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ITARISM TSUKUSERISM

つまらん!お前の話はつまらん!
どおりで心のインポテンツが治らないわけだぜ・・・

G氏元夫人の手記(上)~碧いチョウの翅~

2014-03-10 20:39:29 | アーミン系イラスト
グンマのバツイチ漫画に出てくるお嫁さんサイドのお話です。俺なりの精一杯の夢小説。グンちゃんほとんど出てきません・・書いてるうちに、タイムラグやら勢いで、元の漫画とは似ても似つかぬキャラになっちゃったので、まあこれはこれでってことで、ライブ感ってことで、ひとつ・・・
一応続きますが当然次回は奈落ジェットコースターです。以下本文だよ~ん


※プライバシーの問題上、個人名はすべてイニシャルで表記する。

引用するのは現在も失踪中で行方不明とされるG氏元夫人の残した手記である。自殺説、他殺説、誘拐説、政治犯や他国要人による逃亡教唆・援助説などが今もまことしやかに噂されるが、すべて憶測の域を出ない。

この手記にどのような意図があるのかは不明だが、彼女は文中でわざと、恐らく使い慣れないはずのゴミクズのような言葉ばかりを選んで使い、自分自身と、かつての夫であるG氏を貶めているように見える。家族や友人の語る実際の彼女と、文中の「私」の人物像は必ずしも一致しない。彼女はここまで卑屈でも軽薄でも怠惰でもなかった。文体も、私生活でやりとりされた手紙や学生時代のレポートの書き言葉とはまるで違う。故意に事実が歪められた、創意が見て取れる。ゆえにこの文章を真実の記録と安直に解釈するのは正しくない。とはいえ、何割かはもはや誰にもわからないが、実際の出来事、本心が記されている可能性があるのもまた事実だ。それをふまえて読んでいただければ幸いである。

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だいたい生まれた家が独裁国家首領家というチートの威光で、答案用紙に名前を書くだけで進級できた愚か者の私に、「怨敵ガンマ団の所業と我が国にもたらされた悲劇の歴史と世界平和について」を滔々と述べるのが間違いなのだ。馬の耳に念仏である。毎年行われる戦死者・犠牲者を悼む式典では、ヒステリックにガンマ団を糾弾し、戦争をどうしても根絶したいらしい学生たちによる弁論大会(御大層なことに小中高の部まである、許せない)や、苦痛でしかない教皇の長い長い講話中、いかに眠気を紛らわすか、いっそどうすれば人間は目を開けたまま眠れるのか、真剣に思案していたような私だ。

「ガンマ団、アイツらうめえことやりやがるよなあ」と今や陸軍団長やら防衛大臣の兄たちも兵役に行く直前くらいまではこぼしていた。ガンマ団。世界中の戦争、内戦、軍事介入に加担する傭兵組織で殺し屋軍団。ジャ●ーズと吉本興●とA●Bの悪いとこ取りのイロモノ美青年軍団。みんな死ねとか滅ぶべきだとか言ってたけど、そんなの建前で、本当は彼らの下劣であざといスキャンダルに興味津々で、目が離せないのだった。従順な娘でさえいれば人生安泰のいい御身分の私たちお嬢様にとって、ガンマ団はうってつけの娯楽で消耗品だった。いつだってネタ切れの週刊誌や女性誌では、「今月のイチオシガンマ団員特集」がケーキの人気店特集と同じ頻度で組まれていた。立憲君主制と君主制の違いを、気の毒な家庭教師が根負けして泣きながら教えてくれても、ついに理解できなかった私だが、イケメンの顔と名前なら何十人でも判別できた。オタク系の同級生たちは徹夜で団員たちのやおい同人誌を作ってコミケで売ったり、ファンクラブに入ったり、カップリングの違いで宗教戦争を起こしたりしていた。私も学生のときまでアニメはけっこう好きでよく観ていたから、そういう子たちとも仲良くしてたけど、ホモに萌える気持ちは最後までよく分からなかった。


私はあの時にもっとホモと真摯に向き合うべきだった。いやホモでもなんでもいい、人生を賭して夢中になれる、頑張れる何かに出会えていればと悔やまれてならない。生まれた家の名に、偉大な一族の歴史に恥じないよう、誰からも尊敬され愛される立派な人間になるため、立派な仕事をするためにと、湯水のように教育費を投入されたのにも関わらず、私の投資効果はさっぱりだった。

「一族の歴史の中でもワースト5に確実に入れるわ、あなたは女の末っ子に生まれて九死に一生ね」親戚たちに何度嫌味を言われたことだろう。出席させられた様々な表彰式で出会った、不遇や逆境に負けず、強い意志で努力に努力を重ね、苦労の果てに成功を手に入れ、それを認められた人たちは、一様に私を見て憐れむような蔑むような表情を浮かべるか、そもそも私などいないかのように振る舞うのだった。

「何になりたい?」「何がしたい?」「人生の目標は何か考えるんだ。それがハッキリすれば何を頑張ればいいかおのずと見えてくるはずだよ」貴重な助言をことごとく無駄にし、三つ子の魂百まで、無関心な私は自分の人生にすら関心を持てず、いたずらに数撃てば当たる方式にあてがわれる手当り次第の習い事をすっぽかし、何の才能も開花させず、一族の面汚しのポジションをますます確固たるものにしていった。その月謝代設備投資総額で、いったい何人の恵まれない子供たちが救えたことか。

もう私はいっそ恵まれない子供たちの一人になってしまいたかった。不謹慎にも私は不幸に憧れるようになっていた。戦争で不幸になれば戦争反対を、レイプをされればもう二度とセックスはごめんだと声高に主張してもまあ許されるじゃない。幸せでさえなければもっと楽に生きられるのに。そして不幸が深刻であればあるほど、それは自分の怠惰や無能をチャラにしてくれる、素敵な免罪符になってくれるのではないか。不幸はいつしか私の心の中で、魂の自由を約束する、プリズムのように碧く透けて輝く巨大なチョウの翅になっていた。不幸になるための努力なら、愚かな自分でもできるかもしれない。とても卑屈で荒んだ捨て鉢な気分で思った。


二十歳の誕生日を迎えた瞬間、「はい時間切れ」とばかりに両親は、私をどこかに嫁にやって無かったことにする作戦にシフトチェンジした。大して愛想も器量もなく、生来の努力嫌いのツケが回り切った私には、もう結婚相手にしか自分の価値を見出す手段はないそうなのだ。

絶賛不幸ブームだった私は「結婚」という幸福への十三階段を頑なに拒否し、適当な理由をこしらえて押し寄せる見合いの数々を破談無双にしていた。いっそ苦行好きの尼にでもなるかと本気で考えていた、その矢先に現れたのがG氏だった。

破壊と鬼畜の権化と世界で憎まれる、ガンマ団の呪われた出自の嫡子を婿に迎える。一生消えない痣のように、「ガンマ団の人間の妻」という烙印を押され添い遂げる。それはなんという甘やかな不幸、人生の十字架、自殺行為であろうか。見合い話が来たとき、終わりの見えない婚活に疲れ切っていた私は浮かない顔で生返事をしてみせたが、内心では死に体だった好奇心が蘇りガッツポーズをしていた。

なによりもG氏の生い立ちそのものがとびきりに不幸だった。嬰児すり替えで人生と家庭を滅茶苦茶に破壊され、本来なれるはずだった次期総帥の立場を奪われ、窓際に追いやられ成果の見えない閑職に励むことしかできないかわいそうな長男。初めて会話したときの舌っ足らずで甘えた幼い喋り方も、その人生の不幸の爪痕なのかと思うと、厳粛で神々しいものに聞こえた。子どもも動物も嫌いな冷淡な性格の私だが、この人のためになら天使のように優しくなれるような気がした。

G氏は自らのおぞましい出自を全く気にせず、飄々としていた。そんな不遇な時代はなかったかのように、無邪気で明るい性格をしていた。流石ほんものの苦労人は違うと、苦労人研修生の気分だった私は頭が下がる思いだった。お互い劣等生同士だった思い出話も二人を結びつけたようだった。そして、話を聞けば聞くほど、私はG氏に比べれば色々な点でよほど優等生だった。有能な他人を見上げ、圧倒されては途方に暮れるばかりだった私にとって、それはとても新鮮なことだった。

結婚式では、自分のドレスや立ち姿などはどうでもよかった。おべっかなどそっちのけで、ひたすら夢心地で招待した客人たち、夥しい野次馬、報道陣の憎悪と同情と好奇と畏怖の視線に溺れた。私たちはグロテスクなパンダのつがいだった。加害者で被害者だった。G氏の妻という地位を手にしてはじめて、私は自分のくだらなさや至らなさを見逃してもらえた、許してもらえたような気がした。傍らのG氏はニコニコと友人らしきガンマ団の青年たちに手を振っている。その手を引っ掴んで「これが私の主人です。主人は世界でも稀に見るくらいに不幸で愚かで、でもそれをちっとも恥じない気高さを持っていて、しかも若くて超美しい金髪碧眼イギリス人です、出身は日本のド田舎だそうだけど!」と世界中の人に紹介して回りたくなった。
気が付くと涙が溢れていた。G氏は優しくハンカチで涙を拭いてくれた。けろけろけろっぴのハンカチだった。

「私、いま、チョウチョになって空を飛んでいるみたい」
はしゃいで私はG氏に畳み掛けた。「あなたの瞳みたいな、碧い綺麗なチョウチョに」



よわぺだ福金小説「晩夏くずまんじゅう」

2014-03-10 20:36:17 | そのほかイラストとか
「自転車ナンカ絶対描ケナイ」という満々たる自信で満ち溢れている拙者はSSでどうにかしようとおもったんだ!掛け算なら第一印象から福金福のエンドレス宗教だから!落車回は宴だったね!はっは~~ん!
以下本文だよーん

福富が総北自転車競技部にカチコミをカマしてから、ちょうど一週間が経つ。東堂からの連絡に仰天し、いざ再び福富の姿を目の当たりにしたときには肝がつぶれる思いだったが、巻島も、田所も、部員達も、そんなことは忘れてしまったかのように、なんでもない日々を取り戻していた。

金城も先日医者から、制限付きではあるが全身運動を許可された。ようやくの恢復期だ。

その知らせを聞いて、巻島は、あの日肩に抱いた金城の体の重さ、震え、痛みに身悶えして耐える表情を思い出してしまった。虫歯の洞を舌でなぞるような、決して良くはない心地がする。

事故直後から今まで、金城は部活にこそ顔を出したが激しい運動が出来ないため、専ら誰もやりたがらない雑務を片づけたり、後輩の指導をしたり、ついには時間を持て余し課題の問題集や予習をしていた。その間愚痴や不満めいたことは一度も聞かなかった。突拍子もない悪戯っぽさや、意外と人懐こく、間が抜けている面を長い付き合いで知っているからこそ、「金城、友達としては恐るるに足らず」の域にまで達したが、それでもたまに、彼の実直さ、善良さを前にすると、元々斜に構えがちの巻島は、咎められてもいないのに叱られている子どものような気分になってしまう。

巻島はあの件については仕方がないと割り切り引きずらないようにしていた。確かにひとかたならない理不尽や落胆や苦痛も味わったが、当事者の金城が気にしない、許す、と公言しその姿勢を貫いているのなら、自分もそうすべきだと思ったのだ。自分が屈託なくすんなりと、それを実践していることに、ずいぶん後から驚いた。

「バカ田所っち、饅頭はチョコボールじゃねえッショ!」

福富が持ってきた温泉饅頭の残り全てを、田所は一口で平らげてしまった。十個以上はあったのではないか。饅頭をもちもち咀嚼しながら何か主張しているらしいが、聞き取れない。
「金城の分が無くなっちまったッショ」
「いいんだよ、あんな野郎の持ってきた饅頭なんざ不吉不吉!まんじゅうこわいって諺があんだろ?俺が厄落としで清めてやったぜ」
「ソレことわざじゃねーッショ。清めるどころか消滅しちまったッショ・・・」
途方に暮れ空箱を日に透かし掲げる。と、饅頭の仕切りの白色が陰りにくすむ。いつの間にか、謎のサイクリングから帰ってきた金城と福富、二人分の影が巻島の体に落ちていた。
顔を見合わせ硬直する部員たちをよそに、金城はさも当然のように言い放った。
「駅まで送ってくる。すまんが田所と巻島、練習と監督に交代で入ってくれ。30分くらいで戻る。何かあったら携帯に連絡してくれ」
返事も待たずにスタスタと校門に向かい歩き始めてしまう。巻島たちに会釈して、福富もそれに続く。ここに突然来たときも、田所に襲撃されたときも、いま巻島たちに挨拶したときも、彼の表情筋はぴくりとも動かなかった。
突然、巻島の身の内で苛立ちがふきこぼれた。

ズリいぞそれ、金城。歯噛みしたくなった。この先30分のあいだ、金城の携帯は決して鳴らない。金城はそれを知っているはずだ、そう仕向けたのだから。すべては済んだことで、今は平穏な日常のさなかで、もう「何か」なんて起こりっこないのだ。
苛立ちの原因はそれだけではない。福富だ。奴もやはり当然のような顔つきで金城の見送りを受け入れた。最初の謙虚さはどこに行ったのだ。遠慮ってものを知れッショ。気がつくと、あの事故以上に福富を心でなじっている。びっくりである。
要するに、決してやぶさかではなさそうな、金城と福富の間で生まれた友情のようなものへの嫉妬だ。仲のいい子を取られた小学生じゃあるまいし、巻島は困った。有望な友人に気の置けないライバルができるかもしれない。いいことじゃないか。人間関係に淡泊であると自認していたのに、東堂との付き合いを棚に上げて人のことに首を突っ込むなんて耐えられなかった。

福富は悪い人間では決してない。むしろ金城に劣らず実直な人間なのだろう。やり方こそ不器用で強引かもしれないが、そこには確かに彼なりの最大限の誠意が感じられた。それは痛々しいほどにむき出しで、こちらがいたたまれず直視に耐えないほどだ。だからこそ巻島は福富の金城への執着のあり方が気に入らない。はっきり言ってしまえば、気味が悪い。インターハイ本戦で、競争相手を掴んで共に落車し怪我をさせるなんて、そんな怖気の走る想像、誰が好き好んでするだろう。だが福富はその悪夢を現実にしたのだ。悪気がなかろうとも、無我夢中であったとしても、それは事実だ。

巻島たちの前では決して変わらない福富の表情は、金城に関することだけでは、あからさまに変わる。負傷した金城を見つめていた、自分の過失の取り返しのつかなさに慄く表情や、田所に責められて見せた泣き顔。泣きたいのはこちらであるというのに、その涙を見て巻島は、まるで自分たちが罪もない少年に難癖をつけていたぶっているような、苦い錯覚を覚えた。先ほどだって、金城にサイクリングに誘われた福富は、当惑しきって頬が紅潮していた。身振りにこそ現れなかったが、なんだかもじもじしているように見えた。

きっと金城は彼の「お願い」とやらを快く受け入れたのだろう。それどころか、同情などするなと、すまながる福富を励まし、慰めすらしたのかもしれない。来年の目標のため乗り越えるべきライバルという、新しく生まれた関係を二人は健やかに喜ぶ。危ういな、巻島は思う。あまりにも直情的で無防備な福富の心身が、悪意がないからこそ難儀な衝動性が、いつか以前のことにも比較にならないような、取り返しのつかない事態を招いてしまうのではないか。
そして、これはありえない杞憂に違いないが、金城の心が自分たち総北から離れ、福富ひとりに向けられてしまったらどうしよう。金城や田所たちとのつながりを通して、すっかり心のカドが削られて素直になってしまった巻島にとって、それは耐えられそうにない痛手になる。

温泉饅頭の償いに、巻島は金城に何かご馳走してやろうかと考えた。そうだ、たしか夕べ母が京都で有名な葛饅頭を取り寄せたと話していた。いつの間にか、秋はもうどこにでも見つけられるようになっていた。季節外れになってしまった水菓子を金城は、喜んで食べるだろう。巻島が諌めるのも聞かず戦犯の田所にも一緒に食べようと言い出すだろう。思い描いてみた光景の、あっけらかんとした暢気さが、やたら物哀しかった。