今週は比較的ノリノリサクサク書けましたの捏造クエストシリーズこと追加クエストもどき。やはりお笑いゆる系話は書きやすいです。モンスター図鑑でゆるい設定があるモンスターを登場させると殊にそうです。今回別名怒れるモンスターシリーズ、イエローサタンがダンスの評価で怒っております。確かに実力より見た目で評価されるって辛いかもですね。でも他人の評価だけを励みにするのではなく「自分が好きでやっている」ことを忘れなければ、何とかいける気がします☆
モンスター界でも一、二を争う実力の持ち主のダンサー、イエローサタン。彼は最近、怒っていた。ダンスの全てのステップを修得し、ダンスで傷を癒しテンションさえもアゲアゲにしてしまうこの自分。オスメス問わずモンスター仲間の視線を釘付けうっとりみとれさせるこの自分の人気が、たかが人間の小娘に持って行かれつつあったからである。
その小娘は、更に腹が立つことに人間のくせに人間とは思えないほど強くて、イエローサタンも数えきれないほど返り討ちに遭っていた。彼女だけならまだしも、これまた悔しいことにダンスをしても見事に決まりそうな素晴らしい筋肉質の体を持つ剃髪の男が大概一緒に居て、この小娘を完璧にガードしている為、どんなに数を頼んでも勝てなかったのである。
最近の若いモンスターどもは、技術より見た目にすぐ騙されやがって、と、イエローサタンは苦々しく思った。確かにあの小娘は人間の中でも極上な器量をしているかもしれない。だがこの俺様のスレンダーボディに長い手足の繰り出すダンスより、あの小娘のダンスにみんな夢中になる意味がわからない。くびれた腰や大きな胸がなんだ!そんなものダンスの真髄に無関係だ!いくらそう主張しても、情けない仲間どもは、でれでれとみとれて「ミミちゃ~ん♪」と声援を送るヤツまでいる始末なのである。
そもそも、配色が一緒なのも気に食わない、イエローサタンは思った。あの小娘は、出くわす時は大概、胸とくびれを強調するような紫と黄色の色っぽいドレスを着ていた。俺たちと同じ配色、いや、間違いなく真似をしたに違いない。そうか、あのドレスだ!あのドレスにみんな惑わされているんだ!彼は思わず合点して、長いアゴがぶつかるくらい大きく頷いた。ドレスがなんだ!こちらは天然の裸一貫肉体美で勝負してるっていうのに!
今度会ったら・・・歯ぎしりし決意をみなぎらせて、イエローサタンの暗い眼窩の奥が赤く光った。
そんなことを思われているとはつゆ知らず。ミミは、今日も踊り子のドレス装備でダンジョンに来ていた。旅芸人の転生を繰り返して、極めている最中だったからである。それに加えて宝の地図の洞窟にしか無い珍しい装備品を取ってきてほしいという注文もこの頃多いので、修行とお宝集めを兼ねて頻繁にダンジョンに潜っているのだった。傍らにはもちろん、イエローサタン言うところのこれまた憎らしい筋肉質の男、イザヤールがついている。
みとれていたモンスターたちをバックダンサー呼びで見事に撃破してから、ミミは不思議そうに首を傾げた。
「どういう訳か最近、モンスターたちがみとれる確率が上がっているようなきがするの・・・」
「おまえはますます綺麗になっているし、ダンスの技術も上がっているからだろう」
イザヤールがあまりにさらっと言ったので、ミミは赤くなったが、すぐに心配そうな顔になった。
「モンスターに人気ってことは、顔が人間離れしちゃってるってことかな・・・だったらどうしよう・・・」
本気で心配しているらしいミミに、イザヤールは思わず笑って、安心させるように彼女の艶やかな髪をなでた。
「心配するな。モンスターたちの美的感覚も、どうやら我々とそんなに違わないらしいぞ。モンスターたちが拐うのは、若くて美しい娘だろう?」
「でもそれって、お魚とかが丸々艶々おいしそうっていうのと同じ理屈なんじゃ・・・」
それを聞いてイザヤールは思わずまた低い声で笑ってから、不意に真剣な顔になって言った。
「おまえは、本当に綺麗だ・・・。心配になるくらいにな」
それはイザヤール様の贔屓目だとミミは思ったが、彼がそう思ってくれるならよかったと、幸せそうに微笑んだ。
と、そのとき。クリティカル攻撃を何もしていないのに、怒り狂っているイエローサタンが現れた!
彼はもちろん、例のイエローサタンだった。ただでさえ腹立たしい小娘とその連れがまた現れて、しかもイチャイチャした会話をしていたので、余計に頭にきたのである。怒りのアゲアゲダンスでテンションアップしてやっつけてやる!と、渾身のダンスをしたが、あいにく彼は今、仲間を連れず一人だった。テンションこそ上がったものの、ミミの強烈なキラージャグリングとイザヤールのギガブレイクで、またもやあっさり返り討ちに遭ってしまった。
「何もしていないのに怒っているなんて・・・何かあったのかな?」首を傾げるミミ。
「虫の居所でも悪かったのではないか」とイザヤール。自分たちが原因とはゆめにも思っていない。
「うう・・・待て・・・」黒焦げになりながらも、イエローサタンはかすれた声で呼び止め、悔し泣きを始めた。「くそう!チカラで負けるのは仕方ない、でもダンスでは勝っている筈なのに、見た目で実力評価をされるなんて納得いかねー!」
「え?どういうこと・・・?」
ミミはよくわからず戸惑いながらも、泣き出したイエローサタンが気の毒になって、側にしゃがんで話を聞く態勢に入った。
「おまえがそんなドレス着て踊るから、みんなおまえばっかし見て俺のすごい高度なステップ見てくんないんだよ!このダンジョンに来るときは、そのドレスやめてくれよ!ドレス禁止!」
なかなか理不尽な言いがかりだとイザヤールは思ったが、ミミは不思議そうに自分の着ている踊り子のドレスを見下ろしてから、首を傾げながらも答えた。
「なんだかよくわからないけれど・・・踊り子のドレスを着てこのダンジョンに来なければいいのね?」
ミミはクエスト「魅惑の黄色紫」を引き受けた!
数日後。ミミとイザヤールは、再びあのイエローサタンが居るダンジョンを訪れた。城下町のあらくれに、「あらくれマスク」のスペアを入手してくれるよう頼まれたからである。イエローサタンの頼みもあったので、今日は旅芸人はやめてスーパースターに転職して、レインボーチュチュを着てきた。
「このデザインは、絶対リッカやサンディの方が似合うんだけれど・・・」
ふりふりとフリルを揺らして歩きながらミミは恥ずかしそうにぼやき、そんなことは無いとイザヤールは可愛い彼女にご満悦だった。そして、二人はまたもやあのイエローサタンに遭遇した。
「よし!違う服着てきたな!純粋にダンスの実力で勝負だ!」
今日はたくさんギャラリーを引き連れてきたイエローサタンが、長い腕とアゴをビシッと伸ばして、ミミにダンス勝負を申し込んだ!ミミとて、純粋に踊ることが好きなのに、見た目でごまかしているなんて言われるのは心外だったので、この挑戦を喜んで受けた。
イエローサタンのアゲアゲダンスが炸裂!モンスターたちのテンションが上がった!しかしミミは必殺技チャージ!ダンスフィーバー!モンスターたちはミミと一緒になって踊り、テンションは元に戻った。それを見て、イエローサタンはまたもや悔し涙を流した。
「ちくしょー、なんでだ!・・・そうか、そのフリフリのせいだな、そーだきっと!そのフリフリドレスも、禁止だああー!俺様みたいにボディラインオンリーで勝負しろおおー!」
「ええっ、レインボーチュチュもダメなの?」
困ったなあ・・・とミミは思ったが、イエローサタンがあまりに泣くので、このダンジョンにはレインボーチュチュも着てこないことを承諾した。
そして更に数日後。ミミはまた職業旅芸人に戻っていたが、律義にもイエローサタンとの約束を守って、踊り子のドレスもレインボーチュチュも着てはこなかった。とはいえ、フリフリやヒラヒラのせいでみんな注目するんだ、俺様みたいに裸一貫天然の肉体美で勝負しろとイエローサタンに言われても、さすがにそういう訳にはいかない。
イエローサタンがそんな風に駄々をこねた際、イザヤールが危うくスーパーハイテンションの「ばくれつけん」を食らわせるところだったが、イエローサタンに邪念は無く単なる負け惜しみだったのと、そこは元天使の矜持、私情だけの暴力はいけないと何とか思いとどまってイエローサタンは命拾いしたのだが、それはさておき。
そんな訳でミミは、ある意味ボディラインで勝負とも言える装備、「しんぴのビスチェ」を着用してきていた。今日はロクサーヌにメタスラ装備を取ってきてくれるよう頼まれてこのダンジョンにまた来たのだが、またまたイエローサタンにダンス勝負を申し込まれちゃうのかな・・・と、少々困惑していた。
案の定、先日よりももっとたくさんのギャラリーを引き連れて、イエローサタンは待ち構えていた。
「おおっ、また黄色紫の装備で来たか!だがボデーラインで勝負のデザインだな、よっし!スレンダーとムチムチとどっちが大勢みとれるか、勝負だ!」
「違うでしょ、ダンスの実力で勝負、でしょ!」
珍しくミミがちょっと強い口調で言い返した。自分だって地上に落っこちて旅芸人と言われてから今日まで、ずっと頑張ってきたのに。実力も無いのに衣装や体型で魅せているなんて言われるのは、穏やかな性格の彼女と言えどもちょっと悔しかったのだ。
「言ったな小娘!ようし!ダンス三本勝負と行くぞ!三ターンでタップダンス、アゲアゲダンス、ハッスルダンスをそれぞれ披露しながら戦って、パーティの残りHPが多い方が勝ちだ!」
イエローサタンがパートナーに選んだのは、イザヤールよりHPがやや高いデンガーだった。ミミの方がイエローサタンよりいくらかHPが高い故のハンデだ。デンガーは攻撃力と二回攻撃できるすばやさを持つ強敵だ。
ミミはアゲアゲダンスはできないが、幸い特技「おうえん」を持っている。パートナーは好きに己の技を使っていいというルールなので、勝算はありそうだと、イザヤールと顔を見合わせ頷いた。
一ターン目、ミミとイエローサタンはそれぞれタップダンスをし、イザヤールはテンションバーンを、デンガーはさみだれ斬りをしてきた。ミミは軽やかなステップで身をかわし、イザヤールは攻撃を一回受けてテンションが5上がった。
ニターン目、イエローサタンはアゲアゲダンスをしてデンガーのテンションを上げ、デンガーは「いなずま斬り」をイザヤールにしてきてイザヤールはかなりのダメージを受けたが、テンションが20上がった。ミミはアゲアゲダンスの代わりにイザヤールをおうえんして、イザヤールのテンションが50上がった。
三ターン目、デンガーは再びいなずま斬りを今度はミミにしてきたが、ミミはタップダンスでかわし、イエローサタンもミミもハッスルダンスをしてデンガーとイザヤールのキズを回復させた!ここでテンションが50になっていたイザヤールが、デンガーにはやぶさ斬りをして、デンガーを倒した!
こうして勝負は着き、イエローサタンはがっくりと膝を折りながら呟いた。
「くそう・・・悔しいが、完敗だ・・・。でもよ」ここでイエローサタンは顔を上げ、にっこり笑顔になって(悪魔の笑顔なので禍々しいが)付け加えた。「久々に、一瞬何もかも忘れて、全力で楽しく踊れたよ。ダンスって、見せるだけじゃなくて、自分でも楽しむもんだってこと、忘れてたよ。・・・おまえのおかげで思い出せた、礼を言うぜ」
イエローサタンは、「うつくしそう」をくれた!
こうしてミミは、このダンジョンに来る際はまた、黄色と紫の配色の服もフリフリもヒラヒラもなんでも着てこられるようになったが、代わりに・・・。
「俺様が色気をアップさせれば、ついでに実力もちゃんと見てもらえるってことだよな!よし、頑張るぞー!とりあえずマーニャのドレスでお色気アップだ!」
と、イエローサタンが間違った方向に努力を始めようとしていたので、全力で止めるはめになったという。〈了〉
モンスター界でも一、二を争う実力の持ち主のダンサー、イエローサタン。彼は最近、怒っていた。ダンスの全てのステップを修得し、ダンスで傷を癒しテンションさえもアゲアゲにしてしまうこの自分。オスメス問わずモンスター仲間の視線を釘付けうっとりみとれさせるこの自分の人気が、たかが人間の小娘に持って行かれつつあったからである。
その小娘は、更に腹が立つことに人間のくせに人間とは思えないほど強くて、イエローサタンも数えきれないほど返り討ちに遭っていた。彼女だけならまだしも、これまた悔しいことにダンスをしても見事に決まりそうな素晴らしい筋肉質の体を持つ剃髪の男が大概一緒に居て、この小娘を完璧にガードしている為、どんなに数を頼んでも勝てなかったのである。
最近の若いモンスターどもは、技術より見た目にすぐ騙されやがって、と、イエローサタンは苦々しく思った。確かにあの小娘は人間の中でも極上な器量をしているかもしれない。だがこの俺様のスレンダーボディに長い手足の繰り出すダンスより、あの小娘のダンスにみんな夢中になる意味がわからない。くびれた腰や大きな胸がなんだ!そんなものダンスの真髄に無関係だ!いくらそう主張しても、情けない仲間どもは、でれでれとみとれて「ミミちゃ~ん♪」と声援を送るヤツまでいる始末なのである。
そもそも、配色が一緒なのも気に食わない、イエローサタンは思った。あの小娘は、出くわす時は大概、胸とくびれを強調するような紫と黄色の色っぽいドレスを着ていた。俺たちと同じ配色、いや、間違いなく真似をしたに違いない。そうか、あのドレスだ!あのドレスにみんな惑わされているんだ!彼は思わず合点して、長いアゴがぶつかるくらい大きく頷いた。ドレスがなんだ!こちらは天然の裸一貫肉体美で勝負してるっていうのに!
今度会ったら・・・歯ぎしりし決意をみなぎらせて、イエローサタンの暗い眼窩の奥が赤く光った。
そんなことを思われているとはつゆ知らず。ミミは、今日も踊り子のドレス装備でダンジョンに来ていた。旅芸人の転生を繰り返して、極めている最中だったからである。それに加えて宝の地図の洞窟にしか無い珍しい装備品を取ってきてほしいという注文もこの頃多いので、修行とお宝集めを兼ねて頻繁にダンジョンに潜っているのだった。傍らにはもちろん、イエローサタン言うところのこれまた憎らしい筋肉質の男、イザヤールがついている。
みとれていたモンスターたちをバックダンサー呼びで見事に撃破してから、ミミは不思議そうに首を傾げた。
「どういう訳か最近、モンスターたちがみとれる確率が上がっているようなきがするの・・・」
「おまえはますます綺麗になっているし、ダンスの技術も上がっているからだろう」
イザヤールがあまりにさらっと言ったので、ミミは赤くなったが、すぐに心配そうな顔になった。
「モンスターに人気ってことは、顔が人間離れしちゃってるってことかな・・・だったらどうしよう・・・」
本気で心配しているらしいミミに、イザヤールは思わず笑って、安心させるように彼女の艶やかな髪をなでた。
「心配するな。モンスターたちの美的感覚も、どうやら我々とそんなに違わないらしいぞ。モンスターたちが拐うのは、若くて美しい娘だろう?」
「でもそれって、お魚とかが丸々艶々おいしそうっていうのと同じ理屈なんじゃ・・・」
それを聞いてイザヤールは思わずまた低い声で笑ってから、不意に真剣な顔になって言った。
「おまえは、本当に綺麗だ・・・。心配になるくらいにな」
それはイザヤール様の贔屓目だとミミは思ったが、彼がそう思ってくれるならよかったと、幸せそうに微笑んだ。
と、そのとき。クリティカル攻撃を何もしていないのに、怒り狂っているイエローサタンが現れた!
彼はもちろん、例のイエローサタンだった。ただでさえ腹立たしい小娘とその連れがまた現れて、しかもイチャイチャした会話をしていたので、余計に頭にきたのである。怒りのアゲアゲダンスでテンションアップしてやっつけてやる!と、渾身のダンスをしたが、あいにく彼は今、仲間を連れず一人だった。テンションこそ上がったものの、ミミの強烈なキラージャグリングとイザヤールのギガブレイクで、またもやあっさり返り討ちに遭ってしまった。
「何もしていないのに怒っているなんて・・・何かあったのかな?」首を傾げるミミ。
「虫の居所でも悪かったのではないか」とイザヤール。自分たちが原因とはゆめにも思っていない。
「うう・・・待て・・・」黒焦げになりながらも、イエローサタンはかすれた声で呼び止め、悔し泣きを始めた。「くそう!チカラで負けるのは仕方ない、でもダンスでは勝っている筈なのに、見た目で実力評価をされるなんて納得いかねー!」
「え?どういうこと・・・?」
ミミはよくわからず戸惑いながらも、泣き出したイエローサタンが気の毒になって、側にしゃがんで話を聞く態勢に入った。
「おまえがそんなドレス着て踊るから、みんなおまえばっかし見て俺のすごい高度なステップ見てくんないんだよ!このダンジョンに来るときは、そのドレスやめてくれよ!ドレス禁止!」
なかなか理不尽な言いがかりだとイザヤールは思ったが、ミミは不思議そうに自分の着ている踊り子のドレスを見下ろしてから、首を傾げながらも答えた。
「なんだかよくわからないけれど・・・踊り子のドレスを着てこのダンジョンに来なければいいのね?」
ミミはクエスト「魅惑の黄色紫」を引き受けた!
数日後。ミミとイザヤールは、再びあのイエローサタンが居るダンジョンを訪れた。城下町のあらくれに、「あらくれマスク」のスペアを入手してくれるよう頼まれたからである。イエローサタンの頼みもあったので、今日は旅芸人はやめてスーパースターに転職して、レインボーチュチュを着てきた。
「このデザインは、絶対リッカやサンディの方が似合うんだけれど・・・」
ふりふりとフリルを揺らして歩きながらミミは恥ずかしそうにぼやき、そんなことは無いとイザヤールは可愛い彼女にご満悦だった。そして、二人はまたもやあのイエローサタンに遭遇した。
「よし!違う服着てきたな!純粋にダンスの実力で勝負だ!」
今日はたくさんギャラリーを引き連れてきたイエローサタンが、長い腕とアゴをビシッと伸ばして、ミミにダンス勝負を申し込んだ!ミミとて、純粋に踊ることが好きなのに、見た目でごまかしているなんて言われるのは心外だったので、この挑戦を喜んで受けた。
イエローサタンのアゲアゲダンスが炸裂!モンスターたちのテンションが上がった!しかしミミは必殺技チャージ!ダンスフィーバー!モンスターたちはミミと一緒になって踊り、テンションは元に戻った。それを見て、イエローサタンはまたもや悔し涙を流した。
「ちくしょー、なんでだ!・・・そうか、そのフリフリのせいだな、そーだきっと!そのフリフリドレスも、禁止だああー!俺様みたいにボディラインオンリーで勝負しろおおー!」
「ええっ、レインボーチュチュもダメなの?」
困ったなあ・・・とミミは思ったが、イエローサタンがあまりに泣くので、このダンジョンにはレインボーチュチュも着てこないことを承諾した。
そして更に数日後。ミミはまた職業旅芸人に戻っていたが、律義にもイエローサタンとの約束を守って、踊り子のドレスもレインボーチュチュも着てはこなかった。とはいえ、フリフリやヒラヒラのせいでみんな注目するんだ、俺様みたいに裸一貫天然の肉体美で勝負しろとイエローサタンに言われても、さすがにそういう訳にはいかない。
イエローサタンがそんな風に駄々をこねた際、イザヤールが危うくスーパーハイテンションの「ばくれつけん」を食らわせるところだったが、イエローサタンに邪念は無く単なる負け惜しみだったのと、そこは元天使の矜持、私情だけの暴力はいけないと何とか思いとどまってイエローサタンは命拾いしたのだが、それはさておき。
そんな訳でミミは、ある意味ボディラインで勝負とも言える装備、「しんぴのビスチェ」を着用してきていた。今日はロクサーヌにメタスラ装備を取ってきてくれるよう頼まれてこのダンジョンにまた来たのだが、またまたイエローサタンにダンス勝負を申し込まれちゃうのかな・・・と、少々困惑していた。
案の定、先日よりももっとたくさんのギャラリーを引き連れて、イエローサタンは待ち構えていた。
「おおっ、また黄色紫の装備で来たか!だがボデーラインで勝負のデザインだな、よっし!スレンダーとムチムチとどっちが大勢みとれるか、勝負だ!」
「違うでしょ、ダンスの実力で勝負、でしょ!」
珍しくミミがちょっと強い口調で言い返した。自分だって地上に落っこちて旅芸人と言われてから今日まで、ずっと頑張ってきたのに。実力も無いのに衣装や体型で魅せているなんて言われるのは、穏やかな性格の彼女と言えどもちょっと悔しかったのだ。
「言ったな小娘!ようし!ダンス三本勝負と行くぞ!三ターンでタップダンス、アゲアゲダンス、ハッスルダンスをそれぞれ披露しながら戦って、パーティの残りHPが多い方が勝ちだ!」
イエローサタンがパートナーに選んだのは、イザヤールよりHPがやや高いデンガーだった。ミミの方がイエローサタンよりいくらかHPが高い故のハンデだ。デンガーは攻撃力と二回攻撃できるすばやさを持つ強敵だ。
ミミはアゲアゲダンスはできないが、幸い特技「おうえん」を持っている。パートナーは好きに己の技を使っていいというルールなので、勝算はありそうだと、イザヤールと顔を見合わせ頷いた。
一ターン目、ミミとイエローサタンはそれぞれタップダンスをし、イザヤールはテンションバーンを、デンガーはさみだれ斬りをしてきた。ミミは軽やかなステップで身をかわし、イザヤールは攻撃を一回受けてテンションが5上がった。
ニターン目、イエローサタンはアゲアゲダンスをしてデンガーのテンションを上げ、デンガーは「いなずま斬り」をイザヤールにしてきてイザヤールはかなりのダメージを受けたが、テンションが20上がった。ミミはアゲアゲダンスの代わりにイザヤールをおうえんして、イザヤールのテンションが50上がった。
三ターン目、デンガーは再びいなずま斬りを今度はミミにしてきたが、ミミはタップダンスでかわし、イエローサタンもミミもハッスルダンスをしてデンガーとイザヤールのキズを回復させた!ここでテンションが50になっていたイザヤールが、デンガーにはやぶさ斬りをして、デンガーを倒した!
こうして勝負は着き、イエローサタンはがっくりと膝を折りながら呟いた。
「くそう・・・悔しいが、完敗だ・・・。でもよ」ここでイエローサタンは顔を上げ、にっこり笑顔になって(悪魔の笑顔なので禍々しいが)付け加えた。「久々に、一瞬何もかも忘れて、全力で楽しく踊れたよ。ダンスって、見せるだけじゃなくて、自分でも楽しむもんだってこと、忘れてたよ。・・・おまえのおかげで思い出せた、礼を言うぜ」
イエローサタンは、「うつくしそう」をくれた!
こうしてミミは、このダンジョンに来る際はまた、黄色と紫の配色の服もフリフリもヒラヒラもなんでも着てこられるようになったが、代わりに・・・。
「俺様が色気をアップさせれば、ついでに実力もちゃんと見てもらえるってことだよな!よし、頑張るぞー!とりあえずマーニャのドレスでお色気アップだ!」
と、イエローサタンが間違った方向に努力を始めようとしていたので、全力で止めるはめになったという。〈了〉
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます