杉森神社の物語(令和編)東広島市河内町~癒しの風景

田舎で0から宮司をやってみたかったんです。好んで信じて楽しみながら奉仕をしています。

11月の日記12 建築会社さん向けのお話

2023-11-13 10:17:00 | 神職・宮司なるためのコーナー

11月12日





「親ら」

さて、なんと読むでしょう。

神職なら読めるはず・・・ですが、今は違うかもしれません。

「天皇陛下親ら、お手をとられ・・・」

そう、「みずから」と読みます。

そう、天皇陛下には「自ら」ではなく「親ら」と表記することが、常でありましたが、今や神社界、適当です。

だって、地鎮祭で、盛砂の上に榊をさして、刈初めをするみたいですから。刈初めは、草を刈る作法なんですが、今や低樹木を使用しているのは、どういうことなんでしょうかね。そうか、都会では「草」がないから、神社が用意した「榊」にかえているのかもしれません。

地鎮の儀の一連の儀式の一つで、草を刈り、鍬でうがち、鎮め物を埋納する、とても大切な儀式ですが、この苅初・穿初の儀(鍬入れ)は神道の祭りの中で地鎮祭のみにある儀式です。この儀は昔からいろいろな方法があり、今でも神宮や宮中や地域により意味や方法が違います。

本来は、鎮物を埋納する場所に杭を掘り、それを埋めるための信仰上の意義をもつ儀式でしたが、最近の地鎮祭では、盛砂を設け、その斎砂(いみすな)にて起工的意義として、鎌、鍬、鋤を用い、草を苅る所作と土を掘る所作で行われていることが多くなっています。

ここ2~30年は、この儀の時、施工者の方が「エイ、エイ、エイ」と発声していることがありますが、恐らく上棟祭における工匠たちの所作から来たものと思われます(上棟祭では、棟木の奉揚の儀・打固めの儀の中で工匠による槌打ち役・発声役があります)。本来、祭祀中は行事をしながら発声するのは他者に合図する時だけで、自ら真剣な行事を神前で行うときは、声を出すものではないんです。宮中や神宮でのこの祭儀に、声をだす所作はありません。とても厳粛なお祭りだからです。

 

ついでに、地鎮祭のときに使用する注連縄ですが、「シメナワ」は注連縄・標縄・七五三縄とも書きます。

一定の地域の清浄を示す標識です。又、注連縄につける紙垂(しで・も清浄の標識の意味があります。

注連縄は新しい藁(わら)で左綯(ひだりない)で綯ったものを用います。地鎮祭の場合の注連縄の張り方は、祭場を南面として祭壇を囲むように四方に張ります。

東北の隅の斎竹からはじまり、東南、南西、北西の竹へと順に右回りにて張り、再び東北の隅まで戻ります。

祭場が南面とすることができない場合は、東面となることが多いようですが、その場合は、祭壇の右奥(この場合、北西)の斎竹から張り始めます。

最近では、すべて神社側が斎竹、神饌も用意し、業者さんはセッテイングの補助をされなくなっています。(当社ではすべて依頼者側で用意してもらっています。)

もしかしたら、神社側の用意している、注連縄や斎竹、さらには神饌類も使いまわしになっているかもしれませんから(小生が以前お手伝いにいったとき、そうだったので、投げて帰りたかったです)、業者さんは、よくよく確認されたほうがよいかもしれません。神様も、さっきの現場で使用したばかりのお供えを召し上がってくださいといわれても、そっぽむかれるかもしれませんからね。地鎮のお祭りがお怒りのお祭りになるかもしれないですよ。

 

小生が昔受けた質問と回答を列記しておきますね

 

Q.直会時の神酒拝戴がノンアルコールのものを使用することについて

A.できればお供えした御神酒で一口、又は、口をつけるのみでもよろしいかと考えますが、ノンアルコールにすることもやむを得ないと考えます。その場合、神職の了解を得ることができるならば、神饌の一部として祭壇にお供えしたもので直会すべきと考えます。

 

Q.関東・関西・九州の違いについて

A.全てを把握していません。関東地方でさえ神社によってお祭りの方法が若干異なります。関西では、斎砂の位置が向かって左側に設けるようです。九州では、大祓詞という長い祝詞を奏上することがあります。以上のように、各地域によって若干の相違がありますことを予めご承知置きいただければ幸いです。

 

Q.地域の氏神神社以外の神社に依頼してよいか

A.原則は、氏神神社の神職に依頼すべきですが、神職不在の神社もあることが実態ですので、その場合は、親しい神社の神職に依頼することも止むを得ません。但し、神職によっては、地鎮祭を行う地域の神職さんに遠慮してお断りをする場合もありますので、その場合は、氏神神社の近くの神社で神職さんがいらっしゃるところに依頼することがよいと考えます。連絡方法は、各都道府県の「神社庁」に照会(神社本庁HP参照)してください。

 

Q.作法も時代とともに変化していく。発声のタイミングを原則に合わせることは難しいので行わない。

A.時所位に応じて対応することがあります。

 

Q.「直会」という名の下で、会場を移動して食事をとることの可否

A.場所の移動は問題ないです。直会がただの食事会ではなく、神様の恵みを戴くという感謝の気持ちを込めて、お下がりの御神酒をいただき、参列者の各々の懇親を深めていただければ幸いです。

 

Q.入場のときの整列を有無

A.神社の祭典では、神職は整列して社殿に参入します。厳粛さを高めるにはよいことだと考えます。

 

 

Q警蹕(けいひつ)を三回することについて

A.原則一回です。但し、神社の祭典では、三回発することがあります。それは祭典中に本殿の扉を開くときのことで、右扉で一声、右扉から左扉に移動する際に一声、左扉を開くとき一声としています。地鎮祭では、そのような作法がないので一声でよいことになりますが、神職が三回実施していることは、おそらく、降神、昇神という重要な祭儀に緊張度を高めるためではないかと思います。

 

Q.臭いがきついものは避けるべき?

A.臭気が神聖な斎場に漂うことによって、厳粛な雰囲気が乱れることを嫌って避ける考えが生じたものと思います。私たち人々が相手をもてなす場合でも、臭いがきついものを遠慮する意識が働くこととも関連するのではないでしょうか。しかし、絶対臭いものはだめということはないです。

 

Q.斎砂の位置について関西と関東で違う理由

A.神社本庁では、神社で行う恒例の祭祀については規定をしていますが、地鎮祭などは規定していません。地鎮祭などは、地域の風習や伝統も多分にあり統一されていません。最近の神社本庁では、地鎮祭に関する書籍によって、異なったことを記載されていますので、混乱も生じていると思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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