セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

キンタロー感謝の日

2012年11月23日 23時50分44秒 | クエスト184以降
今回の概要・・・今週はなんとか金曜更新間に合いましたの捏造クエストシリーズこと追加クエストもどき。今日は勤労感謝の日ということで、こんなふざけてますタイトル&ほのぼの?な内容となりました。もちろんキンタロー感謝の日は実在しません(そりゃそうだ)。語呂合わせしたかっただけという身も蓋もない理由~。文中のウォルロの地底湖や蜘蛛についての設定も妄想です。でもそうでないと、川の流れが途中で切れている説明が付かないので、たぶんそうじゃないかと思ってます。

 今年もウォルロ村での収穫祭は無事に行われ、ミミとイザヤールとリッカは満ち足りた気分で、大勢の村人に混じって大きな焚火を見つめていた。
 ニードもリッカの隣に居て、思わずそっと彼女の手に自分の手を伸ばそうとしたが、背後からリッカの祖父に「ウオッホン!」と思いきり大きな咳払いをされ、飛び上がって慌てて引っ込めた。
 何も気が付いていないリッカは、焚火や陽気に踊ったり歌ったりする村人たちの様子を懐かしげに見つめている、ミミとイザヤールの表情の方が気になっていた。
「ミミ、イザヤールさん、昔、収穫祭の時に、ウォルロに来たことある?」
 リッカの言葉に、ミミははっとして、濃い紫の瞳を瞬かせ、僅かに動揺した声で答えた。
「え・・・どうして?」
「あのね、不思議なんだけど、私・・・小さい頃とか、こうやって焚火を見ていた時に、今みたいにミミやイザヤールさんが傍に居てくれた、そんな気がするの。そんなわけないのにね」
「そう・・・」
 リッカの言葉に、ミミは長い睫毛を伏せて、それで瞳の陰影が濃くなった。・・・リッカ、それは本当よ。私は見習い天使だった頃、ウォルロの守護天使だったイザヤール様に連れてきてもらって、こうして焚火を眺めていたこともあるの。今にして思えば、あの時お祖父さんと二人、寂しそうに立っていた小さな女の子は、あなただったのね。あなたは、お祖父さんに何回も「パパはまだ来ないの?お仕事忙しいの?」って聞いていた・・・。
 ミミの困惑を助けるかのように、イザヤールが言った。
「ミミ、リッカ、それにニード。そろそろ花火を上げる頃合いだ、手伝ってくれるか」
「はい、イザヤール様」
「ニード、居たの?!」
「さっきから居たよ!気付いてなかったのかよ!」
 膨れっ面だったニードだったが、リッカが楽しそうに笑うと、少し顔を赤らめて頬を掻いた。

 翌朝。祭りも無事に終わった。ミミとイザヤールは、マロンにまた「まだらくもいと」を頼まれたので、休暇が今日までのリッカだけキメラの翼でひと足先に帰ることになった。
 まだらくもいとを採取するには、滝からできた流れを回り込まなければならない。実は崖をロープ等を使って降りれば、採取場所へは村の端から行けなくもないが、急ぐ必要もないので、今日も二人はのんびりと流れに沿って向かった。
 ウォルロ地方は、相変わらず平和だった。日だまりの中モーモンはあくびをし、ふわふわ浮かんだまま居眠りをしてぽてっと落ちて、びっくりして目をぱちくりさせた。ズッキーニャは、日光浴ならぬ光合成をしているようだ。そういえば今日はスライムを見かけない、二人は思ったが、そのときはあまり気に留めなかった。
 流れの終点まで来ると、ミミは不思議そうに滝の水を丸く湛えた湖を見つめた。
「この川の水は海に流れていかないでここに溜まっているのに、水の量はいつも一定ですよね。・・・不思議」
 ミミの呟きにイザヤールが答えた。
「おそらく、先日見つけた地図の地底湖に繋がっているのだろう。そのまま地下水脈となってウォルロ地方のあちこちに湧き出しているのは間違いないが、私の任期の三百年の間、海まで水脈のどれかが届いているのかどうかは確認できなかった」
 滝からの水はいつも冷たいのと、汚れが全くないために、この湖にはかえって魚も何も居ない。深いので透明度が高くても、青い空の色をそのまま溶かしこんだかのように底も見えない。かろうじて岸辺の浅いところは、水晶が細かくなったような白い砂が見えるが。生き物も居ないし水も冷たすぎて遊ぶのに不向きなので、子供が水遊びして溺れる心配もない。
 湖を回り込んで向こう岸側に行って、いつもの怪しい大きな蜘蛛の巣にたどり着いた。毎回新しいまだらくもいとがあるのだから、巣の主が居てもいい筈だが、ミミは一度も見かけたことがなかった。
「ここの蜘蛛は決して悪さはしない、心配しなくていい」
「はい。・・・イザヤール様が、何かなさったんですか?」
「さあ、どうかな」
 答える彼の目はかすかに笑っている。おそらくここの蜘蛛は、守護天使時代のイザヤールと戦ってみて、逆らう気と人間を襲う気をすっかりなくしたのだろう。
 まだらくもいとを集め、さて村に戻ろうかと二人が蜘蛛の巣から出たとき、ちょうど真上に当たる精霊の泉がある高台から、スライムが一匹、降ってきた。

 スライムは、うまく蜘蛛の巣に落ちて、ぼよ~んと弾んで、無事に地上に着地した。
「よ~し近道成功・・・ってうわあ、ニンゲンだあ!オイラ悪いスライムじゃないようっ」
 慌てふためくスライムに、ミミたちは自分たちに攻撃の意志がないことを伝えて、安心させた。
「そんなに急いでどうしたの?」
「実は・・・」スライムは困り顔になって言った。「ボクたちの友達のキングスライムがさあ、名前はキンタローって言うんだけど、今朝いきなりこんなことを言い出したんだ。
『聞くところによると、今日は遠い異国では、キンタロー感謝の日とかいう日らしい。ワシの名はキンタローである。つまりワシに感謝する日である。なので感謝の証を持って参れ』
ボクたちが何それ、ってブーイングしたら、『ワシ王様。だからエライのだ。エライから感謝するのだ』こうなっちゃうと、何言ってもムダなんだ。
それでウォルロ地方中のスライム大集合で、感謝の証に、『ごうかなチョコ』と『ごうかなクッキー』と『プラチナクッキー』をたくさん集めることになっちゃって大騒ぎさ。お願い、どれか持ってたら、分けてくれない?お礼するから!」
「キンタロー感謝の日?」
「初耳だな」
 それはともかく、ミミは道具袋の中を見て、ごうかなチョコを見つけて、スライムに渡した。
「ロクサーヌさんに頼んだら、ごうかなクッキーも手に入るかも」
 ミミが言うと、スライムは喜んだ。
「ホント?!ありがとう!・・・ついでと言っちゃ悪いけど、ゴールデントーテムからプラチナクッキーももらってきてくれると助かるんだけど。ボク今お手紙書くから、それを見せればくれると思うよ!」
 こうしてミミはクエスト「キンタロー感謝の日」を引き受けた!

 それからミミとイザヤールは、とりあえずウォルロに戻ってマロンにまだらくもいとを渡し、それからルーラで急いでセントシュタインに戻った。
「あれ?おかえりミミ、イザヤールさん、早かったね?!」
 もうすっかり仕事モードなリッカが目を丸くして声をかけた。
「それがねリッカ、ただいまじゃないの、クエスト引き受けちゃったの」
 それからミミはロクサーヌに尋ねた。
「ロクサーヌさん、『ごうかなクッキー』入荷してる?」
「いらっしゃいませミミ様☆ベストタイミングですわ、たくさんございましてよ♪」
「あるだけください」
「まあ、ありがとうございます!」
 その間にイザヤールは、宝の地図の一覧を広げ、ゴールデントーテムの居る洞窟の地図を探した。彼とミミは一覧にモンスターランクの記号も付けているので、どの洞窟に行けばいいのかすぐにわかる。
「じゃあまた行ってきまーす!」
 ごうかなクッキーを買い、地図を選ぶと、ミミとイザヤールはまた慌ただしく出かけた。その頃サンディは、そんなこととはつゆ知らず、彼らの部屋でプラチナクッキーを食べていた!
「んも~、ミミたち遅いわね~。どーせ寄り道デートしてんのね、クッキー分けてやんない!」

 一階に既にゴールデントーテムが居る地図をイザヤールが用意していたので、洞窟に入って間もなくミミたちは目的の相手を見つけた。
 ゴールデントーテムはミミとイザヤールを見て慌てて逃げようとしたので、ミミは急いで手紙を取り出して言った。
「待って!戦いに来たんじゃないの、お手紙預かってきたの!」
 ゴールデントーテムは手紙を読んだ。そして言った。
「あ、そういうことかあ。キンタローのヤツ、相変わらずしょうがないなあ。わかったよ、プラチナクッキーはやるよ。たださあ、キミたち『プラチナ鉱石』持ってないかい?明日の分を作らせるのに必要なんだ。セレブな我々は、そこらのクッキーじゃあ口に合わなくてね」
 幸いプラチナ鉱石は持っていたので、ミミとイザヤールは無事にプラチナクッキーを受け取った。そしてすぐに洞窟を出て、アギロホイッスルを吹いて、先ほどのスライムの居る場所に戻った。
 さっきの場所に戻ると、スライムは居なかった。しかし間もなく、また上から降ってきて、蜘蛛の巣をトランポリンのように使って着地してきた!
「あっ、もう持ってきてくれたんだ、ありがとうー!ボクたちも『キンタロー感謝』の準備がちょうどできたとこなんだ!お礼がしたいから、精霊の泉のところにおいでよ!」
 言うやいなやスライムは蜘蛛の巣で思いきりバウンドしてまた高台に戻ってしまったので、ミミたちの方はアギロホイッスルを吹いて高台に上がった。箱舟から降りる際にアギロが、「慌ただしいなあおまえら」と笑った。

 高台にはウォルロ地方中のスライムたちが集まり、ものすごく賑やかだった。石ころやゴミを綺麗に取り除いた草地の上に、清潔な大きな布が敷かれ、その上に、ごうかなチョコやクッキー、プラチナクッキー以外にも、おいしそうな食べ物がそれぞれ山と積まれていた。
 ミミがスライムに頼まれた物を渡すと、スライムと、そしてキングスライムがお礼を言った。どうやら彼が「キンタロー」らしい。
「ニンゲンまでもがワシに感謝してくれるとは、いい心がけである。ご苦労だった、ゆっくりしていくがよい」
 こうしてミミとイザヤールは、成り行きでスライムたちの大宴会に参加することとなった。飲み物には果実酒や蜂蜜酒もふるまわれたが、スライムたちにはやはり、綺麗な水が最高の飲料らしい。
 竪琴を弾いて歌うホイミスライム、リズムに合わせてメトロノームのように動くメタルブラザーズ、くるくる回るスライムベス。楽しげな歓声や口笛が飛ぶ。ハッピークラッカーが鳴る。
「ウォルロ村の収穫祭の続きみたいですね、イザヤール様」
 ミミがこっそり囁いてにっこり笑うとイザヤールも微笑んで頷き、既に酔っぱらっているはぐれメタルに勧められた盃を、一気に空けた。スライムたちの宴会に参加できるなんて、夢にも思わなくて、だから余計に楽しい。ミミはほろ酔いでほんのり染まった頬を、イザヤールの腕にそっとすり寄せた。
「皆が楽しそうで何よりである。ワシも満足じゃ」キングスライムは、すなわちキンタローは呟き、ミミとイザヤールに向かって言った。「ニンゲンたちも、ご苦労だったな。これはワシからの褒美である。遠慮なく受け取るが良い」
 ミミたちは「天使のソーマ」をもらった!
「ボクからもありがとう♪」
 依頼してきたスライムの方は、「ちいさなメダル」をくれた!
「だがまだまだゆっくりしていくがよい、キンタロー感謝の日は、これからがお楽しみである」
 キングスライムすなわちキンタローは言って、巨体を揺らして踊り始め、ミミとイザヤールにも促した。二人は笑って立ち上がり、軽やかなステップを踏み始めた。

 高台からかすかに聞こえてくる、楽しげな賑わいの音に、ウォルロ村の住民たちは首を傾げたが、まさかスライムたちの大宴会だとは夢にも思わなかった。そして、自分たちの元守護天使が、その中に加わっていることも。
「案外楽しいじゃねーか!来年もやってくれよう、キンタロー感謝の日!」
 すっかりご機嫌のはぐれメタルが叫び、一同は口々に賛成の声を上げた。こちらの祭りも、楽しい長い夜になりそうだ。〈了〉

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« なんてことでしょう | トップ | おバカラクガキ発動 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿