後輩問題は、結局彼をメイン担当から外すことになった。うちのグループ内では花形の仕事だったので、不満爆発中…でもあの子がメイン担当をやりたがっていたのは、それこそ花形だからで(まあそもそも「環境担当って何やってるの?」って聞かれることの方が多いけど、環境に関する社内ルールを作ったり、それを運用する仕事だよと答えたときに、正にそれをやっている人だよ)、仕事しないし仕事進めないし他の部署にケンカ売るしで、まあ仕方ないかなぁと思う。「何でこの仕事をしなきゃいけないのか」を理解せず、仕事をやらない方向に持って行こうとするので…いやせっかく色々任されていたのに、何でなんだろうね?彼が異動してくる前は私が担当していたが、超楽しかったのに。(まあ楽しくなるまで時間はかかったけど、軌道に乗る前だって、「何でやらなきゃいけないのか」は分かっていたよ、やることが使命だって分かっていたから、がむしゃらだったよ。環境の仕事は、会社を、地域を、地球を守る仕事だよ、誇れる仕事だよ、ルールと現実の橋渡しをする、とてもやりがいのある仕事だよ。)
あの子は仕事に愛がなかったんだよなぁ、前年と同じでいいんじゃないですかと言いながら劣化させるし、こうした方がいいんじゃない?って言っても「俺が否定された!」って話聞かなくなるし。いや何かしら思い入れがあって、前の年とやり方変えるならそれでもいいんだけど、どういう意図なの?って聞き出すのに何時間もかかる、というかなんでこっちががんばって根掘り葉掘り変えたい理由を聞き出してあげなきゃならないんだ。そうしたい、そうした方がいい!と思うなら、自分からプレゼンしろよ。「環境なんてこの程度やっておけばいいのに、どうしてそこまでがんばらなきゃならないのか理解できない」って、本音だったのかなぁ。だったらその席譲れよ、私にメイン担当が戻ってきたなら、毎年少しずつでもやりやすくして、皆に笑顔で環境保全活動してもらいたいんだよ、会社の雰囲気も地球環境も良くしたいんだよ、他所の部署に上から目線でケンカ売ってる場合じゃないんだよ!
……という願いは叶った訳だが。これまで担っていた仕事も残っているので、業務量が2倍になるという…いやあの子をサポートに使っていいということなので、1.5倍くらいには押さえたいが…。
ただなー、計算間違い多いし資料づくりはへたくそだし、任せたいけど不安…!へたくそだ、と思うんだが、アホみたいに自己評価が高いのでぺしゃんこにする訳にもいかず、じわじわ軌道修正を図るも理解できないらしい。そうした方がいいのは分かるが、この程度でもいいじゃないですか、って。良くないから言っているんだよ…!
あの子は自分の考えを相手に分かってもらう、説得するって情熱がそもそもないというか乏しいのかもな。あるいは他人の考えに興味がない。上昇志向はあるのに上達したいとは思っていない感じ。まだみんなが俺を理解していないだけで、自分の能力に対して今いる場所は不当で、地位が上がるのは当然、みたいな。
ここ何ヶ月か、上司と「どうしてああなんだろうね」って話してて。「スミさんのが年上で社歴も長くて学歴(卒業した大学の偏差値)も上で、仕事も結果出してて社内の色んな人から評価されているのに、あいつはどうして自分の方が上だと思っているのか、しかも異動してきた当初から。」まあそうですね、謎ですね。逆にスミさんはどうして今のようになったのか、という話になり、それは私が理系女子で少数派だったからだろうって答えたけど。子供の頃はお姉ちゃんだからっていい子であろうとがんばり、学校でも同級生たちと伍していかなければならず。高校大学大学院会社と進むにつれて圧倒的男社会になり、自分が少数派で劣っている方だと思ったから(最初から頭一つ抜けているような女子ならそうはならないが、普通の女子は最初は劣っている方にカテゴライズされる、そこからスタートという感じ、自分も周囲も、悪意なく、無意識に。人類に優劣を付けるなら、生まれたときから女というだけで人類の半分以下にランク付けされているという感覚だった、子供の頃は。今は大分時代変わったでしょうけどね)、彼らに置いていかれないように、周囲をうかがいながら自分なら何ができるかって考えながらやってきたよ。不当だ、理不尽だと思ったとしても、真正面から主張したって(口ではもっともらしい別の理由を言うのかもしれないけれど)女だからって切り捨てられてしまうかもしれないと思って、実力や結果や、あるいはコミュニケーションみたいなからめ手で、和解するなり黙らせるなりあるいは撤退するなり、自分の立ち位置を考えながら生きてくる必要があったよ。女だからダメと判断される危機感は幻想・妄想でしかなかったのかもしれないけれど、私にとっては本当の恐怖だった、この世界ではありうるって信じ切っていた、子供の頃の世界や読書の影響でね(明治や昭和の小説では男尊女卑家父長制度が言い訳なく当たり前の空気だし、実家内序列は祖父-父-祖母-私-母だったよ、私が男だったら祖母を抜いただろうことはともかく、同じ女でも嫁である母は直系第一子の私より下だったよ、ただの女にはそういう扱いの世界だったよ)。
でもあの子は男の子で、私とは9歳も違って時代が変わってて、自分より優秀な子がいても自分より上手いやつがいても、そういう存在と自分は比べないって思考回路なんじゃないかな。そもそも視界に入っていないんじゃないかしら、たまに、む、と気付いても、そういう人もいる、カテゴリーが違うって片付けちゃっているのかも。周囲をうかがう必要がない育ち方、生き方が許されてきたんじゃないかしら。多数派の、考えなくても生きていける方、あるいは他人を気にしない、自分を理解してくれる優しい知り合いだけでいいという世界。自分を理解しない向こうが悪いと思う生き方。
まあそういう生き方もある、別にいいんじゃないとも思う、でも、そういう鈍感で他責気味な人間は、環境事務に向いていないと思う。環境業務には、科学的な根拠を理解し、それを他者にも伝える論理的な思考力・表現力が必要だし、「そうではない現実」に向き合い、折り合いをつけなきゃいけない、しかも自分ではなく他者がね、その手伝いをする・誘導する、他人がどう考えるか想像する能力がいるんだよ。「これくらいいいじゃないか、だって大変だし」という結論もアリなんだけど、独りよがりじゃだめ、だってやらずに不利益をこうむるのは会社や地域や世界なんだから。やる手間と得られる利益を考えて、あるいはやらないでこうむる不利益を考えて、それを誰がどこまで許容できるものか、ちゃんと考えないと。自分の利益・不利益しか眼中にないうちは、環境事務には向いていない。
……とはいえ、背中を見て育つタイプでもないよな…。