと、掬った砂の中に、小さいが重く硬い感触を感じて、手を止めた。手の中から砂だけ落として見てみると、深い青の石が嵌まった、古風な金の指輪が光っていた。
「綺麗な指輪だな。オアシスに立ち寄った誰かの落とし物かな?」
 ミミの手の中を覗き込み、イザヤールは首を傾げた。
「そうかも。とりあえずグビアナ城下町で、落とし主が居ないか探してみましょうか」
 そう言ってミミが何気なく青い石の表面を見ると、滑らかな表面に、この辺りの民らしい彫りと褐色の肌をした、美しい青年の顔が映っていたので、とても驚いた。
「イザヤール様、これ・・・」
 指輪を渡され、イザヤールもミミが見たものを見た。
「これは・・・」
 何かそのような細工なのかと、彼が指輪を調べようとすると、その映っている顔から、かすかな声が聞こえてきた。
『驚かせて申し訳ない。俺が自ら、指輪の石の力を借りて、おまえたちの前に姿を現した』
「どういうこと?」
 ミミが尋ねると、指輪の石に映った青年は答えた。
『俺は、護符の強力な呪いが効かない者をずっと待っていた。おまえたちに、頼みがある』
「頼み?」
『この指輪が導くところに、ピラミッドの入り口がある。そこの最奥の、王女の間に石造りの棺があって、それには強力な護符が置いてある。その護符のせいで、俺はピラミッドに入ることができない。その護符を棺から外して蓋を開け、中のミイラにこの指輪を嵌めてほしい』
「どうしてそんなことを?」
 封印を解き墓をあばくような行為は感心しないとイザヤールが眉を寄せると、青年の顔に熱情と切なさが浮かんだ。
『よくある話さ。裕福とはいえ、一介の商人の息子にしかすぎなかった俺は、王女に身分違いの恋をした。どうにもならないとわかっていても、告げずにはいられなかった。でも彼女は、そんな俺を受け入れてくれた。それから俺たちは、密かに逢い続けた。
だが、俺が旅に出ている間に、彼女は重い熱病にかかってしまって、そして・・・。俺がこの指輪を持ってグビアナに戻って来たときには、彼女はもうピラミッドの中で永遠の眠りに就いていた。しかもピラミッドは、王家の者と神官しか入れない強力な呪いがかけられていた。だから俺は生きてる間どころか、死んでも彼女に逢いに行くことができなかったのさ。
せめて、この指輪だけでも渡してやれたらと、地中深くでずっと思っていた。俺の骨さえも砂に変わって無くなってしまったくらい長い時が経って、砂が巡りに巡って指輪がちょうど地表に出たその日、俺はようやくおまえたちに、ピラミッドに入ることができるくらい強く呪いに負けない者たちに、巡り会えたというわけだ』
 ミミとイザヤールは、石に映っている青年の顔を見つめた。その表情は、長い間大切な者を待ち続けた者に特有の、思い詰めたひたむきさがあった。二人は顔を見合わせて頷き、ミミは青年に告げた。
「わかりました。この指輪、必ずあなたの愛する方の元へお届けします」
 ミミはクエスト「砂に埋もれた愛と時間」を引き受けた!

 ミミたちが青年と話している間に、太陽はほとんど地平線の向こうに姿を消しかけていた。
『好都合だ。探しているピラミッドは、昼でも夜でも無い時間だけ、この指輪で探すことができる。この指輪から放たれる光の指す方向へ、歩いてみてくれ』
 太陽が沈むと同時に、ミミは指輪を掲げた。すると、黄昏の薄明かりを集めるかのように指輪の青い石は淡く輝き、その光がある一定の方向に伸びた。青年の言う通りに二人がその光の指す方向に歩いていくと、普段は砂の山しか無い筈の場所に、ピラミッドがあの独特な形のシルエットを見せてそびえていた。
 ピラミッドの正面には、分厚く頑丈な不思議な金属でできた小さな扉が有り、その扉は固く閉ざされていた。
『情けないが、俺にはこの扉を開けることさえできない』青年は悔しそうに言った。『だが、おまえたちなら開けられるだろう。頼んだぜ』
 そう言うと彼は、指輪の石からすっと抜け出し、扉の隣にたたずんだ。
「任せて」
 ミミはにっこり笑って「さいごのかぎ」を取り出し、鍵穴にあてがうと、さしもの不思議な扉も、苦もなく開いた。
『さすがだな。では、頼む』
 そう言って扉の外で待つ青年に頷いて、ミミとイザヤールはピラミッドの中に入った。入り口で、強い呪いのような重苦しい気配を感じたが、元天使の二人は、難なく通り抜けられた。
 中に入ると、そこはまるで巨大な神殿のように天井が高く、まっすぐ伸びた長い通路の両脇の壁際には、巨大な柱と巨大な人物像が交互に並んでいて、その通路の突き当たりにはやはり巨大な像が一体立っていた。石造りの像のようで、片手には杖、片手には剣を持っているのが、ここからでも見える。それ以外めぼしいものはなく、上りも下りも階段らしきものはなかった。
「前に入ったピラミッドとはまた感じが違うのね」ミミが呟いた。
「だが、トラップがあるのは、同じなようだぞ」
 左右の壁に鋭く視線を走らせたイザヤールが呟いた。像と柱の隙間には、びっしりと穴が空いている。おそらく、矢が飛び出してくるのだろう。
「でもこれじゃ一見、素早く像や柱の前に飛び出せば大丈夫ってことだよね?・・・まあそう甘くないってことだろうけれど」
 ミミは言って、像の前に試しに皮袋を投げてみると、像の前の床に落ちるのと同時に、像の口から槍が飛び出した。そこに居たのが人の体だったら、ほぼ確実に刺さっていただろう。
「・・・ということは、普通に考えれば、柱の前だけ安全ということになるのだが・・・それもどうかな」
 呟きながらイザヤールが、柱の前の床に辺りに落ちていた石材のかけらを拾って投げてみると、石が触れたとたんに床がぱくりと口を開いて、石は地下の暗闇へと飲み込まれていった。
「あ~あ、やっぱり落とし穴・・・」
 ミミは溜息をつき、イザヤールは苦笑した。
「さすがに厳重な仕掛けだな。おそらく、王族や神官たちが入るときは、トラップが作動しないような仕掛けもあるのだろうが・・・」
「そういう仕掛けがあるならきっと、入り口付近のこの辺にあるよね」
 そこでミミとイザヤールは、辺りを隈無く調べてみた。すると、最初の柱の手前付近の壁に、左右それぞれ小さなボタンが付いていて、ボタンの下にはそれぞれ謎めいた言葉が古代文字で書いてあった。
『我は太陽。我が沈む方から先に押すべし』と右側のボタンの下には書いてあり、『我は太陽。我が昇る方は後から押すべし』という言葉が、左側のボタンの下に書いてあった。
「意味深長な言葉だけど・・・。そのままの解釈でいいのかな・・・?」
「迷った時は、一番単純な解釈が正解なことが多いから、いいのではないか」
「えっと、確かピラミッドの入り口は南側だったから・・・」
「右側が東、すなわち太陽が昇る方になるな」
「ということは、後から押すボタンということになるのね」
 そこでミミとイザヤールは、まず左側のボタンの方に行ってそれを押し、次に右側のボタンのところに行って押した。すると、轟音がして柱と像が横にずれて、矢の出る壁を塞ぎ、像の口は閉じ、床の落とし穴が全て口を開いた。あとは、この落とし穴を避けて通路を進めばいいわけだった。
 二人は用心しつつ、通路の突き当たりにある杖と剣を持った像のところにたどり着いた。近くで見ると、杖と剣にはそれぞれ文字が刻まれていた。『瞑府の道は、魔導の道』と杖には刻まれており、『天への道は剣の道』と、剣には刻まれていた。杖と剣は、それぞれレバーの役目をしているらしい。
「上の階に行きたければ剣を、下の階に行きたければ杖を引けばいいってことかな?でもどっちから調べましょう、イザヤール様?」
「ふむ、最上階も地下深くも、どちらもあり得るからなあ。ならば、こんなときは・・・」
「ちいさなメダルトスで決めましょう」
 こうしてメダルトスをしてみた結果、下の階から調べることになった。そこでイザヤールが杖をぐいと引くと、再び轟音がして、像の横に下り階段が現れた!
 さっそく降りてみると、延々と壁画が描かれたやや狭い通路があり、ミミとイザヤールは罠が無いかを杖などで調べつつ用心深く進んだ。杖でつつくとやはりときどき落とし穴の口が開いたりしたので、それを避けたりして歩いた。入りくんだ回廊やら石像のある小部屋を幾つも抜けて、やがて表の入り口の扉とよく似た頑丈な金属の扉の前に出た。再びさいごのかぎを使って開けてみると、中はたくさんのツボがずらりと並んでいた。
「とりあえず調べてみるか?」
「はい」
 そこでミミとイザヤールは、ツボを持ち上げては逆さまにするという方法で、中に何か入っているか確かめた。ちいさなメダルや薬草などが落ちることもあれば、何も落ちないこともあった。
 全てのツボを調べ終え、部屋を出ようとしたところで、怒りの声が二人の背後から聞こえてきた。
「チクショー!なんで手を突っ込んで調べないんだよー!手を食いちぎってやろうと思ってたのにー!」
 振り返ると、何も入っていなかったツボの幾つかが、怒り狂ってぴょんぴょん跳ねていた。ツボの魔物たちが襲いかかってきた!
 見たことが無い魔物たちだったので、ミミとイザヤールは緊張しつつもまたモンスター図鑑に新種の魔物が番外編で載せられる!とかなりわくわくしたが、襲いかかってきたツボたちは、ことごとく部屋にあった落とし穴に吸い込まれていってしまった。
「あ~あ・・・」
「残念、新種の魔物に会ったチャンスだったというのに。・・・それにしても、自分たちの部屋の落とし穴も把握してないとは、間抜けな奴らだな」
 結局このフロアの他の部屋も、宝箱だらけミミック混じりの部屋や、井戸だらけ井戸まじん混じり部屋など奇妙な部屋ばかりで、棺のある間はなかった。二人は再び一階に戻り、今度は上のフロアを調べることにした。〈続く〉
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