天と地と

連載自叙伝『追憶』シリーズ
「ふきのとうノ咲くころ」

『追 憶』 ⑩ ~ 新たな生活の中で ~

2016年09月24日 | 自叙伝『追憶』シリーズ
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- お嫁さん -

 叔母も大分世話好きなところがあったらしく、その織物工場の二男のお嫁さんにと、
 田舎の親戚のお姉さんをお見合いさせたのであった。
 
 話がまとまって、結婚式の前の晩、私達の家にお姉さんが泊まってくれた。
 暫くぶりに、田舎の様子を聞くことが出来、話をする言葉が懐かしく、
 いつもなら、とっくに眠くなる時間なのに、目が冴えてしまうのであった。
 
 「さあ、明日は、お嫁さんの仕度をしなきゃいけないから、もう休みましょうね。」
 
 布団に入ってから、キヱ姉さんは背が高く色白で、顔立ちも良いし、きっと、綺麗な花嫁さんが出来ることだろうと、
 明日が楽しみで、子供心がウキウキしてくるのであった。
 
 田舎では、近所のお姉さんがお婿さんを迎える結婚式があった。
 その時のお嫁さんは、文金高島田に、綺麗な花嫁衣裳をつけていた。
 その花嫁さんが思い出され、
 
 

 此の間の音楽の時間に、
 
 “十五夜、お月さん、一人ぼち
  桜ふぶきの花かげに、
  花嫁姿のお姉さま
  お馬に揺られて、行きました”

 前髪を上げ、髪を肩の下まで長くして、とても歌が上手な同級生のチエ子さんが、澄みきった声で、歌ってくれた。その歌声が聞こえてくる。

 目が覚めたら、すがすがしい朝でした。
 丁度日曜日にあたっていたため、おばさんとお姉さんが色々準備を甲斐甲斐しくやっているのをじっと見ていた。
 
 「じゃ、お姉さんと髪結いさんに行って来るからね。」
 
 「お姉さん、きっと綺麗だから、素晴らしいお嫁さんになるんね。」
 
 「まぁ、この子ったら。」
 
 ちょんと、おでこをつついて出かけて行った。
 
 お昼頃、二人は、綺麗に髪を結って、黒に裾模様の着物を着ているので、何だか不思議であった。
 自分の想像しているものではなかった。
 花嫁さんは、文金島田に、おちょぼ口の化粧のはずであったのが、
 鳥の羽飾りで、首筋がちょっと隠れる位の外巻きの髪型で、化粧も厚くなく、あっさりと、
 キヱ姉さんの艶のある肌が感じられる程度に仕上げられ、留袖がとても良く似合っていた。
 当時、品不足もあって、簡素化したものらしい。
 


- パーマネント -

 この頃から、パーマネントが流行して来たようである。

 大家さんの、チー姉ちゃんも短めの横分けで、両脇に細かいチリチリの毛がフワッとなった感じのパーマをかけているのを見て、
 姉達と一緒に囲炉裏の火のところに、火箸を差し込んで、唾をつけてチュッという位に熱したものを髪の毛に巻きつけ、
 チンチクリンにして、おしゃれごっこをしたことを思い出した。

 パーマネントは、どうするのか見たかった。
 丁度、叔母が洋髪を結いに行くというので、早速ついて行って見た。
 驚いてしまった。
 頭いっぱいに、電気の線が何十本も繋がっていて、暑い暑いとうちわで扇いでいるのであった。
 今にも髪の毛が燃えてしまうのではないかと、はらはら心配したものであった。  


 ~ ⑪につづく




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