天と地と

連載自叙伝『追憶』シリーズ
「ふきのとうノ咲くころ」

『追 憶』 ⑪ ~ 新たな生活の中で ~

2016年09月24日 | 自叙伝『追憶』シリーズ
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- 楽しい遊び -

 或る日、学校から帰って、おやつを食べていた。
 私と同い年のテルヱちゃんが、友達をたくさん連れて、
 
 「紙芝居見に行かん?」
 
 「え!どこ?行く行く。」
 
 そう言えば、近くの空き地に、拍子木を打って廻っているおじさんを見かけたが、
 何をしているのかと思ったものだが、そのおじさんが紙芝居屋さんであったのでした。
 “鞍馬天狗”や“のらくろ”、“黄金バット”や、ちょっと悲しい物語のうち三編位を、
 二円五十銭か三円出して、飴玉か切こんぶを買わされて、それを食べながら見た。

 

 「第一巻の終わり。続きは次回に。」
 
 「カカンカンカン」と拍子木を鳴らされて、三々五々、夕食が待っている家に帰るのであった。
 これが、則明ちゃんと遊ぶのと一緒の楽しみになってしまった。

 近所の友達もたくさん増え、遊びと言えば、毬つきが流行っていた。
 大家さんの縁先が、広いコンクリートになっているため、毬つきの絶好の場所となった。
 竹の子の皮に梅干しを挟んで、黄色い部分が赤くなるまでしゃぶりながら順番の来るのを待っていた。

 “あんたがたどこさ、ひごさ、
  ひごどこさ、くまもとさ、
  くまもとどこさ、せんばさ、
  せんばやまにはたぬきがおってさ、
  それをりょうしがてっぽでうってさ、
  にてさ、やいてさ、くってさ、
  それをこのはで、ちょいとおっかくせ”

 去年までは、

 “轟く‘砲音’‘飛び来る弾丸’
  荒波、洗う、デッキの上に、
  闇を貫く、中佐の叫び、
  杉野は何処、杉野は何処や、
  船内隈なく、尋ねる三度、
  呼べど答えず、探せど見えず、
  船は次第に波間に沈み、
  敵弾いよいよ、辺りに響く”

 これが手毬唄で、

 姉達の、どんどんスピードを上げて毬をつくのを見ていた私にとっては、
 今の手毬唄が、何となく拍子抜けして聞こえたのであった。
 しかし、テルヱちゃんの持っている軽くて良く弾む、スポンジを渦巻にして作った手毬が
 欲しくって、欲しくって、叔母にねだって、とうとうテルヱちゃんと一緒におもちゃ屋さんに行って買ってきた。
 早速使ってみると、思ったより手応えがなく、加減が難しく、慣らすまで大変であった。



 ~ ⑫へつづく
 
 




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